ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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今回で前日譚は終わりになります。
次回からゲーム本編に突入です。
前話にも増して戦闘描写が難しい……。

今回もよろしくお願いします。


4. 11~16日目 訓練と恐怖の卒業試験

「大丈夫かい、ライザ?」

 

「はい。すみません……」

 

見た目隠してたつもりだったけど、秒でバレた。挨拶で丸わかりだったらしい。

「その状態でどこまで出来るかも把握しておかないとね」と舟を漕ぐアルさん。

 

今更だけど……荷物を持って、舟を漕いで、まともに魔物と戦って、採取作業をして、荷車を引いて、工房に戻ってからもお仕事してるんだよね? 加えてお昼の準備も。

ううっ、超人といえるアルさんと比べたとしても流石にちょっと情けなくなってきた。

 

だけど昨日の経験はちゃんと身に付いたのか、魔物と戦っても身体は自然と動いた。

 

今日はあたしもイタチや小妖精と戦った。

たしかにぷにより心理的に抵抗はあったけど、魔法をうまく使えば大丈夫だ。

アルさんから一つ一つ説明をもらって、魔物と戦って、採取をお手伝いする。

 

そんな日々を数日続けて、あたしも成長できたと思う。

一番分かりやすいのは。

 

シャイニートレイル(輝く流星群)!!」

 

新しい魔法を作れた事かな?

魔力の塊を正面に放つだけだったコーリングスターだけど、その魔力を魔物の頭上に放って、細かく分けて雨のように降らせる。

もちろん消費は大きいし制御も大変だけど、これなら複数の魔物相手でも攻撃できる。

 

「すごいじゃないかライザ!」

 

とっても多才だけど、魔法は使えないというアルさん。

それでも魔力の性質は勉強してるって事で範囲攻撃できる魔法について相談した結果、なんとか形に出来たあたしの成果だ。

 

「うん。想像以上だね、大したものだよ。これならライザの冒険もずっと安心かな」

 

アルさんのお墨付き! コレはヤバいねうれしいね!

 

「アルさんのおかげですよ。あたしじゃこんな使い方考え付きませんでしたから」

 

「アドバイスというか……アイデアは出したけど、それを物にしたのはライザの努力だよ。この短期間である程度の自衛が出来るようになって、体力もついて、新しい魔法まで使えるようになった。真剣に学ぼうとするライザの気持ちがここまでの成長に繋がったんだよ」

 

「ある程度なんですね……?」

 

「勿論強くはなったよ? だけどクーケン島の周りの魔物は弱い部類なんだ。でかぷにやオオイタチマザー、甲冑みたいな中型、大型の魔物は可能な限り避けるべきだし……あまり言っちゃいけないけど、西の洞窟にはゴーレムっていうタフな魔物もいる。過信はしちゃいけないよ」

 

という事は、アルさんは危険って言われてるあの洞窟に入った事があるんだ。

ロミィさんたちも近づかないっていう、地下に続いているらしい昔の坑道。

興味はあるけど、アルさんも危ないって事を伝えるために明かしてくれたんだから素直にね。

 

「それと。この1週間でライザはとても強くなったんだから、いつものつもりでレントにうにを投げていたらレントがケガをするよ。力を付けたからにはその扱いに気を付けてね」

 

「分かりました」

 

魔物相手の戦いを続けてたから当たり前みたいになってたけど、1週間前は魔物を倒すのも大変だったし、杖を補強してもらう前は魔法も戦いに使えるものじゃなかったもんね。

気をつけなきゃ。

 

そんな事を考えていた中。

 

「それじゃあ、今回の勉強の総仕上げなんだけど」

 

笑顔でアルさんはこちらに振り向くと――微笑ましい顔で。

 

 

 

「僕と戦ってみようか」

 

 

 

「…………へ?」

 

特大の爆弾を投下した。

 

 

 

「え、えええええええっ!? アルさんとですか!?」

 

「うん。そうだよ」

 

笑顔を崩さないアルさん。

 

「魔物の思考、考えってのは人に比べれば比較的単純だよ? だけど中には知恵が回る魔物も勿論いるんだ。ライザの攻撃手段、クセや魔法の内容も知っている僕を相手にどうやったら攻撃を当てられるか、どうやったら僕の攻撃を避けられるかを考えて立ち回ってみてほしい」

 

「勿論痛くはしないよ?」と武器を外していく。

 

たしかに大事な事とは思うけど――アルさん相手? 魔物相手より数十倍怖いんですが?

でもアガーテ姉さんとは組手してるって聞いたし、人同士で戦う場合もあるんだから。

痛くしないって言ってくれてるし。不安はあるけど、ここは胸を借りよう!

 

「~~んんんっ! お願いしますっ!」

 

「うん、それじゃあライザは本気で。いつでもいいよ」

 

距離は10メートル少々。構える事なく自然体で立つアルさん。

この1週間でお気に入りになった、くるくる回して杖を右側に構える動作でどうするかを考える。

 

ただの杖の打撃が当たるわけないわよね。攻撃手段はまず魔法。

でもただ魔法を放ってもおんなじ。ならやる事は!

 

「シャイニートレイル!」

 

魔法でけん制して、アルさんが避けたところを杖で狙う!

 

アルさんの頭上に飛ばした光弾を、降り注ぐように分散させる。

分散の時に光ったタイミングで左側に飛び退く……飛び退いたよね?

アルさんを追撃すべく、走って近づき杖を振りかぶり。

 

 

コツン

 

 

笑顔でおでこを軽~く小突かれた。

 

「ふえっ!?」

 

「考え方はいいけれど、僕はライザの魔法を知っているんだよ? 予想は付くさ」

 

そう言ってまた距離を取るアルさん。

振り上げてもいなかった右手が、いつの間にやらあたしのおでこに。

しかも全力疾走で近づいたあたしを、軽く小突く程度に。

 

いや、どう考えても当てるのムリじゃない?

 

「さあもう1回やろうか。次は僕も違う動き方をするからね」

 

さっきはシャイニートレイルを避けたけど、違うって事は先手必勝? やめてほしい……。

あるいは避ける向きが違うのかな。

 

他には……う~ん――ええい、ままよ!

 

「シャイニートレイル!!」

 

さっきより気合をいれて放ったシャイニートレイル。

光弾が頭上に留まっても、相変わらず動かないアルさん。

 

さあ、どう動くんです!?

 

だけど、今度はピカッと光ってもまだ動かない。

光の尾を引く魔力の雨がアルさんに向かって。

 

 

 

――アルさんが雨の中を縫うように正面から抜けてきた。

 

 

 

うそでしょ!?

 

「ちょっ!?」

 

「結構耳鳴りがするよ?」

 

一瞬であたしのすぐ右側に近づいて、一言呟くと。

 

 

 

ッキーーーーーーーーーーーンッ!!!

 

 

 

甲高い音があたしの耳に突っ込まれる。

 

「!!?? っんぅ!?」

 

「おっと」

 

背筋が寒くなる音を受けてよろめいたあたしの背中を、アルさんが軽く支えてくれた。

 

 

 

 

 

 

「う~~ん。まだ耳がキンキンする……」

 

「ちょっと近すぎたかな。ごめんよ」

 

言われた通りの耳鳴りと、ぐわんぐわんする頭を戻すべく屋根の下で仰向けに寝転がっている。

 

「さっきの何だったの? それにシャイニートレイルの中を抜けてくるって……」

 

「さっき使ったのは新しく作った「音爆弾」だよ。冒険用にライザに持たせる予定の物を弱めた試作品さ。シャイニートレイルは光弾の雨を降らせるけど、全てが同時に着弾はしないからね。よく見れば通れる道はあるのさ」

 

「原理は分かっても、あんなに速く動けないと思うんだけどね……」

 

アルさんには基本敬語を使うあたしだけど、頭がまだ戻っていない。

雨を避けながら突き進んでくるってなんなのよ……。

 

「魔物も含めて動物は僕達ヒトより耳がいい。野生環境で身を守る為や餌を捕る為にね。だから音にはずっと敏感で、爆音なら今のライザよりもふらつきやすい。本来の威力なら身動きが取れなくなっているだろうさ」

 

そのまま音爆弾とやらの説明をしてくれる。

この1週間、時間を取ってくれただけじゃなくてあたしの冒険のための道具まで作ってくれてたんだ。改めて頭が上がらないや。

 

そんなあたしの口から出たのは。

 

「威力ヤバ過ぎませんかね……」

 

身をもって体感した、新道具への感想だった。

 

 

 

 

 

 

やっと戻った耳と頭で舟に乗り、クーケン島へと戻るあたし達。

「命を守るための緊急手段だからね」とアルさんは音爆弾(こっちは本来の威力らしい)をプレゼントしてくれた。使う際には耳を塞ぐ事っていう、あたしが身をもって知った注意を添えて。

 

というか、新しい道具を作るってのは建前じゃなかったんだ。

出来た音爆弾は護り手の人たちの緊急用に渡す予定だって。考えてるなぁ。

 

 

 

表向き助手の最終日だからアルさんもあたしの家まで来てくれた。

魔改造された杖もあたしの手元だ。今度からは管理に気をつけなきゃね。

 

「ライザにはお世話になりました。お二人とも、了承頂きありがとうございました」

 

「力になってあげられていたならなによりだよ。その新しい道具っていうのは完成したのかな?」

 

「護り手の方々に緊急時に使ってもらうつもりです。もう少し調整して、という所ですね」

 

「そんな道具を作るのにライザが口を挟めたってのが驚きだよ」

 

「お母さんったら!」

 

あいかわらずの言われようだ。

この1週間はアルさんの下に居たとはいえ、農作業もちゃんとやってたじゃん。

道具作成に関して微塵も考えていなかったのは事実ですけどね!

 

少しお父さんたちと話をした後、アルさんは工房へ帰っていった。

帰り際、あたしだけに「それじゃあ気を付けてね」と耳打ちを残して。

 

 

 

 

 

 

「へええ。じゃあその新しい道具って大体完成したんだ?」

 

夕方。

久しぶりにあたしの部屋でレントとタオでダベった時のタオの第一声だ。

 

「もう少し調整するって言ってたけど、大体はね。何を調整するのかは分かんないけど」

 

「その予想が出来ないライザがアルさんのどんな役に立ったってんだ?」

 

「うっさいわよ。まあ身をもって体感したというか……」

 

いつものレントの口の悪さにムッとしつつも、正直分からないので素直に答えてあげる。

威力とかを調整するのかな?

 

2人には見せてないけど、音爆弾は手で握れるサイズの円柱形にピンが付いてる。

ピンを抜いて地面とかに投げて、衝撃を与えれば()()が起きるわけだ。

 

あたしが体感したよりも甲高い大きな音で。考えたくもない。

 

「1週間アルさんの側にいたわけだけど……仕事中ってどんな感じだったんだい?」

 

「なんというか……すっごい集中力、かな? やる時は全然休まずに作業を続けてたわよ。時間はきっちり守ってたけど」

 

素材採取の時はそんな感じだね。必要な素材を効率よく集めて、重たい袋を涼しい顔で運んでく。

それを休み無しに。だけど時間の区切りはちゃんとつけてたね――あたしがいたから?

現にこの1週間、午後3時を過ぎて家に戻った事はゼロだ。

 

「俺たちが知ってるまんまの人なんだな。ちょっとは知らねえ一面があるかと思ったんだけどよ」

 

「あたしがいたからかもしれないけど、グータラとかハメを外すとかは無いわね」

 

あえて言うならちょっとお茶目、なのかも?

しっかり勉強はつけてくれたけど遊び心もあった。

まさに勉強、とか訓練ってわけじゃなくて本当に充実していたのだ。

最後の模擬戦には面食らうばかりだったけどね。

 

そのままアルさんについてと2人の最近の状況について聞いて、その日はお開きにした。

 

 

 

さあ、準備はできた。

時期が来たらついに計画の始動――冒険の開始だ!




今回出てきた音爆弾は本作のオリジナルアイテムです。
手榴弾に某狩りゲーのアイテム機能を持たせたものと思ってください。

これで前日譚は終了です。次からはゲーム本編に入ります。
次回もよろしければ、ご覧いただければ嬉しいです。
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