ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
原作と違ってライザはアルに事前に鍛えられています。どのように変わるでしょうか?
ついに年少組が揃います。
今回もよろしくお願いします。
5. 32日目① いざ冒険 小妖精の森と都会の少女
乾季に移る中、前に聞いた――モリッツさんが呼んだっていう商人さんが来るって話を耳にした。
という事で、冒険のプランは2人を連れてその商人さんを一目見る。
それを島の対岸でやって、そのまま小妖精の森の探索ってとこかな。
レントとタオを呼びつけ、計画をついに公開!
「いやお前、そんな唐突な」
「大切な商人さんを迎えるんだから護り手の人たちも付いているよ。それに島の外には魔物がいるんだよ?」
あいかわらずノリの悪い。
僕は勘弁してよ……ってタオの反応は予想してたけどさ。
「アガーテ姉さんたちはどうにかしないとだけど、魔物に関してちょっとは勉強したよ? アルさんの助手をやってた時に教えてもらったから」
「助手の仕事の間に? 一体何を聞いたのさ?」
「ずっと島の外には興味があったし、アルさんも結構知ってるみたいだったから。休憩中とかに聞いたのよ」
「つう事は、アルさんって島の外に出た事あんのか? まあ元々流れてきた人だけどよ」
「素材採取のために、ね。アガーテ姉さんたちや古老も知ってるって」
「そうなんだ。まあ……それなら本だけの知識より信用できるのかな」
珍しくタオもそこまで避けようとしない。これぞアルさんパワーと言える。
レントにも「小妖精の森を探索できれば武功もんよ」なんて言って丸め込んだ。
レントには大剣を、タオには使い慣れてるっていうハンマーを持ってこさせ、最初から港じゃなくてあたしの家の裏手の海岸からボロ舟で出航する事にした。うん、港は無理!
「これで行くのかよ」というレントとタオだけど、はいさっさと乗る! レントは舟漕ぎよろしく! という感じで島の対岸へ出発だ。
「これが、島の外なのか」
「魔物がいるんだよね……いきなり襲われたりしないよね?」
興味と不安。そんな感じの2人に比べてあたしは結構冷静、よね?
なにせ1週間毎日通ってたんだし、少なくともこの浜に居る魔物は知ってるし。
「ウワサの商人さんはまだ到着してないみたいね」
「商人さんが来る前に護り手の人たちが来ると思うよ」
そりゃそうか、北の街道から来るのかな?
ならまずは、舟を隠して小妖精の森の探索としゃれこみましょ。
桟橋から少し離れた所に舟を移動させて、2人を連れて東の小妖精の森へ。
あたしも入口までは連れてきてもらったけど、ここから先は初めて。
一応この森も別の街に繋がってるんだっけ?
「ライザが先頭でいいよね? 僕は2人の後を付いていくよ」
「それでいいよ。あたしとレントが前、タオは後ろを付いてきて」
「……なんつうかライザ、慣れてねえか?」
3人の中で魔物との実戦経験があるのはあたしだけ。自然とそういうことが考えられちゃう。
そして。
「うわぁっ、魔物!」
みょ~にでっかいキノコのそば。タオの視界に青ぷにが登場だ。
いや、結構前から見えてなかった? ぴょんぴょん跳ねる音も聞こえてたし。
「落ち着いて、そう強い魔物じゃないから。レントとあたしで攻撃するから追撃できるタイミングでタオは魔法を飛ばして」
「う、うん」
「わあったよ」
青ぷにの背後に回り、先制はあたしの打撃から! とりゃあ!
「レント!」
「おぅらっ!」
杖で怯んだ隙にレントが大振りに剣を、切るというより叩きつける。ボロっちいなぁ。
それでも奇襲の攻撃で青ぷにを混乱させられたらしい。
「タオ! ぶっ放して!」
「っうん! せぇーのっ!」
元々農作業用っていうハンマーから魔力の刃を飛ばす……何気にすごくない?
タオの攻撃をくらって、青ぷには後ろにふっ飛んでそのまま消えていった。
「す、すごい。僕の攻撃で魔物を倒せちゃったよ」
「案外いけんじゃねえのか、俺たち?」
初戦を終えてとりあえず一安心。
あたしの初戦はアルさんのオーバーキルだったもんね。心疲れと啞然だったっけ。
にしても。アルさんの手が入った武器でもなし、知識もなしでぷに相手だけど結果は上々。
レントはまだ分かる気がするけど、タオも戦いの才能があるのかも。
「結構うまくいったね。でもまだ他に……ほら、あそこにもいる。出来るだけ避けていくよ」
「なんか意外だな。ライザならむしろ突っ込んでいく気がしたが」
「う、うん。僕もそれがいいと思うよ。刺激しないように行こうよ」
いちいちな物言いのレントだけど、前のあたしなら間違ってないかぁ。
知っているからこんな事を言えてるのは事実だ。
この小妖精の森がどのくらい深いのかはあたしも知らない。
アルさんならまず知ってただろうけど、そこまで聞いたら冒険じゃなくなっちゃう。
だから落ち着いて進んで、帰りの体力は残しておかなきゃ。
明るい光を放っているおっきな花、橋のように倒れた大木。見た事ないものだらけだ。
小妖精こと「花の精」が集まってふわふわ浮かんでいる一角のわきを静かに抜けつつ、道の真ん中に居座っているオオイタチは武力行使!
「なんつーか、青ゼリーと違って動物をいじめてる感があるぜ」
「気持ちのいいものじゃないわよね」
「なんていうか、僕はライザの反応が不思議で仕方がないんだけど」
「そのランタン草の中、虫がいっぱいいるらしいわよ」
「うわぁっ!? は、早く離れようよ!」
なんというか――2人から見たあたしの評価がひどすぎない?
ホントの事だけど言わなくてもいい事でタオをからかいつつ、軽い坂道を登っていく。
あれ? 前がひらけてきた。
「ここは?」
森の中なのに木が生えてない整地された広場、簡素だけど木の門、積まれた石垣。
そして何より。
「こんなところに建物があるなんて!」
そう。廃墟となっちゃってるけど家らしき建物があった。
あたしよりタオが大興奮だ。
「クリント王国の遺跡だよ! 島にもあるやつ! でもこんな所にあるって事は見張り小屋か何かかなあ?」
遺跡っていうより家が朽ちちゃっただけに見えるなぁ。
タオはさっきまでの引け腰が噓のよう。
はしゃぎすぎんなよ、とレントが年長者として窘める。レントはこの辺兄貴分だよね。
そんな時だった。
あたしたちが来た方向と逆――更に森の奥の方から女の人の悲鳴が聞こえたのは。
「きゃああああぁぁぁぁぁ……」
「――今のはっ!?」
「悲鳴だよな? なんで俺たち以外に森ん中に人が居るんだ!?」
誰かが居る理由よりも、あたしの頭の中に浮かぶのは一つ!
――助けなきゃ!
「レントッ! タオッ! 行くわよ!」
「おう!」
「えっちょっ、まっ待ってよ~!」
北の方角に向けて全速力で突っ走る。鍛えてもらった体力は伊達じゃないんだから!
おっきな樹の脇を抜け、坂道を駆け降りる――見えた!
「女の子! 魔物に追われてるっ!」
ちょっと離れちゃった2人に叫ぶ。
マジかよ! ってレントの声を了解と受け取ってさらに前へ。
淡い金色の長い髪に、おしゃれな服装。島では見た事ない子だ。
魔物との間に割って入る。
「後ろに下がってて!」
杖を構えて魔物と対峙する。
さっき遭った時は避けた花の精ね。中型個体じゃないのは幸いだ。
レントとタオも追い付いてきた。ぜーぜー言ってるけど。
「たっ戦うの!?」
「ここで逃げるって選択肢ある!?」
「女の子を助けるヒーロー……いいじゃねえか!」
タオも諦めて、2人も構える。
今日戦うのは初だけど、勉強の際には何度も戦ったんだしね。
思い出せ。妖精の攻撃は――うん!
「光弾を飛ばしてくるから武器で防ぎながらいくわよ! タオ、援護よろしくっ!」
「おうよっ!」
「う、うん」
今回は先制じゃない、あっちは既に魔力を溜めている。
なんとなくムカつく笑い声とともに光弾を飛ばしてきた。
「ぃよーいしょ!」
両手で杖を握りしめ、魔力を込めて杖で光弾を弾く。
弾き返すなんて器用な事できないけどね!
レントも幅の広い大剣を盾に、妖精に接近して一閃。
「そらよっ!」
「追撃するね!」
2発入った! 妖精がノックバックする。
「僕もいくよ!」
なんだか頼もしい声のタオから魔力の刃が飛ぶ――農作業用のハンマーから。
今度やり方聞いてみよう。
撃ち落されるように妖精がぐらりと落ちてきて、レントがさらに大剣を振るっていく。
「オラオラァ!」
なかなかにひどい絵面だけど相手は魔物だ。
脅威は排除、しなきゃケガするのはこっちってね! アルさんの言葉が染みるなぁ。
3人で猛攻を加えていき、レントが。
「毎日……無駄にクソ親父の剣振ってんじゃねえんだよ!」
ザムエルさんのお古だっけ? 低い体勢で振りかぶる。
「いくぜ、アクセルダイブ!!」
斜め上方向への、全力の一閃。
地面をかすった剣先から土を巻き上げながら、刃こぼれした大剣が妖精を打ち付けた。
そのまま光を放って消えちゃった。勝った、よし!
「はぁ……はぁ……終わった」
「か、勝ったんだね……僕たち」
「ええ、勝ったわよ」
全力の一撃を放ったレントと、戦いが終わると元に戻るタオの言葉をあたしがまとめた。
そして。
「大丈夫だった? ケガはしてない?」
尻もちをついた感じに座ってた女の子に声をかけた。力が抜けちゃった感じかな。
やっぱり島では見た事ない子よね。
歳は……あたしと同じくらい? お嬢様っぽい雰囲気。
なんか服装はどこかで見た感じがしなくもない。流行りのデザインなのかな?
「うん。ありがとう、助けてくれて。迷ってたら見つかっちゃって……」
「ケガしてないならよかったよ。とりあえず、この辺りから離れようか」
「森を抜けるってのは大賛成だよ!」
「落ち着けって。大声で寄ってくんぜ」
まずはこの子を連れて元来た道を引き返しましょ。流石に冒険どころじゃないよね。
落としてしまっていた――すごい装飾だなぁ、何かが入ったケースを大切に抱え上げて女の子が立ち上がる。
「歩けそう? それじゃいこっか。あ、あたしライザリン・シュタウト。ライザでいいよ」
「俺はレント・マルスリンクだ。レントでいいぜ」
「タオ・モンガルテンだよ。僕も名前でいいよ」
名乗ってなかったや。3人合わせて自己紹介。
「ライザさんと、レント君と、タオ君だね? 私はクラウディア・バレンツ。商人のお父さんに付いてクーケン島って所に向かっていたの」
歩きながら自己紹介を受ける。商人って事は。
「ひょっとして……モリッツさんが呼んだっていう噂の商人さん?」
「多分そう。3人はクーケン島の人? 私たちが噂になっているの?」
「おおっぴらに外から人を呼ぶ事は少ないからな。モリッツさんが誰かを呼んだってのは結構知られてんぜ」
件の商人さんの娘さんだったんだね。どうりで見た事がないしお嬢様的な雰囲気なわけだ。
この小妖精の森って実は脇に通りやすい道があって、そこから森に迷い込んじゃったらしい。
「ふぅ~、ここまで戻ってこれたね」
さっきの広場に戻ってこれた。あと一息だ。
「そういや、その箱の中身って何なんだ?」
「えっと、これは……」
無神経なレントの質問に言いよどむクラウディアさん。
デリカシーなしの頭に杖の一撃を加えなければ。
そんな事を思ってた、その時だった。
肌をピリつかせる、魔物の鳴き声。
――気が緩んでた!
地図を見てもクラウディアが何処から迷い込んだのかいまいちわからないんですよね。
少し短めですが、次回分を合わせると長くなったので分割しました。
次回もよろしければご覧いただければ嬉しいです。