ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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今までのストーリーとはちょっと違う息抜き日。
少し日常を見つめ直します。

そして初めてまともなセリフが出たキャラも。

誤字報告ありがとうございます。作者は言い回しが下手ですねえ……。

今回もよろしくお願いします。


53. 73日目①  ディヴェルの抱擁

朝4時30分。

 

目覚まし無しでも普通にこの時間に起きるのは農家生まれの(さが)なのかな?

今日は農作業を手伝おうって思ってたのもあるのかも。

いつもより30分早いから、まだお父さんもいるよね。

 

 

 

「おはようライザ。いつもより少し早いお目覚めだね」

 

やっぱりいた。

 

「2人ともおはよう。今から作業?」

 

「コーヒーを飲んでからだよ。ライザも飲むかい?」

 

「砂糖とミルクありで。なんでお母さんもそのままで飲めるかなあ」

 

「子供にはこの苦味の良さが分からないのさ」

 

たしかに苦いと目が覚めるけどさあ。限度ってもんがない?

焦がした豆の煮汁みたいなもんなんだから、甘さを求めるのも変なのかもしれないけど。

 

「今日は朝から工房に行くわけじゃないから朝の作業は手伝うよ」

 

「珍しいね、工房に行かないと宣言される日は。手伝ってくれるなら麦達も喜ぶよ」

 

「アルフォンス君に用事がある感じかい?」

 

「たまにはフリーの日を作りなさいって。そういう日が新しいアイデアにも繋がるってさ」

 

「成程、彼らしい。ふとした拍子に目に付いた物からこうしたらいいんじゃないか、と思いつくのはあるからね」

 

「それでもライザが自分から作業を手伝うなんて口にしたのはいつ振りかだよ。まあ偶に朝食を作っていってくれたのは嬉しかったけどねえ」

 

少なくとも、前年の夏は一回も作ったことないわね。たまにはやるようにしますよっと。

 

……うん、苦いより甘い物での目覚めの方が絶対に良いよ。

 

 

 

「ライザはそっちの区画の草刈りをお願いするよ」

 

「りょーかい」

 

「ライザも居るなら暑くなる前には終わらせられるかね。いよいよ乾季だから少しでも早く終わると助かるよ」

 

乾季、か。

 

門はアルさんの石壁で塞いであるけど、それでもフィルフサは大侵攻を行う気なのかな。

もしそうなら……それまでに水をオーリムに返す事と女王を倒す事を両方達成しないと、お父さんたちとこんな話も出来なくなる。

 

ずいぶんな事になったもんよね。

 

それにしても――ナナシ草ってなんでこんなに何もしなくても生えてくるかなあ!

 

「草刈り鎌だと根っこが残っちゃうから、調合するなら根こそぎ取れるものかな?」

 

水を張ってる時期ならまだ楽なんだけど、水を抜いた後は手間だよね。

今こうやって草取り作業をやってるんだから、アルさんでも解決できてない問題かな。

 

鎌は昔から使ってるけど……最近は採取の関係で色んな使い方を覚えたから、以前よりは刈るのも早くなった? でも根っこごと掘り起こすなら小型の鍬みたいなのがあるべきかな?

あとは腰がなあ。

 

「……ふう、この辺は終わりかな。あとはあっちの……」

 

この辺はあんま生えてないね、作業済みかな。

他にやる事を聞きますか。

 

「お父さん、こっち終わったよー」

 

「ありがとうライザ。じゃあ次は畝の間を鍬で……」

 

しかしまあ、麦一つ育てるにしたって色々やる事があるもんだよね。

以前は島で全然育たなかったっていうのも不思議な話だし、逆にクーケンフルーツは島でしか育たないし、分かんないもんだ。

 

他に島で見る野菜類っていうと……自生している七色葡萄やうに、フレスベリーくらい?

メイプルデルタなんてキノコとかたくさん生えてるのにね。

 

「よいせ、っと」

 

「そろそろ陽が昇ってきたね、汗をかき始める前に上がるとしようかい」

 

「そうだね。ライザ、お疲れ様」

 

「はーい」

 

陽の高さ的に7時前くらいかな。

あたしがやった分の仕事を……普段なら陽が昇っても続けるか、急いでやるか、明日に回すか。

ご飯は遅くなるし、余計に疲れるし、休みの日もなくなる。

 

いや、別に調合で遊んでるつもりはないよ?

 

「やっぱりライザが居てくれると仕事もうんと早くなるし、土も喜んでくれるよ」

 

「その「土が喜ぶ」って具体的にどういうことなの?」

 

「土も僕達と一緒で呼吸しているんだよ。だからライザが鍬で耕してくれたおかげで、土も呼吸がしやすくなったのさ」

 

土も生き物、か。

考え方次第なのよねえ。見方、捉え方、それだけで世界は変わって見える。

アルさんやキロさん、アンペルさんたちが見てる世界はあたしとどう違うんだろう。

 

「麦も一緒なんだよ。ご飯を食べなきゃ枯れてしまうし肉ばかり食べていると体調を崩す。草が生えていると食べにくくなってしまう。僕達と一緒さ」

 

「一回でもその説明してくれたら分かりやすかったのに」

 

「ライザはお父さんに一回でもそれを聞こうとしたかい?」

 

「む……まあ、そうなんだけど」

 

聞いたことなかったかもしれない。半分反射で逃げてたもんね。

 

そんな話をしながらの朝ご飯になった。

今までなら頭の中は別の方向に向いてたかな。何か他に面白い事をって。

真面目に聞くと色々知らないことが分かるもんだ。

 

「お昼まではどうするの?」

 

「クーケンフルーツの方をやる予定だけど……ライザも休みを取るようにアルフォンス君から言われているんだろう? 日中のライザをあまり僕達は知らないけど、錬金術を頑張っているというなら休める時は休む事も大切だよ」

 

「あなたは相変わらずライザには甘いわねえ。まあお父さんがせっかくそう言ってくれてるんだから、ライザなりに気分転換するとしなさいな」

 

「わかった。ありがとね」

 

気分転換、かあ。

いつもと違う事……じゃあ、昨日思ってた通りにまずはコレを変えますかね。

 

 

 

 

 

 

「アルさん、おはようございます」

 

「ライザかい、おは……へえ、そういう格好は久しぶりだね。今年は初かな?」

 

「そうかもしれないですね」

 

アトリエで仕事をしなくてもここに来るのはもはや習慣よね。

 

けど今日のあたしは一味違う――服と髪型変えただけだけどさ。

お母さんが王都から来た商人さんから買ったっていうお古。

最初にクラウディアに会った時、どっかで見た事があると思ったのはこれだったんだね。

 

普段来てる服よりかわいいとは思うけど、スカートってスースーするんだよなぁ……。

おまけにガーターリングの違和感が。

髪は左前髪だけちょっと結ってみたけど――超めんどくさい! 髪留めでよくない?

 

「ライザ! その格好どうしたの!?」

 

「クラウディアも来てたんだね、おはよう。お母さんのお古なんだ。気分転換にはいいかなって」

 

「あ、うん、おはよう! すっごくかわいいよ! すっごい似合ってる!!」

 

「服装もそうだけど……いつもの帽子とアリスバンドを付けていないとガラッと雰囲気が変わるね、ライザは」

 

なんだかクラウディアにべた褒めされてるよ?

似た服だと思う――というか相当似通ってるよね? クラウディアが着たらまた違いそうだけど。

 

帽子とバンドは……う~ん、自分じゃ見えないからかな。自覚が無いや。

とにかく下のスースー感がヤバイ。みんなよくこんなの普段から着てるよね?

 

だからこそあたしはめったに着ないんだけどさ。さすがに胡坐かけないし。

 

「今日はその格好で過ごすのかい?」

 

「一応そのつもりです。お父さんたちも、休みって言ってもらってるならそうしなさいって」

 

「普段からそういう服は着たりしないの? とっても似合ってるのに」

 

「スースーするから……」

 

「タイツなら貸すよ?」

 

「それ暑くない? 首回りとか腰回りも、あたしとしては今でもあっついんだけど」

 

春や秋はともかく、夏にあえての選択はしないかなあ。

おしゃれというものに、あたしは自分が思ってる以上に疎いのかもしれない。

 

「普段から着ていたら慣れるよ? 私は逆にホットパンツを履いた事がないから同じかもだけど」

 

「クラウディアがあたしのカッコ……ん~イメージがちょっと違うかな?」

 

キャミソールで出歩くのは……私にはちょっと勇気が

 

「クラウディアならホットパンツよりはジーンズかな? ツナギは違うかなあ」

 

「ツナギってなんですか?」

 

「作業着だよ。上着とかを工具に挟まれないよう上着とズボンが一体になっている服だね。ポケットがたくさん付いているんだ」

 

「鍛冶屋さんがそんな服を着てたかもしれないです。でもなぜその服のイメージを?」

 

「ウィンリィがよく着てたんだよ。彼女の場合は上着の部分を降ろして袖を腰で縛っていたけどね。髪の色と長さはクラウディアに近いからどうかなと思ったんだけど」

 

「それ、ツナギの意味ないですよね?」

 

話に聞いたウィンリィさんの快活さを考えると服装のイメージは合うかな。

そういえば容姿は聞いたことなかったね。長い金髪だったんだ。

 

「ツナギ……そっちなら。ライザ、今度一緒に着てみない?」

 

「うううん? 服があるなら別にいいけど……」

 

「やった! 頑張って縫うね!」

 

「自分で縫うの!?」

 

「流石に大変だと思うかな……どうしても欲しいなら作ってあげるよ」

 

いけない、クラウディアを止めないと今から作業に取り掛かりそうだよ。

とりあえず鎮火鎮火っと。

 

「僕は昼前にはアンペルさん達の所に行ってくるよ。せっかくお揃いの格好をしてるんだから2人でバーにでも行ってきたらどうだい?」

 

「バーって……港のあのお店ですね! まだ私お客として行った事なかったんです。ライザ、どうかな?」

 

鎮火しきってなかった!

あのお店かぁ。島で唯一の酒処。まともなデザートが食べられるのも唯一じゃないかな?

 

「あたしも行った事ないからいいけど……あそこってお酒を出すお店じゃないんですか? あとはなんだか高そう……」

 

「普通のジュースも出しているよ。1杯7コール位かな?」

 

「王都のカフェよりちょっと高いですね」

 

「クーケン島は果物の仕入れが大変だからそこは仕方がないね。少しならお小遣いを出すよ? 休むべきと思うのは僕も同じだからね」

 

「お小遣いまでもらえませんって。そこまで金欠じゃないから大丈夫です――それじゃ行ってみよっか」

 

「うん! 今から楽しみだよ!」

 

こんな機会でもないとなかなか行かないだろうし、ちょっと奮発だ。

さすがにお小遣いまでいただけない。お昼に行ってご飯も済ませましょうかね。

クラウディアは丁度焼き始めという事だから、またその時間に戻ってくるとしましょ。

11時待ち合わせっと。

 

ずっと島に住んできたから特に何も考えてなかったけど、この島ってたまーに観光で来る人もいるんだよね。あたしもそんな感じで回ってみようかな。

 

しかし……ちょっとアテが外れちゃった。()()()()()見てもらうのは初めてじゃないもんね。

 

 

 

「……ライザ、なんか変なもん食ったのか?」

 

「あんたはそういう反応すると思ったわよ!」

 

旧市街から北のボーデン地区へ。

レントの家がここってのもあるけど、大体このボーデン地区か港での釣りが日課だったよね。

予想通り釣りをしてて……予想通りの反応をしてきたわよ。

 

「いやだって、なあ? 帽子は被ってねえしリボン生えてねえしスカートだし……一瞬クラウディアかと思ったぜ」

 

「生えてるって何よ。クラウディアの服と似てるのはホントだけどね、さっき見比べてあたしも思ったし。気分転換ってこういうもんじゃない?」

 

「そうだな。いつもと違うって意味では釣りしてる俺よかライザの方が合ってるぜ。ま、俺は鍛錬する事が日課になっちまったから、釣りしてるだけでもわりと気分は違うけどよ」

 

「それなりに普段もやってない? 前も魚分けて貰ったし」

 

「食べる目的でやるのと単に趣味でやるのじゃ違えんだよ……まあここでやるのにも一つ問題があんだけどな」

 

「なに?」

 

「リラさんだよ。この前両手にお菓子を持って笑顔で歩いてるリラさんを見ちまったんだ。目が合った瞬間は心臓が止まったぜ……」

 

その光景は……レントにはヤバそうね。よく命があったもんだ。

 

アンペルさんが極端なだけでリラさんもわりとお菓子は好きなのよね。クラウディアのお菓子もよく食べてるし。目的ありきと趣味の違いか、そんなもんかもね。

あたしも農作業が錬金術のためだったら感じ方が違うんだろうなあ。

 

「んで、ライザはそのカッコで何するつもりなんだ?」

 

「お昼はクラウディアと約束してるけど、それ以外はなにも。観光客気分で島を巡ってみようかなってくらいよ」

 

「なかなか休めっつわれても思いつかねえもんだよな」

 

「家に居たら農作業になっちゃうしね。アンペルさんたちと関わるまであたしが動き出さなきゃ毎日休みみたいなもんだったし。んじゃ、お邪魔したね」

 

「おう、またな」

 

そのへんを考えると、ボオスはそういう時間が全然なかったんでしょうね。

アイツの言い分、今になると分かるわ。

 

さてと、トレッペの高台に行ってもしょうがない。観光客っぽくいくなら望郷岬かな?

あたしの家の向かい方向――タオんちの傍だしタオにも遇うかも。

 

 

 

てくてくと歩いて西に向かう。家に帰る気分ね。

望郷岬は島の北西端だから家よりもう少し先だけど、見慣れた景色には違いない。

 

周辺を色々冒険して思うけど――なんでこの島に人が住み始めたんだろう?

前に聞いた砂漠の街みたいな中継点にはしづらいだろうし……魔物が入ってこないから?

海側から宿場町に行きたい場合の中継にはなってるかもだけど。

 

他の街って行ったことないけど、北の宿場町とかどうやって魔物対策してるんだろうね。

 

島中を巡る水。

全部トレッペの高台から流れて来てるこの水が――まさか他所の世界のものだったなんて。

アンペルさんたちが島に来なかったらずっと知らないままだったかもしれない。

 

そうしたら知らない間にフィルフサの大侵攻やら竜やら……いまや想像できないや。

でもあたしたちは知らなかったけど、アルさんは以前からフィルフサや竜の事を知ってた。

今回の大侵攻にもいち早く気付いたよね。

 

その時、アルさんだけだったらどうやって動いてたんだろう?

 

もともと英雄級の強さのアルさんだから、竜の撃退は問題なし。大侵攻前に門の発見も出来てるよね。そしたら今みたいに石壁で門の封鎖も問題ない。

 

だとすると……一番の違いはキロさんがここに居るか、そうじゃないかかな?

ボオスが暴走する感じでキロさんの元にたどり着いてなかった場合、あたしたちはキロさんに会えてなかったかもしれないし。

 

――もしそうなったら、キロさんは1人で大侵攻に。

キロさんは……アルさんから口説かれて無かったら多分こっちに来なかったって言ってたよね?

 

逆に、アルさんが居なかったなら?

 

あたしたちが無事……とはいかなかったけど、最初の森の冒険から帰ってこれたのはアルさんが稽古と道具を準備してくれたからだ。そもそも冒険すら始まってなかったかも。

たらればを考えてもしょうがないって最近も聞いた言葉だけど、やっぱり考えちゃうね。

 

 

 

そんなこと考えてる間に着いた。意外と近いと言えるのかな?

 

「ここに咲いてる花って、なんて名前なのかな」

 

「病忘れの花」にも「セイタカトーン」にも似た色だけど、効能やエレメントは弱い。

名前は知らないけどナナシ草みたいにとりあえず付けてるって事はないよね。

こんな所にも知らない事ってあるもんだ。

 

「あれ……ライザ?」

 

「あ。やっほ、タオ」

 

「うん。その格好で後ろ姿だったから観光の人かと思ったよ」

 

「やっぱりあたしだって分かりにくい?」

 

「よく見たらわかるんだけど……ライザの帽子って頭の後ろを完全に覆っちゃってるじゃない? だから後ろ髪が見えてるって結構珍しい事だと思うよ」

 

あたしの識別方法はあの帽子かい。

今の服装には合わないけど、もし被ってたら分かりやすかったのかもしんないのかね。

 

「これがライザなりの休みの過ごし方かい?」

 

「休みってより「気分転換」ね。冒険とは違うけどいつもと違うこと~って考えた時にまず服装変えよっかと思って。今は観光の人気分で島歩いてんのよ」

 

ちょっと違う目的も含んでいたけどね……残念ながら効果は薄そうだった。

 

「そっか。まあ島から出た事がほとんどない僕らにとってはある意味新鮮かもね」

 

「タオはここまでどうしたの? 本も持ってないみたいだけど」

 

「鞄に入ってるよ、読むことが目的じゃないけど。僕も家の中で考えるより場所を変えよっかなってさ。今までに知ったことを整理しようと思ったんだ」

 

タオの知ったことっていうと……あたしと違うのは古代文字や書庫の事かな。

 

「これまでアンペルさんに教えてもらって、読めるまでとは言わずともなんとなく何を示してるのかは分かるようになったんだ。だけど、なんでそんな本が僕の家にあるのかが分からなくてさ」

 

「何が書いてあったの?」

 

「なんというか……儀式? 運用? なんのためにやるのかは全然書いてないと思うんだけど、これこれこうしなさいって事だけは書いてあるんだ。でも今の島には全然関係なさそうだよ。ブルネン邸で見せてもらった本とも関係がなかった。となると……僕の家はクリント王国の子孫なんじゃないかって思ってさ」

 

儀式、ねぇ。

祭りというなら麦刈りの祭りはあるけど、多分違うよね?

 

なんのためか分からない儀式に古代文字――つまりクリント王国の文字で書かれた本。

そんな本がたくさんあるタオの家は、クリント王国の末裔かその関係者なのかもしんないわね。

 

あたしたちも多分血は混じってるんだろうけど、モンガルテン家は役職持ちな感じかな?

末裔といえばアルさんはトンデモな血筋だったわね……亡国最後の生き残り、か。

 

「それが分かって……タオはどう思ってんの?」

 

「正直なんともだよ。少なくとも、フィルフサの大侵攻やリラさんたちの水の解決には役に立たなさそうだね。せめて何に対して書かれた物なのかが分かればなあ」

 

「儀式って……お祭りの取り仕切り役とかじゃないんだよね? 運用は風車や噴水とか?」

 

「そんな感じかもね。だけど今の僕の家はただの酪農家なんだよなあ。なんでやらなくなったんだろう?」

 

本はたくさん持ってるけど、今やってる事はウチと大して変わんないもんね。

どっかのタイミングでやらなくなったのか……実は本だけ預かったとか?

 

「ライザはどうなんだい?」

 

「なにが?」

 

「錬金術さ。アレを使うようになって、ライザがよく口にしてた「退屈な日常」っていうのは変わったじゃない? 今はフィルフサとか色々な話があるけどさ、そういうのを抜きにしたらどうなのかなって」

 

「抜きにしたら……ね」

 

今は問題解決のためにアイテムだとか素材の調合とかをやってるけど。

――例えば、そんなのが全部終わった後。

 

あたしは錬金術を、何に使うんだろうね。

 

「正直……わかんないかな。錬金術を止めることはしないと思うけど、島に定住してる錬金術士があたししかいないならアルさんに近い感じになるよね。みんなに頼られる~なんて実力は無いけどさ、あたしの錬金術はなんのために使うのが一番なのかなってのは思う」

 

「錬金術は秘匿されてるところがあるみたいだからね。アルさんの世界みたいにわりと知られてる技術ならまた違うんだろうけど……ライザもこの世界での錬金術の使われ方を知るために世界を回ってみたらいいんじゃないかい?」

 

「あたし「も」? ボオスみたいにって事?」

 

「それもあるけど……僕もいつか都会に行ってみようと思ってるんだ。アンペルさんたちが島を離れたら今以上に古代文字やクリント王国について知る事は出来なくなると思うからさ。いつになるかは分からないけど、ね」

 

「……そっか」

 

ちょっと前にクラウディアとそんな話をしたね。

 

クラウディアは近いうちに島を離れることが分かってる。

アンペルさんとリラさんも門を閉じたらここを去っちゃう。

キロさんは門の向こう側へ。

ボオスは乾季の頃に王都へ。

タオもいつかは都会へ。

レントはどうすんのか知らないけど……ずっと島にいる事はしない気がするなあ。

 

そして……アルさんは。

 

「ごめん。休みのはずなのになんだかしんみりした話をしちゃったよ」

 

「ううん、別にいいよ。それよりも、あたしより2つも年下のタオの方がずっと先のことを考えてるなってさ」

 

「……服の事もあるかもだけど、ライザと話してる気がしないなあ。いつもなら悪だくみに対して僕がやめようって話しかしてなかったのにさ」

 

「ホントにね」

 

こんな話、誰ともしたことなかったね。したとしてもアルさんくらい?

他の島のみんなはそういう事を考えてたりするのかなあ。

 

……おっと、そろそろあっちに戻らないと。

 

「あたしはそろそろ行くね。お昼はクラウディアと待ち合わせしてるから」

 

「そうだったんだね。一緒にご飯?」

 

「そ。港のバーでね」

 

「お酒を飲むのかい? しかもお昼から……酔って道に氷びし撒かないでよ」

 

「飲まないし撒かないわよ! ……多分」

 

あたしの酒癖ってどんな感じになるんだろう?

ザムエルさん的なのはイヤだなあ……。

 

案の定タオには遇ったけど、なかなかに考えさせられる話になったね。

今すぐ考える必要はないかもだけど、そのうち真面目に。

 

でも――そんな先の話じゃないんだよね。

 

 

 

ひと月もしないうちに、なにかが変わるはずなんだから。

 

 

 

北西端から南東方向へ。

こうやって歩いてみてもやっぱり島の中は変わんないわね。

 

対岸に見た事ないような魔物がうろつき始めてるなんて、知ってるのはごく少数。

世の中そんな感じのもので満ち溢れてるのかも。

……さすがにアルさんたちがやったことは国中に知れ渡ってそうだけど。

 

「……ん? お前……ライザじゃねえか! 随分デカくなりやがったな!」

 

「あれ、ザムエルさん? ……なんか前遇った時もおんなじこと言ってた気がするよ」

 

「俺からすりゃあお前らガキなんざいつまでもチビなんだよ」

 

まさかラーゼン地区でザムエルさんに遇うとは。

日中ではあるけれど、酔ってないザムエルさんってわりとレアよね。

普段からこのくらいだったらそう気に病むこともないんだけど。

 

でも、なんでここに?

 

「だが……カッコが前とは違うか? 昔ミオがそんな服着てた気がするな。アルフォンスのやつにでも色仕掛けに行くのか?」

 

「お母さんのお古だからね。ザムエルさんから見て、アルさんってこういうカッコに魅かれそうだと思う?」

 

「ねえな。アイツ何歳か知らねえが完全に枯れてやがる。いくら強い酒を飲ませてもケロッとしてやがるしよ。それに元の素材がライザじゃあな」

 

「ひどいなあ……」

 

まあザムエルさんにイケてるって言われてもなんだか変な気分だけど。

アルさんお酒にも強いんだ――ザムエルさんに付き合わされたって事は相当飲んでるはずだよね?

 

「まあ、ただの気分転換だよ。ザムエルさんこそなんでこっちに?」

 

「釣りだ。どうも最近は釣果が悪い。普段は旧市街でやってるが場所を変えたら違うかもしんねえだろ? お前の家の裏は穴場だからな」

 

「魚が釣れないの?」

 

「……なんだお前、知らねえのか? 前にお前らでサメを討伐しただのあっただろうが。あれと似たようなもんだ。ま、今のとこ魔物がどうだのなんざ話に上がってねえがな」

 

……初耳だね、そんな事。

 

レントは最近対岸でしか釣りをしてないせいかな。そんな話聞いた事なかった。

また撒き餌を作った方がいいのかなあ。

 

「それよりも、だ……お前ら最近何してやがる?」

 

「? 対岸を回ったりとかだけど、それがどうかしたの?」

 

「レントのクソガキだ……ひと月前まで話にもならなかったのが異常にタフになってやがる。おまけに見た事もねえような型まで覚えやがった。竜についてはアルフォンスがどうとでもしたんだろうが、アイツについては訳が分からん」

 

「あ~最近やり方変えたからね。ザムエルさんもアルさんの強さは知ってるんだ?」

 

「酒の場で伸びた鼻へし折ってやろうかと腕相撲をしたが……笑顔でピクリとも動きやがらねえ。浜に打ち上がった時の腕の細さからじゃ想像しようがねえぞ、あんなもん」

 

まあレントは最近の鍛錬事情をザムエルさんに話したりはしないよね。

それにしてもアルさん――あの鉱石入りの袋を軽々担いでたことはあるなあ。

ザムエルさん相手に腕を動かさないとかどんな腕力よ……。

 

「さあて、ぼさぼさしてると他のヤツに場所取られちまう。ああ、今度フレッサに会ったらいい酒入れるよう言っといてくれ。俺が言っても聞きやしねえ」

 

「あたし未成年だよ? まあ会った時は伝えとくけど期待はしないでよね」

 

ザムエルさんは北に、あたしは南東に。

竿持ってなかったけどあの浜に置いてあるのかな。うちのお父さんの竿って事はないよね?

それにしても、魚がねえ……?




サブタイはライザのDLCコスの名称です。クラウディアの服のペアですね。
作者には別人にすら見えています。帽子の影響は大きい。
ライザの酒癖は絡み酒だと思います。クラウディアは笑い上戸かな?

次はクラウディアとのお昼です。
何で原作であのお店利用できないんですかね?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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