ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
昨日の出来事の伝達回です。
そしてやっとライザがアレを手にします。
誤字報告ありがとうございます。
今回もよろしくお願いします。
「「「「おはようございます」」」」
「うん、おはよう。もうそのまま出れるかい?」
今日はスースーしない!
昨晩アルさんが朝7時集合を伝えに家まで来てくれた。
あたしもそれなりに暗くなるまで調合はしてたんだけど、さらにその後の話。
拠点での何かがずいぶんと立て込んだのかな?
調合の成果は――みんなの分の装飾品の完成! 結局ちょっと根詰めちゃったよ。
あたしとクラウディアは耳飾り、レントはバングル、タオはネックレスだ。
あたしたちの耳飾りはペア。渡した時はあたしの両手を持ってブンブンされた。
ネックレスはタオが付ける分には服の中だしね。これなら目立たないからタオも気にせずに済む。
問題はバングル。なぜか攻撃するたびに技名を付けたくなる妙な副作用が。
一回杖を振る度に「骨砕き!」とか「痛打!」とか言いたくなるんだよね……。
やる気が出るのは間違いないし、まあレントが攻撃で叫ぶ分には問題ないでしょ。
普段からウォーシャウトとかで叫んでるし今更だよね!
さて塔に向かう前に拠点で話があるとの事。作戦会議かな?
4人揃って工房に入るのは最近のあたしたちでも珍しい事かもね。
「それじゃあ行こうか」
「俺が漕ぎますよ。なんつーか、休みもらったおかげでやる気があふれてくるんで!」
バングルのせいかもしれない……黙っておこうっと。
笑顔ではあるけど、どこか雰囲気が硬そうなアルさん。やっぱり昨日何かあったのかな。
それを含めての話だろうけど。
「昨日は休めたかい?」
「はい! あのバー、あんなに面白いメニューがあったんですね」
「店長さんにプリンを気に入ってもらえました! 取り扱って頂けるそうです!」
「あそこのバーか? 店長のおやっさん苦手なんだよなあ……クソ親父の事もあって」
「あのお店って夏でも氷が出てくるよね? どうやってるのかなあ」
「全てここに居る道具屋さんの仕業よ、タオ」
「仕業って酷いなあ。やっぱり夏にこそ冷たい物を飲みたくないかい?」
氷を作る謎の設備は「ねつこうかんき」というらしい。
どうせ原理を聞いたところで異世界言語のオンパレードだ。触れるべきではない。
「アルさんは昨日何をしていたんですか?」
「それについても拠点に着いてから話すけど、アンペルさんからの相談通り、武器の錬成もしたよ。3人分ね」
3人分。リラさんとアンペルさんは確定として……あとはキロさんか、アルさん自身?
そういえばアルさんの手甲の素材ってなんなんだろうね。
「レントとタオはどうだったんだい?」
「俺は釣りしてたんすけど……ほとんどボウズでしたよ。ボーデン地区でも旧市街でもたまーに
「また魔物が湖にいるのかな……僕は今まで読んだ本の整理をしたり、学び舎でシンシアさんと話したりでしたね。頭の中で考えるだけじゃなくて書き起こしてみるといいってアドバイスを貰えましたよ」
あの学び舎でお世話になって結構経つけど、それなりに落ち着くんだよなあ。
シンシアさんは何年経っても先生だ。
「不漁の話は僕も聞いているけど、魔物では無さそうだよ。だからこそどう対策を取ったものか悩みどころなんだけどね。シンシアさんは流石だなあ」
「ザムエルさんもそんなこと言ってたわね。だからあたしんちの裏で釣るって言ってたけど」
「どこで釣っても変わりゃしねえよ。魚の方がクソ親父から離れてくぜ」
レントの評価は相変わらずねえ。まあザムエルさんもザムエルさんだったけど。
それにしてもそこまで不漁になってたなんて。また撒き餌を作るとしましょうか。
拠点に到着。2人は中かな?
ガチャッ
「お、来たか」
「おはよう、アンペルさん」
「レントは昨日ちゃんと羽を伸ばしたか? 休む事も鍛錬だ」
「日がな釣りしてたんすけど……これが退屈で。休みの過ごし方も考えねえといけねえっすね」
「随分と贅沢な悩みだね? せっかくなんだから色々やってみればいいのに」
「おはようございます、キロさん。島では結構難しい事なんですよ? 色々っていうのをやろうとすると以前のライザのようになりかねないですから」
サラッとディスんないでよ。
「だからってタオみたいに本読みばっかしてたら、眼鏡があっても文字が読めなくなるわよ」
「遠くを見る習慣を付けてもダメなのかな?」
「近視の原因っていうのは色々あるからね。クラウディアの案も改善方法の一つには違いないから、遠くを見ては近くを見てってのを繰り返すと少しは良くなるかな」
繰り返したとしてもオーレン族みたいな視力にはならないんだろうなあ。
さてさて。
「それで……ええっと。出発前にお話があるんですよね?」
「ああ。昨日我々にとっても想定外の事が起こったものでな……コレだ」
アンペルさんたちにとっても想定外の事?
って、これは。
「あたしのとは……別のトラベルボトル? どこに落ちてたの?」
「水没坑道だよ。黒い女王の話が気になって……何かないかと探した時に僕が見つけたんだ」
「なあライザ。ソレなんなんだ?」
あーそっか。話してなかったわ。
「レントとタオは知らなかったね。ボトルの中に小さな世界を作れる古式秘具だよ」
「このボトルの中身は紫色なんですね? 中の世界が想像できないですけど……」
黒い女王っていうと――ボオスが見たっていうアレか。
見たって場所と、ボトルがあったって場所が合ってると。イヤでも結びつけたくなる。
紫色は城の世界がそんな感じだったかもだけど、こっちはなんだか禍々しいね。
「まあ結論から言おう。この中に黒い女王――正確には蝕みの女王の影がいた」
「うえぇっ!?」
一気に全身に力が入る。みんな一緒だ。
「この中に!?」
「マジっすか!?」
「コレの中にそんな物騒な魔物が……」
「前に見せてもらった世界からは考えられないけれど……あまり平和ではない世界なんですか?」
「ん。更にはその影、今後は「影の女王」と呼ぼうか。それがなんなのかを闇の大精霊様から教えてもらった」
情報過多だよ!?
そんなあっさり女王もどきと、噂に聞いた大精霊とエンカウント。しかも闇って。
「このボトルの世界は、闇の大精霊様が影の女王を封じ込める為に創造された世界に繋がっている。影の女王の正体は、蝕みの女王に対するクリント王国の者達の負の思念の塊だそうだ」
「で、その影の女王っていうのは蝕みの女王本体とリンクしているらしくってね。女王本体だけ倒しても影から力を吸って復活するし、逆をしてしまうと影の力が女王本体に宿るそうなんだ」
このボトルの世界は素材を放り込んで作られたもんじゃなくて、たまたまそんな世界に繋がってた感じ? その中にはそんなバケモノが居て、しかも大精霊直々に説明を受けた結果がソレ、と。
と、いう事は。
「それじゃあ……僕たちは2体の女王を同時に倒さないといけない、ってことですか?」
「タオは理解が早いな。お陰で我々を2組に分けなければならなくなった。相談とはこの事だ」
マジかあ。
まだ見たことも無い巨大なカマキリのフィルフサを相手に、戦力は普段の半分だなんて。
「強さはどんな感じなんすか?」
「推定でしかないが……影の方が圧倒的に強い。影以外にフィルフサもいてな、これがオーリムのフィルフサより遥かに強かった。最弱のハリネズミでも最強の甲虫を超えるタフさと言えば想像が付くか?」
「……青ぷにがフィルフサになったくらい? なんだか逆に強さのイメージが付かないよ……」
「ライザたちに初めて遇った時のブルーフィンが……竜より強い、とかかな?」
クラウディアの予想通りだったら……あたしらここに居なさそうだ。想像したくもない。
蝕みの女王本体の強さが分からないけど、条件付きとはいえキロさん単騎で勝てないって時点でお察しだよね。影はその強化版かぁ……。
「ライザかアンペルのどちらか1人はボトルに入ってもらう事になるね。後は戦力を考えて、2つ組み合わせを考えてみたよ」
「どんな感じですか?」
「1つはライザ達若手組4人と残りの私達4人。ライザ達には蝕みの女王本体を、私達が影の女王を担当する。ただこの形は、オーリムの問題をライザ達に全てお願いする形になるから正直あまり採りたくない。あまりに申し訳なくてね」
そんなこと気にしなくてもいいのに。まあ話の腰を折るのはやめようか。
前の竜に挑んだ時みたいに、あたしたちだけでキロさんが勝てなかったような魔物に挑む、と。
正直怖い。けど……そんな状況を招いたのはクリント王国だ。当事者たちはもういない。
水を返すための手がそれしかないならレント並みに鍛えないとかな。
「不安はありますけど……他の組み方っていうのは?」
「もう一方は僕とキロさんの2人で女王本体を、残りの6人で影を担当してもらう形だよ。女王本体相手なら僕の「分解」も通用するかもしれないし、門の向こうに詳しくて唯一本物を目にしているキロさんにも付いてもらう。影の方の力は未知数だから残る戦力を全部ぶつけるわけだね」
たった2人で女王を相手取る!?
いくら何でも無茶振り……いや、普通に出来そうな気がするのはなんなのかな?
「キロ嬢の説明通り、私かライザのどちらかは必ず影側を担当する事になるが……それ以外については勝手に決めるわけにもいかなくてな。ライザ達も交えて話をしようと相成ったわけだ」
「それは……そうしてもらって助かったね」
ボトルだの大精霊だのは置いといて。
ボオスが見たっていう黒い女王を発見したうえに、元の女王より強いときたもんだ。
ややこしい事情を抜きにしても、女王に勝てる見込みもわからない状態で「はい班分け」って言われてもどうしようもない。
正直アルさんかキロさんの意見が優先なのかな。この2人の負荷が特に大きそうなわけだし。
「明日明後日に攻めるわけではない、今日は塔へ行く事が目的だ。その道程の戦闘で見極めを行うのも一つの手だろう。私情としては本体を滅ぼしたいが、そうも言ってられないしな」
「俺たちが一度ボトルの世界に入るのはダメなんすか?」
「勿論入ってもらおうと思っているよ。女王の姿を知っているだけでも違うだろうし……ボトルの中のフィルフサは本当に強い。本音はみんなに危険な目に遭ってもらいたくないんだけど、経験はしてもらった方がいいね」
「イヤだなあ。知らないよりはいいかもだけど」
「サソリ人間と戦おうとしたら竜でした、よりはずっといいんじゃないかな?」
クラウディアの言う通りだね。
下手に強さを知ってる分、蓋を開けたら竜でしたってのは勘弁してほしい。
まあ、ボトルの中の魔物ってあたしが3回目に入った時もわりと強かったんだよなあ。
大精霊がどんな存在なのか詳しく知らないけど、すごい存在が創った世界なんだしなにがあってもおかしくないよね。
それと、あたしは当事者のつもりだから危険な目に遭うのは筋だと思うよ? アルさん。
アルさんの力になるってことも……そういうことだと思うし。
「影の女王については取り敢えずここまでだね。それともう一つ……僕は光の大精霊に召喚されたって事が分かったよ」
「大精霊にですか!?」
そっちの方が個人的には重要だよ! 一気にどんな存在なのか知る必要が出てきた。
「どうにも「災厄」っていうのがいるらしくってね? ソレに対して錬金術を使ってやって欲しい事があるらしいんだ。だけど僕を呼ぶ際にトラブルがあったみたいって事までは聞いてるね。ひとまず水を返還するまで用事は待ってもらっているよ」
「やっぱりというか、アルは大目に見てもらえるんだよ。私なんて滅茶苦茶緊張していたのに。呼び方もね? 私は「巫女」、リラは「守護者」、アンペルなんか「小僧」って言われてたのに一人だけ「そなた」だったんだよ?」
「いや昨日が初対面だったし僕何も言ってないよ? 「錬金術師」とも言われていたじゃないか」
大精霊って意外と人間味がある存在なのかもしれないわね……アンペルさんを「小僧」て。
キロさんは霊祈氏族だからあたしたちよりも大精霊の扱いが大事なんでしょうけど、女の人なんだっけ? 相変わらずアルさんのたらしオーラが影響を及ぼしてるみたい。
まあ大精霊に召喚されたっていうなら、アルさんが加護持ちだったりって説明は付くのかな?
あとなんだ、「災厄」って。もう生き物じゃなくない? 物騒な名前だ。
「それと……ライザ、闇の大精霊様からコレを貰ったんだけど調合に使えたりしない?」
キロさんが両手に何かを持ってあたしに見せてくれる。
片方は……黒い結晶体? 何なのかさっぱりだね。
もう一個のこれは……あれ?
「こっちの瓶は……前に作ったことがあったような?」
「なにっ!? 何を使って調合したんだ!?」
おおう、アンペルさんがグイグイ来るね?
なんだったっけ? えーと。
「とりあえずなんか入れてみようとして……あー七色葡萄から作った気が?」
「七色葡萄って、ライザの家の裏手に生えてるアレか?」
「そうそう。ええっと……あれだ、アルケミーペイントを作ったところで……きれいなチョウチョの羽? アレを適当に入れて混ぜたら似たようなものが出来た気が」
「綺麗な蝶……ラピス・パピヨンかな? メイプルデルタには結構生息しているね」
「どうだアンペル? クリント王国の求めていた物が裏庭の葡萄と蝶の羽から作られた感想は。バカバカしいにも程がある」
「衝撃としか言いようがないな。ライザのような才を持つ物が1人でもいれば……いや、それはそれで更に何かをしでかすだけか」
あたし、なんかやらかしたのかな?
なんだか分からないけど知らないうちに珍しい物を調合しちゃったみたい。
まだアレを素材に使ったことは無いんだけど、使い道はあるみたいかな?
「やっぱりライザの錬金術の才能は飛びぬけているみたいだね。ならこの2つはライザに渡しておくよ」
「そんな事ないですって……こっちの黒っぽい石はなんなんですか?」
「エレメントコア――精霊石とも言って大精霊様の力を結晶化した高純度のエレメントの塊だよ。闇のエレメントだからどう使えるのかは私にも分からないけど」
へええ、そんなものが。しかも大変珍しい闇属性。またずいぶんな物を……。
でも何かの調合には使えるかもしれないかな。
「じゃあとりあえずこっちで預かりますね」
「うん、宜しく」
エレメントコアってものを見るのも初めてだから、使い方を考えないとね。
わりとデカいわね……ポーチに入んないな。一先ずバッグに入れておこう。
「取り敢えず私達から話す事は以上だ。何か聞きたい事はあるか?」
「……いいですか? アルさんは大精霊さんの用事のためにこちらにいるんですよね? じゃあ女王を倒してその用事も済ませちゃったら……アルさんはどうなるんですか?」
そっか、その可能性を考えてなかった。ナイスクラウディア。
尋ねる以前に理解できてない事が多いけど、これは聞いとかなきゃいけない。
「ん~今の段階では分からないね。普通に召喚されたわけでもなければ、この世界と僕の世界では時空――つまり時間の流れとか法則が違うらしいんだ。僕がここに来て10年だけど大精霊にとっては数百年行方不明状態だったらしいし、元の世界に帰ったとしてどのくらい時間が経っているか見当も付かないから」
「あっちに戻ったら100年後でした、とかっすか?」
「可能性の話だけどね。逆に数秒しか経っていないなんて事もあるかもしれないよ? まあ割と話が分かる存在みたいだから「全部終わってハイ帰れ」、とはならないんじゃないかな」
どっちの場合でも大変な事じゃない?
マシな方だったとしても、数秒でアルさんが数年歳を取って現れるんだよ?
アルさんからしてみれば誘拐されたも同然だしなあ……。
「他にはいいかね? では塔に向かおうじゃないか」
「ウィッス! ……ついにあそこへ行く時が来たんだな」
「ずっと目標にしてたもんね。魔物がいるっていうのが何とかならないかなあ」
「手前の丘でも強い魔物がいるって事だから……塔には何がいるんだろうね?」
レントが勇んで外へ出ていく。最初に言いだしてから何年経っただろうね。
キロさんの話を聞いたままなら、あそこには聖石ってのがあるはずだから環境が他と違うかもしれない。素材採取も大事だけど気を付けないとね。
「ライザ、ちょっと待って」
「はい? どうしたんですか?」
みんなに続いて外に出ようとしたらアルさんからお声がかかったよ?
何か持って……なんだか懐かしいね。布に巻かれた細長い何か。
って事は。
「作った武器は3人分って言っただろう? 1つはライザの分だよ」
「あたしの杖だったんですか? てっきりアルさんかキロさんのだと思ってましたけど」
「それでも良かったかもだけど、あの素材を使った最初の武器はライザの杖にしようってアルからの提案だよ」
あの素材?
キロさんが補足をしてくれて布を外してくれた――おおぉ。
「かっこいい……」
「中々女の子らしくない感想だったよ?」
「可愛いデザインにすべきだったかな? 見た目も良い物になったと思ったんだけどなあ」
先端の形は――いままでの魔石でも三日月でもない、三枚の花びらとも風車とも言えそうなシンボル……風車なのかな? 継ぎ手の部分が風見鶏を模してるね。
風車は白、柄は黒、継ぎ手は金の豪華なデザインだ。
これ、ベースがゴルドテリオンだったりする? それだけでヤバい代物だ。神秘的な雰囲気。
あたしだけじゃこの杖を作れる気がしない。そもそも絵力不足って感じ。
「じゃあ先端にぷにでも刺しておこうか」
そんなデザインがキロさんの手でぶっ壊されそうだ。急いで阻止阻止!
「いえ! このままで! これがいいです! ……でも、いいんですか? あたしが貰っちゃって」
「ライザの為の杖だからね。多分他に使える人はいないよ?」
「私だけ出来る事が無さそうで焦ったぞ」
「右往左往するリラは中々に珍しい物だったな」
ゴルドテリオンはキロさんの力を使って調合してあるから、取り扱いにもキロさんの力が必要になった感じかな?
他になんの素材を使ってるか分かんないけど、調合にはアンペルさん、形状はアルさんの錬成だろうから……あれ? リラさんがやったのは?
「「こいつ何やったんだ?」という顔をしているな。タオのハンマーに私がやった事を忘れたか?」
「そっそんなことは……ごめんなさい、分かんなかったです。精霊を宿してくれたんですか?」
「ゴルドテリオンにアルの加護が混じっているせいか、精霊との相性が良いんだよ。ライザが生きている間くらいなら宿っていてくれるんじゃない?」
「アル君が思い付かなかったら今頃何をしていただろうな?」
「ライザがその杖で音爆弾をティーバッティングしたらどのくらい飛ぶんだろうねえ」
ひょっとしなくても世界一ヤバい杖なんじゃないだろうか……。
それは置いといて――みんな、あたしのために時間を割いてくれたんだ。
すごく、うれしい。宝物だね。
「……ありがとうございます! 大事にしますね!」
勢いよく頭を下げる。
4人から貰った贈り物。なら今度はあたしが返さなきゃね。等価交換ってやつだ。
ゴルドテリオンの取り扱い、早いとこ取り組もう!
「おいライザ、なにやって……おおい、なんだその杖。すげえ感じだな」
レントたちは外にいたんだった。どうよコレ?
「へぇ~なんだかすごい杖だね。今までの杖はザ・魔法の杖って感じだったけど、これは正しく錬金術の杖って感じがするよ」
「ライザが持っていて、とっても自然に見えるね。似合ってるよ、ライザ!」
今の自分の立ち姿が分かんないけど、違和感はないのかな。
どうみてもあたし、杖に負けてない?
「ごめんね3人とも。ライザにはこれのモニターをお願いしようと思って」
「モニターってなんすか?」
「試験運用って意味だよ? つまりはお試しって事だね、お菓子の試食みたいな」
「この杖、見た目もすごいですけど中身も違うんですか?」
「タオのハンマーに精霊を付与した事があっただろう。あの時は
「イヤですよ! なんか俺の扱いヒドくないっすか!?」
「あの時のハンマーの4倍かあ……」
実際どうなんだろうね、この杖を使った魔法の威力って。
最初の杖をアルさんに魔改造してもらった時の衝撃はすごかったけど……。
レントは……うん。多分記憶を消されようとしてるんだよ――笑顔に関するやつ。
「これが上手くいっていたら皆ライザに作ってもらえばいい。なに、ライザにかかればちょちょいのちょいというやつだ」
「アル、「ちょちょいのちょい」って何?」
「楽勝って意味だけど、これはジェネレー……いやカルチャーギャップ? ジェネじゃ逆なのか」
「今失礼な事を言われた気がする、気がした、間違いない。Uri.」
「その三段活用は間違ってるよおっ!? 髪を燃やそうとしないで!」
やっぱり仲いいなあこの2人。
一歩間違えたらアルさんがパンチパーマになるだろうけど、アルさんだから心配ないか。
さいわいすぐに停止命令も出たことだし。
「さあ今度こそ出発しようじゃないか。昼までには到着したいものだ、戦場跡で昼食というのは味気ないからな」
「オッス! 一番乗りは譲ってくださいよ!」
「ピクニックでは無いのだぞ。討伐した魔物を食うつもりで行け」
「塔の事だからなんだろうけど、今日のレントはやたらハイテンションだね……」
「元気なのはいい事だよ? なにか新しい物見つかるかなあ」
多分バングルの副作用ね。黙っておこう。
あ、そういえばいっこ確認。
「アルさん、キロさん。この杖って名前あるんですか?」
じゃれ合ってた二人が止まって、顔を見合わせて。
「「セレスティアシーカー」」
ハモられた……やっぱ仲良いなあ。
なんだかうらやましい。
「セレスティアシーカー……どういう意味なんですか?」
「「天の探求者」ってところかな。錬金術って未知の世界を進むライザにお似合いでしょう?」
「名付けはわりと揉めずに決まったね。しっくり来ると思っているんだけど」
ちょっとあたしにはビッグ過ぎる気がしないでもないけど、でもかっこいい名前だね。
「分かりました。シーカー、これからよろしくね!」
みんなからもらった新しい力、頑張って役立てましょうか!
という事でライザがメインウェポンを手にしました。やっぱりこれが似合います。
ホントなら素材不足なんですがそこは精霊と加護パワーという事で。
次こそ塔へ向かいます。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。