ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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この辺は作者が試行錯誤している時期ですねぇ……。
なので書き方が安定していないようです。

前話では調合・錬成に使えるかどうかの実験でしたが、今回は魔法編です。

思い出したかのようにお菓子ネタを放り込んでます。
そろそろ開店しないと時間がないよ? クラウディア。

誤字報告ありがとうございます。
チェック方法を変えると投稿が滞りそうなのでこのままで進めて参ります。
相変わらずの誤字量になるかと思いますが、皆さまご了承くださいませ。


今回もよろしくお願いします。


38. 69日目①  光の加護の使い方 魔法編

あたしがクリミネアを調合して、アルさんがゴルドテリオンを錬成して、クラウディアがショートケーキ試作品を調理した翌日。

昨日の調合の報告と光属性魔法の実験のために、今日は拠点でも活動だ。

 

「やあ。よく来た」

 

「ようライザ、アルさん」

 

「お邪魔するね、アンペルさん。お疲れレント、あの2人はどっか行ってるの?」

 

「今は森を回ってんぜ。試し打ちだとよ」

 

「魔物達も大変だね」

 

前の「神炎の断罪」みたいなのをぶっ放されたら森が無くなる気がするよ?

 

 

 

てなわけで、二人が来るまで待つことに。あたしは素材採取ついでの付き添いでもある。

レントは街道の方へ訓練に向かって行っちゃった。あいつ、ちゃんと家に帰ってんのかな?

 

「そういえば、ライザはクリミネアの調合をしていたらしいな。うまくいったのか?」

 

「あ、うん。とりあえず形にはなったよ。アンペルさんも名前知ってたんだ?」

 

「加えてライザとキロさんの協力で新しい金属の錬成も出来ましたよ」

 

「ライザより無駄に長く生きているからな……ゴルドテリオンと言ったかね? 金色のインゴットなど私も聞いた事がない。この先が楽しみな結果だな。今度見せてもらえるか?」

 

「勿論ですが運ぶにはかなり重いので、一度工房にお越しいただいても?」

 

「成程、それではお邪魔するとしよう。ボオス少年の屋敷に行く際にでもな」

 

アンペルさんでも金のインゴットは知らないらしい。

よっぽどマニアックかおかしなものを作っちゃったって事かな――またか。

 

 

ガチャッ

 

 

お、リラさんとキロさんが帰ってきたかな。

 

「戻ったぞ……ああ、もう来ていたか。待たせて悪かったな」

 

「お待たせ」

 

特に何かあったってわけじゃないみたいだね。ボオスが見たってやつに遭遇してたら大慌てだ。

 

「おはようございます。リラさん、キロさん」

 

「先ほど到着したばかりですから。それで、光の属性魔法の実験って事ですけど?」

 

「ん。取り敢えず、まずは詠唱に組み込めるか試してみたい。早速いい?」

 

「分かりました。ライザもよろしく頼むよ。」

 

「あたし役に立つのかなあ……」

 

「私はレントの修業を見て来るとしよう。今は街道か?」

 

「では留守番も兼ねてアイテムの整理でもしておくとするか。行き違いは避けたいからな」

 

ということでキロさん、アルさん、あたしの3人で森の奥に向かう。

音爆弾開発の時みたいな率直な感想ってのがいる感じなのかな。

光の加護はアルさんに触れてないと使えないってことらしいだけど。

 

「具体的にはどうやって魔法に組み込むんですか?」

 

「昨日の錬成をやった限り、私がアルに触れていないと使えない。けどいちいち手を繋ぐのは面倒くさいから、おんぶ」

 

「……へあ?」

 

あたしから変な声が出た――アルさんにおんぶとな?

 

「だから、おんぶ。アルなら余裕でしょ? 私はそんなに重くない。肩車じゃ不安定」

 

「まあ引っ付いていただいて、かつ僕が身動きを取るとなるとそうなりますか。僕の両腕は使えなくなりますけどこの森なら問題ないですね」

 

「じゃあさっさとしゃがむ」

 

「はいはい」

 

そう言って、アルさんにキロさんがしがみ付くようにおんぶされた。

ボオスが見たらなんとなくショックを受ける気がする。異世界の英雄級とガチの戦士だよ?

背丈の差は頭一個分とちょっとってとこのはずなんだけど、昨日よりも親子感がすごい。

 

「ん~……加護自体は感じられるけど私だけじゃやっぱり動かせない。取り敢えず私が言葉を発したら「輝け」って言ってくれる?」

 

「分かりました」

 

「それじゃあ……Photon.

 

「輝け」

 

とたんに光の球体が前方に出現して弾けた。

周囲に影響は及んでないみたい。ホントに光っただけっぽいね。

 

「ん、発動自体はこの方法で可能みたいだね。次は魔物で試そう」

 

「では……でかぷにあたりでやってみましょうか」

 

「最初来たときは危険の代名詞だったはずなんですけど……」

 

いつの間にやら実験台扱い。変わったなあ。

 

 

 

「それにしても、ここは本当に自然に溢れているね。精霊達の力が漲っているよ」

 

「花や植物を住処にする妖精が多いですからね。クーケン島の人々はここに入りませんし」

 

「前の大侵攻の時はフィルフサが避けてったんですかね?」

 

「ライムウィックの丘経由だったら存在に気付かれていないかもね。一体フィルフサが何を求めて侵攻してくるのか分からないけれど」

 

「あれらは資源が多い所に集まるよ。だからこの森は格好の餌場なんだろうけど、クリント王国の者達が応戦してたんでしょ? それでここを通らず、じゃないかな」

 

水がない限り、フィルフサに地形はそれほど関係ない感じかな。

だからあの門を直進して塔に行くか、攻撃が飛んでくる城へ平原を突っ切って行くかになったと。

塔への道も戦場跡って聞いたから、あそこも一種の迎撃拠点だったのかな。

 

あ、そういえば。

 

「キロさん。例えばですけど道具にエレメントを宿すとかって感じで、あたしたちも精霊の力を借りることって可能ですか?」

 

「両方出来るけど後者の方が得意かな。どうしたの?」

 

「丘から見えた塔に通じる道って途切れちゃって深い穴になってるらしいんです。ただリラさんが見に行った時、「つむじ風があるから風の精霊の加護があれば~」って言ってたので」

 

「成程、キロさんならまず大丈夫なわけだね。それなら錬成要らずで魔物が渡ってくる心配もないか」

 

「リラがそう言ってるなら風の力の吹き溜まりになってるのかもね。全員で……ボオスはなし? なら8人? こっちでなら余裕だよ。道具に宿す事も出来るけど、その場合は道具に精霊の居場所を作らなきゃいけないね」

 

「精霊の居場所かぁ……」

 

エレメントはともかく、精霊に関しては完全に勉強不足だ。

一番近いのは神秘を宿す代物……いつかの碧の水を思いだした。補充しなきゃだ。

 

「ああ、あそこですね」

 

樹間遺跡の奥の方。白霊岩の合間に住みついてるらしいでかぷに。

何回倒してもすぐに次のがいるあたり、よほどあそこは居心地が良いらしい。

 

「フィルフサと比べると本当に可愛げがあるね。食べやすそう」

 

「そこに行きつくんですか!?」

 

たしかに食べられそうだけど、第二印象がそれ?

 

「それで……どうします?」

 

「まずさっきの「輝け」を試す。それでも生きていたら考える。攻撃避けられるよね?」

 

「問題ないです」

 

「一応あたしも構えときますね」

 

全く問題ないだろうけど念のためだ。

ここに来るまで結局おんぶされっぱなしだったキロさん。高い目線が新鮮らしい。

さあ、まずは10メートルくらいの位置からスタートだ。

 

「いくよ。Photon.」

 

「輝け」

 

さっきみたいに光が集まって、弾けた。

ぷにっ!? って聞こえる鳴き声。ダメージ自体は入ってるらしいけどあたしの魔法並みかな?

でかぷにの表情が不機嫌になった――そりゃそうだね。

 

「ん~思いの他威力は控えめ? 他を考えようか」

 

「じゃあ適当に時間を稼ぎますよ」

 

それならいいものが。

 

「あたしがアイテムで足止めします! それっ、泡雲の弾丸!」

 

 

ドォン!

 

 

どう見ても空色の大砲にしか見えないんだけど――なぜか発射されるのは泡。弾はどこいった。

ブロンズアイゼンを薄めるのに、適当に近くにあった泡立つ水を使ったのが不味かったのかも。

でもこれ、ただの泡ってわけじゃなくて。

 

「……寝た?」

 

「へえ、面白いアイテムだね」

 

「効き目はそこまで強くないんですけどねぇ」

 

くらった相手は――たまに寝る。

寝なくても泡まみれだから動きづらくは出来るんだよね。

一応大砲だから遠くからでも使えなくはないし。

 

「時間稼ぎにはもってこいだね」

 

「この前はヨンナさんの手紙を飛ばすのに使いましたけどね……」

 

「お手紙、ベチャベチャにならない?」

 

さいわいセーフっぽかったです。瓶に入れてたし。

ただ手紙がどこに行ったのかは神様しか知らない。

 

「ん~よし、考えてみた。これでいいや」

 

「わりと適当な感じなんですね……?」

 

「しっかり考えるとこの森が消えてしまうよ?」

 

「ご配慮くださりありがとうございます」

 

考えてもらったうえでの適当だった!

 

「ライザがそんな言い方出来るなんてね。それで……僕は何と?」

 

「「聖なる力、撃ち抜け」で。多分攻撃っぽくない言葉だから弱かった。ライザ、ソレを小突いて起こしてくれる? 寝込み襲いじゃ分かんないから」

 

「わかりました……眠らせたり起こしたり、なんかゴメン」

 

たしかに「輝け」に比べるとずっと攻撃っぽいよね。

そして不意に一発、その後眠らされ、小突かれたと思ったら、何かが飛んでくるだろうでかぷにに、なんとなくお詫びの気分になった。

 

「ふん!」

 

ゴスッ、起きた。

 

「いくよ~Sancti virtute. Mitterent.」

 

「聖なる力、撃ち抜け!」

 

Lux Pugio Volans!」

 

キロさんとアルさんが詠唱した瞬間――アルさんからいくつかの十字の光がでかぷにに向かって飛んでった。コーリングスターよかめっちゃ速い。

で、多分……1発目が当たった時点ででかぷには消滅してる。オーバーキル過ぎません?

 

「お~光に攻性を加えるとこうなるんだ。これはしっかりした詠唱は問題があるね、本当にこの辺りの地形が変わるかもしれない」

 

「大侵攻の前にこのへん滅ぼさないでくださいね?」

 

「アルが一緒に詠唱しないと発動のしようがないから暴発も何もない。一応切り札として考えてはおくけど」

 

「さっきのみたいな長い詠唱を僕が重ねるのは難しそうですね。慣れない発音だ」

 

「スペルなら覚えられるんじゃない? こっちの言葉じゃなくてあっちの言葉で。試しにハイ」

 

「ええっと……「サンクティヴィルトゥーテ、ミッテェーラーヌ」?」

 

大体発音できちゃってる気がしますが?

 

「ん、じゅーぶん。慣れてないと発音は難しいと思うけどほぼ聞き取れてる……けど魔法は発動しないね? エレメントの放出に慣れていないか、そもそも加護だからかわからないけど。やっぱり加護は魔力扱いではないのかな」

 

「聞いたまま言ってみただけですから……難しいですね。意味のイメージが付かないと」

 

「レパートリーは増やさないから発音だけ覚えてみて。出だしの単語を合図に」

 

異国の言葉は勉強したことないけど難しそうだね。

でもこの人だしなあ。

最初の「さんくてぃなんたら」が詠唱なら、後ろの方の。

 

「さっきの……るくす……なんたら? あれも意味があるんですか?」

 

「あれは自分用(インデックス)だね。私も名前を付けないと「アレはどう伝えるんだっけ?」ってなっちゃうから。ルクスプージョヴォランスは……直訳したら「光の短剣の飛翔」ってとこかな」

 

自分に向かって光の短剣が飛んでくる――こわっ。

 

 

 

その後、アルさんが()()()()()()()の発音を少し練習して、キロさんと一緒に二重詠唱で空撃ちしてみたんだけど。

 

「これはダメだね。普通に使っていいのは一小節に限定しよう」

 

「僕の言葉でも加護に届いているって事ですか。使い分けないと危ないですね。能動的な使用には僕が使おうとする意思と精霊の言葉が必要なのか」

 

「……ごめんね、でかぷに」

 

でかぷにのお気に入り「だった」場所に、巨大なクレーターが出来ちゃった……。

クレーターはアルさんが錬成で塞いで、気を取り直してあたしも採取。

久々のハンマーを使った岩石系だ。

せぇの!

 

「たぁーるっ!」

 

うぉりゃぁあ!!

 

「なんというか、採取の時のライザは不思議な掛け声なんだね。樽?」

 

「採取の時は中々の奇行に走るらしいですから……鎌を振り回すのは止めさせないと」

 

 

 

 

 

 

「お帰りライザ、アルさん……とキロさん!? 足をケガされたんですか!?」

 

「あ~大丈夫よクラウディア。高い目線がお気に入りらしくって」

 

「……よく見える景色が良くってね」

 

「一番背が高かったのは誰だったかな。やっぱり少佐? シグさんかな」

 

「どのくらい高いんですか?」

 

「ん~今の僕の頭2つ分は。そしてレントをずっと超える筋骨隆々の肉体だね」

 

「でっか!」

 

アルさんの頭2つ分上とか……2メートル軽く超えてますよね? もはや壁みたいだ。

 

「迫力ありそうな人たちですね」

 

「……少佐、汗臭そうで、や」

 

慣れない光魔法に疲れたのか、帰り道にキロさんはおんぶされたままちょっと寝ちゃってた。

今まで戦いっぱなしだったんだし比較的無警戒でいられたのかもだね。

 

拠点に戻ったところでちょうど浜からこっちに上がってきたクラウディアと合流した。

新作を持ってくるって聞いてたけど?

 

「それでクラウディアは……なにか持ってきてくれた感じ?」

 

「うん! アンペルさんにお菓子の試食をお願いにだよ。私たちの中ではアンペルさんが一番甘味に強いし詳しいからね。昨日も言ってたプリンをバジーリアさんと一緒に作ったの。みんなの分もあるから」

 

「……プ、リン?」

 

「ミルクと砂糖と卵を混ぜて、昨日のマーポートーフみたいに固めたものですよ」

 

お菓子ってのは基本が似たようなものってのがよくわかるね。

ケーキやクッキーから小麦粉を抜いた状態で固めたものなんだ。味の予想はしやすいかな?

 

そんな事を考えてたら、バァン! とアンペルさんが拠点から出てきたよ。

この人の嗅覚はどうなってるのかな? アンペルさんも白牙氏族だったりしない?

 

「甘味の匂いだ!」

 

「匂い……そんなに強いでしょうか?」

 

「いや、僕には分からないよ」

 

「なんとなく、わかる」

 

「私は慣れちゃってるかな?」

 

もはや直感な気がする――甘味センサー?

 

「それで実際のところはどうなのかね?」

 

「大当たりですよ。アンペルさんに試食をお願いしようと思って」

 

「願ってもない! 早速頂くとしよう。まあ皆、中に入るといい」

 

ひと月前まで廃墟だったとは思えないよね、我ながら頑張った――あゝクラウディア監督。

 

それにしても、アンペルさんが使う道具とか以外私物らしいものがほとんどないよね。

キロさんは当然としても、リラさんが使いそうな物はどれなんだろう?

とりあえず使える机と椅子はあるらしい。

 

「さて早速頂くとしよう……ほう、プリンかね」

 

「はいっ! ヤギ農家の方とヤギミルクを使ったお菓子が作れないかってお話になって。蒸すお菓子は初めてだったんですけど」

 

「ミルクにしては……少し茶色いね。こっちでは普通なの?」

 

「砂糖を混ぜて焼いてありますから、表面だけ焦げているんですよ」

 

「焼いたらケーキの色と同じになる感じ……あ、小麦粉が入ってないのか。 ヤギミルクがこんなものに……」

 

「小麦粉がないのはカスタードって言うんだよ? ソースにも使えるんだって」

 

いつの間にかアルさんから降りていたキロさんも参加して試食会だ。

大きめの器に敷き詰められてる茶色のソレ――プリンにクラウディアがスプーンを差し入れる。

焦げた表層の下が見えると。

 

「お~黄色い、薄い卵の色。これならわかるね」

 

「ふむ、見た感じよく出来ているな……待ちきれん」

 

「アンペルさんにはおっきく分けますね!」

 

「クラウディア。それ、多分4人分くらいあるんじゃないかい?」

 

「アンペルさんなら朝飯前じゃないですか?」

 

「寝る直前でもOKだ」

 

ここまで甘い物を食べてばっかで太らないのと虫歯にならないのがすごい……ズルいともいう。

まあこうやって拠点を持ってるとき以外は保存食とか、それこそ虫とかだろうし大丈夫か。

 

そしてまずはアンペルさんが一口。こういうのをする分には右手で問題ないんだよね。

 

「……いいじゃないか。ヤギミルクだからやはり少々癖はあるが、これはこれで良い」

 

「味と香りの癖は……やっぱりバニラが合うのかな?」

 

「……甘めの強い香りというと……扁平(へんぺい)の葉かな? クリント王国の者達が好んで採っていったけど、こっちでは希少なの?」

 

「その扁平の葉というのがバニラなら、僕はこっちで見た事がないですね。オーリムではそういう名なんですか?」

 

「最初は香りから名前を付けようとしていたらしいけど、それで大ゲンカになったらしくて葉っぱの見た目から名付けたって聞いた事がある。このへんは緑羽氏族(りょくばしぞく)が詳しい」

 

「そういうことでオーレン族もケンカするんですね……ケンカの規模が大変そう」

 

「バニラ……王都でもなかなか見なかった気がします。使っちゃうと完全に赤字ですね」

 

クラウディアはしっかり商売人モードだったよ。そりゃそうなんだけど。

あたしは全然違和感ないんだけどみんなにはクセがあるらしい。

聞いた感じ、バニラってのは独特かつ強い匂いの植物みたいだね。でもこの国じゃ高級品だと。

 

「味については、エルツ糖ではなく金や銀のハチの巣から作ったハチミツを使えば違和感はなくなるだろう。なぁにライザがいるんだ、何処からでも採ってくるさ」

 

「よろしくね! ライザ!」

 

「まさかの丸投げなの!? いやまあ、確かに素材としても優秀なんだけど」

 

銀はともかく金なんてめったに見ないんだけど? 素材採取はあたしの仕事だけどさ。

 

「こっちにはそんな色のハチの巣があるんだ? あちらは灰色だから比べると目立ちそうだね」

 

「香りの方は……ちょっと試しますか。アンペルさん、エルツ糖を頂いても?」

 

「ああ構わない。ストックなら大量にある」

 

アルさんがまた何か思いついたらしい。アンペルさんってエルツ糖が主食だったりしない?

もらったエルツ糖をプリンの上にパラパラと振りかけて――さらに甘くなったねコレ。

 

「キロさん。これ軽く炙れます?」

 

「軽くでいいんだね? ぶろぉ~いる」

 

「成程、フランベするわけか。キロ嬢がいるからこそだな」

 

軽く……のわりにはプリン全体に薄い色の火が灯ったけど誰も突っ込まない。あたしも突っ込まない。こんなもんなんだろう。

でもこれは――エルツ糖に火が付いてるのかな?

 

「フランベって、普通はお酒が入っていないと出来ないですよね?」

 

「ねえクラウディア。何のためにこんなことするの?」

 

「物が焼けると香りが強くなるから……お酒で香り付けしたり食材の臭み抜きに使ったりするんだよ。お肉料理なら表面を焦がして肉汁を閉じ込めるのにも使うね。あとは……料理のパフォーマンスかな?」

 

「じゃあフランベしたお酒をザムエルさんに渡せば!」

 

「それはもうお酒じゃないから効果がないと思うかな。そろそろ……ふっ」

 

あ~そりゃそうか。逆に酔えなくてキレられそうだ。

 

アルさんの一息でプリンに灯っていた火が吹き消える。

溶けたエルツ糖がプリンの表面だったみたいに茶色く……でもガラスっぽく固まったね。

なるほど、卵やヤギミルクの匂いを焦げた甘い匂いで覆ったわけだ。

 

「甘さ一色の香りになりましたね! 元々の材料にお酒を少し入れても良いしランプがあればフランベも。バニラほどコストがかからないですね。そうなると……問題はお酒の仕入れかな?」

 

「中々に仕事をしているなクラウディア。ではお先に一口……うむ、焦げたエルツ糖が良いアクセントになっている。プリンとはまた違う菓子と言えるがこれはこれでよい」

 

「じゃああたしも……香りのわりにほんのり苦いおかげで甘すぎないんですね。お菓子の上にエルツ糖を振るなんてどうなるかと思いましたけど」

 

「私はもっと苦くてもいいかな」

 

「割と原理が難しいんですよね、これって」

 

アルさんは香りと味の評価しませんか?

キロさんは昨日のマーポートーフといい――はっきりした味が好きな感じ?

となると、湖水の味付けじゃダメかあ。

 

 

ガチャン

 

 

「お邪魔します……やっぱりみんなここに居たんだ」

 

お、タオだ。一人でこっちに来たのを見るのは初めてだね。

 

「おや、タオか。お前も頂くといい」

 

「こんにちはタオ君。お菓子の試食を持ってきたんだ」

 

「こんにちはクラウディア、アルさん達も。お菓子の香りだったんだね……これってカラメル?」

 

「この茶色いの知ってるの?」

 

「読んだことがあるだけだけど、砂糖と水を混ぜて焦がしたもの……でよかったかな?」

 

「へえ。こちらに元々こういうものがあるんだね。流石タオだ、勉強になったよ」

 

「タオは博学」

 

「たまたま知ってただけですよ。じゃあ頂きます……苦くて甘い? 不思議な味だなあ」

 

島育ちのタオには最初のプリンの方が合うかもね。

しかし、元々こういう焦がし砂糖に名前があったんだ。料理は奥が深いなあ。

 

「そういえばタオはアンペルさんに用事?」

 

「それもだけど……まずは別件だよ。これをボオスから預かったんだ」

 

そういって――タオが鞄から取り出したのは一つの複雑そうな鍵。

ひょっとしなくても、あそこのか。

 

「ボオスもやるわね。厳重に守ってる場所の鍵をくすねるなんて」

 

「危ないことするなあ、ボオス君」

 

「ボオス、大丈夫なの?」

 

「持ち出し続けはマズいでしょうね。彼の依頼は鍵の複製かな」

 

「それだけボオス少年も本気だという事だ」

 

「ボオスが……工房が留守だったから投函しようとしてたところに遇って、預かったんだよ」

 

これは時間をかけたくない事だ。ちょうどいいタイミングだったわね。

 

「アンペルさん。インゴットと紙を頂いても?」

 

「好きに使ってくれ。これは手合わせ錬成をしないのかな?」

 

「精度が要る物ですから。手合わせでも出来ますけど念の為です」

 

そう言って、アルさんはサラサラと錬成陣を描いていく。紙に描くのはホントに久々よね。

オーリムで見たのは大きすぎてどんな錬成陣だったかわかんなかったし。

 

「錬成陣。魔法陣に似ているけど……文字というより記号。これが「式」なんだよね?」

 

「同じ現象を起こすにしても術者によって錬成陣は別物で、高度な術者ほど簡単な錬成陣で複雑な錬成を行えるんですよ。本人の理解に因るものが大きいですからね」

 

「じゃあそもそも錬成陣がいらないアルさんは……?」

 

「一応高度な術者に……入るのかなあ? 知る限り手合わせで可能なのは国に5人だけだったし」

 

そうだった。英雄枠だった――タオ、その辺は聞いちゃダメだ。

 

「もうイヤ……」

 

「ライザ、しっかり! 結構今更だよ?」

 

「良ければだが、アル君以外にどんな人が使えたのかね?」

 

「そういえば関係者ばっかりですね。兄さん、父さん、師匠(せんせい)、恩人、僕の5人です」

 

「流石エルリック家だね。6割が一族だよ」

 

1000万人に1人の逸材?

これでますますアルさんがぶっ飛んだ部類の人にカテゴライズされちゃったよ。

 

キロさんの言う通り――どうなってんのかなエルリック家? お母さんを除いて超人枠。

子供の頃にいなくなったお父さんが使えるあたり血筋とも言えそうだけど、お師匠さんまで使えるならまだ分からなくもない?

才能によらないって聞いたけど、一体何が理由なのやら。

 

喋りながらもサラリと錬成陣を描き終えた後は、インゴットの一部を手合わせ錬成で切り取って錬成陣の上に。

バチッ! って音とともに一瞬でもう一つ鍵が出来上がった。もう見分けがつかないよ。

 

「じゃあ……こっちの鍵はライザが預かっていてくれるかい?」

 

「あたしがですか?」

 

「うん。なんとなく……あそこの鍵を開ける役目はボオス君かライザだと思うから」

 

役目か……まあ確かに。

ボオスは確定。島のあたしたちも候補で、3人の中なら錬金術士のあたしが一番かな。

クラウディアとアルさんは島の出身じゃないし、アンペルさんはそもそも鍵を使わなさそうだし。

オーレン族の二人は鍵を破壊しそうだ……。

首から下げてちゃ丸わかりだから、帽子の中にでも仕込んどこうかな。

 

「この鍵を返しに行かないとね。僕は戻るとします。ライザはどうするかい?」

 

「あたしはまだここにいますね。アンペルさんと調合の話もしたいところですし」

 

「もう私が教わるレベルだと思うがな。ひと月少々でこの腕前は真に驚異的と言える」

 

またまたぁ。

 

「近くに目標が2人もいるとライザも張り切るよね。アルさんのはちょっと違うけど」

 

「逆に……アルさんの世界に私たちが行ったらどうなりそうですか?」

 

「魔法の概念があっちには無いから……この場の全員が今の僕みたいな感じじゃないかな?」

 

「アルの錬金術も見た目は魔法と大差ない。私もボオスにお礼を言いに行く、ついでにお昼」

 

「分かりました、偶には外で食べますか。それじゃあ行ってきます」

 

 

ガチャン

 

 

そう言って、アルさんとキロさんは拠点から島へ移動だ。

 

何というかキロさん――アルさんに懐いてる?

男だからどうこうって感じじゃないけど、キロさんにとってのアルさんってどういう枠なんだろ。

この世界の錬金術士じゃない錬金術師、光の加護持ち、異世界人、比較的見た目年上、オーリムを元に戻せるかもしれない人――属性が多すぎるなあ。

 

ちなみにキロさんだけど、島ではボオスの恩人扱いだから身動きは全く問題なかったりする。

見た目が目立つから「ああこの人か」って島の人にはすぐ分かるのよね。

こう言っちゃいけないけど……雰囲気がリラさんより近づきやすいし。

 

「鍵を入手できたという事は明日の晩にはご対面という所か。クーケン島に来た時に、まさかこのような方向へ進むとは思いもしなかった」

 

「あたしたちなんて少し前までただの悪ガキ扱いでしたしね」

 

「主に原因はライザなんだよなぁ」

 

「私も行商先でこんなにいろいろなことに触れられるなんて思わなかったよ」

 

「でも……あと半月くらいでなんとかしないと、だね。退屈な島だけど、こんな感じの日常がなくなるのはイヤだから」

 

島のみんなは今の状況を知らない。

話したところでどうなるとも思えない。最高戦力はここにいるし、出来るとしても引っ越しだ。

ただでさえ島から離れようとしないクーケン島のみんなだから……引っ越しは考えられないしね。

 

つまりは話しても取り合ってもらえないか、不安をあおるだけ……だと思うんだ。

だからあたしたちが頑張らなきゃ。

 

「戻ったぞ……ああ、クラウディアとタオも来ていたか」

 

「……うぃーっす」

 

「こんにちはリラさん」

 

「こんにちは……レントはきっちり扱かれたみたいだね?」

 

「あのでけえワイバーン、結構強えんだよ……。まだ避けきれねえぜ」

 

「目で見て避けるな。空気を感じろ」

 

「アレを相手にしてたの?」

 

旅人の道にいるどうみても一体だけ場違いなあのワイバーン(メガワイバーン)――ついに鍛錬相手になっちゃった。

レントもホントに強くなったよね、あたしたちがアイテムや魔法を使うのに比べて、レントはほぼ自分の身体頼りだもん。

 

錬金術で作った武器は、元々のあたしたちの実力以上に能力をアップしてくれる。

でも……限度はやっぱりある。アルさんリラさんキロさんは武器によらずとも強いもんね。

でもリラさんですら精霊を宿すんだし……あの規格外2人は別だね。

 

アンペルさんも戦えたらあたしに近い感じの遊撃か後衛だろうから、防御専門が他にいない。

タフネスさが売りのレントは最初のフィルフサの時も竜の時も身を挺すことになったんだし……あたしも鍛えた方がいいのかなあ。

 

「キロとアルはまだ森なのか?」

 

「とうに終わって今は島に向かっている。ボオス少年が古式秘具に通じる門の鍵を入手してくれてな。それをアル君が複製して返しに行っている所だ」

 

「僕はボオスから預かった鍵を届けにきたんです」

 

「私は新作のお菓子の試食をお願いに」

 

「へぇ、ボオスの奴もやるじゃねえか」

 

「あたしとおんなじこと言ってるわよ、レント」

 

まあ思う所は一緒よねえ。

まさかあんな事情が裏にあったなんて思いもしなかったけど。

仮にこの10年、あのまま一緒に遊んでたらどうなってたんでしょうね。

 

「では早くて今晩か、明日にはボオス少年の手引きがあるわけだな」

 

「アルさんがその辺りの話も聞いてあたしたちに伝えてくれると思いますよ」

 

「キロさんも島に行ってんのか?」

 

「ボオスにお礼と、そのままあっちでお昼だってさ」

 

「今までずっと同じものを食べていたと思うし、色々食べてみたいんじゃないかな?」

 

「私達オーレン族は食の重要性を身に染みて知っているからな。私はこちらに来てそれなりに経つからそこまでではないが、キロには一入だろう」

 

「この前イタチのローストにがっついていた奴のセリフとは思えんな」

 

あの時ね――スープを飲んでからメインを食べる。好きなものは後ろ作戦。

さてと、こっちもお昼時かな。

 

「今日のこっちのお昼はタオとレント担当? あたしたちこの前作ったし」

 

「マジか……ちぃと今は勘弁してほしいんだが」

 

「僕は構わないけど一人で6人分は時間がかかっちゃいそうだ」

 

あたしたちはともかく、アンペルさんたちのお昼を遅らせちゃうのはダメかな。

 

「まあさすがにキツいか。じゃああたしもやりますかね。レパートリー増やさなきゃだし」

 

「私も手伝うよ」

 

「クラウディアはいいよ? プリン作ってきてくれたんだし。キロさん向けの料理も考えないとだから」

 

「ほう? キロ向けの料理とはなんだ? 昨日のシン料理か?」

 

「あたしが思うに……分かりやすい味が好みなんじゃないかなと。苦いとか塩っ辛いとか」

 

「クミネの実とか食ってたんなら、キロさんもそういう別の物を食いたくなってんのかもな」

 

リラさんの食事情も聞いたしなあ。味わうってのを忘れてるのかも。

 

「それでライザは何を作るんだい? それに応じて僕もある程度は変えるけど」

 

「んー。前のアクアパッツァと似てるけど……アルさんから教えてもらったのを試しますかね。アンペルさん、野菜ってあります?」

 

「最近ここの側に畑を作ってな。ある程度は実がなっているだろう。それを使うといい」

 

いつどうやって作ったの? 地面をフラムで発破とかしたのかな……。

 

「分かったよ。じゃあレントは魚釣ってくれる? 狙いはサルディン(いわし)セリヨル(ぶり)。クラウディアはプルムル(巻き貝)をお願いできるかな。あたしは野菜の下ごしらえをしとくから」

 

「そんくらいなら大丈夫だ。待っててくれ」

 

「私も浜で拾ってくるね!」

 

「結局ライザは何を作るんだい?」

 

「ぶいやべいす? って名前のスープ。メインは塩味と、魚介の出汁ね」

 

「そっちがメインになりそうだね。じゃあこっちは麦炊きとサラダでも準備しようか」

 

「世話をかけるな」

 

「普段からお2人にはお世話になっていますから。このくらいはやりますよ」

 

ということでレントとクラウディアには魚介調達、あたしとタオで野菜収穫だ。

まさかここで農家じみたことをすることになるなんて。

 

 

 

「わりと色々栽培してるんだね」

 

「とりあえずノライモとツヴィーベル(玉ねぎ)クノープラウホ(にんにく)とクーケンフルーツってとこかな……あれ、クーケンフルーツって島以外で育つんだっけ?」

 

タオは麦炊きに、あたしは野菜の下ごしらえ、早速釣ってきたレントには捌くのをお願いした。

レントは釣り好きなだけあって捌くの慣れてるなぁ。習うのもアリ?

 

クラウディアも採ってきてくれたから――まずツヴィーベルとクノープラウホを炒める。

ホントは他にも入れるものが色々あるらしいんだけど、材料ないからここは妥協。

で、捌いてもらったサルディンとセリヨル、後はプルムルを一緒にいれて、さらにクーケンフルーツとノライモを入れて湖水で煮込む。

塩で調整してさらに煮詰めて……とりあえず完成、かな。

 

「やっていることは魚介の煮込みという所だが、やる人間がやるとちゃんと料理になるものだな」

 

「リラさんが作るとどうなるんですか?」

 

「まず「煮る」という事をしないぞリラは。基本「焼く」だ。もちろん捌くどころか鱗を取る事すらしない」

 

「生魚も経験したぜ。ものによっちゃそれなりにうまいんだが、まだ生臭さが慣れねえな」

 

「なんというか……レント君は強くなってるっていうより野生じみて来ていないかな?」

 

「生魚は虫が寄生してるらしいから、僕は絶対に生は嫌だね」

 

オーレン族の昔の生活だったり、旅し続けてることを考えると分かんなくもないけどね。

さてタオの配膳も終わったことだし。

それじゃあ。

 

「「「「いただきます!」」」」




最初の時点でのプリンはほぼカスタード液を蒸して固めただけです。
その上にキャラメリゼしているので、実際にはブリュレですね。
何故こっちにしたかというと、プリンが英語でブリュレが仏語だっただけです。

光魔法はしょっちゅう使う事はありません。
威力があり過ぎる上に発動の条件が面倒なので、
2人にとっては錬成と精霊魔法を使った方が圧倒的に楽なシロモノになります。

次のお話は……拠点からではありません。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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