ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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前話と同時間帯、拠点側です。
今回は短めです――編集が楽!

オリ要素としてありながらも、あまり触れられていなかった点について関わっていきます。

誤字報告ありがとうございます。

今回もよろしくお願いします。


55. 73日目③  大人達のヒソヒソ話

「お待たせしました」

 

約束通り、お昼前にアルが拠点に来た。

ちゃんと食材を持ってきてるあたり律儀だよね。

 

「こちらも好き勝手やらせてもらっていたところだ。アル君から提案があった時には驚いたがな」

 

「レント達を休ませるいい機会だったが……わざわざ遠ざける必要がある程の事なのか?」

 

「そうですね。ライザ達は十分すぎるほど頑張ってくれてますから。出来れば知らせずにいこうかと思っています」

 

「……()()事?」

 

事前にお願いとして協力を聞いていた2つ。

確かに私とアルだけで解決する必要はないものね。

 

「そうだよ。片方はともかく、もう一方はライザ達にはインパクトが強すぎるからね」

 

「というと、島についての事なのかね?」

 

「ええ。結論からお話しますが――このままだとクーケン島は遠からず沈みます」

 

「えっ?」

 

「なに?」

 

「随分と穏やかな話じゃないな。詳しく話を聞かせてもらうとしよう」

 

浮島の話だけじゃなかった――沈む? 綺麗に浮かべていないとは言っていたけど。

 

「年々クーケン島の水位が上がってきているのはご存じですか?」

 

「知っている。沈んでいる廃墟も元々は陸地だったんだろうからな。それでも長い時を掛けてだと思っていたが」

 

「単純に水位が高くなるというのも大きな問題だと思うが……違うという事かね?」

 

「……浮力の維持が、出来なくなってるの?」

 

「キロ、それはなんの話だ?」

 

「アル曰く、クーケン島は浮島らしいよ。しかも人工島……私も未だに信じられないけど」

 

リラもアンペルも唖然としている。私だってそうだ。

多分オーリムでもクーケン島の規模の空島は無いだろうしね。

 

でも、沈むってなんの話?

 

「クーケン島が浮島である事は先日潜って目視確認もしました。これは間違いないです」

 

「あのエアドロップという飴玉だったか? 呼吸はともかく水圧でよく気を失わなかったものだ。しかしクーケン島が人工の浮島だったとはな」

 

「つまりは水位が高くなっているわけではなく、土地が沈下してきているわけか。しかし浮力とは変わる物なのか?」

 

「僕も浮島なんて初めてですけど、リラさんのご想像通り普通なら変わらないと思いますよ」

 

「……つまりアルは、普通じゃない方法で浮いているって言いたいんだね?」

 

「そうなるね」

 

島の土台に魔石でも敷き詰めているのかな。それにしちゃエレメントを感じなかったけど。

氷は水よりも軽いから、魔石に氷のエレメントを宿していれば浮上も出来るのかもしれない。

それでもあれだけ大きな土地になると、とんでもない量の魔石が必要そうだけど。

 

「浮上方法は……おそらくですが水流の制御です。水面近くで吸水して底から下方向に放出しているのかと。流石に島の全周までは見ていませんが、同時にその水によってエリプス湖全体の水流を制御していたんだと思います。ですが」

 

「先日の不漁騒ぎ。あれは一旦魔物の影響とされたが……今も続いているそうだな? サメが湖内に侵入した事も併せて原因はその水流の変化という事か」

 

「はい。加えてですが、最近局所的な地震が散発するようになってきています。浮島のはずなのに、ですね。何が起きているのかまでは分かりませんが、何かが起こっているのは間違いないかと。モンガルテン家……タオの家は本来この機構を管理する一族だったようです」

 

「おいおい、つまりはタオの本からの情報かね? そんな記述は読めていないのだが」

 

「まあアルだし」

 

「そうだな。大して理由付けもいらん」

 

「扱いがぞんざいですね……彼の家の本に書いてあった以上、クリント王国の技術に依る物と言えるでしょう。それが錬金術による代物なのかまでは分かりませんが」

 

「古城や入り江の建築には錬金術を使っていなかったようだが……仮に錬金術に依る物だったとして、私でもどういう原理かさっぱりだな。古式秘具、か」

 

違った。絡繰りによるものだったか、随分とスケールの大きい事をする。

そこまでして浮島を作る必要が何処にあったのか分からない。

クリント王国はそこまで土地が無かったのかな。

 

「どんな機構かは今タオの本を読み進めているところです。記述があれば助かるんですが……」

 

「私は門外漢だな。アルとアンペルに任せよう」

 

「やれやれ、なんとか年上の貫禄を見せたいものだ」

 

「私の手伝いっていうのは?」

 

「絡繰りって物は必ず動力や燃料が必要だ。それがもし錬金術の代物なら、化石燃料とかじゃなくて魔力やエレメントに依る物の可能性が高い。だからその補助だね」

 

「また疲れそうな事を……まあ、なんとなくそんな感じだとは思っていたけど」

 

だからこそ()()の出番があるんだけど。

 

「島について分かっているのは、今はまだこの辺りまでです。他の事は推論の域を出ませんので塔に情報がある事を期待したいですね」

 

「よくまあ1人でここまで調査を進められたものだ。ライザ達といい最近の若者にはこういう子達が多いのか?」

 

「あの4人も大概だな。お前以外の錬金術士も見た事があるが、ライザほど若く優秀な者などそうそういない。レントも良くここまで音を上げずに鍛錬を続けている。タオはアンペルに並びそうな古代文字の知識を。クラウディアは……新作が待ち遠しいな」

 

「本当に大したものですよ。僕の世界にもあんな子達はいませんでしたから」

 

「貴方が言っても説得力がない。第一貴方も子供でしょ?」

 

「「たしかに」」

 

「ハモるほどです?」

 

正直、あっちの世界はおかしい。

エルリック兄弟ほどじゃないにしても何かと優秀な子が多いよね。メイなんて10歳くらい?

 

私が子供の頃は何してたっけ、()()()以前の記憶はないに等しいし。

少なくとも氏族の命運がどうのなんて無かったはずだけど。

人生が短い分、短期間で身に着ける事に長けているのかもしれない。

 

 

 

「それで……キロ嬢の言い方では他にもありそうだが?」

 

「ええ、もう一つ――コレです」

 

アルが鞄から何かを……なんだこれ? ゴルドテリオンのブロック?

アルが錬成でそのブロックに穴を開けて……あれ、この前見たよね?

 

「……本当にこの辺りはどうなっているのだろうな? 2本目のトラベルボトルと来たか」

 

「お前の義手の素材もこのボトル由来だったな。そこまで希少なのか」

 

「希少だとも。私も実物を見たのはライザのものが初めてで、こいつが2本目だ。複製釜と並んで非常に珍しい一品と言える……これを何時何処で?」

 

「3日前。リラさん達がライザ達の引率をして下さった時ですね。見つけたのは坑道ですよ――気になる話があったでしょう? だから探してみたら、ですね」

 

「……黒い、女王」

 

「うん。あの坑道には一か所大型のゴーレムが常に居座っているところがあってね。そこを掘ってみたら、って所さ。その時は何なのか分からなかったからゴルドテリオンで無理矢理仕舞ってみたんだ。ボトルの話を聞いた時はヒヤッとしたよ」

 

水没坑道って言ったっけ。ボオスがフィルフサに追いかけられつつ門まで逃げてきた道。

まだ行った事はないけど、そこでボオスは黒い女王を見たって聞いた。

 

このボトルがそれに関わっている?

アルが「ボトル」の単語に反応したのは、フラスコの中の小人じゃなくてこっちだったか。

 

「ところでアンペルさん。ボトルの中の世界が……使用者の影響を受ける可能性はありますか?」

 

「肯定も否定も出来ないな、私にとっても謎に満ち溢れた古式秘具だ。ただ……状態異常を治す道具があるくらいだから精神に干渉する事はできるのかもしれん」

 

「……アレの話だね? 私が入ったボトルの世界。一度目はリゼンブールで私の記憶から、二度目はクセルクセスでアルの魂の記憶から」

 

「うん? キロはあの平原の世界を知っていたのか?」

 

「僕の出生地なんですよ。キロさんは加護を通して一部僕の記憶を見たそうでして」

 

「……霊祈氏族の能力というのも厄介なものだな。その気がなくとも色々と引き寄せる」

 

魂や精霊を視る力は便利ではあるけれど制御出来ているものでもない。

この件に関しては迂闊だったとしか言いようがないけど。

 

ただ……私の氏族にここまでの能力があるとは聞いた事がない。これに関しては原因不明だ。

 

「まあその辺は置いておきましょう。とにかく、記憶を元にボトルの世界が構成されたケースがありました。この2つはキロさんが持っていた素材と、僕が錬成したゴルドテリオンのジェムを介して反映された。では……()はどうでしょう?」

 

「逆? ボトルを構成した素材かジェムを取り出すという事かね? おそらく不可逆だろうから難しいと思うが」

 

「いえ。採取地調合というだけあって、ボトルの中に生み出された素材を取り出す事が出来ています。なら……記憶、あるいは感情によって生み出された「魔物」がボトルの中から実体化して出てくる可能性は?」

 

それは……大変宜しくないね。

 

「……まさか。そんな事が発生しようものなら人の、想像上の魔物がこちらの世界を闊歩する事になる。極論あり得ないとは言えないだろうが……」

 

「だが、現にボトルの中でアルの記憶は再現されたのだろう? そしてお前の義手の素材のようにこちらへ取り出す事も出来た。まあ考えるより入ってみれば早いんじゃないか?」

 

「……もしこの中に黒い女王が居たなら相当に危険な行為になるけど、放っておいて手遅れになる方が問題かな」

 

そもそも外に出てくる条件も、なぜ中にいる可能性があるのが女王なのかも分からないけど。

まずは本当に居るのか確認しておきたいのはあるね。

 

「……分かった。考えても分からない事は実践という事もある。ふっ、まるでライザの様だな」

 

「「取り敢えず」の一言でうにを入れようとするのはどうかと思うんですけどね……」

 

「それでも調合の失敗を見た事がないあたり不思議なものだ。どこの町だった? 中和剤を調合しようとしてアトリエごと吹っ飛ばしていたのは」

 

「こちらの世界の錬金術も大概だね」

 

それにしても……「うに」は海産物で、あれは「くり」じゃないの?

おかしいのは私だけなんだろうか。




素材を持ち出せるなら、生き物も行けんじゃね? という
適当な理由からこんな話が生まれました。

この仮説が正しいのか、次話はその検証編です。
次も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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