ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
普通に原作沿いだとつまらないし、選択肢が広すぎて。
こういった事もあっていいんじゃないかな、という形に。
誤字報告ありがとうございます。
今回もよろしくお願いします。
「ああ、戻ってきたか」
「ただいま戻りました、アンペルさん」
「戻った。こっちは変わりはないか?」
「ああ、特別何かがあったという事はない。アル君に釜と炉を整えてもらった程度だ。これでライザもこちらでまともな調合が出来るだろう」
「充分特別だと思う私はおかしいのかな?」
「いえ、あたしの常識でもそれで合ってると思いますから。心配しないでくださいキロさん」
何かのついでの如くになってるけど、普通に大仕事です。お屋敷買えるレベルの。
規格外だからこそできる御業ってこと、アンペルさん忘れてません?
「私はタオからお呼ばれしていてな、書庫を見せてもらう予定だ。そのままクラウディアの屋敷に向かう予定だが……リラ、不都合はあるか?」
「それで構わない、あちらで落ち合うとしよう。レントを見たか?」
「ああ、島とここを泳いで往復するそうだ。今頃復路の途中だろう」
「バカ?」
もう人を辞め始めてない? 5キロはあるよ?
「舟でも結構かかるよね? 途中で溺れていないといいのだけれど」
クラウディアはやさしいね。この先もたなくなるよ。
まあボオスの所に行った後にどっか出かけるってことはないでしょうけど、前みたいにサメの魔物がいたらどうするんだか。
火山マラソンといい毒耐性といい……リラさんはレントを魔改造するつもりなのかな?
レントの強さの方向性が元々とは別方向な気しかしない。野生児的な。
「それで……ライザは何処に行こうとしているの?」
「コレなんですよ」
アンペルさんを見送って、拠点でアンペルさんが管理してくれてる品を持ってくる。
あの入江の遺跡からパク……拝借した一品。
「何かの瓶……容器、でいいのかな?」
「ただの容器じゃないんだよクラウディア。これ、
「言っている意味がよく分からないが……」
「これが……一つの世界」
なんか、リラさんに可哀そうな物を見るような目をされた……。
キロさんが一番的を射てる、というか正解だね。
「トラベルボトル。アンペルさんは採取地調合機って呼んでる古式秘具だそうです」
まさか拾ったものが古式秘具だなんてね。しかもこれは結構珍しいらしい。
「また古式秘具か。一体奴らはどれだけ妙な道具を作り出しているんだ」
「世界を作る……まさにクリント王国って感じだね」
「まあお2人とも。それでキロさんが言ったみたいな、容器の中に世界を作る道具なの?」
「そういうことだよ。お2人の感想通りトンデモな物ではあるんだけど……容器に素材を投入すると一つの世界が出来るんです。出来る世界の法則~みたいなのは全然分かんないんですけど」
持ち帰った日とゴルドテリオンを作った日で計3回試して、辿りついたのは全部違う場所。
使い方がわかんなくって、コンテナに放り込んだらインゴットが吸い込まれたのがきっかけだ。
錬金術的な何かは感じたから調合する時の魔力を使って触れたら、あら不思議っていうね。
今のところインゴット系を組み合わせただけだけど、森だったり火山だったり城だったりでわけが分からないんだよね。
アンペルさんが「採取地」調合って言うだけあって、同じような素材がたくさん揃ってる共通点はあるんだけど。ホントにどういう仕組みなんだろ?
「もう原理も何もムチャクチャだね」
「そもそも錬金術なんてそんなものだよ、クラウディア」
「同意見だな。で、この中に入るという事か?」
「そうですね。ただちゃんと目的もあって……リラさんの依頼の件です」
「義手の話か? ――作る為の素材集めという事か」
「義手の依頼?」
「ああうん、クラウディアは知らなかったね。アンペルさんの右腕を補助する義手を作ろうとしてるんだ。腕をケガされてるらしくって、その関係で難しい調合とか出来ないんだよ」
「……そうだったんだ」
しかも、そのケガの経緯がねえ。
「わざわざこんな世界で集める必要がある素材……供給源の話かな?」
「そうなんです。まだあたしも
作られる小さな世界、とはいえある程度の広さはあったりする。
あるんだけど……進めないのよね。先があっても妙に大きな壁やら岩やらで塞がれてる。
その先になんか魔力じみたものが漏れている何かが見えるんだよ。行き着けないけど。
多分突っ込んだ素材で世界を作った後の……残りカス? 逆なのかな?
「成程な。私は依頼した身だし協力は惜しまない」
「私も手伝うよ! アンペルさんの為なら私も力になりたいし」
「錬金術で作り出した世界の中に精霊はいるのかな? まあ私も付き合うよ、行こうか」
「ありがとうございます!」
何気に魔物もいて、しかも3回目に入った時は妙に強かったんだ。
中で力尽きたら外に出られるかも分かんないし、さすがに1人で行くのは怖くなった。
手伝ってもらえるのはホントに助かるよ。
「そう時間もあるわけでもないし、とっとと入るとしよう」
「素材を入れる……んだったかな? どんなものでもいいの?」
「多分ね。どんな世界になるかさっぱりだけど……キロさん、選んでもらえませんか?」
「私?」
あたしが選んじゃうと何かしら寄っちゃいそうなんだよね。今まで全部金属だし。
そういう意味で一番錬金術から縁遠いキロさんが適任な気がする。
素材については後日補充ってアンペルさんと約束してるから、どれを使っても問題なしだ。
「ん~なら、コレを使ってみようか」
キロさんがポケットから何かを……青い宝石? 見たことないわね。
ただ感じるエレメントがなんかすごい。
「キロ、待て。それは妖精結晶じゃないのか? キロ達には特に重要品だろう?」
「確かに数はないけど、こっちの世界にはわりと妖精がいるから手に入るんじゃないのかな。持っているだけだと宝の持ち腐れな気がするしね」
「オーレン族に伝わる何かなんですか?」
「フェアリーピースとも呼ばれている――強い力を蓄え続けた大型の妖精が宿す魔石だよ。4属性全てのエレメントを強く含んでいるから、私達霊祈氏族はお守り代わりにしてるんだよ」
4属性全部!? やっぱり普通じゃなかった!
今まで見た事があるのは大体が2属性まで。3属性は超レアな「黄金うに」しか知らない。
リンケージ調合的にもかなり貴重な気がするよ。
「ホントに貴重品じゃないですか。一度入れちゃうと戻ってこないですし……当たりの世界か分からないですよ?」
「こういうのはカンと勢いが大事だよ。それにさっきも言ったけどこっちなら補充できるかもしれないし。はい」
ポンと渡してもらったけど……コレそんな気軽に受け取っていい物かな?
まあせっかく貰ったんだし、使わせて貰いましょう!
「わかりました、ありがとうございます! それじゃあ……!」
貰ったフェアリーピースをトラベルボトルにそぉお゛い゛!
ふんぬっ!
「入れたというよりねじ込んだ風に見えたよ? ライザ」
だって、そうでもしないと入っていかないんだよ? とりあえず今回も問題なしだ。
緑っぽくなったから森の世界かな?
「大丈夫そうです。それじゃあいいですか?」
「とっとと行くとしよう」
「どんな世界なのかな?」
「当たりを引いているといいのだけれど」
「ここを触っててくださいね!」
この状態で調合するみたいに魔力を込めると――門をくぐった時みたいに!
「……ひろ~い。すごいね、こんな景色は私初めてだよ」
「あの容器の中とは思えないな。普通に建物もあるとは」
「こんな世界はあたしも初めてです。今までは「世界」と言ってもここまで見晴らしはよくなかったんですけど」
遠くの四方を山に囲まれた、一面に平原が広がった土地。
こんな見渡しの良い世界は予想してなかったね。壁になりそうにないや。
後ろのこの建物は? 家じゃなさそうだけど……なんのための物なのかな。
うん? ……キロさん?
「……まさか」
「キロさん?」
「っ! ごめんね、ちょっと見惚れてた」
「オーリムとは雰囲気が違うが、自然に満ちているな。空気がいい」
「あんな遠くの山まで。気持ちのいいところですね!」
「当たりを……引けた感じでいいのかな?」
「あたしもまだ4回目なので分からないですけど、今までみたいに行けない場所は無さそうですね。広すぎてどこから行けばいいのやら」
一応道っぽいのはあるし、それに沿っていきましょうか。
帰る場所はここみたいだし――これもホント小さな門みたいだよね。
「……ナナシ草、って言っていいのかなあ。 採取できそうな物が草しかないなぁ」
「柵はあるけど本当に広い平原だね。作られた世界って事だけど……建物の中はダメかな?」
「どこまでも道が続いているな。道沿いに立っている柱と……あれはなんだ? 鉄線か?」
「……そのままだ」
いままで採取できそうな岩なり、木なりはあったけど――なんか自然じゃない。
島や対岸では見たことないやつばかり。どこか不思議な感覚だ。
なんというか……そもそもエレメントを宿してる感じがしない。こんなの初めてだよ。
この世界にあの魔力を放ってた供給源みたいなものがあるかなあ。あやしそうだ。
おっ。
「分かれ道だね?」
「どちらへ進む? 大差無さそうだが」
「そうですね……どっちもひたすら道が続いてる感じですか」
「こっちに行こう」
キロさんがわりと即決してくれたね。
アテもないし、とりあえずそっちの方に進んでみましょうか。
同じようにひたすら平原と、道と、たまに家みたいな建物が見えるだけだね。
ラーゼン地区よりも田舎って言える世界だ。柵があるのは酪農を思わせるね。
こんな土地がどこかの国にあるのかな。
……ん? あれは……。
「ここは……火事の跡?」
「見た感じはそう見えるな。全く原形が残っていないレベルだが」
「こんなものまで――まるでどこかを再現したみたいな」
「…………」
今まで、例えば城の世界なら崩れた本棚とかあったりしたからその類かな?
それにしちゃ、あまりにこの雄大な世界に似つかわしくない。
……焼け跡の中になにかの魔力の漏れがあるね。
中になにかあるのかな?
「何かあるっぽいのでちょっと中を見てみますね」
「気を付けてねライザ。足元が大変そうだよ」
崩れるほども残ってない。躓かないように気を付けるくらいだね。
がれきの中かな? 何かあるみたいなんだよね、この辺に……お!
「あったよ探し物! コレコレ!」
間違いない! 雷の力を宿した変な球!
これなら義手の材料に出来ると思うんだよね。ついにゲットだ!
「よかったね! こんな平原だからもう見つからないのかと思ったよ」
「本当に妙な世界だな、一見非常に平和そうに見えてそのような球も見つかるとは。錬金術の世界には違いないという事か」
「……どちらが、この世界を成した要素なの?」
「頂いた素材の種類と品質。その両方だと思いますよ?」
キロさんはボトルの世界に来てからずっと思案顔だ。精霊的ななにかがあるのかな?
まさかここまで平和、かつ現実味のある世界が作れるなんて思わなかったけどね。
魔物はいない。エレメントを宿す素材もない。建築物はたぶん家。そして人の手が入った道。
――人が住んでいても全然違和感がない。
こんな世界を形作れるんだ。
「この先は何があるのかな?」
「見たいのは山々だが……それなりに時間を使っている。走って帰りたくなければここで引き返すのが良策だぞ。クラウディアもマラソンをするか?」
さすがに首を横に振った……「楽しそうですね!」なんて言ったらどうしようかと思ったよ。
「ライザ、またこの世界に来る事は可能なの?」
「ジェム――調合向けの魔力を宿した宝石があれば出来ますよ。ただ作った世界ごとに必要なジェムの量が違うみたいで、今のあたしの持ち分で足りればなんですけど」
色々使うんだよなあ、ジェム。錬金術的に価値ある物ほど消費も還元もするらしいシロモノ。
リビルドにも使うし……今あたしが持ってる素材とか調合アイテムじゃ還元ジェム量が少ないから今までボトルの補充に使わなかったんだよね。
でも、キロさんも考えてるみたいにこの世界観はとっても貴重な気がする。必要な物も手に入ったからしばらくこのままにしとこう。
「時間をおいても中身が変わるってことはないらしいですから、このままにしておきますね」
「ありがとう。その分採取は手伝うから」
キロさんにとっては貴重品を使ってるのもあるしね。素材はどっかに採りに行けばいいだけだし。
レントやタオも連れてきてあげよう。島育ちのあたしでも空気がいいって思う世界なんだから。
アルさんも田舎の出身で平原が広がった土地って聞いたけど、こんな感じだったのかなあ。
さて、戻るとしましょうか! マラソンはごめんだし。
来た道を4人でそのまま戻る。
帰り道なのに景色がほとんど変わらないよね。よそ見したら方角を間違えそうだ。
太陽の方角と、ゴール地点は見えてるから大丈夫っちゃ大丈夫だけど。
あのスタート地点の建物から左右に延びてる道みたいなのはなんなのかな?
「ねえクラウディア。あの左右に延びてる道みたいなのって見たことある?」
「鉱山で見たことがあるよ。「線路」って言って荷車で一度にたくさん資材を運ぶための道だね。「鉄道」とも呼ばれていたかな?」
「鉄道か、分かりやすい表現だ。敷設するのにかなりの労力が必要そうだが」
「こんなに長い距離、荷物を運ぶの?」
「いえ……キロさんが仰るみたいにここまで長い距離なのは見たことがないです。リラさんの想像通り敷設するのがかなり大変みたいで」
鉄、道ね。
鉄をあれだけ長い距離、真っ直ぐに加工するのは錬金術を使っても簡単な事じゃない。
相当苦労するはずだけど、作ってしまえば一気に運べるんだからメリットは大きいね。
頑張って島に作る? いや、そこまで広い島じゃないし、重い物も運ばないし、いらないかあ。
でも、あたしたちの世界も巡ってみればあんなものがあるんだね。
リラさんたちの世界も、アルさんの世界も不思議が多いけど、まずは自分の世界を知らないと。
さぁて戻ってきた。
近くで見るとホントに地平の果てまで線路が続いてるなあ。作る素材の量だけでも大変そうだ。
地面があるなら島と対岸を繋げそうだね。
ちゃんと帰還地点も残ってる。よかったよかった。
「お付き合いありがとうございました! これでアンペルさんの義手、必ず作ってみせますから」
「宜しく頼む。説得はこちらで責任を持つからな」
「いいのが作れるといいね! ライザなら大丈夫だよ!」
「……また、来るから」
キロさんはホントにこの世界がお気に入りみたいだ。
もしも他にボトルを見つけられたらこのボトルはこの世界専用に残しとこうかな。
「じゃあ、外へ戻りますっ!」
「本当にその容器の中の世界だったんだな」
「こうして中に入って出てきたのに信じられないですね」
「光を……色を失っているね?」
「そうですね。一回使うとどんな世界でもそんな感じになっちゃうんです。ジェムをつぎ込むと徐々に色が戻るみたいなんですけど……うわあ、これは量がいりそうですね」
今までの世界は1000個もジェムを入れれば少しは色が戻ったけど――全く色付いてないよ。
10000でも足りないかもしれないね、完全にストック不足だ。頑張って貯めるとしましょ。
「6時か。ゆっくり夕飯を食べて島に行けばまあ良い時間か。お前達はどうする?」
「あたしはアトリエに戻ろうと思います。コレが使えそうか確認してみたいですし」
調合に必要と思う素材を一か所に集めて、レシピを考えてみると使えるかどうか分ったりする。
まずはこの雷球が使い物になるかどうか確認しないとだ。
「私も島に戻りますね。みんなを迎える役ですし、たまにはお父さんに御馳走してあげようと思いまして。居ればですけど」
「普段ルベルトさんとの夕ご飯ってどうしてるの?」
「元々私もお父さんも料理をしなかったから、外で食べることが多かったかな? 何度か話したと思うけど行商中は保存食なのもよくあったから、作ることになっても凝ったものはなかったね。料理ができたのは王都にいるお母さんだけだったから」
あーそっか、ウチとおんなじだったっけ。
あたしも多少は料理できるようになったけど家ではお母さんのご飯だもんね。
いざ料理をしようとすると……残ってる食材とか好みとか時間とか量とか、結構考えなきゃいけないことを覚えたよ。ありがとね、お母さん。
あたしもそのうち2人に手料理をふるまってみるかあ。
「私はここに残るよ。時間になったらリラと一緒にそっちに向かうね」
「分かりました」
「了解です。それじゃあ夜にクラウディアのお屋敷で」
「では今からオオイタチマザーでも狩りに行くとしよう。2匹で足りると思うか?」
「念の為に3匹にしておこう。この炉ってクラウディアの窯みたいに使える?」
「多分炭になると思いますからやめた方がいいですよ? ナマモノ用じゃないので」
「そっか。まあいつもみたいに精霊の火を使わせてもらおう」
そもそも熱で物を溶かすための設備だしね。さすがに調理器具には難しいんじゃないかな。
3匹の件はツッコまないよ?
今回の行先は単なる一例です。運はありますが。
本作のクラウディアの母は王都にいる事にしています。ややこしいので。
書いている時は思っていなかったんですが、ライザの呟きって割と皮肉利いてるなあ。
次は夜。遂に水の正体とのご対面です。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。