ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

57 / 150
謎のボトルの中へ。ちょっと短めです。

誤字報告ありがとうございます。波があるなあ。

今回もよろしくお願いします。


56. 73日目④  トラベルボトル「影」

「では、行くとしようか」

 

アルの作ってくれたお昼を食べてからボトルの世界へ。

 

しかしあの……麺、料理? 食べるのが難し過ぎる……。

フォークでも苦戦したのに本来二本の棒で食べるっていうのが信じられない。

リラもアンペルも大苦戦だったから同じなはず。あっちの人は器用だ。

 

「中身は充填されているようだな。それでは私の魔力で入るとしよう」

 

「お願いします」

 

ボトルの色はなんとなく禍禍しい。

あまりいい世界は期待できそうにないか。

 

ボトルの中に、吸い込まれるように。

 

 

 

 

 

 

「……なんの皮肉だ、この世界は」

 

「今のオーリムの水と緑と空気を戻すとこうなるのかもね。私やリラの心情を反映した?」

 

まるで私達の世界だ。

でも汚染されているのは見た目だけで水もあるし、緑もあるし、空気も澄んでいる。

イメージの原因は空の色にある、けど。

 

「まさか……ボトルの世界にフィルフサがいるとはな」

 

「世界構成の素材はフィルフサ由来の物なんでしょうか?」

 

奴らがいる。しかも上位個体まで。数も聖域より多い。

ライザ達が居なくてよかった。今はまだ危険だ。

 

「進んでみよう。3人なら問題ないとは思うけど、上位のフィルフサもいる。一応伝えとくよ」

 

「やれやれ、まともな初陣がいきなりフィルフサの上位個体と来たか。まあ気張るとしよう」

 

「無理はするな。ここで戦線離脱されても面倒だ」

 

「ヒドイ言われようだ。まあ事実ではある、精々気を付けるさ」

 

「中身が同じなら僕の分解も通りますから。一旦は肉弾戦で行きます」

 

いざとなったらフェイタルドライブで周囲を消し飛ばすまで。

杞憂だと思うけど。

 

――そう思っていたんだ。

 

 

 

「こんのぉ……! Flugur Percutiens!」

 

バチバチバチッ!

 

ギイッ!? グワオゥ!!

 

「援護する! ランドクラッシュ!」

 

「そのまま拘束を続けろ! 双瞬斬!」

 

「破ぁっ!!」

 

バキャッ!!

 

グゥオオォォォォォ……

 

「……強いですね。クーケン島周辺の魔物なんて目じゃない、竜を軽くあしらえそうだ」

 

「下位のハリネズミでさえ上位の甲虫を超えるタフさだな。加えて動きも速い。元のフィルフサとはもはや別物だ……アンペル、大丈夫か?」

 

「随分な荒療治になったものだが問題はない。なにせ先鋒が強すぎてな」

 

「数が多くてジリ貧とは言わずとも面倒だね。一回纏めて消し飛ばそうか」

 

明らかに強い。まさか本気の二節の詠唱を普通に耐えてくると思わなかった。

元の世界でこの強さで大挙されたら――私単独じゃ数刻持たず押し潰される。

 

ボトルの中の魔物と戦闘したのはこれは初めてだけど……基本的には強化されるものなの?

動き方自体は元のフィルフサと変わらないけど。単純に力強く、速く、硬い。

加えて大侵攻のように大群で迫ってくるわけじゃないけど、バラバラとキリがない。

 

広範囲を殲滅するとして、大魔法詠唱じゃ回数がかかり過ぎる。

このメンバーなら私が動けなくなっても大丈夫だし、一回喚ばせてもらおう。

前のボトルならかなり楽に召喚できたけど……。

 

「何をするつもりだい?」

 

「召喚してみる。焼死したくなかったら私の前に出ないようにね」

 

「物騒極まりないな。召喚とはそれほどのものか」

 

「私のと一緒にするなよ……キロ、いいぞ!」

 

どうせやるなら――全範囲型!

 

「ん! 上手くいってね……Summone Vidofnir !」

 

――あっ、これヤバイ。

 

 

ボッ!!

 

バサァ……

 

 

キィエエェェェェェェェッ!!!

 

 

意識が飛ぶかと思った――魔力消費が半端じゃない。

オーリムの10倍近い? つまりは外の約300倍。これは実戦じゃ使えないね……。

 

「キロさん!?」

 

「だい、じょうぶ。せいぎょは出来てる、から。でも実用はムリそう……ちょっと身体貸してね」

 

「何だこの怪鳥は!? 竜の比ではないぞ!」

 

「「日輪の雄鶏(ヴィソブニル)」だったか。魔法陣の外に出るなよアンペル――灰も残らんぞ」

 

意識は保てているけど立っているのがツライくらいだ。少しアルに身体を任せよう。

フィルフサの方はまあ、ほっとけばいい。

 

何も残りはしないのだから。

 

 

 

カッ!!

 

 

 

ジュ! って音と共に魔法陣の外が白一色に染まる。明るすぎて何も見えないだけなんだけど。

これで生き残っていたらびっくりだよ。

 

フッと光が消えて、身体に魔力が戻り始める。

ああしんど。

 

「……なんと凄まじい」

 

「私も召喚を見たのは久々だが、これほどの規模は中々ない。キロ、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫、心配かけたね。アルもありがとう……想定より魔力消費が激しすぎる。ここでの召喚は最終手段かな」

 

「倒れないようにしてね。集光した太陽か、とんでもない威力だね」

 

空から光を放射したというより、放射されていた光を指定範囲に集めた感じ。

その範囲のフィルフサは全て焼失した。周りの木々や大地ごと。

それでも……思っていたより大地が原形を残している。焦土になる程度で融解はしていない。

 

「威力不足って事はないはずだけど……世界が丈夫なのかな?」

 

「ここは我々の生きる世界とは法則が違うからな。範囲が狭い以上、個々を構成する要素は強固なのかもしれん」

 

「確かに一面荒野になるものと思っていたが、樹木も僅かながら原形を留めているな」

 

「ですがこの一帯のフィルフサは消滅させられたようです。キロさんは休んでいて。僕も錬金術を解禁するよ」

 

「貴方の場合、メインの攻撃手段無しで戦えている事実が恐ろしいよ……」

 

私とアンペルが素手で、リラが魔法で戦うようなものだ。

一方でこの男は単なる体術でもエドさん以上、ここで錬金術が使えるなら魔力は無限に等しい。

 

……卑怯くさい。

 

 

 

「終わりだよ」

 

 

パンッ!

 

 

バチバチバチバチバチッ!!

 

 

ブモォオオゥウウウゥゥゥ……

 

 

錬成反応がバチバチと走ってホーンデーモン(最上位甲虫)の身体がひび割れる。

体力も防御力も関係ないらしい。ホントに卑怯くさいなあ。対フィルフサ特効もいいところだ。

 

というか。

 

「これ完全に傷の男(スカー)の戦い方だよね? 秘密の錬金術師さん?」

 

「なんだいその二つ名? 相手の身体の構成が分かっているならこれ以上の戦い方はないよね。確かに僕らしからぬ戦い方だよ。ちなみにここじゃ錬丹術だよ。錬金術はダメみたいだ」

 

「あれで、あの人僧侶……ある意味私の同類なんだよね? 信じられないけど」

 

復讐鬼と化してたイシュヴァラの破戒僧――アルの世界でも異質といえたよね。

あれで完全に生身の人間だっていうんだから無茶苦茶だ。

 

ここには地殻変動が無いらしく、頼りになるのは大地の気の流れだけらしい。

私達が精霊の力を借りられているように、過去2回のボトルの世界とは違ってエレメントには満ちている。こちらの人間の記憶の再現だからかな。

 

「分解……創造の力をそのまま破壊に使えるというのは恐ろしいものだな」

 

「お陰で僕達も苦労しましたよ……何度殺されそうになったか」

 

「アルを殺しかけると来たか。大した人間が居たものだな」

 

「それより強いのがまだ居たんだもんね?」

 

「同じ土俵なら大総統だね。タイマンじゃまず勝てなかっただろうなあ」

 

あっちは錬金術無し、単純な身体能力のみでアレだ。女王を単独で圧倒出来る気がする。

仮に戦ったら……認識する前に首を飛ばされていそうで怖い。

 

「ちなみにその()()()()()()()というのは?」

 

「ライザがアルの為に考えてくれた称号だよ。リラも呼んであげて?」

 

「ライザが考えたのかい? ……僕の世界では国家錬金術師という資格を取ると「二つ名」が与えられるんです。僕は違うんですけど兄さんは「鋼」、軍のお偉いさんには「焔」って人が居ました――こんな感じですね」

 

アルがポケットから何かの道具を取り出した。見覚えがあるものだね。

カシャンと蓋を開けて、右手に持ったままパンと両手を合わせて、遠くのフィルフサに向けて。

 

 

シュボッ

 

 

ドォン!

 

 

「こんなのを連発できる人です。その人は指を鳴らすだけでしたけど」

 

「「雨の日は無能」のあの人だね。欠点があってよかったよ」

 

「相応しい名だな。これだけの火柱を瞬時に発生させるなど」

 

「今の道具はなんなんだ?」

 

「あちらでは簡単に火を付ける道具として普及していた物です。もっぱらタバコに使われる事が多かったですけど」

 

強化されているシャドウイーターが一体焼却された。速度と消費を考えれば神炎よりヒドイ。

これのどこが錬金術なんだろうね? 魔法と言われた方が遥かに納得できるよ。

というか、それホークアイの秘術だったんじゃあ?

 

たしか……空気中の水分を水素と酸素に分解してから火花で着火しているんだっけ?

いつ湿度を正確に理解しているんだろうね。

 

「こういう事をやる人達に付いていたものですね。以前キロさんに僕も名乗れば? と言われてはいましたが」

 

「アル君のスペックは秘密だらけだからな、なかなか相応しいじゃないか」

 

「……これほどの実力者が闊歩していた世界だったのか?」

 

「そこは諸事情ありだよ、リラ」

 

「君も大概苦労しているな、アル君」

 

なにせ数年間、身体無しで生活してるしね。

 

 

 

さて、それなりに奥へ進んで……っ!

 

 

 

イヤな気配イヤな気配イヤな気配イヤな気配イヤな気配イヤな気配イヤな気配

 

 

 

全身の毛穴が開いて汗が噴き出す。心拍数と血圧が増加する。全身に力が入る。

なにより――感情が揺さぶられる。

 

 

 

こんなところで出くわすなんて。

 

 

 

「……まさかだったね。喜ぶべきか呪うべきか」

 

「化け物とはなにか、と聞かれればアレと言い切れる姿だな」

 

「ボオス君が言っていた通りの見た目だね」

 

「では、あれが」

 

「うん……女王だよ」

 

まだまだ遠目だというのに、はっきりと分かるあの巨体。四足型に一対の鎌。

色は違うけど……間違いない。間違えようがない。

 

何百年経とうが、忘れる事はないよ。

 

だけど。

 

「……この辺のフィルフサの強さを考えると、今ここで挑むのはやめておいた方がよさそうだね。普通のフィルフサと違って黒い見た目だから、アルの分解も効かないかもしれないし」

 

「分解ありきなのは複雑だね。まあ、ちゃんと準備をするべきなのは間違いなさそうだ」

 

「聞いていた以上の怪物っぷりだな。女王と呼ばれるわけだ」

 

「私は初めて見たが……ボオス少年も良く逃げ出せたものだな」

 

ホントにね。ボオスは真に冷静だったと言える。

ただの人間なら腰を抜かすか、酷ければその場で生きる意思を失うか。アレはそういう類だ。

今度会ったら褒めてあげよう。あの子はライザと一緒で褒められ不足なんだから。

 

 

 

 

 

 

『まったく、人間というのは(まこと)に面倒なモノを生み出してくれるであろう?』




初の女王確認。多分ボトルの難易度は150超えです。

調べていて初めて知ったのですが、かの有名なレヴァンティンって
神話ではこの雄鶏を倒すための剣らしいですね。素材に雄鶏の羽が要る矛盾仕様。

最後、キロ達に話しかけてきたのは?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。