ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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女子会です……そのつもりだったんですが。

大侵攻直前と思えないですが、張りつめ続けはライザも作者ももたない。
なによりライザにとっても初の機会ですし。

誤字報告ありがとうございます。
この場で解説しますが前話の「医者の腕」の話は
「医者が怪我した場合にまた腕を振るえるレベルまで治す」という意味合いです。
分かりにくくて申し訳ないです。

今回もよろしくお願いします。


41. 69日目④  「秘密」の二つ名をあなたに

「そんなことがあったんだね」

 

「あんなアルさん初めて見たよ」

 

「2人がアルをどう見ているのか分からなくもないけど、アルも普通の男だよ」

 

クラウディアのお屋敷のリビングで茶を頂いてるあたしとキロさん。

あれからこっちでお世話になることをお母さんたちに伝えに行って、戻ってきたところだ。

 

工房を出るとき「変なこと教えないでよ?」とアルさんが釘を刺すくらいだから、キロさんは相当知ってるみたい。

もともとアルさんが何者なのかあたしたちよりも詳しいくらいだしね。不思議じゃないか。

 

「あの辺のお話、キロさんはアルさんから直接聞いたんですか?」

 

「そうだとも違うとも言えるね。勿論タダにはしなかったけど」

 

「……? アルさんのルーツ探しに関する協力とかですか?」

 

「それもあるけど……対価として私から一方的に契約を結んだ。正確には宣誓かな」

 

約束事……かな? あたしが乾季に農作業に戻るとか。

 

「契約……私たち商人の間では最重要になりますけど、キロさんは霊祈氏族――神官さんなんですよね? 神への宣誓なんて、相当に重いんじゃ……」

 

「間違ってはいないかな。一方的な宣誓だから破ったら代償がどうこうじゃなくて、私が破らない為のもの。もし破られる事があっても、何らかの形でそれに近い事を実行するよ。周りがどうなろうともね」

 

シャレになってない。単なる約束ってレベルじゃないよ……。

 

「そんな……なんでそんなことを?」

 

「それだけの事をしでかしちゃって。アルは重く考えていないみたいけど、故意でないとはいえやっちゃいけない事をね。その対価としてあの門を閉じるまでの間、私はアルへの服従とアルを必ず守る事を精霊に誓った。ここに来る前に「変な事喋らないように」って言われたでしょ? だから少なくともアルが認知している――ここでの会話でアルにとって話されたくない内容は口に出来ないよ。アルには言わないでね? 絶対に気を遣わせちゃうから」

 

具体的には分からないけど、単に()()()なんてもんじゃなかったんだ。なんて代償を……。

あたしをここに誘ったのはそれを伝えるためだったんだ。

これは重いなあ。どう扱えばいいんだろう、想像してなかったよ――だって女子会だよ?

 

「まあアルの事だからそうそう変な命令が出る事はないだろうけど……仮にアルが自ら身を張るような事になった場合、私には止める手段がない。寧ろ協力する形になるかな」

 

「……それも思い当たるフシが?」

 

「そうだね。これも内容は話せないけど」

 

「カンベンしてくださいよ……」

 

アルさんが無茶しそうな時に止められそうな数少ない一人が……逆に妨害側に回るかもってこと?

もちろん無茶なんてして欲しくないけど、アルさん自身がそうせざるを得ないって判断した時に止めるのは至難のワザになった。なによりキロさんと戦うなんてことしたくない。

アルさん自身がこの宣誓を知らないのが幸いだ。それこそ身を挺して破棄に走りそう。

 

「だからそうならないようにお願いするね。知っていると思うけど「誰かを守ろうとする時に」がキーワードだよ」

 

「「わかりました」」

 

ずいぶんな事実を聞くことになっちゃった。

でもその分あたしたちが強くなって、注意して、アルさんを心配させなければキロさんに悪いこともそう起きないはずよね。

期間はあの門を閉じるまでの間だけだから――早く問題を解決できれば、だね。

 

 

 

「さてと、重い話から始めちゃってごめんなさい。さっきの通り変な事は言えないけど、それに抵触しない範囲なら話せるよ? ダメな内容はそもそも発声出来ないから」

 

この雰囲気から女子会開始なんですね? ……いや、女子会ってこういうものだったんだ。

まあ当のキロさんがそう言うならいいとしよう。

 

アルさん自身について……は聞きにくそうかな?

なら、まずこれから。

 

「じゃあ、工房で話に出てたウィンリィさんについて聞いて良いですか?」

 

「ん。アルのお兄さんのお嫁さんだよ。2人の幼馴染で、ライザとレント達の関係に近いね。家業がオートメイル技師だったからそれを継いだ感じかな」

 

「おーとめいる……ですか?」

 

「ライザには少し話したけど、あっちでは機械鎧とも言われる義肢の一種だよ。とても複雑な絡繰りで腕や脚の機能をほぼ完全に再現できる道具」

 

「物を掴める程度でもびっくりするくらい高価ですけど、ほぼ再現できるなんて……」

 

「アルさんの世界はよっぽどそういった分野が発達してるんですね。お兄さんの奥さんだったんですか」

 

排水ポンプもそうだけど、あっちは魔法の要素がなくても出来ちゃうことが飛びぬけてるね。

あたしが、レントやタオと結婚? ……無いわね。想像外とかそういうレベルじゃなくて。

 

「英雄たるエルリック兄弟の側にいただけあって、彼女も相当な経験をしたみたいだね。2人に話せる範囲だと……15歳くらいで出産に立ち会って、赤ちゃんを取り上げているのかな」

 

「……すごい」

 

「何をすればいいか全然分からないですね……15歳で」

 

全くどんな光景か知らない。とにかく大変ってことだけは知ってるくらいだ。

 

「御両親が医者だった事もあって少しは知識があったみたいだね。とはいえ、私もこれだけ生きてきて経験がないし……知っていたとして立ち会った所で出来る事が無さそうなのは一緒かな」

 

「ご両親がお医者様ってことは、ウィンリィさんはご親戚の方の後を継がれた感じですか?」

 

「お祖母さんだね。この人はオートメイル技師でも医者でもあるよ。まだ現役だから師匠かな」

 

「うっはぁ……」

 

どっちも手先が超器用かつ身体のことを知ってないと出来ないだろうから、それで両立出来てるのかもしれないけど片っぽだけでも出来る気がしないや。

ウィンリィさん自身の度胸もハンパない。母子の命が自分の手にかかってるなんて。

そういえば。

 

「お兄さんはアルさんの一つ上なんですよね? じゃあ21歳で結婚を?」

 

「時期は私も知らないね。少なくともその歳には結婚していた事になるけど」

 

「あちらは早いんですね。私のお父さんが20代後半なのと比べると」

 

「うちは……もうちょっと早いのかな? あたしが生まれたの、お母さんが23の時だし」

 

「私達だと200はまず超えるけど、アルが生まれたのが……ええと、アルのお母さんが22の時? それを思うとあちらは早いのかもね」

 

お兄さんが生まれたのが21、なら結婚されたのはさらに前になる。わっかいなあ。

今のあたしから2、3年後? 少なくとも島の外に探しに行かないとダメだわ。島民は論外。

それと、オーレン族はやっぱり基準があたしたちと違うみたいだ――200って。

 

「ウィンリィさんについてはこんなとこかな?」

 

「ありがとうございました。心の強いお方だったんですね」

 

「それじゃあ、次はアルさんのお兄さんについて聞いていいですか?」

 

英雄さんでとんでもない人だとは知ってるけど、名前すら知らないのよね。

 

「アルから直接話を聞いてもいいと思うけどね、多分色々話してくれるよ。名前はエドワード・エルリックさんで通称はエドさん。12歳で国家錬金術師になった「鋼の錬金術師」の二つ名を持つ文字通りの天才さんで英雄さんだよ。性格は……アルと結構違うみたいだね」

 

「島のお医者さんと同じ名前なんですね。性格はアルさんから聞いたことあるなあ……ケンカっぱやくて女性にモテなさそう、でも信念を曲げない人だって……12歳?」

 

「その「二つ名」というのは?」

 

「資格を取って軍属になった際、国から直々に貰う称号みたいだね。それぞれの得意な錬金術から名付けられるみたい。エドさんの場合は金属の錬金術が得意だったみたいだよ」

 

最年少とは聞いてたけど――12歳? 完全にまだ子どもだよね?

あたしの12歳の時なんて……あれ、もうこの頃には工房に入り浸ってない?

 

旅の時期の話を整理し直したとしてもホントに若い。タオよりさらに3つも下。

ボオスも言ってたけど、天才かつ並大抵じゃない勉強をしたんだろうなあ。

 

……あ、そうか。

 

「「(はがね)」って、そういうことだったんだ」

 

「ライザ?」

 

「んああ、ごめん。前にアルさんから金属の説明をしてもらった時に、「鋼」には思い入れがある感じで説明してくれたから。お兄さんのことだったんだなあって」

 

「思い入れがある言葉だろうね。なにせエドさんの代名詞だから」

 

「でも……アルさんが国家錬金術師じゃないのはなんでなんだろ?」

 

聞いた限り、国の上位5人相当だもんね。よっぽど難しかったとしてもアルさんなら取れる気がするよ。

 

「その資格を得る事は、プラスが多ければマイナスも大きいって事だよ。アルの場合はエドさんが資格を取った事でプラス――まあお金とか特権が得られたんだね」

 

「じゃあマイナスが大変ってことですか」

 

「アルの生まれたアメストリスが軍事国家で、各方面と半戦争状態だったのは聞いたよね? じゃあ……国軍に直々に所属していたエドさんはどうだったと思う?」

 

まさか。

 

「……錬金術師の兵隊、ですか?」

 

「聞いていないけどそうだと思う。今のアルに対する私のように、国に逆らえないんだよ」

 

そうだ、お兄さんは軍属って聞いてた。

なら戦争時には真っ先に戦地に向かうことになるよね。

 

賢者の石を探す旅の資金とか特権のために……アルさんを守るためにお兄さんだけ軍属になったんだ。12歳という若さで。

とんでもない世界観の違いだ。今ならボオスの説教を正座で聞けるかもしれない。

 

「あと話せるのは……国で起きたごたごたに兄弟揃って巻き込まれて、決着を付けたのがエドさんという事だね」

 

「ずいぶんざっくりされてますけど……戦争を止められた感じなのかな?」

 

「国の人たちの命を救ったんだから、そんな感じだよね。多分」

 

救国の英雄。なるほど、そのまんまだね。

アルさんの世界の賢者の石は不可能を可能にする道具。そして実在していたもの。

戦争が絡んでいてもおかしくなさそうだし、その過程で巻き込まれたのかもしれないかな。

 

 

 

「ところで二人に提案。アルに二つ名を付けようと思う」

 

なんだかいきなりですね?

 

「アルさんにですか?」

 

「レント君とか喜びそうだよね、二つ名」

 

「さっきの話の通りアルは二つ名を持ってないけど、持っていて全く問題ないレベル。だからこちらの世界の錬金術師として付けようかと思って」

 

「キロさんもそういうの好きなんですか?」

 

「ううん? 私は特にないよ。ただアルからはあちらを戻せる希望とかマーポートーフとかエビチリとか……貰うばかりで何もあげられてないからね。宣誓は別として何かないかと」

 

「食べ物のほうが数が多い……エビチリって知らないですね?」

 

「さっき食べたばっかだからね。クラウディアも今度一緒に作ろうよ」

 

ん~、アルさんの二つ名かぁ。

代名詞的なものとしても――アルさん自身があまりに万能すぎて絞れない。

 

道具作り自体は錬金術と同じだし、異世界っていうのを前に押し出すのもね。

お兄さんは金属が得意分野。アルさんは……金属もだけど土とか岩とかが多い?

なら、例えば。

 

「大地の錬金術師、とか? ねえキロさん、他の二つ名で聞いてるのってあります?」

 

「ん~と……「(ほのお)」「豪腕(ごうわん)」「紅蓮(ぐれん)」「氷結(ひょうけつ)」とかかな? 「炎」じゃなくて「焔」らしいよ」

 

「「豪腕」は見た目なんだと思いますけど……「焔」と「紅蓮」ってイメージが近いですね」

 

「クラウディア、「ぐれん」ってなに?」

 

「赤色のことなんだけど、元はお花――曼珠沙華(リコリス)の色だね。これも火に例えられるんだよ?」

 

名付けた人はなにをもって名付けたんだろう……。

 

まあ形はなんでも良さそうだけど「大地」はざっくりしすぎてる?

それを言ったら「鋼」や「焔」もそうだけど、錬金術で「焔」って何? 誘引火瓶的な?

「たいさ」さんってこれだったりする? キロさんの魔法並みの錬金術……ヤバイわね。

 

「結構さっきの「大地の錬金術師」って良くないですか?」

 

「そうだね。割と地面を錬成している事が多いみたいだし良いのかも」

 

「「料理の錬金術師」はどうですか?」

 

「アルの料理が美味しいのは事実だけど、錬金術は使ってないからひょっとすると失礼かな?」

 

「そうですね……反省します」

 

錬金術に出来るだけ頼らないアルさんには合わないかもね。でも。

 

「難しいなあ。アルさんを一言で表すとなると……キロさんはどう思ってるんですか?」

 

「昔話を聞いたうえで……まあこれしかないっていうのがあるから。この相談は元々それを超えるイメージがないかと思って」

 

「そんなに明確にですか? 思い当たらないですけど……」

 

「とりあえず聞いても?」

 

「鎧」

 

「「……あ~」」

 

工房に置いてあったり、オーリムでも最初に錬成した鎧――オーガヘッド。

あたしたちは毎日顔を合わせてるわけだけど。たしかに島で唯一だね、あの鎧。

 

どう見ても人が着るサイズじゃない変わった鎧だけど、アルさんは愛着があるらしい。

たしかにアルさんが明確に――好きとかそういう感じの物はアレしかないかもしれないわね。

 

「昔話を聞いた上ってことですけど、アレが何なのか聞いてるんですか?」

 

「元々はアルのお父さんのコレクションだったって事、までかな。話せるのは」

 

「ということは……あの鎧を何かに使ってたのかな?」

 

「ここから先がアウトってのが全然分かんないけど……」

 

鎧というのも分からなくはないんだけど、二つ名と呼ぶまでには至らないなあ。

キロさんが話せるのがここまでなら、そのうちアルさんに聞くとしましょうか。

あ……そっか、いっそのことこういうのもアリ?

 

「あたしもあの鎧について今度聞いてみよっかな。さっき思い付いたんですけど……「秘密」ってどうです?」

 

「秘密の……錬金術師?」

 

過去の経歴も、錬金術師である事も、何ができるのかもほぼ「秘密」の状態。

「錬金術士」じゃなくて「錬金術師」だって事もあたしたちだけが知ってる秘密だし。

なら、全部まとめてこれを二つ名にしちゃえばいいんじゃないかな?

見た目や色も二つ名にできるんなら、経歴や佇まいでもいいよね。

 

「秘密の錬金術師……お~結構いいかもしれない。今のアルには合うかも」

 

「ぴったりだよライザ! じゃあせっかくだしライザの二つ名も考えようよ!」

 

「うえっ!?」

 

「そうだね。未来の大錬金術士の称号を考えるとしようか」

 

「あたしはそんな大層なものじゃないですってば」

 

まさかあたしにまで二つ名が付くかもだなんて……そんなガラじゃないよ?

クラウディアはともかく、キロさんのセンスは未知数だからなあ。

 

アルさんが一番それっぽいのを付けてくれる気がする。他の二つ名も知ってるだろうしね。

ただ……せっかく二人が付けてくれるというなら、それに期待しましょうか。

 

 

 

他は他愛無い話に変わってくれた――女子会ってこういうもんよね!

 

クラウディアが言うには……あたしは女らしさを表に出すべき、ですと?

つまりあたしは女に見えない、ってこと? わりと衝撃的な事実だ……。

キロさんもうんうん頷いてる。そうすればもっと男が寄ってくると。

 

どうしよう、全っ然興味がない……。正直寄ってこられても面倒な未来しか見えない。

今まで散々悪童だどうだって言われてきたんだし、アルさん以外はほぼ気にならないなあ。

レントやタオはあり得ないし、ボオスやランバーに言い寄られたら殴り飛ばしそうだし。

子どもたちに言われるのは結構刺さるだろうけどさ、ジェナとか。

 

まずは服装から? 夏はほぼコレなんだけど。何なら冬のインナーも。

う~ん、機会があったらあの服引っ張り出すか。でも、あれスースーするんだよねえ。

 

 

 

案外こういったことにキロさんは強いみたいだ。

精霊と意思疎通するように――お話には慣れているのと、会話に飢えているらしい。

ずっと1人だったんだもんね。次はリラさんも含めて開催しましょうか。




女子会とは一体?

ライザ達に対するキロの立ち位置を明確にするためのお話でした。
こんな感じに、アルが話していないハガレン世界に関する事を解説するポジションを担います。
アルが知らない事を知っているような事にならないかが心配。

そしてアルが秘密シリーズの名を冠しました。
これはこの世界での名を得たって感じですね。

次の日の夜にブルネン家の門が開きますが、
次はその日の日中のお話です。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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