ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
このお話もハガレンと関連があるなあと思っていたところです。
ここまで来るのに錬金術に触れて本作時間で大体一か月。早いのか遅いのか。
誤字報告ありがとうございます。あの文字数でもダメだった……。
今回もよろしくお願いします。
「ライザ、少し時間を貰えるか?」
「リラさん? いいですよ、どうしたんですか?」
お昼を食べた午後の過ごし方。もう今は夕方だ。
レントは相変わらず鍛錬。ホント鍛錬しかしてないわね。
タオはアンペルさんと古代文字関連のお話かな?
クラウディアはフルートの練習をしてる。最近は全く寒くなくなったね、すごい進歩だ。
そしてあたしがこっちで釜を借りて、アンペルさんから聞いたレシピを試してたらお声がかかったところ。
「ライザに一つ依頼したい事がある」
外に連れ出されて話をされる。何気にこう、リラさんと一対一で話するのは初めてかも?
「お願いごと、ですか?」
「ああ……アンペルの右腕の話だ」
デリケートな話題だ。気分を切り替えなきゃ。
「右腕が使えなくなった経緯は知っているか?」
「事故で神経がキズついた、としか……」
「……実際には事故ではない。故意に傷つけられたものだ」
え……?
「ライザも、この国で錬金術があまり出回っていないのは知っているな?」
「ええと、はい。クラウディアすらあまり知りませんでしたから」
だから、ロテスヴァッサ王国での錬金術士がどんな立場なのかも知らないんだよね。
「本当は私から話すべきではないんだが……王都アスラ・アム・バートにある王の宮殿、そこに仕える錬金術士達がいてな。宮廷錬金術士というらしく――アンペルは元々その一人だ」
「……アンペルさんが、王様に仕える錬金術士の一人だった?」
「
「そんな……」
じゃあそのケガは、身内に?
なんてことを……。
「アンペルにとってクリント王国の錬金術に対する認識は非常に複雑だ。ライザに教えているように便利な技とも、アルのように乱用すべきでない技術とも、オーリムにやったような事と自身への仕打ちから憎しみの象徴とも言える。だがお前達の成長と、圧倒的な力を持つキロとアルの存在、そして現状打開への可能性。これに思う所があるのか……最近右腕を見る機会が多くなった」
「アンペルさんも足掻かれている……ってことですね」
「歯がゆい、ともいえるな。だから私がライザに依頼したいのは……義手と言えばいいのか? その調合を試してもらいたいんだ」
義手。たしか、使えなくなった腕の代わりをなすもの。
アンペルさんの場合は全く使えないわけじゃないから、補助する方向になるのかな。
でも、義手を全く見たことがないあたしじゃ時間がかかりそうだ。
それに。
「……リラさん。アンペルさん、受け取ってくれるかな?」
「勿論ライザの言いたい事は分かる。そこは私が責任を持って説得する。ライザへの依頼は、私にとってのケジメでもあるからな」
そっか。なら受けない理由はないね。
もともと知らないことだらけだったんだから、今からでも勉強すればいい話だ。
「分かりました。出来る限り急いで作れるようにしますね」
「頼りにしている。本当に、もう一人前の錬金術士だな」
「全然そんな事ありませんよ。2人の「レンキンジュツシ」がすごすぎますから」
アンペルさんは調合技術に制限があるけど、知識量はあたしと比較にならない。
もう一人は文字通りの別次元――あちらの錬金術にも得手不得手はあるらしいけど。
キロさんがいるなら光のエレメントが使えるんだし、こっちの調合も出来るようになるかも。
「在り方は違いますけど複雑な道具って意味合いが強そうですから、アルさんにも相談させてもらっていいですか?」
「確かに絡繰りという感じだろうから、アルは寧ろ専門かもしれないな。事情は話してもらっていい。私が責任を持つ。あいつは色々と背負い過ぎていてな。私も……少しは肩を貸すべきだろう」
戦いのためのアイテムから採取のための道具、ついには義手かぁ。
でもグループ分けしちゃうなら、人に作られた「道具」には違いないよね。
すごいのは最初に考え付いた人だけど――と、桟橋に舟が着いた。2人が帰ってきたね。
「ただいま」
「遅くなったね」
「お帰りなさい、2人とも。ボオスには会えました?」
「工房の近くで待っていてくれた」
「変にブルネン家に行くわけにもいかなかったからね。助かったよ」
「ボオス少年も気を回してくれるな」
「ボオスも読み物があったみたい。本読んでた」
「アイツが単に暇つぶししてるとは思えないですし……他にもなにか分かりそうなことがあったのかな?」
このクーケン島で、おそらくだけど唯一錬金術に関する本がある家だ。なにか有ったのかも。
「それと案内してくれる時間も決めてきた。明日の……夜10時? こっちの時間の決め方はまだ違和感があるね、時差ボケってやつなのかな?」
「今のオーリムに夜の概念はないからな、何せあんな黒い太陽だ。日付が変わる少し前だな」
太陽は見えてなかったけど……オーリムはそんな状況なんだ。黒い太陽なんて想像もできないや。
こっちの日が沈むのは大体7時前。そこから3時間もあればほぼ消灯だね。
「今の時期でも10時なら大体みんな寝てますね。今全員いますし話すにもいいタイミングです」
「本当にこっちが拠点になったね。ライザも今はともかく偶にはカールさん達を手伝ってあげなよ?」
「は~い。夏本番になったらさすがに手伝いますって」
元よりそういう約束だしね。
うちの農場はそれなりに広いから、収穫に人手がいることはあたしも理解してますよ。
「ライザの家は何をしているの?」
「うちは麦農家ですよ。他のも作ってますけど」
「私は会った事がないが、ライザの親も島では名の知れた人物らしいな」
「同世代の方の中で……カールさんは頭脳派のトップでイケボ。ミオさんはレントの父親であるザムエルさんでも頭の上がらない世話焼きだったそうです」
「……子どもの頃からあんな感じだったんだ」
ザムエルさんですら頭が上がらないなんて、あれは筋金入りだったんだ――イケボってなに?
「明晩決行なのだな。ボオス少年が封鎖を解く手間を考えるならそのくらいか」
「ついにご対面ってわけか。水源がなにかなんて考えたこともなかったぜ」
「普通はそうだよ。古式秘具から……しかも異世界の水だなんて」
「島も昔は別に水源があったんだよね? なら他の場所も掘れそうな気がするけど……」
クラウディアの言う通りなのよね。
噴水があるくらいだから昔はそれなりに水が湧いてたはずなんだけど、実際には島の下の岩盤が硬すぎるという話。これは学び舎でシンシアさんから教えてもらったことだ。
ならどうやって水を得ていたのか。これについても全然話に上がったことがないや。
「地面の下の様子というのは、勿論だけど把握が難しい。局所的に柔らかい地層があったのか、亀裂が入っていた箇所があったのかもね」
「島暮らしというのも大変なものだな。流れの私達でも水の確保は重要だが、定住するとなると尚更か。さて……明日も何処かに一度集まるかね?」
「一昨日みたいに私の家に集まってもらったらいいですよ?」
「クラウディアの家……あの大きなお屋敷でよかったかな?」
「島外の人の受け入れが悪いくせに、なんで借家や空き家は結構あんだろな?」
「昔は違ったのかもよ? 今より人が少なかったらさすがにやっていけなかったんじゃないかな」
ということで明晩9時にクラウディアのお屋敷に集合。
あそこならトレッペの高台にも近いしね。
お母さんたちにも話しておかないと。
現金なことに、クラウディアの名前を出せばお母さんも寛容なんだよなあ。
「相談、かい?」
「はい。どんなものか知ってたら教えてもらいたくって」
アルさんの工房。
あれから島在住のメンバーはこっちに戻ってきたんだけど。
「晩ご飯」
という要望でキロさんもこっちにいる。完全にアルさんに胃袋つかまれてるなあ。
もうフードも取りっぱなしだ。こっちの初夏は暑いらしい。
さてと。
「義手ってご存じですか?」
「オートメイル?」
「あれは極端だよ。知っているけどそれがどうしたんだい?」
やっぱり知ってた。博学とはこのことだね。
「とりあえず、どういうものか教えてもらっても?」
「正確には
「あっちの技師は凄かったんだね。条件付きとはいえ元より強い腕を作れるなんて」
あっちっていうと……アルさんの世界?
「アルさんから聞いたんですか?」
「日中島に来た時にね。アルの幼馴染が義肢造りの専門家だったみたい」
「ってことは……10代前半でも作れるものなんですか?」
「それも極端だよ。ばっちゃんが居たとはいえ同世代の中では最高峰に違いない。兄さんでさえ修理不可能な代物だったし」
まぁたすごい幼馴染さんが出てきたもんね。
すごい人たちの側にはすごい協力者さんがいるものなのかな。
それにしても……今日1日でずいぶん仲良くなってるなあ。
おーとめいる? なんて聞いたことないぞ? アルさんの人柄なら分からなくもないけど。
「突然作りたくなった、なんて訳ないよね。依頼があったのかい?」
「……リラさんから、アンペルさんにって」
「義理堅そうだねリラは。ただ……アンペルは腕が悪いの?」
「普通に生活を送る分には問題ないみたいだけど、昔怪我をされて……高度な調合や戦闘は難しいらしい。リラさんがアンペルさんの護衛を最優先している理由だね。腕を無くされているわけじゃないっていうのはあるけど、元のレベルに使えるようにするのは医者の腕を治す領域だ」
「補助する」って一言で言っても程度の差があるってことよね。
日常生活からお仕事級、果てはお医者さんクラスの器用さを取り戻すまで。
こんな考えダメだけど、そんな腕が作れるようなら元の腕がいらなくなっちゃう。
思ったより難しそうだなあ……。
「僕も専門じゃないから簡単とはいかないけど、ライザよりは人の身体については詳しいだろうから協力出来るよ。後はこの世界の錬金術でどこまでやれるかだけど……大丈夫、ライザならやれるさ」
「ええぇ……」
「ライザはもっと自信持つべき。聞いたけど、まだ錬金術に触れてひと月くらいなんでしょう? 難しさは分からないけど、白牙氏族のリラの頼みという事ならライザは相当に信頼されているんだよ。自分の才能を信じよう? 私も出来る事は手伝うよ」
う~ん……。
この2人が言うなら間違ってはいないんだろうけど、実感がないなぁ。
自分で言うのもなんだけど、二か月前までただの麦農家の娘兼悪ガキ扱いだよ? 悪童とか。
今の状況も信じらんないことだったりするけど……。
まあ何にしたってリラさんのお願いでありアンペルさんのためだ。頑張るだけだけどね!
ただその前に。
ぐぅ~~~。
「お腹、空いた」
この人のお腹の音をなんとかしよう……。
「これ、いい!」
「
「香り付けの意味合いもあるんだ。あとは卵も入れて辛さをまろやかにってとこだね」
前回魚介を希望されたから、アルさんと一緒に作ってみた「エビチリ」なる料理。
ホントはもっと難しい名前らしいけど、それっぽいってことでこの名になったとのこと。
まさかクーケンフルーツとドーバンを混ぜると、こんな味になるなんてなあ。
シゾールの下拵えが大変っぽいけど食べ応え十分だ。
これも食が進むってやつね……体重に気を付けよう。
一番もっしゃもっしゃ食べてるこの人は太らないんだろうなあ。
完全にシン料理のトリコになってるよ。おそるべし、シン。
「けぷっ」
「行儀が悪い……」
「どんどん儚げだった印象が薄れますね……」
「美味しいのが悪い。ライザは私に夢見過ぎじゃないかな?」
「夢見るまでは言いませんけど、平然とゲップはザムエルさんレベルですよ?」
「会った事ないけど……レントの父親だったかな? どんな人なの?」
「キツい言い方をすれば少し粗暴な方ではあるね。腕っぷしが強くて好戦的なのもあるからお酒が入るとちょっと……てとこだよ。だからレントはザムエルさんと仲が良くなくてね」
「……粗暴と言われるのは抵抗があるね、気を付けよう。ただ、ライザは普段がそれっぽい」
「あたしがですか?」
「オーレン族の諺にこんなのがある。「動かなきゃかわいい」」
「ひどい!?」
かわいい認定はうれしいけど――動かなきゃってなんですか!
あたしは動くと粗暴だと? いやまあ、よくうにをレントに投げてましたけど。
「似たような諺があるもんだね」
「アルさんの世界にも?」
「うん。「黙っていれば美人」」
「発言で美人を打ち消すってどんなレベルですか……」
「お淑やかなリラって事じゃない?」
「……あー」
失礼ながら、わからなくもないかも?
キロさんが一人で8割ほどエビチリを食べてお粗末さまとなったよ。
この身体のどこにあれだけ入る場所があるのか。人体の不思議よね。
さて、その不思議についてアルさんから真面目な講義をしてもらう。
あたしたち人を含めた「動物」って言うのは、小さな雷の力で動けているらしい。
血管が血を送るものなら、神経は雷の力を送るものってことね。
あたしたちがご飯を食べるのはこの雷を自分で作るためってのもあるみたい。
アンペルさんの場合、腕が完全に使えないわけじゃないから神経が切れてしまっているわけではないけど、100パーセント伝えられる状態じゃないかもしれないとのこと。
だから作るのは――雷の力を増幅して神経の代わりに手まで伝える道具ってことかな。
ちなみにさっき聞いたオートメイルってのは骨や筋肉、神経までも絡繰りで再現するものらしい。信じられないよね、錬金術を使わないのに古式秘具ものじゃない?
「生体電気なんて極めて微弱だよね? そんな細やかな調整まで錬金術で出来るのものなの?」
「神経の代わりとしてバイパスする形が現実的ではあるかな。ただそれは、僕の錬金術ではかなり難しい。それこそこちらの錬金術の力が必要になるね」
「聞いた話である程度のレシピは。でも大本になりそうな……雷を生み出す素材ってのが必要そうですね」
雷のエレメントだから素材のベースはスタルチウムが使えそう。
あとは供給源……少なくとも現在の手持ちにはない。
「……それについては私が協力しようか」
「キロさんがですか?」
「高位の精霊の力を長時間借り続けるのは難しいけど、
「構造的に伝達が可能になっているかは僕で判断が付く。だからライザに作ってもらうのは雷の精霊を宿せる素材、つまりは超高品質のスタルチウムを調合してもらう事かな。形状制御は僕の錬成でもある程度は形に出来ると思うよ」
さすがの2人。
今この世界にいる分野別の頂点かもしれないし、作れないものなんて多分ないよね。
でも、ここは――違うかな。
「……申し出はとってもありがたいんですけど、あたしにやらせてもらえませんか? なにが必要か、どんな構造じゃなきゃいけないかは2人に教えてもらえたんですから、作るのはあたしがやるべきだと思うんです。依頼を受けたのはあたしだし、あたしが前に進むきっかけをくれたアンペルさんのことだから……今度はあたしがアンペルさんに進んでもらうための物を作ろうって」
この世界の錬金術士で、アンペルさんの弟子で、リラさんから直接依頼を受けたあたしが、ね。
さすがにどうしようも無かったら――時間もないんだ。そこは頼ることになるかもしれないけど。
まずは出来ることを自分で探して、試して、考えて、形にする。それをしてからよね!
「……ウィンリィ?」
「そんな感じに見えるかい?」
「大分マイルドなのと、関係性が違うってのがあるけど。芯の強さは近いんじゃない?」
「僕としては3人組の中でのポジション枠に近いものを見てるけどなあ」
「……? ウィンリィって、人の名前ですか?」
「さっき言った幼馴染のオートメイル技師だよ。必要なら平然と無茶するところはあったかな」
「アルの初恋にして、初の失恋相手」
「ちょっと!?」
うお!? なにそのトンデモ情報!! ロミィさん垂涎物ですよ!?
「女の人なんですか!? しかもアルさんの初恋の相手……ちょっと詳しく」
「本人の目の前で勘弁しておくれよ。キロさんも今の説明要った?」
「現にライザのやる気がアップした」
「どう考えても別の方向じゃないか!」
この2人の関係――おもしろい。こういうのは初めて見た。
対等に近い。アルさんをからかえる人は島じゃ見たことがないよね。
アルさんも敬語じゃなくなってるし、昼間何かあったのかな? いいことだろうけど。
「ライザも興味があるなら、今晩クラウディアのおうちにお世話になればいい」
おお! これはウワサに聞いた!
「女子会ですね!? 絶対行きます!」
「……あの時に少しは怒るべきだったのかな? 今のうちかな?」
「お、DV? 甘んじて受けるけど」
「君の知識はホントにどこから来ているんだい? はぁ……」
間違いなく日中に何かあったみたいだね。
キロさんもそうだけど、アルさん側からこういった気安さを感じるのは珍しい。
その辺りも聞けるのかな?
それと真面目な話、雷の供給源……昨日見た
ライザの父、カールの中の人はグリリバさんです。そりゃイケボですよ。
シゾールってシザリガニが語源でいいんですよね? これだけ日本語……。
まあ見た目はロブスターです。エリプス湖すげえ。
さて本作におけるキロがどういうキャラか大体お分かりいただけたと思います。
基本的にこのキャラ付けです。設定はそのうち。
よろしければこのままお付き合いください。
錬金術では難しそうですが錬丹術ならどうなんでしょうね? 使いませんが。
何にしても、ライザは簡単な道を選ばず自分で作る道を選びました。
原作通りといえばその通りですが、こういう表現もいいかな?
次は女子会です。実際にどんなものか知りませんが……。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。