ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
宜しければお付き合いください。
漸く本章メインシナリオのフラグが建ちます。
その他色々説明回です。
誤字報告ありがとうございます。長くてもゼロにしていきたい……。
今回もよろしくお願いします。
「タオたちの調子はどうなんだ?」
「本の大半は見終わって、今朝モリッツさんの自室に突入したとこね」
「へえ~! タオのやつも攻めるじゃねえか、やるな!」
「仕掛け人は後ろを歩いてる人だけどね」
こうしてレントと並んで歩くのはなんか久々だ。
レントは一人で鍛錬かリラさんと一緒だったことが多いし、あたしもトラベルボトルや義手調合とかだったしね。見た目は特別変わってないけど、どのくらい強くなったのかな。
「……リラさんじゃねえよな? キロさんがなんかやったのか?」
「まあね。アルさん並みになんでもありよ、キロさんって」
「初っ端にすげえ火の魔法見せられてるしな。なんでも森にクレーター作ったんだって?」
「……間違っちゃないかな? アルさんがすぐに塞いだけど」
実際はキロさんとアルさんの二重詠唱だからね。
そういえば光属性の詠唱も一応考えるってことだったけど、どうなったのかな。
「……そう。あと幾つあるんだろうね」
「見当も付かない。何を以って全て閉じたと……判断しようもないしな。だから世界中を回って虱潰しでやっているわけだが」
「聖域から殆ど動いていないとはいえ、オーリムで人やこちらの魔物なんて全然見てないけどね。あそこは周りから入って来づらいから余計なのかな」
「フィルフサに襲われている可能性もあるしな。正しい使い方として一か所はオーリムへの連絡用に確保しておくのも手なのか?」
「こちらの人が誰しもライザ達の様な子だとは限らない。偶然見つかって、1人でもクリント王国の者達の様なのがいたら、そこから伝播しちゃう気がする」
「ままならないな。信じてみたいものではあるが」
後ろの2人はオーリムの話かな。
どのくらいオーレン族の人たちが生き残られているのか分からないけど、奇跡的な出会いだろうし積もる話もあるよね。
でも……水や蝕みの女王、聖域の浄化って課題が終わったら、キロさんはまた一人での生活に戻るつもりだって。元居たところが聖地ってことはあるけど。
さびしくないのかな。
「……お、あそこらへんっすね」
「下からだと全然分かんないわね」
レントが崖の上を指さした。
着いたらしい。けどホントにただの崖にしか見えないわね。普通なら通り過ぎるわけだ。
「……風の吹き溜まりがあるね。これを使って飛んだのかな」
「条件も場所も良かったという事か。全く嫌な頭の回し方をする……さあレント」
「はいっ! ――いっくぜえぇ!!」
レントが……助走のためかな? ちょっと後ろに下がって。
「うおらぁ!!」
ザクッ!
崖に向かってジャンプをして崖に剣を突き刺す――スタルチウムじゃなかったら折れてるよ?
そこから……
「うらっ! せいっ! もういっちょ!」
ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ!
身体を振り上げて反動で剣を引き抜き、更に上の段へ。完全に曲芸ものね……。
4、5回で登り切った。素直にすごい。
「すごいね。あんな登り方は予想してなかった」
「普通あんなこと考えませんよ?」
「なかなか面白い登り方だ。では私も自力で登るとしよう――ふっ!」
ドッ!
リラさんはひとっ飛びで崖の半分まで到達して、そこに鉤爪を突き刺して腕の力だけで更に上へ……無茶苦茶だ。
「崖を垂直に走り登るかと思ったけど、弟子のやり方を酌んだのかな?」
「リラさんだとその光景に違和感が全然ないのがすごいですよね……」
「じゃあ私達も行こうか。Musca!」
「……ぅうおぉぉ~~っと!」
キロさんが詠唱すると……すっごい! 身体が風で浮いた!
これは楽しい、新感覚だ!
「一言の詠唱で十分なのだな。流石だ」
「リラさんの登り方はさすがなんてものじゃなかったですよ?」
「すげえよな。最初のジャンプで半分なんざまだまだ先の話だぜ」
「あんたの感想はそこなの?」
「そんなに先の話じゃないと思うよ? ……クリント王国の者に精霊術士が居たのか分からないけど、錬金術の道具で風の力を使ったのかな」
あたしだけ自分の力で登ってないんだよなあ。前に話したみたいな道具作れるかな?
レントはもう感覚がオーレン族寄りになってるね。
さてと。
「すっごいわね。ホントにここだけ別の鉱石が表出してる」
「逆さ石にセプトリエン、七煌石――確かにあるね。これは……」
「琥珀っすね、メイプルデルタで散々採ったよなあ……ここに樹液の出る木はねえみたいだけど」
「これは、琥珀とは色が違うか?」
「別の鉱石みたいですね……面倒だしまとめて発破しちゃいましょうか」
「ライザお前、その辺の適当さは変わんねえのな?」
こんなのいちいち手で砕いてらんないって。アルさんはやってたんだけどさ。
とはいっても、品質の良すぎるフラムを使うと文字通り木っ端みじんになっちゃう。
発破用の威力の小さいやつを何回かに分けて使う感じだ。
このフラムでいいかな? クリスタルセットよし!
「じゃあいきますよ~。採取は、爆発だっ!」
うりゃあ!
ドコン!
「アンペルみたいな事を言い出したな」
「破壊と創造は表裏一体……だったかな?」
そんな意図なかったんですけど? さぁてと発破の具合は……ぬ。
「……セプトリエン、だったか? あれだけきれいに残ってやがんな」
「流石の硬さだな。だからこそ鈍器になり得るんだが」
「もっと威力上げなきゃダメかなあ」
他の鉱石はいい感じにいけた。逆さ石はちょっと砕けちゃってるけど。
セプトリエンだけ、まるで他の部分を取り除いただけみたいに残ってる。ぐぬぬ。
「大雑把でいいなら切ってみようか?」
「そんなことできるんですか? 相当硬いんですよね?」
「やってみないと分かんないけど、まあ粉々にはならないでしょ。Glacies Virgo.」
キロさんが何かの詠唱……おお? 精霊、いや妖精なのかな?
「ほう、氷精の召喚か。キロの詠唱だと流石に存在がはっきりしているな」
「凍らせると割と砕きやすくなるからね……お願い」
3体召喚された氷精さんみんなが剣みたいなのを持ってるね。
振りかぶって~。
スパンッ!
……うげえ。マジか。
「やべえな、真っ直ぐな太刀筋だったぜ」
なんであんたはそこに注目してんの? 事実だけとらえようよ?
「切れ味自体はそうあるわけじゃないはずだから、凍らせたのが良かったかな?」
「ならば冬場であれば採りやすいのか?」
「この辺の冬は-200℃くらいになるの?」
「なりませんよ! そんな気温じゃ周りの自然も全滅しちゃいますって!」
単なる氷精さんじゃなかった。-200℃とかもう想像も出来ないよ。
とりあえず採れた鉱石を種類別に分別しとこう。
オーリム由来の3つに……レントが言ってたのは琥珀水晶だね。それに彗星岩。
残りの一つ……コレはなんだろう? 金属のような石のような? アンペルさんに聞きますか。
この収穫は大きいね。あたしでもクリミネアは作れるし、ゴルドテリオンの素材も補充できる。
でもセプトリエンはキロさんかアルさんの手を借りないとあたしが使うのは難しいかあ。
「ここでの用事は済んだか?」
「はい! お手伝いありがとうございました!」
「こっちにも収穫はあったからね。風の吹き溜まりは十分に力を借りれそうだし、氷の乙女の威力も実用に足りそう」
「んじゃ……アレをヤりに行きますか、リラさん」
「ああ。あんなものを何度ものさばらせるつもりはないからな」
リラさんが親指で北を指す――あーあのでっかい、メガワイバーンだっけ?
そういえばここに来る前に潰すって話してたわね……。
「私達の手出しは不要だ。レント、やれるな?」
「はい! 訓練の成果、見ていてくださいよ!」
「ん~、少しは私も試し打ちをしてみていい?」
「威力は抑えてくれ。キロだと即死させそうだ」
会話が物騒だよ……。
ということでメガワイバーンの元に向かう。
前はタオが「絶対ヤバい」って言ってた魔物が、今や試し打ちの的扱いだ。
強くなったなあ。
「それじゃ、基本俺がやるんでキロさんは軽め限定でいいっすか?」
「了解だよ……どのくらい絞ればいいんだろう?」
ここまで近くで見たのは初めてだけど、結構でっかくない?
古城の竜と翼竜の中間はありそう。なんでこんなのが一匹ポツンといるんだろうね?
バッサバッサと飛んでたそれは――しっかりレントを敵と視認した。
「それじゃあ……行くぜえ! どりゃっ!!」
レントが一気に切りかかる。いつの間にかアクロバットな攻撃が追加されてるわね。
攻めるだけじゃない。時折間を空けたりフェイントを仕掛けたり。
攻めつつ避けつつ力を溜める――戦い慣れてるなあ。
キィエエェァァアアアッ!!
でもメガワイバーンも一方的に押されてるわけじゃない。
突進やら風圧やら……ブレス以外はあの時の竜を思い出すね。
こりゃ初めて見た時じゃ逃げ帰ること確実だったわ。
でもそこに。
「どんなもんかなぁ。Tonitrum.」
ワイバーンに電撃――じゃなくてどう見ても落雷。軽くってのはどうなった?
轟音を伴った雷の一撃は。
「キロ、やり過ぎだ。あれは雷に弱い」
「そうだったんだ。申し訳ないね」
一発でブレイクさせた……威力がおかしい。これで控えめ?
残り体力は分かんないけどあちらさんはフラフラだ。
「すっげえ威力っすね……それじゃこの時間、しっかり使わせてもらいます!」
さすがのレントもちょっとは驚いたらしいけど、すぐに気を取り直して。
レントの身体から魔力みたいなのが噴き出てる――えっ。
なにこれあたし知らない!!
「じゃあ……初公開だ! 俺的な「フェイタルドライブ」!」
「マジ!?」
「ほう!」
「これは見ものだね」
ウッソ、あんたもう作ったわけ!? リラさんすら知らなかったっぽい。
完全オリジナル!?
大剣を地面に引きずるように体勢を低くして。
「俺の本気、見せてやるぜぇ!!」
バチバチバチバチッ!!
立ち上ってた青い魔力みたいなオーラが弾けて。
レントらしい雷のエレメント……のはずなんだけど火も混じって赤くなってる!
その雷も弾けて。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
ギッ! ギィッ!? ギャアッ!
オラオラと――レントにしては珍しい連続攻撃だ。剣のぶん回し。
技といっても力技な気がするのがレントっちゃレントらしい。
と思ったら。
「ほぉらよっ!!」
回転切り……タービュランスっつったっけ?
アレみたいなので一気にワイバーンを打ち上げて。
最初に弾けさせたオーラを、右腕に込める。
「これで終いだ。インペリアルッグリーーーヴッ!!!」
空中での、雷と炎をまとった回転連撃――火のエレメントにも結構適性があったんだね。
打ち落されたワイバーンは、すごい勢いで地面にたたきつけられて……そのまま燃え尽きた。
うわぁ~先越された! 完全に予想外だよ。
まあ誰よりもずっと鍛錬を続けてたんだし、さすがかな。
ストッとレントが降りてきた。なんかいつもよりはかっこよく見える。
「ふぅ……どうですか、リラさん?」
「いい技だ。正直驚いた。礼と言ってはなんだがそのうち私のも見せよう。本当に強くなったのだな、レント」
「十分にフェイタルドライブだったよ、レント。リラの方は――噂に聞く白牙氏族のフェイタルドライブ? 期待大だね」
「キロには及ばないだろうが、一応私も継承者だ。無様は晒さんさ」
「あんた……いつ頃こんなの出来るようになったの?」
「マジで最近だぜ? 泳いでるだけだと頭使わねえからさ、その間に考えてみたんだ。俺はリラさんみたいに精霊は使えねえけど、エレメント自体は使えねえわけじゃねえからそれを身体に巡らせてみたらってな」
それ、泳ぎながら考えることじゃないと思うわよ?
でもわりかしちゃんと考えられてるのがすごい――身体に力を巡らせる、ね。
リラさんの方は……本家本元オーレン族のフェイタルドライブかあ。伝承者とな?
キロさんのは隕石を喚ぶんだっけ? リラさんのも継承してるものらしいすごそうな技っぽい。
レントも編み出したことだし、あたしも考えないとね。ブラストノヴァを超える一発。
隕石かぁ……。
「戻りました! オーリム由来の素材ありましたよ……アルさん、もう大丈夫なんですか?」
「お帰り。ありがとう、もう大丈夫だよ。なかなか大収穫だね」
「みんなおつかれさまです! ご飯できてますから!」
「我々は先に頂かせてもらったよ。採取された素材を検分させてもらっても?」
「うん、あたしからもお願いするよ。クラウディア、ありがとうね」
「俺達も邪魔させてもらっている」
うん? こっちでは違和感のある、でも聞き覚えもある……うおっ!?
「ボオス!? タオもこっちに……じゃあ調査の方は」
「うん、やっと見つけられたよ。複写してきたからあとでみんなに説明するね」
とうとうこっちも進展があった!
しっかし、とうとうボオスまでこの拠点に来る日がねぇ。
でもまずはお昼ご飯を頂こう――お腹が鳴らないようにしないと。
「……これはマグネマルモアだな。金属成分を多く含む大理石の一種だ。割と反応を起こし易くてな、錬金術には使いやすい素材と言える」
「単なる無機塩や酸化物とは違うようですが……安定しているのに反応しやすいというのは面白い性質ですね」
「これがオーリムの素材ですか。僕たちが見てきた原石や鉱石とは見た目から違うんですね。クリント王国はこういった素材を求めていたのかな」
「いや、違うぞタオ。この辺りの素材はついでといったところなんだ。奴らが根こそぎ漁っていったのは、水底に少量だけ含まれていた光る砂だ」
「あの砂は精霊の力が宿った鉱物だからね。錬金術で精霊の力を扱う分には重宝したんじゃないかな。だからといって、水を持ち去られるとは思わなかったけど」
「その水が島に来た経緯も――こいつで分かる」
アンペルさんたち知識組があたしらの採取してきた素材の検証を進めてた中で、ついにボオスが切り出した。タオが複写したってのは結局なんだったのかな――ボオスが紙を広げる。
これは地図と……その旅程表? でも、この絵って。
「……おいボオス。この地図、マジなのか?」
「それらしく見せる意味もない、第一写したのはタオだぞ? 気持ちは分からなくないがな」
「ああ……まさかあそこに先に着いてたやつがいて、それがお前の先祖だなんてな。軽く嫉妬もんだぜ」
地図に描かれてた、一番分かりやすいシンボル。
――どうみても。
「あの塔?」
「だと思うよ。筆記は適当だけど絵の方は頑張って似せたからね。僕も見た時は驚いたよ」
「けっこう具体的な地図だよね。範囲は狭いけど私たちが使うものより詳細な……西の丘の祭壇とか渓谷の形とか」
島から塔までの地図。モリッツさんの手帳の表紙の裏に入っていたらしい。
描かれた地図が何年前の物なのか分からないけど、ライムウィックの丘とかは見たまんまだね。
渓谷は思ってたよりも深そう。アルさんたちが言ってた寸断された道ってこれかあ。
完全に崖になってるように見えるね。どうやって越えたんだろう。
「……翼の靴というのはなんでしょう?」
「おそらく「風の精の靴」の事だろう。古式秘具とまでは言わないが貴重な代物だ。昔のボオス少年の家にあったとは驚きだがな」
「あたしそういうのを作ろうと考えてたんですけど……おんなじ物がもうあったんですね」
「多分だけど材料は……あの砂かな。精霊の力を宿している物質で、しかもクリント王国の錬金術が使えるものとなるとそれしか思いつかない」
「私達オーレン族以外の、こちらの人間で精霊の力を使おうとした産物か。称賛は出来ないが執念は凄まじいものだな」
「ボオス。この靴についてはなんかねえのか?」
「実物も無ければ具体的な作り方が載った物も無かった。だがブルネン家に錬金術の蔵書があった以上はその靴を作ろうとしたのかもしれん。加えてあの球を起動させる方法とかな」
しっかり調べてくれてたか。それで無かったならしょうがないよね。
そんな話をするボオスの顔は厳しい。理由はどうあれブルネン家がやってきたことだからかな。
「で、だ。最終的にあの「渦巻く白と輝く青」を発見したのもあの塔という事だろう。フィルフサの話があるのだから当時も禁足地だったと考えるのが妥当。島の水が枯れたタイミングで何かないかとそんな場所に踏み込み、偶然持ち帰ったキロ達の世界の水を使って権勢を得たというわけだ。進んで禁忌を侵していたなど噴飯ものだな」
「でもそのおかげでボオス達が生まれて、私がここに来て、ここに居るみんなで協力し合ってる。不思議な縁だね」
「アルからのプロポーズが無くてもこちらに来ようと思ったか?」
「ん~可能性はゼロじゃなかっただろうけど、あっちにいたんじゃない? やる事はあったんだし切っ掛けは必要だよ」
「あれってプロポーズになるんですか?」
「寧ろあれがプロポーズでなかったら何がプロポーズになるのかね?」
アルさんの世界でアルさんに泣かされた女性は何人いたんだろう。
「あなたが必要です」って言われてホントにただの協力~って……それはないでしょう?
「アル、間違ってもエドさんみたいなのはダメだよ? あれは特殊パターンだから」
「それも知ってたかい? いくら何でもアレは無いと僕も思うよ」
お兄さんは下手すりゃもっとヒドイ?
「あちらの英雄殿はどうやって口説いたのかね?」
「ウィンリィ……僕らの幼馴染で兄さんの嫁さんが言うには「俺の人生半分やるから、お前の人生半分くれ!!」だったそうで」
「普通にプロポーズでいいと思うのは俺だけか?」
「僕には取引っぽく聞こえるね。アルさんの言う等価交換まっしぐらって感じだ」
「それでプロポーズを受けたウィンリィさんもすごいよね!」
「その奥さんの返しがすごかったみたいでね? 「半分どころか全部あげる」って」
「ほう。大した器だ」
「うわ~奥さん男前! カッコ良すぎません!?」
女性だから男前なのはおかしいけど……なんて言うんだろう? ともかくそんな感じだ。
「僕としては、あの兄さんからプロポーズしたっていうのが驚きなんだけどなあ」
「……その兄がいたから、この弟なのか?」
完全に話が脱線してるけど、正直こっちの話を聞きたい。
ウィンリィさんに会ってみたいなあ。気が合うと思うんだよね。
「まあ兄さんやウィンリィについては時間がある時に話してあげるよ。とにかくボオス君とタオのおかげで古式秘具があの塔に在った事は分かったから、他にもクリント王国やオーリムについて情報が残っている可能性が見えてきた。ライザやキロさんの言っていた素材――聖石っていうのも採れるのかもしれないしね」
「随分興味深そうな素材の名が出てきたな? 聖石があそこにあると来たか」
「古式秘具が単にあの塔に転がっていた、というわけではないだろうからあそこがクリント王国の拠点の一つと考えるのが妥当だろう。古城と違って大樹の支えのおかげなのか崩壊はしていないし、中に何か残っているだろうというアルの考えはもっともだ」
「オーレン族の人って目がいいんですね……大樹の支え?」
「リラさんは天候に関係なく塔が見えてるらしいぜ」
「ライザ達には塔自体あまり見えてなかったの? あんなに近いのに?」
「僕、眼鏡を外したらこの距離でもキロさんの顔がぼやけますよ?」
「タオは暗い所で本を読む習慣を変える事だ。あと出来るだけ離して見ろ。蔵書探しで更に視力が下がっていないだろうな?」
「遠くを見る習慣をつけると良くなるらしいよ?」
そんなに変わるのかな? 良すぎると普段が疲れそうな気もするけど。
あたしもそれなりに良い方と思ってたんだけど、オーレン族の2人には何が見えてるんだろう。
「それではあの塔に向かう事を次の目標としましょう。出発はいつにしますか?」
「無論明日、と言いたいところだが……後1日待ってもらえないか? 私とリラの武器の新調もしたいのでな。ライムウィックの丘でさえ魔物の強さは相当だ。悪魔の野と呼ぶほどだろう? 装備を整えるに越した事はないと思っている」
「じゃああたしもみんなの装備を調合するね! 宝石類が調合出来たらエナジーペンダントみたいな装飾品が作れるかもしれないし」
一番の課題だったレシピはアンペルさんから提供してもらえたんだし、素材があればあたしでも出来そうな感じだ。みんなの武器を新調したいのはあたしも一緒だしね。
「助かる、が……ライザ、お前さんも少しは休んだ方がいい。ずっと動きっぱなしなのを自覚しているかね?」
「えっ?」
あたしそんなに動きっぱなしだったっけ?
「ライザ、君は1週間前何をしていたか覚えているかい?」
「7日前ですか? えーとえーと……なんでしたっけ?」
「お前らで俺の計画した遠洋漁業を妨害した前日だ。もう忘れたのか?」
うそ!? あれたった1週間前の出来事だった?
たしかに色々やりすぎて何をいつやったか覚えてないわね。
「宝石類の調合は私がやろう。ライザは宝石の調合を追々覚えるとして、やるとしても装飾品に限定するといい」
「武器関連は僕でも協力できるからね。少し羽を伸ばすといいよ」
「レント、お前もだ。鍛錬するのは大切だが休息によって身体が大きく回復し、強化される。リズムを付けるんだ」
「分かりました!」
「タオ君もこもりっぱなしで疲れてるんじゃないかな?」
「う~ん……僕の場合は普段からそんな感じだったからなあ」
「我々はともかくお前達は働き過ぎの状態だ。一度リフレッシュしておくといい。次は……いつ休めるのか分からないのだからな」
う~ん。いきなりお休みとなっちゃってもなにをしたもんかなあ。
部屋にこもってるなんてあたしの性に合わないし、家に居たら農作業手伝うことになるしなあ。まあ、たまにはいいかな。
「ふむ、こんなものだろう。マグネマルモアが採れたのは丁度良かったな」
「これがスピリナイト?」
「朝にアルが見せてくれた宝石にこんなのあったっけ?」
「無かったよ。スピネルかと思ったけど全く別物だね。本当にどういう原理なんだろう?」
「こちらの住人はどうにもこういう物を好むな。私には分からない」
夕方。
拠点にいるのはアンペルさん、リラさん、キロさん、アルさん、あたしの5人。
アンペルさんがあたしにくれるっていう調合用の宝石類をサラリと作っていく。
久々のはずなんだけど……そんな簡単な調合じゃなかったよね?
経験が為す業ってやつなのかなあ。
ちなみに今のあたしじゃ素材が足りなかった。峡谷にあるっていう緑色の砂を集めなきゃ。
「これらの宝石類は私達のリンケージ調合にとって便利な特性を有していることが多くてな。出来る限り特性を開放した宝石だと尚使い勝手がいい」
「貰ったレシピをまだしっかり読めてないんだけど……「影響拡大」だっけ?」
「そうだ。エレメントの属性が一致している場合は宝石一つで周囲のマテリアル環を開放されられる。つまりは投入量を減らせるわけだ。加えて様々な素材の代替にも使いやすい」
「ああ、ライザの言っていた歪みの緩和っていうのはそういう事なんだね」
「全然分からない」
「私達には理解の必要もないだろう」
アルさんは理解できたらしい、さっすが。
オーレン族の2人は本来馴染みがないものね。
宝石類がこういう特性を持つってことは、「賢者の石」はこれが極端な感じなのかなあ。
「ライザも理解している通り、宝石類は装飾品の原材料となる場合が多い。明日は休む事が第一だがふとした際に考えてみるといい」
「ありがとう、アンペルさん!」
調合してくれたスピリナイトと、それからパールクリスタルをいくつかもらった。
フルート修理の時に使った時は貴重品って思ってたものがまあパラパラと。
あの時に使ったのはアルさんが自力で作ったものだから貴重品には違いないけどね。
今度アルさんから貰った分を補充しよう。
さて、あたしも島に戻りますか。
「レントにも言ったがしっかり羽を伸ばせ。それがいい方向に繋がる事も多いからな」
「リラさんはどうするんですか?」
「アンペルが爪を作り次第その使い勝手の確認だ。数十年付き合ってきた武器を変えるのだからな。重さや切れ味の差に慣れなければならん」
ずっと使ってるわりにすごく綺麗なままよね。
手入れがしっかりされてるんだろうな。リラさんの性格が分かる気がする。
「まずはリラの武具を作るとしよう。ついで杖、それからクロースだな。腕が鳴るじゃあないか」
「お前もはしゃぎ過ぎるな。世話など見ないぞ?」
「出会い頭に襲ってきたやつに言われてもな。ああアル君、武器作成について相談したい事があるのだが明日少し構わないかね?」
「分かりました。お昼過ぎに伺いますね」
「お昼前に来て。お昼ご飯」
「はいはい。それじゃあライザ、僕らも島に戻ろうか」
「はい。今日は私が漕ぎますね」
アンペルさんとリラさんはなかなかインパクトある出会いだったみたいね……。
明日はアルさんも不在の時間あり、か。
ホントにひと月前の生活に戻りそうね。
アルさんと2人、舟に乗る。
2人の時はアルさんが漕いでくれてたけど、今日はお疲れのはずだし休んでもらおう。
指輪……いや、深い意味はないはず。でもどうにも気になるようになってきた。
ストレートに聞くのもなんだし前のお話の続きを聞こうかな。
「アルさん。またあっちのお話って聞いてもいいですか?」
「うん? 構わないよ? そんなに楽しい物じゃないと思うけど」
旅の内容は……多分戦争関係。聞くべきじゃないね。
そういえば以前考えてたことがあったっけ。
「アルさんの周りの方ってどんな人たちがいたんですか?」
アルさんとかキロさんとかアンペルさんとか。
みんなあたしはすごいって言ってくれるけど、あたしは周りがすごくてそれに助けられてるだけだと思ってる。
なら、アルさんはどうなのかな?
「そうだね、ライザが知っている人以外だと、兄さん関係で軍人の方が多かったのかな。一緒に行動したり助け合ったり……捕まった事もあったなあ」
「捕まった……アルさんがですか?」
捕まったってことは……アルさんが悪いことしたってこと? 信じられないんだけど。
「あの時は事前連絡無しで軍事施設に入っちゃってね。
「お兄さんは軍の人だったんですよね? それでもダメだったんですか?」
「あそこはルールが独自で……まあロテスヴァッサ王国の中でもクーケン島の掟が絶対、みたいな感じさ。施設トップの少将さんが怖いのなんのって」
なるほど、あたしらがブルネン家に踏み込んだ場合の規模がでっかい版ってことね。
しょうしょう……これも人、なんだよね?
「以前のたいささんとかしょうささんとか、それってなんなんですか?」
「ああそっか、ライザが知らないのも当然だったね。ええっと……」
アルさんが持っていたカバンからゼッテルとペンを出してなにか書いてくれてる。
見せてもらったのは――なんだこれ?
「士官階級……?」
「知らない言葉かな? 例えば島の顔役はモリッツさん、長老会のトップは古老様、護り手のトップはアガーテさん、バレンツ商会の会長はルベルトさんでしょ? 軍の場合はトップと一言に言っても区分が多くってね。全体なのか地方なのか班なのか、それぞれで全部名前が違うんだ。ただ立場が上の人ほど意見を尊重する事になってて、その大まかな一覧がコレなのさ」
少、中、大はまだ分かりやすいね……小じゃないんだ? あと准?
問題はこっち……尉、佐、将、大総統。全くわかんないわね。
「みんなこの……階級? って言うのが付いてるんですか?」
「そうだけど、ここに書いてあるのはかなり上だけさ。ここに書いてない肩書の兵の方が大半だよ。兄さんは少佐相当だね」
少佐……あれだ、よく出てくるマッチョマンさん。アームストロングさん……でいいんだよね?
というかこれに書いてある肩書ってことは。
「……お兄さん、めっちゃお偉いさんだったりします?」
「それを兄さんに言わないであげておくれ。軍属である事をよしと思っていたわけじゃないから」
12歳、だったよね? それで軍のお偉いさん……いや、そう考えるのはやめとこう。
これでとりあえずの一覧はわかったね。
つまり、これまでに聞いたのはたしか……大佐、少佐、中尉、少将?
「大佐さんが炎の人、少佐さんがマッチョさんですよね? 中尉さんと少将さんってどんな人だったんですか?」
「よく覚えているね。中尉は大佐の秘書みたいなのをしていた、背と髪の長さはリラさんくらいの女性だよ。少将は少佐のお姉さんだったんだけど……世界の怖い女性トップ3かもしれない」
実は結構人の顔と名前を覚えるのは得意だったりする。なのに勉強はダメなんだよなあ……。
そしてまぁた女の人。だけどいままでと毛色が違うかな? マッチョさんのお姉さんだからやっぱりマッチョだったりする? というか、女の人もいるんだ。
やっぱりというか安心したというかだけど、アルさんの周りの人たちもやっぱりすごそうだ。
そんな人たちをたった1人でまとめ上げてるっぽい大総統さんはさらにすごいんでしょうね。
「軍の人以外はどんな人たちが?」
「う~んとねえ……多すぎるなあ」
「……女性だと?」
「女の人だと……まずはウィンリィとばっちゃんだよね。それから
アルさんが指を折って数えていく。
多いとみるべきか少ないと思うべきか。師匠って女の人だったんだ。
懐かしいっていうのは……全部? グレイシアって人?
「……ああゴメンよ。全然食べてなかったなって思って」
「なにをですか?」
「グレイシアさん……お世話になった方の奥さんなんだけど、アップルパイを作ってくれてね。その味をウィンリィが継いでくれたからよく食べてたんだ」
これは……新情報だ。アルさんの好みって初めて聞いた。
クラウディアに相談しようかな、お店に置けなくもないかもしんないし。
「細かく挙げればもっといるけど、まあ大体はそのくらいかな?」
「ありがとうございます……なんかちょっと安心しました」
「安心、かい?」
「アルさんってなんでもできちゃうから、アルさんがお世話しててもアルさん側はお世話になってなかったり? とか思っちゃって」
「あはは、まさかだよ。僕だけで出来る事なんてたかが知れていたさ。そもそもあの身体だよ?」
あっ……そうか。
アルさんは14歳の時、あんなやせ細った身体だったんだ。
「僕の場合はライザより時期が早かったかもしれないけど、最初から錬金術が理解出来たって事すらなかったよ? 兄さんと一緒にかなり勉強して漸くさ。父さんが錬金術に詳しくなかったら触れる事すら無かったかもしれないし」
「ずっとアルさんはスーパーマンって思ってました」
「もしそうだったら今日の指輪づくりも苦労してないさ」
おっ!! まさに聞きたいお話が!
聞いちゃえ!
「その指輪のことって、朝キロさんから突然だったんですか?」
「そうだよ? 今朝の宝石話の後に「多分これ宝石に出来るから削っといて」って……何を請求しようかな」
「ま、まあせっかくこっちに来た記念ってことなんですし!」
まずいまずい、今キロさんになにか請求したらキロさんはそれを成し遂げようとしちゃう。
たとえ冗談交じりでもシャレにならないんだし、ここは止めないと。
結局指輪に大した意味もなさそうだし、あたしも作ってもらおうか。
――それこそ意味が出るっつーの! ロミィさん辺りに3時間コースだ。
ちゃんと今後に役立つ装飾品を自分で作ろう。イヤリングとかいけるかな?
港に到着っと。今日はあたしも直帰かな。
「お疲れ様、ライザ」
「いえ、毎回やってもらってるんですし。アルさんも休んでくださいね?」
「そうさせてもらうよ。ライザは明日しっかり羽を伸ばしてね」
それなんだけど、正直なにしよっかなあ。
最近はずっと錬金術やらオーリムやら魔物やらだったし、他にやる事も……。
たまには農作業を手伝いましょうかね。
そういやあたしのカッコ……王都じゃあんまりよろしくないんだっけ?
――久々に着てみるかあ。
フェイタルドライブ第一号はレントでした。ずっと修行してますし。
崖上りはノコギリザメの魚人さんをイメージしてください。
説明が多いですが、原作であまり解説してないような事を話に組み込んだ結果
こんな感じになっているってだけで、そこまで重要な情報はないです。
作者の妄想の産物です。
次はライザ達の休日。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。