ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
影のボトル後編、設定回です。
誤字報告ありがとうございます。編集前の文字が残ってしまっていました。
今回もよろしくお願いします。
『まったく、人間というのは
ん?
ものすっごく久しぶりに聞いた気がする声……この感じって!
「……だいせ……闇の大精霊様!?」
『オーリムの巫女か。絶えたと思っておったが生き残りかの? 妙な気配と探りに来てみれば、やはり珍しい事があるものよな』
「この方が……大精霊」
『
私達が振り返った先には、巨大な玉座に坐する一対の角を持った小柄な女性。
それが6柱いる大精霊の共通点。
ただでさえ遇う事が稀なのに、ましてや闇の大精霊様なんて……。
しかもアルの事を知っている?
「まさか大精霊に目通りが叶う日が来るとはな。長生きはしてみるものだ」
「口を慎めアンペル。大精霊様、申し訳ありません」
『守護者よ、構わん。生まれて100年程度の
「……数百年程前に作られたとみられるクリント王国の錬金術の道具を用いて、になります。なんでも小さな世界を構築出来る道具だとか」
『またあのクリントとやらか。アレといい面倒事ばかり起こしおって……だが錬金術師を見つけた事で帳消しと言えるか』
クリント王国が関わっている。という事は、あの黒い女王には錬金術が関わっている?
で、アルを発見できた事の方が重要と。一体どうなっているの?
「申し訳ないのですが……御存じなら教えて頂けませんか? 僕が何故この世界にいるのか」
『其方は災厄を封じる為に光のやつが喚んだと聞く。錬金術士なぞ此方に腐るほど居るが……仔細は知らぬが「真理を見た錬金術師」というのは数が少ないらしいな? だが其方を此方に喚んだ際にしくじった様で、あやつは数百年釘付けの状態よ。あの間抜けめ』
「……? アル、お前はここへ来て10年程ではなかったか?」
「ええ。それは間違いないですね」
『我らの座する間は……汝ら風に言えば
取り敢えずアルが光の大精霊様に喚ばれたのは分かった。仮定の一つは当たっていたんだね。
つまり、アルの加護は大精霊様から直接与えられたものだったって事。そりゃあ強力なはずだ。
精霊の世界が私達と別物の法則である事も分かる。そもそも人や動物の住む世界じゃない。
でも……
「名はアルフォンスといいます。それでは私の居た世界とは時間の経過が違うという事ですか?」
『そういう事にもなるが……其方についてはそう単純でもないらしいな。仔細はしくじりおった光のやつにでも問え。あやつが正しく理解しておるかは知らんが』
「……僕は単に召喚されたわけでもない?」
「召喚されるだけでも単純な話じゃないんだけど……」
ダメだね、私にも分からなくなった。しくじりっていうのは……魂の欠損の事? 召喚場所?
闇の大精霊様も部分的にしかご存じでないなら、光の大精霊様に伺うしかないね。
とは言え、そもそもどう伺いを立てたものかな。
……リラ、リラ。貴方も考えて? ポーカーフェイスで思考停止しないで?
『其方が巫女と居るという事は、此方に喚ぶ分には楽なようで助かる。いつかはアレも始末せねばならん』
「……大精霊様はあの黒いフィルフサの女王をご存じなのですか?」
『アレはそう呼ぶモノなのか? ――アレは
「はっはい。ヴィソヴニルの力を借りましたが」
不味ったかな? ちょっと闇の大精霊様は不満そうだ。
『よくまあ此処で召喚出来たものだが……アレの力を出来るだけ増さぬよう此処のエレメントの総量は小さくしてある。加えて世界の構成も強固にはしてあるが、外からの干渉には強くとも内から暴発した力による破裂には耐えられん。大魔法程度は構わぬが召喚は使うな――此処が崩壊するぞ』
「分かりました。大変申し訳ございません」
成程、召喚に魔力を大量消費したのはその存在の枠分だけ世界を広げる羽目になったからか。
なんにせよあんなに魔力を消費するようじゃ実戦では使えない。自力で頑張ろう。
「と、いう事はだ。アレは蝕みの女王を見たクリント王国の者の伝承が、女王を模った物を核に現出した「記憶」、言うなれば「影の女王」という事か。大精霊の言葉通り、実に厄介なモノを残してくれたな」
「敬称くらいは付けろ。最初にアレを目撃したのはボオス少年とランバー少年だったな。得体の知れんフィルフサという存在への恐怖心を呼び水にされたか」
『此処への出入り口を作りおったという事は……アレも外の物質界を認識しておるか。面倒になりそうじゃな』
神という存在の中には、そうあって欲しいとかこうあったはずという人々の気持ちから生じた例がある。アレもそういう手合いかな。
つまりは恐怖の神様として崇められた女王を模した、その「影」の存在なわけだ。
そして……周囲に破壊対象があると認識された以上、今後外に出現する可能性が高くなってくる。
こっちも時間との勝負になるのか。
『さて錬金術師アルフォンス。わらわとしては其方を光のやつの元に連れていくべきと思うのだが? アレが巫女の世界に現れたのも面倒事だが、我等の封印維持も長く持つわけではない』
「災厄を封じると仰っていましたが……そも災厄というのは? それに私の使う術は此方の錬金術とは別物です。エレメントの要素で封印といった事は困難かと思われますが」
そこだ。別世界の存在を喚ぶ事がノーリスクだなんて思えない。それなりに準備がいるはずだ。
現に、どうにも完全成功とはいかなかったせいか光の大精霊様は数百年身動き不能なほど。
それほどリスキーなのに、何故アルが選ばれた?
『封印が構築されたのが今の我より前の代の時ゆえ、知りえる事に限りがあるが……光のやつが其方に求めていたのは封印の組み直しと聞いた。真理を見た錬金術師は理論と法則の理解に長けておるらしいな? だが当初の時期から時が経ち過ぎた。その手段が採れるかは怪しい故に、今あやつが其方に何を望むかは分からぬな。災厄というのは……正体は分からぬがアレと似た気配のナニカよ。尤も解き放たれた際の影響は比ぶるべくもないだろう。世を魔界に呑むとされておる』
「クリント王国の錬金術を支持するつもりはないが、そこまで言い切られてしまうと悔しいものがあるな」
「方向性の違いだろう。いちいち突っかかるな」
「精霊の世界に、そんな存在が」
聞いた事がない。私達オーレン族が生まれるよりも遥か昔の出来事か。
掟という形で残っていたクーケン島の方が伝え方として賢い手段だったかもしれない。
「申し訳ないのですが、今すぐというのはご再考願えませんか? あの影の元になった存在が私の流れた世界に侵攻しつつあります。加えてキロさ……巫女様の世界から失われた水を元に戻す、またとない機会なのです」
「様付けはやめてくれない? そんな大層な存在じゃないんだから」
鳥肌が立つよ。
『そこらを徘徊しておる……フィルフサと言うたか? 巫女の森を精霊が離れて久しいが原因はソレの侵蝕か。こやつら、精霊を食いよるからな。管轄がわらわとはいえ、余計に此処のエレメントを減らしたくなる』
「精霊を、「食べる」だと?」
『そうだ小僧。フィルフサは形定まらぬ精霊の種を糧とする。周辺を精霊が宿れぬ形に汚染し、精霊達が拠り所とした魔石を食らって繁殖する。大した
「それが……水という事ですか」
『その通りだ守護者よ。物質界の生命がおよそ等しく糧とする水を敢えて避けるよう進化し世界との調和を図った。アレは個々の力は大したものではないが繁殖力に優れるでな、少量の精霊でも種を保つには充分と言えよう。あの森が早期に水を失うのは想定外であったが』
フィルフサに水を嫌う性質があったわけじゃない。水を嫌うフィルフサが結果的に残ったんだ。
大昔、水も平気だったフィルフサの祖先は周囲の環境を滅ぼして精霊ごと絶滅した感じかな。
侵攻以前の生息地が私達と異なっていたのはそのためか。
だけど現在、聖域周辺は水を失ったからフィルフサにとっては一大繁殖地と化した。
同時に精霊の宿木を失い、新たな生命を見つける必要があった。
でなければフィルフサもいつかは自滅する。
そしてその場として――ライザ達の世界を見つけたんだ。
「今私達は巫女の森のフィルフサを統括する存在……蝕みの女王の討伐に動いています。また水を森に戻す手段も検討しています。そう時間はかからないはずです」
『女王……オーリムに居るアレの根源か。となると、そう直ぐに討伐する事は勧めぬな』
「……何故、ですか?」
なぜ、あの女王を討伐してはいけないのか。
『巫女の森におる女王とアレは対存在。根源たる女王を討伐したとて、アレから力を分け与えられて蘇生しよう。逆にアレを先に討伐した場合、アレを形作る力が根源の女王に移る。そうなればどうなるか知らぬぞ』
最悪だ。あの子達を危険に晒す可能性が極めて高くなった。
「つまり、私達が女王を完全に倒すには」
「蝕みの女王と、あそこにいる影の女王を同時に滅ぼさなきゃいけないわけだね」
『一致する器がなければアレの力も流石に散るだろう。元は世界に漂う負の感情じゃて』
「……我々に採れる手段は限定されている、か」
「私達であの影を討伐するのと同時並行でライザ達に蝕みの女王本体の討伐を任せる、か。ここのフィルフサの強さを考える限り、影相手にライザ達を戦わせるのは酷だ。この場の4人でやるべきだろうが……元凶の討伐を本来無関係のライザやレント達に丸投げにするなど」
戦力をどう分けたものか。
このボトルの世界に入る以上、錬金術士であるアンペルとライザのどちらかはこちらに来てもらう事になる。だけど道具の扱いに長けた2人を同じにパーティーに組むのは愚策、分けるのが妥当。
回復魔法や補助魔法が使える私とクラウディアも同じ。
リラとレントはペアでもいいかもだけど、レントは結構冷静なところがあるからあの子達のムード維持に付いてもらいたい。
タオも同様、あの子達の中で一番分析に長けているのは彼だ。
ボオスを追ってくる前まではあの子達4人でパーティーを組んでいたと聞くし、変に崩さない方が戦いやすい。
あとは、ここに居る取り扱い困難の錬金術師さんだけど……一つ名案があるじゃない?
「……ねえ、アル?」
「嫌な予感がするけど……なにかな?」
「一人であっちの女王本体倒せない?」
この男に丸投げする。対フィルフサ特効持ちだし加護もあるし普通に強いし。
「なかなかにぶん投げてくれるね? ……実際に対峙した事が無いからどちらとも言い切れない。蝕みの女王は他のフィルフサと同じ白色なんでしょう? なら分解も使えるかもだけど」
出来ないと言わない辺りがすごい。
アルの性格的に適当な回答はしないはずだから勝算はゼロじゃないか。
『アレや根源を始末するというなら好きにやれ。だがアルフォンスよ、其方は近く我等の元に来てもらうぞ? 我等を揃えたとしても封印の綻びは止められぬ。いつまで持つか分からぬ状態をそのままにしてはおけん』
「どのくらいお時間を頂けますか?」
『今の空間で確実に持つのは凡そ100年。汝らにとっては3年程度か。それを過ぎれば一度災厄を封じる空間を潰して新たに創造し直す事になる。その間災厄に掛かり切りとなろう』
「つまり……新たな世界の構築まで私達の世界は大精霊様の管理から外れた状態になる、と」
『分かっておるな? 魔力や魔法、エレメントといった一切の神秘と原則の法則が狂う。自然の調和は崩壊し混沌とした世界となろう。我等の管理が戻るより全てが滅ぶ方が早いかもしれぬな』
シャレにならない。
魔法が使えなくなる程度なら御の字。
暴発しかしないか、アルの経験した様なリバウンドが当たり前になるかもしれない。
自然に精霊が宿らず、生態系は維持できず、変異した魔物による
考えたくないけど、オーリムを切り捨ててでも阻止しないといけない。
「随分と我々は瀬戸際に立っていたのだな。恐ろしい限りだ」
「大精霊様の恩恵が身に染みるだろう。しかし……これでオーリムや影の件でアルを拘束出来なくなった。とっとと潰さねばな」
「分かりました。時間を頂きありがとうございます」
『汝らの世界がどうなったとて我等には大事ないが、其方の場合は光のやつが勝手に此方に招いた上にその際の不手際もある。100年程度は我等も気張ってやろう。他のやつらにも汝らの世界に集まる様伝えるとするか』
思っていたより遥かに有情だ。問答無用でアルを連れていかれると思った。
光と闇の大精霊様にはお会いした事がなかったけど、風や雷の大精霊様並みに人情味がある。
更には他の大精霊様をこちらに呼んでいただけるらしい。得られた時間は有効に使わないと。
――まさか、人たらしの影響を受けていたりしませんよね?
『それと、巫女』
「は、はい。なんでしょうか?」
心の声が漏れてた?
『錬金術師を連れてきた褒美じゃ。汝にはこれらをくれてやる――上手く使え』
なにかを投げ渡された……2つ? よっと。
これは……精霊の小瓶かな? こんな貴重なものを。
こっちの結晶体は……まさか!
「エレメントコア!? こんな奇跡の産物を……よろしいのですか?」
『精々役立てよ。分かっておろうが汝には適性があるようじゃしな。結果がどうあれ時が来たらアルフォンスは連れていく。貴重な戦力ならばそれまでにどうにかせい』
そう言い残して、闇の大精霊様は一瞬で消えた。やっぱり超常の存在には違いない。
辺りに静かさが戻る。現実に戻って来た気分だ。
「アレや大精霊に遭遇した事もそうだが、あまりにも想定外の情報が入ったな。私達だけで決める話ではないか……明日ライザ達が来た際に話すとしよう」
「そうですね。あの子達にも協力を仰がないと解決出来る物も出来なくなります。それにしても僕がそんな理由で喚ばれたとは」
「まさか大精霊様直々とはな。しかし災厄とは何なのか……アレもいずれは災厄になると仰っていたな。要は非常に強力な怪物か」
「私も聞いた事ないけど、神話の存在には普通じゃ考えられないような怪物がゴロゴロいるからね。災厄というのもその類かもしれない」
フェンリルのように「世界を飲み込む狼」とか、聞いた話じゃ「世界を囲む存在」とかね。
スケール感がおかしいけど本当にいるんだから困る。
「そんな怪物と殴り合うなど御免被りたい所だ。いち早く女王と影を討伐してアル君にその封印とやらを何とかしてもらわなければな」
「なかなかアンペルさんも投げにかかられますね? でも僕らの世界で封印なんて概念は想像上の物でしかなかったんですが……それが真理にあるのか?」
「なんにせよアンペルの様なこの世界の錬金術士よりアルが選ばれたんだ、自信を持ってくれ。それでキロは……またとんでもない物を賜ったな」
「どう取り扱おうね、コレ。頂いたはいいけどこっちなんて怖くて使えないよ?」
「これらは一体何なのかね?」
アンペルは知らないか。これこそクリント王国が求めた物の一つと言えるんだけど。
「こっちは精霊の力を封じた瓶だよ。クリント王国の者達がオーリムの水を奪ってでも採取に走った光る砂を高純度に精錬したもの、とでも言えばいいかな?」
「……成程。貴重品である事は分かったが素直には喜べんな。奴ら、これを求めていたのか」
「正確にはこの小瓶を素材にした何かのようだな。賢者の石という言葉は聞いていないが似たような物じゃないのか? それより……問題はこっちの結晶体の方だ。本物は初めて見たぞ」
「エレメントコア、と言っていたかい? 先日闇のエレメントが宿っている物なんてそうそう無いって事だったけど」
「これはその奇跡の産物って事だね。暗闇の精霊石とも言って、文字通りエレメントの塊だよ。一つの物体でコレを超える純度のエレメントを宿す物なんて無いんじゃない? ましてや闇のエレメントコアなんて……」
正直手に持っていたくない。
落としたところでキズ一つ付かないだろうけど、そういう問題じゃない。
起動はしない大陸一つ吹き飛ばす威力の魔法陣でも手に持っている気分だよ。
「エレメントコアなんて個人で持つものじゃないんだよ。氏族単位で持つ代物で、結界だとか大規模な魔法の触媒や維持のために皆の賛同の下に使うような、大精霊様からの賜り物だね」
「では、これはそのままキロ嬢が持っていた方がよさそうだな」
「……私が持っていても使い道がないと思う。闇のエレメントなんて人間が実用できる代物じゃないし一朝一夕で身に付くものでも無い。仮にこのコアを元に使えるよう取り組んだとしても一体何百年かかるやら」
実は……手段はあるけど切り札もいいところだし、易々と練習できるものじゃない。
さっき言われたのはこれだよね。でも3年なんて期間じゃどう考えても実用は無理だ。
となると。
「……ライザの錬金術の素材、かな? あの子ならコレを平然と扱える気がする」
「精霊の小瓶をクリント王国が調合する事が出来たのだから、錬金術で精霊の力を取り扱う事は可能なのだろう。アル君の加護とキロ嬢の協力もあれば盤石そうだな」
「僕の加護って光ですけど……闇なんて取り扱えるんでしょうか?」
「違うぞアル。光も闇も本来同じ要素なのはお前の方がよく知っているだろう? 属性としての光と闇も表裏一体なんだ。表現の方法がないからそう呼んでいるに過ぎない」
「試しに干渉してみようか、この面子なら何かあっても大丈夫だろうし。アル、これ持って」
やっと離せた。ふぅ……緊張した。
まあ、使えるかどうかを試す意味なのも本当だし。
いつかのゴルドテリオンを調合した時のようにっと。
「それじゃあ
「僕らの錬金術に
感じるものはあるらしい。この時点で既におかしいなあ。
物体に特化しているアルの錬金術が精霊の力そのものと言えるエレメントコアを、しかも闇属性をそう簡単に理解出来る筈がなかったんだけど。
詠唱もしてないのに……ひょっとして私、いらない子?
「感じるものはあるのかね?」
「そうですね……形のない質量? 元素構成はサッパリですけど重力の塊というか、空間を物質として捉えているような気分です」
「目には見えないが……そこにあるというのは分かっている、という事か?」
「……ちなみに私、まだ加護に干渉してないよ?」
「えっ?」
「えっ? じゃないよ。詠唱してないし」
他人の加護って、そんな簡単に干渉できるものじゃないってば。
「もう……はい復唱。Unum est Omnia. Omnia est Unum.」
「う、うん。ウヌムエストオムニア、オムニアエストウヌム……うおお、何だこれ」
よくまあ加護無しでリバウンドしなかったもんだよ。
何を見てるんだろう? 干渉自体は分かるけど、特に見えるものは私にはない。
「これは……僕の知っている原理原則の見直しが要りますね。そもそも元素という考えがない新物質か、法則そのもの? 魂の大本というか……これも
「ここはアル君の世界とは時空が違うという事だから別の物理法則が適用されているという事もあるだろう。それを以ってもよくわからない表現だが」
「……そういえば、大精霊様も仰っていた
私の知っている限りじゃ、大量の黒い手を持っている目玉だよ。
「間違ってはいないんですが……アレは人の身で見て良いモノじゃないんですよ。セカイノナカミ――禁忌にしておくべきものです。ちなみにそれを見る事が「手合わせ錬成」の条件になります。真理を見た記憶を持った身体を構築式として手合わせで円を為し、錬金術を発動させているわけですね。ただ、こんなもの真理で見た事があったか……今の僕じゃまだ不足なのか?」
「人知を超える世界の法則、か。成程、並の人間なら頭の許容量を軽く超えそうだ。アル君が英雄級だからこそ、それを見た上で生きていられるのだな」
こちらの世界の真理もアルの見たものと同じなのかな。
とにかく闇の構成を見る事は出来たみたい。これならライザでも取り扱えるかも。
「さて……あの影の女王だけでもかなりの収穫だったが、随分いろいろな情報が入ったものだ。一度外へ出て状況の整理を行わないか? ここでは落ち着いて話も出来んからな」
「……そうですね。あっちにアレが見えている事も、その辺にいるフィルフサも気になりますし。ライザと入ったボトルには帰還点がありましたけど?」
「こっちにも在ったよ。そこから戻るとしよう」
「流石に疲れた。こんなのは久々だ。明日ライザ達に話す事もあれば塔に向かう話もある。アンペルには武器の新調もある事だしな」
「なに、こちらもライザの先達としての意地がある。明日には間に合わせるさ」
「……それなんですけどアンペルさん。一つ協力をお願いしたい事がありまして」
「了解した。話は外に出たら伺うとしよう」
色々と分かった事はあったけど、分からない事も増えたね。
明日ライザ達が来るまでにその辺りを整理しないとね。
「さて……今の課題は、①3年以内にアル君を大精霊の元に送れる状態とする事、②蝕みの女王と影の女王を同時に討伐する事、③クーケン島の水確保の手段を新たに設ける事、④クーケン島が沈みそうな原因を調査して解決する事、といったところか。①②については大侵攻の話もある、凡そ20日以内という所か。その間に2体の女王を同時に討伐する算段を立てなければならん。③④についてはタオの持つ蔵書とアル君の知識に期待か。④は……まだライザ達には話さずにおくか」
「ええ。特にあの子達には重い事実だと思いますから。蝕みの女王については最悪の場合僕だけで相手するというのも本当にありそうですけど、一人くらいは付けてもらいたいですね……」
島が沈むと分かったら、下手をすれば暴走しかねない。
なんとしても島を救おうと無茶をする可能性がかなり高い。今はまだ時間をおこう。
蝕みの女王については……まあ。
「その時は私が付くよ。アルの加護を攻撃に転用できるのは私だけだし、場合によっては光属性の大魔法も発動できる――聖域の原形が無くなるかもだけど。女王も再生はするんだろうけど無限ではないでしょうし、影の方も削れるんじゃない? 本気で貴方一人に任せるつもりは私も無いよ」
「本当なら私も参戦したいところだが……すまないな。2人と比べて私では力不足だろう、情けない限りだ。このボトルで修業は可能だろうか?」
「そんな事はないよ。リラはアンペルと一緒に居たんだからアンペルとなら連携は取りやすいでしょ。強いと言ってもライザ達は経験が浅いから司令塔がいた方がいいだろうし。まあこの辺もどうするかはあの子達と話した結果次第だけどね……私も鍛え直さないと」
外に出て早速の作戦会議。
このボトルは光も色も失わないらしい。作られ方が違うから原理も別物のようだね。
二面作戦についてはまだまだ机上の空論だ。
ライザ達もどんどん強くなっているんだから、彼女達に蝕みの女王を任せるというのも現実的な手段と言えそう。極力危険な目には遭わせたくないけれどお願いする事を考えないといけない。
「案だけ挙げて明日ライザ達が来た際に煮詰める事にしよう。それで、アル君は私に話があるんだったか?」
「ええ。ライザの杖をゴルドテリオンで新調しようと思っていまして」
確かに最初のゴルドテリオン製の武器にはライザが相応しいね。
なかなか粋な事をするじゃない、アル。
「ふむ、義手の事も合わせてライザには世話になりっぱなしだからな。気合を入れようじゃないか。リラ、構わんな?」
「ああ。ただ出来る限り私の武器の新調も頼むぞ。武器火力という点では今のレント達の武器にすら劣るだろうからな」
「やれやれ、今日の休みは無さそうだ。まあ今までサボっていた分働く事としよう」
「私も協力出来るかな。まさかオーレン族が本格的に錬金術に関わる事になるなんてね」
「ここで失敗したらこの世界もキロさん達の世界も大変な事になるから。思う所があるのは分かるけど宜しく頼むよ」
命令も下った――ならやらない理由もない。
貴方の場合は誘拐と言っても間違いなさそうなんだけどね。寧ろお願いするのは私達だ。
全てが終わった後にアルがどうなるのか分からないけど、面倒事があるというなら私達も協力するのが筋というやつだ。
じゃあ、始めましょうか。
という事で新たに色々登場やら情報開示されました。
フィルフサの設定が原作や3と別物なのは以前もお知らせした通りです。
本作ではこういう設定になりますのでご了承ください。
さあ、やっとライザのシンボル的アイテムが登場します。
次は本章のメイン、塔への道行きです。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。