ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
原作では仲間にならないはずの人物がさらに増えた事。
さらに謎のナニカが登場した事でより違った要素が増えていきます。
ただ大まかな流れが原作沿いなのは変わりません。
さて新メンバーの実力とは?
今回もよろしくお願いします。
「ふぅ~。戻ってきたね」
「今度はコケなかったぜ」
毎日見てるはずの青空なのに随分と懐かしく感じるなあ。
まぶしいし、暑い。
「……そう。こんな空の色だった。懐かしいね」
「キロ。必ずあちらの自然を……水を取り戻す」
数百年ぶりだろう青空を見たキロさんと、なんかカッコ付け感があるボオス。
あっちでなにを見て聞いたのかしらね? 命の恩人なのは間違いないだろうけど。
「うおぉっと」
「慣れると楽しいね、これ!」
今度はうまく着地したタオと、もはや楽しみだしてるクラウディア。
「さて……やる事が山のように増えたな。まさか因縁に直接関われるとは」
「これまでの封印とはわけが違うが協力者も多いんだ。私より優秀な錬金術士すら、な」
先を見据えている旅の二人と。
「じゃあこっちも塞ぎますね!」
どう見てもオーバースペックな気がする異世界の英雄の弟さん兼、島の道具屋さん。
……2か月でこんなことになるなんて誰か予想してた?
「……なんとまあ。浄化出来るくらいだから当然なのだろうけど」
「原始的、かつ効果的な塞ぎ方だな。向こう側も同じ状態なら尚更だろう。便利なものだ」
「これに頭を突っ込んだら痛いでは済まないな。キロ、これからこういう事だらけだぞ」
「オーリムにいた時より色んな意味で刺激的そうだね」
「島は退屈な場所のはずだったんですけどね……」
アルさんが錬成した今度の壁は分厚い岩の壁。
コレがこちらと同じように、あちらにも生えているらしい。
物理的に突破するのも難しそうなんだけど……これ封印いる?
「さて、まずは島に戻るとしましょう。ボオス君発見を報告しないとですし」
「水の方は後日エルリックさん達が入れるよう、手引きを段取りします。少し時間を頂きたい。俺でも入るのは簡単な事ではないので」
「私はリラの所にお世話になればいいかな?」
「そうだな。キロも比較的落ち着けるだろう」
「では諸君。まずこの状況を何とかするとしようじゃないか」
さあ――現実を見よう。
こっちの世界に来ていたのがここに戻ってきたのか、わらわらといるフィルフサ。
それから番人のごとく遺跡に配置されていた鎧たちが、まあたくさんいること。
数えるのも億劫だ。
「ここのサソリは「渇きの悪魔」じゃなくて「スティンガー」だね。下っ端だよ」
一切動揺してないキロさん――ホントどんな戦いをしてきたんだろう?
とにかくここを突破しないといけないね。
いくら何でもこの数はアルさんとリラさんでも楽じゃないはずだ。気合い入れるぞ!
「ん~、一度私がやってもいい? こっちでどの程度戦えるか確認しておきたい」
と思ってたら、のほほ~んな声が聞こえた。キロさんが一人で戦うんですか?
「それは大丈夫ですけど……」
「ライザ、まあ見ていろ――霊祈氏族の戦士の戦い方というものをな」
リラさんに制されちゃったけど、大丈夫なのかなぁ。なんだかほんわかしてるから。
キロさんがリラさんみたいに殴って蹴ってをするようには見えない。
キロさんがトコトコ歩いてあたしたちの前に立つ。
そして。
「
キィィィィィィン
喉元に手をあて呟いた。不思議と響く声。聞き取れないけど何かの――呪文? 詠唱かな?
キロさんの足元を起点に魔法陣が広がっていく。
けど、これは……。
「
グォングォングォングォングォングォングォングォングォングォングォングォン!!!
「……なに? 何この規模!? でっか!!」
「おいライザ! こんなすげえのあり得んのか!?」
「こんな複雑な魔法陣が!? これが同じ魔法だなんて!!」
「すごい魔力の奔流だね! でも全然音の乱れがないよ!」
「これが……キロの。真の戦士の力、なのか」
「
あたしの常識じゃありえないほど――大きく、濃く、複雑な。
そんな赤い魔法陣が重い音を立てながらすっごい速度でグルグル回転して。
一方で、大量の魔物たちの周りをいつのまにか白熱した炎が取り囲んでいる。
すでに何もかもが燃え上がって……逃げ道なんかない。
「
ゴウゴウと音を立てながら燃え盛る炎が、竜巻のように中心部に集まって。
カッ!! ドオォォォォォォン!!!
って光と音と共に、崩れた天井を余裕で超えるおっきな火柱が出現したよ。
ものっすごい熱風が吹き荒れてるんだろうけど、魔法陣の内のあたしたちには一切影響なし。
炎が消えた後、魔物たちの姿はどこにもなくって。
「……ウソ、でしょ?」
石畳が凹んで、ドロッドロに融けてた。大惨事だ。
まだまだジュージューいってるんですけど……?
「ん、充分戦えそうだね。こちらの世界なら精霊の力は楽に借りられるみたい。オーリムより楽」
「私でも精霊を降ろせるからな。しかし流石は霊祈氏族の戦士だ、頼りになる」
「いやちょっと待ってくださいよ!?」
「? どうしたのライザ?」
さもお風呂にでも入ろうかという雰囲気のキロさんの反応。
まったく気にされる事ではないらしい。常識外れにもほどがありません?
「ライザ、これが霊祈氏族の戦士だ。彼女達は高位の精霊の力をそのまま世界に顕現できる。規模によって詠唱に時間はかかるが、広範囲の魔物の殲滅で彼女達に敵うオーレン族はいない」
リラさんはなんだか誇らしそうだ。身内にこんなことが出来る人がいるなら気持ちはわかる。
「触りだけは聞いていたが……まさかこれほどとはな。オーレン族が寛容でなければクリント王国の者などものの数ではなかっただろうに」
「……まるで大佐みたいだ」
アンペルさんはともかく、アルさんは知り合いに似た感じの人が居る?
ホントにどんな世界よ……。
「さっきのは精霊の言葉なんですか!?」
「精霊でも分かる言葉、かな? 本来精霊は言語を必要としないから。タオも習ってみる?」
「どういう意味だったんですか?」
「ん~「我望む地獄の儀式よ、神の裁きを解き放て、受けよ断罪の火」みたいな感じ。さっきのはクラウディアにはエレメントが合わなさそうだね」
「わりとエグい内容っすね……」
「ちょっと気合入れた。でもレント、言葉の重みって大きいんだよ? 言霊とも言ってね」
「これが本当の戦士、本当の意志の力……か」
「……私は」
「アンペル……」
レントの言う通り、わりとガッツリ攻撃的な内容だったよ。これでちょっと?
以前アルさんが言ってたけど、本当の魔法ってこういうものなんだって思い知らされたね。
アンペルさんは……そっか。右腕が使えれば、か。
帰りは来た道をそのまま、じゃなくてライムウィックの丘に通じる岩壁を登ることになった。
坑道に出たっていう黒い女王が原因だ。たしかに今は近づきたくない。
岩壁は入り江の北西。来た時は完全に通り過ぎてたね。
バチバチバチッ!
「おお~、便利」
「僕らの錬金術もホントに色々なんですけどね。こういった錬成が一番役立てられている気がします」
普通じゃどう頑張っても登れなさそうな壁だけど、あっという間に岩の階段が出来た。
アルさんが先に降りる階段も作ってリラさんとキロさんで軽く露払い。で、あたしたちだ。
……壁の向こうから戦いとは思えない音が聞こえるけど、気にしちゃダメね。
「お前ら、対岸に渡ったあの日からずっとこんな常識外れの戦いを?」
「してるわけないでしょ。目標にはしてるけど」
「俺たちと、リラさんアルさんじゃ完全に別世界だぜ」
「リラさんの戦いはまだそこまで見たことないけど……ご自身にも精霊を宿せるんだったかな?」
「4属性の精霊を全部宿してからが本番って、僕のハンマーの時に言ってたかな」
「一点瞬間火力ならキロ嬢の魔法を超えるだろう。特にフェイタルドライブの威力は凄まじいぞ」
「ふぇいたるどらいぶ?」
初めて聞く言葉が出てきたね?
「早い話が奥義、必殺技、決め技といったところだ。オーレン族の戦士がそれぞれ個人で異なるフェイタルドライブを持っていると聞いている。我々の魔法や技がある程度体系化されたスキルなら、フェイタルドライブは完全オリジナルの物という事だ」
「自分だけの技……いいじゃねえか!」
「レントはこういうの好きそうだよね」
「タオ君もじゃない? 「結索の楔!」って」
「やめてってクラウディア!」
「あたしだと……どんな感じになるんだろう? ブラストノヴァの強化的な?」
「クラウディア嬢はこういうキャラクターだったのか」
「みんな終わったよ。さあ、別の魔物が流れてこないうちに」
壁の上からアルさんのお呼びがかかり、みんなで階段を上って下る。
全員通った後はアルさんが階段を分解だ。
「あんなに、あの塔が近え……」
レントがポツリと――ずっと目標にしてたもんね。
天辺の方だけだけど、ホントに、すごく近くてはっきり見える。
でもまずはフィルフサと水を優先しなきゃ。
話に聞いてた祭壇を横目に、丘を東に進んで橋を渡ると。
「戻ってきたんだね」
「すごい安心感だよ」
「でも、ここに竜が来たんだよね?」
「正確には一区画北だ。しかし……フィルフサどもと比べてぷにが魔物に見えんのは同意する」
中央ライム平原。
悪魔の野へと繋がる橋を逆走してきたあたしたち――まさか逆走してくるとは。
ここでクラウディアを仲間にさせてもらう課題をやったんだもんね。
さてと。
「ボオス。しばらくは休戦よ」
もうそれどころじゃない。意地張ってる場合じゃないもんね。
けどボオスは。
「……はぁ~。休戦も何も、もうそれどころではないだろう」
ふっかいため息――疲れたような顔だ。思ってることは似てるみたいだけど。
「俺の価値観を何もかも破壊された。いい意味なんだろうがな。幼い頃にただ一度だけ見せられた……掟をも超える島の秘中の秘と聞かされていた。口外する事は島の死を意味するとな。不思議と思いつつも、それを当り前だと捉えてきたその結果が……このザマだ」
「……あんた、いつから知ってたの?」
「あの時の、そのすぐ後だ。俺のブルネン家としての自覚を鮮明にするためだったんだろう。それ以来、島の死に繋がりそうと感じた外の要素は可能な限り排除しようと動いてきた。それが確定でないとはいえ、得体の知れないモノの最たる物だった上にキロ達の世界を……な。道化にも程があるだろう」
……そっか。あの時から態度が急激に変わったのはそれもあったのか。
錬金術を含めた島の外の知識を、ボオスなりの線引きで排除し続けていたのも。
「あれほど絶望的な環境になろうとも、キロは各々の意思を尊重しその在り方を理解しようとしていたと聞いた。たとえ異人である俺が略奪者だったとしても、一度は必ず助けるという信念もな……それを汚すわけにはいかない。もうお前達と遊ぶ暇はないし、そんな機会が来んかもしれん」
「……? ボオスとライザはケンカをしているの?」
「あっ、えっと……」
「10年間つまらん意地の張り合いを続けて拗れたんだ。この件に私情は持ち込まない」
「……ボオス君も、そろそろ裏側を伝えたらどうなんだい?」
「アルさん?」
裏側って?
「……そうか。当時エルリックさんは、もうハーマン家に居たのでしたね」
「僕も直接聞いたわけじゃないけど、あの日の晩アガーテさんがとても悔やんでいたからね。今も確信があるわけじゃないんだけど」
「アルさん、どういうことなんだ?」
「ボオス君は知っていたんじゃないかい?」
「あの時、
「「「えっ!?」」」
なんで? って顔をすると、やれやれといった感じでボオスが口を開いた。
「俺の監視の為だ。ブルネン家の跡継ぎとして、やんちゃなお前達とつるんでいる事を父さんは良しとしていなかった。とはいえ、大人の監視を付けてはあからさまだ。だから比較的歳の近いアガーテが監視に付いていた」
「じゃあ……じゃあなんであの時に言わなかったのよ!」
「お前達があの時「逃げた」とほざいたからな。俺は確実な手段を使って、後でその結果を伝えただけだ。嘘は一切吐いていないはずだが? 監視が付いていたなど一々話すわけがないだろう。「俺には見張りがいるけど気にするな」とでも言えばよかったか?」
つまり、ボオスはすぐに姉さんが呼べる状況なのを知ってたからそっちを優先した。
現にボオスから「姉さんを呼びに行った」ことは聞いてた。でもあたしたちはそばにいたのを知っていたとは知らなかったし、それを納得できる心持じゃなかった。
その辺の詳しい話が出る前に……あたしたちはボオスに「すぐ助けなかった」事実を突きつけた。
加えて――その頃には水の真実を見せられてたのかな。ボオスの心構えはあたしたちと違った。
水の秘密を……島を守るべく、過去島になかった要素を錬金術含め排除しようとしたボオス。
決定的な切っ掛けがないまま成長し、最近になって心持が変わって島の外の要素で島を守ろうとしているあたしたち。
すれ違いにもほどがある。この上でボオスに認められたアルさんのすごさがまだあるんだけど。
ホントにバカみたいな意地の張り合いになった。
「……くそったれ。そういうことかよ」
「色んなところですれ違ってたんだね……」
「じゃあこれで仲直り、だね!」
「完全な清算は出来ない、事実は事実だ。だから、協力関係ってやつを上に積み上げる形か」
「はぁ……今はそれでいいわ。なんにせよ、いがみ合ってる場合じゃないし」
「よかったよ。それにしても……広い緑と透き通る青空。綺麗な世界だよ。そして……そこらに散らばっている残骸がクリント王国の物って事か。本当に、勝手だね」
そう。あたしたちのいがみ合いなんてどうでもいい。キロさんに対して失礼でしかない。
「まずは島に戻りましょう。そう時間はかかりませんから」
「キロは直接私達の拠点に案内しよう。島民は異人に対して少々過敏に反応するからな」
「そうなの? まあ時機を見て回ろうか」
「俺が話を通しておく。不快になどさせるものか」
ということでまずは街道を南へ。
魔物は全スルーだと思ってたけど……キロさんの適当な詠唱が群れを吹っ飛ばしてた。
「
気の抜けた詠唱で炎の槍が飛んでいって、5体の翼竜があっさり消し炭になった。
現状パーティーで最強クラスね――あれ、あたし要る?
「ボオス! アル君達も! 無事だったか!!」
岸には護り手の人達とアガーテ姉さんもいた。
こっちに来てたか。でも待っててくれてたみたいだ。坑道は今ヤバイかもだしよかった。
「面倒をかけた。それについては謝罪する」
「まずは無事ならばいい。モリッツさんなぞ自ら乗り込むつもりだったくらいだ……それで、こちらの御仁は?」
「逃げた先でこの方に保護していただいた。命の恩人だ」
ボオスに紹介されてキロさんがトコトコ前に出る。
姉さんとは身長差が結構あるから、姉さんが足を引いて軽く礼をしてるようになった。
「キロ・シャイナス、リラの同郷。島の事情は聞いているからあまり干渉しないつもり」
「島の護り手代表を務めているアガーテ・ハーマンです。この度はボオス・ブルネンを救って頂いた事、深く感謝します」
「構わないよ。頼まれてやったんじゃない。助けたいと思ったから助けた、それだけ。ボオスを捜していたんでしょう? 早く連れてってあげるといいよ」
何というか……キロさんさっぱりしてるなあ。
興味がないものにはとことん興味がない感じだ。
「ではキロは私達の拠点に案内するとしよう。ここからそう時間はかからないからな」
「島に住んでいるわけではないの?」
「こちらの方が門を探すには好都合だったのでな。なかなか快適だぞ?」
「……水についてはタイミングを見てライザ達に連絡させる」
「了解した。余り時間はかけられないから出来るだけ急いでくれ。私達も数日は拠点で待機する」
「分かっている」
ということでアンペルさんたちは森に、あたしたちは舟で島に戻った。
トレッペの高台でモリッツさんの熱烈歓迎を受けた――ひょっとしなくても親バカ?
その後、クラウディアのお屋敷に戻ってルベルトさんにも報告だ。
「そうか、彼も無事だったんだね。良かったよ」
「ありがとうございました、ルベルトさん。貴方の判断と、ブルネン邸への連絡を担って頂いた事で二次災害を防ぐ事が出来ました」
「なに、私などただの伝令にすぎんよ。それしか出来なかっただけだからね」
「……お父さん、ありがとう」
「構わない。娘のやりたい事の一助にはなれたのだからな。だが、約束していた店の件はキチンとやる事だ。それが活動する条件なのだからね」
「うん、必ず」
クラウディアはそのままお屋敷に、タオは家に戻り、レントは対岸に戻ることにした。
ボオスからは3日以内に古式秘具への道を開けると聞いてるから、それを伝えにね。
アルさんも出かけるらしいし、あたしもちょっと実験して今日は解散だ。さすがに疲れたぁ。
家にお昼の残りがあるといいなあ……。
本来終盤で発生する和解イベントですが、ここに配置しました。
この作品における転換点の一つです。
キロの魔法は原作に一切記述がない(と思っていたらDXで出ちゃった……)ため、
とある大魔法詠唱をラテン語&ルーン文字でそれっぽくした物を使用します。
ご興味があれば翻訳をかけてみてください。割とまんまです。
今回はルビも振りましたが……何言っているか分からない方がそれっぽい?
何故か一文だけルビがきちんと反映されないし……皆さんには直ってますか?
キャラクター登場としてはキリがいいので、
次に登場人物紹介を挟んでおきます。
大急ぎで作ったので、いつも以上に誤字が多そうな予感……。
予告通り次話は5日ほど間隔をいただきます。
今の時点で編集済みは41話までなんですよね……一発書き出来る方ってすごい。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。