ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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女子会? から明けて、今度は女子旅? です。
ストーリー進行にはあんまり関係ないですね。
おかげでアルが全然出てこない。

今回もよろしくお願いします。


42. 70日目①  オーレン族のクーケン島周辺旅行

ベッドの寝心地が良すぎるわね、このお屋敷。

1時間くらい寝過ごしちゃった。もう6時、外は十分に明るくなっちゃってる。

 

起きた時の景色が自分の部屋じゃないのは新鮮だね。

子どもの頃にシンシアさんのとこに泊まったくらい? あの時は遊び過ぎたなあ。

 

「……う、ん」

 

同じ部屋で寝ていたキロさんはまだ夢の中。

というか、アレよね。

オーレン族って、みなさんそうなんですね……。

 

 

 

「おはよう、ライザ君」

 

「おはようございます、ルベルトさん。昨日今日とありがとうございました」

 

「なに、私はここを借りているに過ぎない。こちらもクラウと良い関係を築いてくれて嬉しい限りなんだ。君にはゴールドコインの取引をさせてもらっている恩もある」

 

「その分貴重な素材を頂いているんですからそこはお相子ですよ。クラウディアと一緒にいるのもあたしたちが居たいと思ってるからですし」

 

ホント、ルベルトさんが取引してくれる素材は貴重なんだよね。なにせアンペルさんですら入手元が分からないっていう。

 

「私の様に頭が固くなってしまった父親ではなかなか娘の望みというのが見えないものでね。君達のような同年代に出会えた事は本当に僥倖なんだよ……そういえばもう一人の、キロ・シャイナス君と言ったかね?」

 

「はい。キロさんはお友達というよりは、リラさんのご同郷で大人の方ですけど」

 

「同郷、か。王都で彼女達に似た方を見た事があるものでね」

 

「えっ!?」

 

2人以外にもオーレン族が?

 

「銀に近い髪の色、不思議な瞳の色、特徴的な服装となかなかに印象深い女性だった。何度かすれ違った程度だが」

 

「へえぇ、聞いたことないですけど同じ出身なのかもしれないですね」

 

リラさんみたいに、門からこちらに来たオーレン族の人が居てもおかしくはないのかな?

2人に聞いたら知っている人だったりする? オーレン族っぽいこと以外に特徴がないけど。

 

「さて……この島の方々は朝が早いから、聞いて回る分にはこの辺りの時間帯が都合がいいようでね。私はそろそろ外回りに出てくるよ。ゆっくりしていってくれたまえ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

ルベルトさんがここに来た一番の目的はクーケンフルーツの販路確保だけど、ここに来る機会はなかなか無いってことで他にも取引できるものがないか島を回ってるらしい。

あたしがいないときにお父さんたちとも話をしてるらしいし。

 

「おはようライザ。やっぱり朝が早いんだね」

 

「クラウディア、おはよう。これでも寝坊だよ? ルベルトさんはもうお仕事に出られたし」

 

クラウディアも起きてきた。もういつも通りの格好だね。

 

「元々遅いってことはないんだけど……お父さんも島に来てから随分と早起きになったんだよ。今は大体夕方以降しか顔を合わせることがないくらいだし。キロさんはまだお休みかな?」

 

「うん、まだ寝てるね。今までゆっくりと休めることなんてなかっただろうし、起こさないであげよう」

 

たった一人でフィルフサが闊歩する世界を戦い続けてたんだから。無警戒に寝れる時があったなんて思えないしね。

 

 

 

「あっつい……」

 

キロさんが起きてきたのは9時頃。涼しい時間はとうに過ぎてますよ?

 

ネグリジェを着て汗ばんだ様子のキロさん。半分歩く凶器と化してる……主に男性陣に。

一番会わせちゃいけないのは……ボオスかな。立ったまま気絶しそうだ。

 

「まだ朝なんだよね? なんでこっちはこんなにあっついの……?」

 

「もう陽が昇って5時間くらい経ってますよ。一応ここに来て4日目ですよね?」

 

「キロさんの世界には四季はなかったんですか?」

 

「こっちに来てからもほぼ寝ていないよ、壁にもたれて目を瞑っているだけ。四季はあったけどここまで暑い季節はないかな。寝起きっていうのは起きっぱなしと随分違うね、私の服で寝ていたら大変な事になっていたよ。無意識に氷の精霊の力を借りていたのかな……どのくらい寝てた?」

 

「寝てなかったんですか!? 10時間くらいだと思いますけど……」

 

「……半日近い? そんなに寝たのいつ以来なんだろう?」

 

「眠れなかったんですか?」

 

「寝床はアンペルに譲っていたし、弱い気配とはいえ魔物の数が多いあの森で警戒を解くのはムリ。数日不眠不休なんて珍しくもなんともなかったから……まあ、アルに比べればなんてことないけど

 

一種の職業病だね……何か呟いた?

とりあえず湯浴みして着替えてもらって、朝ご飯を準備しよう。

キロさんならこの時間に朝ご飯を食べても……お昼もしっかり食べれるだろうし。

 

「夜の予定は決まってるとして、2人はそれまでどうするの?」

 

「ん~、いつも通り錬金術か」

 

「お菓子作りの練習でしょうか? あ、私近いうちに小さなお店を開く予定なんですよ?」

 

「それは……お金を稼いでこないとだね。どうしようかな」

 

状況は変わってるのに、やることは変わんないなあ。

 

レントたちみたいに訓練するのもいいんだけど、あたしの場合はそれで身に付く力より錬金術の武器が引き出してくれる力の方が圧倒的に多いと思うんだよね。

女王と戦うことになったとして、みんなの武器がいい物であることに越したことないし。

 

アルさんのお手伝いがあればそっちをするんだけど……今は義手の話もあるから。

 

「もし時間があるなら、私に付き合ってもらってもいい?」

 

「キロさんにですか? いいですけど、何かやりたいことでも?」

 

「ん。この辺……といっても対岸側だけど、見て回ってみたい。観光している場合じゃないかもだけど、次にこっちに来れるのがいつになるか分からないし、ちょっと知っておきたい事もあってね」

 

「キロさん……」

 

そう、だよね。

 

全部解決したとしたら――キロさんは勿論オーリムに帰るんだろうけど、リラさんは多分他の門を探して閉じる旅をアンペルさんと続ける。

フィルフサが居なくなって、水が戻って、自然が復活しても……オーレン族は帰ってこない。

また一人っきりになっちゃうんだから。

 

それにクラウディアも……ルベルトさんのお仕事が終わったら島を出ることになっちゃう。

一緒に居られる時間はそんなにないんだよね。

 

ならば!

 

「……よっし! じゃあメイプルデルタから火山、古城まで全部回りましょうか!」

 

「クーケン島周辺ツアーだね!」

 

「完全に観光のノリだね。でも……ありがとう」

 

やるなら、思いっきりやらなきゃ!

――だって今晩、また世界が変わってしまうかもしれないんだから。

 

 

 

 

 

 

「それで私も一緒に、か?」

 

「はい! こんな機会、次はいつになるか分かりませんし」

 

「どうでしょうか?」

 

「……まあ偶の息抜きは必要か。単に回るだけにはならないだろうしな。それにキロと話をする時間にもなる」

 

「ありがとう、リラ」

 

「私こそ、だ。キロの話を聞かせてくれ」

 

せっかくだから、女性陣のみでパーティーを組むべくリラさんに声をかけた。

もちろん出かける事はアルさんに話してある。変にキロさんに指示が入らないようにあたしだけで話して、夕方には戻る約束でね。

 

回る順番は朝言った順番でいいかな?

ここから古城に行くのはなんか違う気がするんだよね。

 

 

 

「メイプルデルタ……楓の三角州? でいいのかな?」

 

「意味がある言葉だったんですか? カエデって植物の名前は聞いてましたけど」

 

「三角州というのは川の河口に広がる地形で、文字通り三角形の砂地の事だ」

 

「楓の樹液はシロップにもなるんだよ? ハチミツほど甘くないんだけど」

 

「楓は紅葉が有名だからそういう色の樹を纏めて「モミジ」と呼ぶ事もある。こっちでも同じなのかもね」

 

たしかにあそこの樹々は今の季節でもどの樹でも全部紅葉してるもんね。

そういう景色を全部ひっくるめて「メイプル」と呼んでるのかも。

 

しかしまあ。

 

Uri.」

 

「ふっ」

 

オーレン族の2人、強すぎない? 戦士なんだから当然っちゃ当然だけど。

あたしとクラウディアもそれなりに強くなったはずなんだけど、あたしがアルさんに訓練を付けてもらった時のごとく目に入った時には攻撃が魔物に飛んでる。

 

特にキロさんは射程がすごい。50メートル程度でも全く外れない攻撃――精霊術としようか。

「うり」の一言で翼竜が炎に包まれたよ?

 

で、知ってたけどリラさんは瞬間移動に近い速度で接敵して、蹴り一発で十分。

武器すら必要としてないよ? そういえば。

 

「キロさんってあたしたちみたいな武器は持たないんですか?」

 

「一応コレがそうかな?」

 

そういって、首元を指さす。

服と一体になってるように見えるけど、金具の様なものが付いてるね。

 

「ネックレス……じゃあないですよね。首輪って言うのも違うかなあ」

 

「私たち風に言うなら「チョーカー」が近いのかな?」

 

「あちらでは「カラー」と呼ぶ物だな。白牙氏族で付ける者はいなかったが」

 

「声を重要視する私達以外は付けないだろうね。カラーそのものと付いている魔石が作用して精霊に伝えられる言葉の意味がはっきりするみたい」

 

効果としてはクラウディアのフルートに近いのかな。

でも、異世界の道具って興味あるね。

 

「ちょっと触らせてもらっても良いですか?」

 

「ん。どうぞ」

 

許可を貰ってカラーに触れる――これって。

 

「うっそ……これクリミネアで出来てる」

 

「最近ライザが作れるようになった金属素材だったよね?」

 

「そうそう。だけどこの金属もリラさんたちの世界の素材で出来てるから」

 

びっくりだ。まさかオーリムでも同じような素材が使われていたなんて。

むしろ逆なのかな。オーリムの材料を錬金術で再現した結果とか。

 

「数百年前から使っているけど、昔は金属としてのこれも産出されていたのかもね」

 

「私の武器はアンペルが拵えたものだからな。元々の武器は失ってしまった」

 

「これって名前はあるんですか?」

 

「メイデンプレイヤー。乙女の祈りって所かな?」

 

神官さんにふさわしい名前だね。

クリミネア製ってことなら現状強化のしようがないけど、ゴルドテリオンならさらにすごいものが作れるかもしれないかな。

 

「ライザの杖とかは何で出来ているの?」

 

「昨日お話に出たスタルチウムです。彗星岩って鉱石が原料ですよ。でもクリミネアが調合できるようになったからみんなの武器も新調しようと思ってます」

 

そろそろあたし1人で調合できるようにならないかなあ。

いつまでもアルさんに頼ってちゃ助けにならないしね。

 

「なら、その際に私の鉤爪も頼んで構わないか? 今のままでも戦えない事はないが、高性能に越した事はないからな」

 

「分かりました! あとはアンペルさんのことも考えないとですね」

 

腕のことが解決したらアンペルさんの武器の新調も考えなきゃ。

といっても……腕が治ったら自分でササッと調合しちゃう気がするけど。

 

 

 

さらっとメイプルデルタに到着。道中は単なる蹂躙劇だったね。

もう魔物の方が近づいてこない。

 

「すごいね。本当にここだけ紅葉しているんだ」

 

「不思議ですよね。季節関係なし、樹の種類も関係なしだそうです」

 

「ここはお菓子の素材も色々採れるんですよ?」

 

「だが……キロは分かるな?」

 

「うん。ここの水、飲まない方がいいね」

 

えっ?

 

「どういうことですか?」

 

「そこら中に鉱石……ゴルディナイトだっけ? あれが水域全体に回っている。生き物にそのまま毒って代物じゃないけど魔力濃度が高い。飲み過ぎて身体に蓄積してしまうと過剰に魔力が溜まってしまうと思うよ」

 

「じゃあ、この辺の樹々も?」

 

「おそらくな。植物というのは自浄作用が強い。だから紅葉するだけで済んでいるんだろう。だが人間というのは動物の中でも特に毒物に弱い。気を付ける事だ」

 

結構ここでしか採れない素材が多いんだけど、ゴルディナイトが影響してるのかなあ。

今まで飲んだことはないから大丈夫だろうけど気を付けよう。ここの食べ物も要チェックだ。

 

さて、この辺ならちょうどいいかな。

 

「それじゃあお昼にしませんか? 火山や古城よりここの方が景色良いですし」

 

今日はサンドイッチ。作るのに時間がかからず色んな種類が食べられる。さらには持ち運びやすいという優れモノだ。

いくらオーレン族が2人居てもあれだけ作ってあれば大丈夫だよね?

これはアルさんの世界にもある食べ物らしい。みんな考えることは一緒ってことよね。

 

「ありがとう……ん、果物を挟んでも違和感がないんだね。お菓子とは違うけどこれもいい」

 

「フルーツサンドっていうんですよ? お菓子というよりデザートに近いですね。これをお店に出すのもありなのかなあ」

 

「いつか食べたパンケーキのようなものか。これは具材があった方が食べやすいな」

 

「パンケーキ……」

 

ああ、いつかの部分的に黒くなった丸い物体が頭に浮かんできた。

結局あれ以来作ってないしなあ。リベンジしなきゃ。

ちなみに今回のサンドイッチ作りでも一つ敗北した物がある。薄焼き卵、難し過ぎない?

 

「魚介でもいけそうかな? 塩っ気が強いやつと合いそう」

 

「キロさんって結構グルメですよね。以前は自分でも作られていたんですか?」

 

「どうだったかな? あんまり覚えてないけど、作れるには作れるかな?」

 

「私達よりはそういった趣向があったかもしれない。白牙氏族の当時の食事と今の私の食事にそこまで差はないはずだ。勿論調理された物の方が美味いと感じるがな」

 

「前のあたしに近いのかな。作るのがめんどくさくって、すっごいシンプルになるんですけど」

 

「焼けば大半の物は食べられるという考え方と、顎が強くないと食べられん物が出てくるからな。保存肉が噛み切れんようでは苦労する」

 

「とってもわかります、それ。行商中に食べることがありますけど細かくしないと全然ダメで……」

 

あたしも食べたことはあるけど、かったいわよねアレ。顎が怠くなっちゃう。

だからこそ時間をおいても傷まないんでしょうけど。

 

「……ごちそうさま、でよかったかな? 果物以外は軽く焼いてもいいかも」

 

「腹八分目と言うしな。私もこのくらいが丁度いい、美味かったぞ」

 

「……ねえライザ」

 

「なあに、クラウディア?」

 

「何枚分くらい作ったっけ?」

 

「50枚分、50組かな」

 

「……私が食べたの4組だよ?」

 

「あたしが5組だね。最後の1組がクラウディアの分でピッタリだよ」

 

残りの40組を、リラさんとキロさんがそれぞれ20組ずつ食べた――うん、普通だね。

あたしも八分目を考えればこのくらい。良い読みだったじゃない。

 

 

 

 

 

 

「変わった匂いがするね。しかもあっつい……」

 

「火山帯は大体この臭いがする。腐敗した卵を思い出すな、白牙氏族には少々キツイ」

 

「食べてないですよね?」

 

不安になる。腐ったものまではさすがにないよね? レントがやばそうだ。

 

「アルさんはたしか「りゅうかすいそ」って言ってましたよ。硫黄っていうゴルディナイトみたいな鉱物が元になってるそうです」

 

「これが硫黄……80グラムだっけ

 

火山ヴァイスベルク。

最初に来たときは急いでたから通り抜けたような感じだったけど、何回か採取には来てる。

 

ただまあ、いつ来ても暑いし臭いしであんまり長居したい場所じゃないのよね。

温泉には興味があるんだけど着替えも安全確保もあるしなあ。

 

「すごいね、地面が生きている感じ。火の精霊が活性化してる」

 

「アンペルが言うには、私達どころか生命が生まれる前の太古は火山だらけだったそうだ」

 

「どのくらい昔なんだろう……最初の生命って何だったんでしょうね?」

 

「たしかにそうだね。命がないとこから生まれた……外から来たとかだったりして?」

 

こういう話はタオが好きそうだね。あとアルさんなら答えが返ってくる確信があるよ。

地震発生の元らしい「地殻変動」。これが本当なら、あたしたちの生活してる地面は溶けた岩石とやらに浮いてることになるけど、想像つかないなあ。

さらにアルさんの錬成の力の元もコレらしい。どうやって引っ張ってきてるんだろう?

それを理解することがあっちの世界の錬金術の第一歩なのかな。

 

「オーリムに火山は無かったんですか?」

 

「ある。だが常に火を噴き出している活火山は見た事がないな」

 

「ここみたいにいろんな場所から常に噴き出してる火山は、こちらでも珍しいはずですよ。私も他所で見たことがないですから」

 

「海の底にも火山があるって聞いた」

 

「それって山なんですか?」

 

水の中から火が噴き出すってなんなんだろう?

案外そうやって一つ一つ考えてくと世の中不思議だらけなのかもね。

例えば、島はどうやって出来たーとか。

 

「あまりこの臭いは嗅ぎ続けない方がいいみたいだね。シルフィードが忠告してくれてる」

 

「ありがたい忠告だな。素直に従うとしよう」

 

「精霊さんですか? そんなことも協力してくれるんですね」

 

「臭いのイメージ通り、身体にいいものじゃないってことですか」

 

まあ嗅ぎ続けたい臭いじゃないしね。鼻の感覚が変になりそうだ。

 

といっても、せっかくだから行きたい場所があるんだよね。

この火山には何度か来てるけど、いまだに行けてなかったりするのだ。

 

「よかったら頂上に行ってみても良いですか? まだ登ったことがなくて」

 

「私は構わないよ。この臭いは風に乗っているから上に登れば薄くなるはずだからね」

 

「レントを何度かマラソンさせたことがあるが、こういう形で向かうのも一興か」

 

「……レント君、逞しくなるはずですよね」

 

リラさんの訓練メニューがエグイ。

それをこなすレントはとんでもない根性になってるわね。マラソンのスタート地点はどこから?

 

マラソンってペースじゃないけど、ゴーレムがウヨウヨいる道を何でもないように進んでいく。

「べんとぅす」の一言で吹っ飛んでいくゴーレムたちが不憫に思えてくるよ……。

 

今までは最初に来た時みたいに中腹の分かれ道を右にしか曲がってなかったけど、今回は左。

登る方向はこっちで合ってるよね?

 

「それにしても地熱で沸いた湯か。これだけの量を沸かせるのだから大したものだな」

 

「温泉って言うらしいですよ。なんでも地中を通ってくる時に岩の成分が混じるそうです」

 

「ん~この源泉には入らない方がよさそうだよ。酸性って分かる? 物を腐食する力が強すぎる。髪とか肌が荒れちゃうね」

 

ええっ!?

 

「そうなんですか……いつか入ろうと思ってたのに」

 

「薄めればいけるんじゃないかな? 酸性って……ビネガーもそうだって聞いたことがあるよ。この量を薄めるのは大変そうだね。こういうのもアルさんは詳しいのかな?」

 

なるほど、ビネガーね。ツンとする匂いは近い気がしなくもないや……あれ? なんかどっかでそういう話を聞いたことがある気がするんだよねえ?

 

アメストリスに火山があったって話は聞かないけど、歩く百科事典のアルさんだ。

こういうのはむしろ専門かな?

 

さて、そんなこと言ってる間に……ここが山頂かな?

ここにも祭壇みたいなものがあるんだね。

 

「当たりだ……これって」

 

「キロ、分かるのか?」

 

「多分だけど、火の大精霊様を祀る祭壇だよ。降臨される事があるのかもしれない」

 

「ここに大精霊様が?」

 

「あたしは全然精霊について知らないんですけど……珍しいんでしたっけ?」

 

大精霊ってのは……そんなのがいる~ってくらいしか知らない。

オーリムでキロさんが言ってたっけ――謁見するのが大変って。

 

「こちらの世界は……精霊信仰が薄いんだよね? よく祭壇があったね」

 

こんなとこにこんな場所があったなんてね。

機会があったら大精霊に会える機会があるかもしれない……会ってどうしよう?

 

他に採取物はあんまりなかったけど、いろいろわかったことが収穫かな。

さて、今度は流星の古城に向かいましょうか。

 

 

 

 

 

 

「……ここがクリント王国の、フィルフサの迎撃拠点なんだね」

 

「どの程度効果があったか分からないがな。竜まで召喚して対抗したそうだ」

 

「その竜はあたしたちが退治しちゃいましたけどね……」

 

「あの時は大変だったね。アルさんが来てくれなかったらどうなってたか……」

 

今のところあの時が一番ヤバかった。準備無しに突っ込むもんじゃないね。

 

「その時のアルってどんな風に戦ったの?」

 

「まずは城の岩壁を錬成でパンチにして颯爽と登場。槍を錬成して翼に穴。地面から岩山を飛び出させて竜を打ち上げ、槍で頭をぶっ叩く。とどめは頭にグサリ、ですね」

 

考えなくたって英雄枠じゃん。ただの道具屋さんのわけない。

なんかヤバそうな攻撃をぶっ放しそうだった竜を一撃でブレイクさせたんだよね。

槍の一撃なんて竜が悲鳴上げたし……。

 

「なんだか……エドさんの戦い方に似ているのかな?」

 

「そうなんですか?」

 

お兄さんの戦い方?

 

「アルはあんまり武器を使わないらしいよ。壁とか岩の拳を錬成する事はよくしていたみたいだけど、殆どは素手って。逆にエドさんは錬成主体なのかな」

 

「あ~確かに。こっちでのアルさんの武器も手甲とかですしね」

 

「そういえば「長得物は久々」って言ってたね?」

 

「単純な徒手空拳でも中々だからな。錬金術有りなら全精霊を宿した私でも勝てるか分からん。だがどうにもスタイルが掴めない。大振りに見えて技巧派という器用な戦い方だ」

 

最初の出会いのお手合わせでもそんなこと言ってたね、リラさん。

それにしてもアルさんたち……旅ってそんなに戦うもの? あっちにも魔物みたいなのがいるのかな。

 

「う~ん。私が勝つなら1節詠唱連発からの全範囲の3節詠唱かな……それでも壁の錬成で防がれちゃうかも? フェイタルドライブならいけるだろうけど」

 

「物騒なこと考えないでくださいよ……キロさんのフェイタルドライブってどんなのなんですか?」

 

「隕石の召喚だね。分解できるか試してもらおうかな?」

 

「絶対に使わないでください!」

 

もうエレメント関係ないじゃない。それ、そもそも魔法ですか?

たしか……宙に浮いてる大きな岩がとんでもない速度で落ちてくるんだっけ。

 

まだあたしたちの誰もフェイタルドライブを考えてないけど、本家本元はそんな規模かぁ。

召喚を勉強したら出来る可能性があるかな?

 

「そういえばここも「流星」の古城って言うんだよね? 何を以って流星なのかな」

 

「アンペルが言うにはそこらの妙な斑の岩が隕石だそうだ。なぜ降ってきたのかは知らんがな」

 

「その割には周りが全然壊れてないね? 私のやつなら最低でも一帯がクレーターになるけど」

 

「最低……?」

 

「このマダラ岩はまだ上手く砕けないんですよね」

 

クラウディア、考えちゃダメだよ。

案の定規模がヤバい。大侵攻並みの大惨事になりそうだ。

 

どうにもこの隕石? は硬くって、斧でもハンマーでも部分的にしか割れないんだよね。

採れるのは白霊岩と彗星岩……彗星も隕石みたいなもんなんだっけ。

彗星岩はスタルチウム用に今でも現役だ。ただ持ち運びが大変なんだよねえ、熱すぎて。

 

「結局お前達が竜を倒した後も、城は稼働し続けている状態か」

 

「出っぱなしですね。緑の光」

 

「ここに精霊の気配はないんだけど。錬金術のシロモノなのかな」

 

そのうち鎮火するかな?

 

 

 

 

 

 

「これで一周ですね。どうでしたか?」

 

「色々新鮮だったし得る物もあった。付き合ってくれてありがとう」

 

「偶にはこういった気軽な道中も良いものだな」

 

「道中の魔物は竜巻にでも遭遇した感じですかね? ……4時くらいかな」

 

古城の下層から小妖精の森に戻ってきた。

ホントならピクニック気分にはならないはずなんだけどね。

 

最初にここから森に戻った時はアルさんが足場を作ってくれたけど……今回の場合リラさんは跳躍、あたしとクラウディアはキロさんに風の精霊の力で浮かせてもらった。

特別力の吹き溜まりってのがなくてもこれだけ浮かせられるんだから、リーゼ峡谷の道ってのも通過できそうだね。

 

さてと、集合まで約5時間あるし――誘ってみようかな。

 

「3人とも、まだ時間はありますか?」

 

「ウチへの集合は夜9時だし、私は大丈夫だよ?」

 

「夕ご飯」

 

「そうだな。夕飯は食べなければならないが、まだ2、3時間はいいだろう」

 

よさそうだね。

 

「それじゃあ……もう一ヶ所付き合ってもらっても?」

 

「どこに行くの?」

 

「ちょっと変わった場所なんだよ。拠点から行くんだけどね」

 

まだ3回試しただけなんだけど。今回はどこへ行けるのかな?




これでキロもこの周辺の地理は把握したという事になります。
メイプルデルタの設定は、たしか原作通りのはず?
誰の冒険記録だったでしょうか。

次は……ライザはみんなをどこに連れていくのか?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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