ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
でもアルを除いてあと1人、盛大に活躍してもらう予定の非メインキャラが居ます。
まだまだ先のお話ですが。
今回もよろしくお願いします。
キイィィィイイッッ!!
「こっ、ここにも魔物が!?」
動揺するタオは置いておいて、あたしは魔物を観察する。
……何この魔物? イタチだけど、オオイタチじゃない。青色だ、今までのと色が違う。
これがオオイタチマザー? 別に大きくない、多分違う。
――じゃあ、この威圧感はなに?
「2人とも構えて! クラウディアさんは後ろ! こいつヤバいわよ!」
とにかく体勢を立てて構える。
アルさんから青いイタチの話は聞いた事がない。って事は洞窟か街道から流れてきたんだ!
「なんで分かんだ!?」
「アルさんからこんな魔物聞いてない。多分はぐれだよ! それにイヤな雰囲気! 攻めより守るか避けるわよ!」
見た事ない、かなり興奮した様子の魔物。
そんなやつが……イタチと思えない速度でレントに突進してきた!
とっさとはいえレントは防げた。防げたのに大きくノックバックしてるんだけど!?
「っつ! ……おいおいおいおい! マジかよ、すげえ威力だぞ!」
ノーガードで食らったらヤバイ! あたしやタオはガードしても多分耐えられない!
……今が緊急時だ! 「アレ」を使う!
「みんなっ! 耳を塞いで!」
叫ぶように3人に伝え、ポケットから音爆弾を引っこ抜く。
ピンを抜いて。
「っ! しまっ……!」
こっちに転がりながら突進してきた!
ギリギリ躱し……やばっ!
よりによって音爆弾を持った右腕を掠らされ、あらぬ方向へ飛んでった。
それでも地面に落下して……。
ッキーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
とっさに耳は防げた。
それでいてもこの音量と金切り音――うっさ!
甲高過ぎて聞き取れないけど……青イタチには最悪だったんでしょうね。
予定よりずっと遠くで鳴ったのにキイィィィィッ!? って悲鳴と共にふらついてる。
気絶させそこねちゃった!
「逃げるわよ!」
クラウディアさんの手を掴み、4人で浜に向かって全力で走る。
「今のなんだったんだ!?」
「説明は後!」
とにかく逃げる! あの青イタチから少しでも遠くに行かないと!
坂を下り、大木を渡って。
手を握る左腕にガクンと重み。
「あっ!?」
「クラウディア!」
走りなれないだろう獣道に、そもそも走れる格好じゃない。
掴んでいたからコケはしなかったけど、躓いてバランスを崩してしまう。
そしてその間に。
「あぐっ!?」
レントの横っ腹に青イタチの転がる突進が入り、そのまま草むらにダウン。
うめき声が聞こえる。
「レントッ!?」
気絶はしてないみたいだけどすぐに動けるわけないよね!
このままじゃ逃げられない。
じゃあやる事は一つ! ――腹ぁ括るわよ!
「タオ! レントをお願い! クラウディアさんは離れてて!」
「ライザはどうするのさ!?」
「決まってんでしょ!」
構えて、見据える。
怒り心頭というか、興奮と混乱で動くものに飛び掛かってくる感じかな?
多分元々が手負いで、どっかから逃げてきたんだ。
一対一、アルさんとの訓練を思い出す。
知恵のある魔物は避ける事も考えるって事だったけど。
でも――アルさんより強いもんか! 雨を避けれる? ……ここは攻める!
「シャイニートレイル!!」
アルさん相手には牽制にもなんなかったけど、こいつはどうだ!
あたしの動きを察知して突進してくる青イタチ。
でも雨は避けれない。頭上から降る光弾に打ち付けられ、キィッ! と鳴く。
それでも、突進を止めない。
だけど突っ込んでくるなら分かりやすい!
「コォーリングスタァー!!!」
真正面に全力であたしの十八番をぶっ放す! 手ごたえあり!
「連射ぁ!!」
2、3、4、5、6!
前とは別物になった魔力弾を連続で打ち込んで。
「せぇーーのっ!」
7発目! 力を込めて最後の一発!
訓練の結果、あたしが一度に出していいと言われた限界。
これ以上は威力が下がっちゃう上に、あたしにも消費が大きすぎるらしい。
突進は止められた。
ダメージもしっかり入っている、はず。
だけど。
「……まだ倒れないってわけね! ホントにあんたイタチなの!?」
しっかり敵意は残ってんのよね。
次はどう出てくるのかしら。
「っく、すまねえ!」
「あんた大丈夫なの!?」
「今もズキズキするぜ? けどライザだけに戦わせられねえだろ!」
「無理しちゃだめだよレント! ライザ、僕も入るから!」
痛いだろうけど立ち上がったレント。怖いだろうにそれでも魔物と対峙するタオ。
なかなか格好いいじゃない! ちょっと見直したよ!
――クラウディアさんを守るんだ!
「行くわよ!」
そういって再びシャイニートレイルを放とうとした、その時。
「お前達では、揃った所で勝つのは難しそうだな」
クラウディアさん? ……違う、全然聞いた事のない女の人の声。
そして。
「目を瞑れ!」
男の人の声と共に、あたしの顔の横を過ぎて青イタチに飛んでくナニカ。
あれは……やばっ!
反射的に目をつむるだけじゃなく耳も塞ぎ、しゃがむ。
塞いだ耳にも届いた、地面に落ちたコツンて音。
で、目を瞑っているのに目の前が真っ白になり。
ボォン!
案の定の爆発音だよ。
目を開けると……青イタチが倒れていた。
「……倒したの?」
「あの強え魔物を、一発で?」
「これが強い? そう思える程度の腕でよくこんな所に入ってきたな。呆れた奴らだ」
先ほどの声の主なんだろう男女2人がこちらに歩いてくる。
男の人は――若そうだけど不思議と貫禄がある、片メガネが特徴なローブっぽい服の人。
女の人は――銀色の髪に色違いの目、高い背丈にミステリアスな雰囲気、武人っぽい。
「だが、そこの娘は見かけよりはやるな。かなり遠めからだが見えていた。攻め筋は悪くない」
「あ、ありがとう、ございます?」
よくわかんないけど、褒められた?
それより気になる事が1つ。
「あの……さっきの爆弾は?」
その言葉に男の人がほう? と反応した。
「お前はあれがフラムだと分かったか。私が
――レンキンジュツ?
初めて聞く言葉だね。どういう意味なんだろう。
そんな事を考えてる間に話が進んでいた。
この2人、アンペルさんとリラさんはクラウディアさんを探していたらしい。
大きな音(あたしが投げそこなった音爆弾だ)を聞きつけ、こちらに向かってきたとの事。
そして目標を確保したなら向かうのは依頼主の下、クラウディアさんのお父さんの所だ。
浜の船着き場に居るらしい。
という事は、アガーテ姉さんたちもいるよね……はあぁ~、お説教待ったなしだなあ。
2人に連れられ、あたしたちも出口に向かって歩く。
渡ろうとしてた大木を渡り、光の花(魔払いの花っていうんだって)を通り過ぎて戻ってきた。
そしてやっぱりいたアガーテ姉さんに、当たり前だけどしこたま叱られたのだった。
クラウディアさんのお父さん、ルベルトさんの執り成しで大分マシになったけどね。
加えてクラウディアさんを最初に見つけたのがあたしたちだった事、音爆弾で場所が分かった事(アガーテ姉さんには助手の時にもらった試作品と答えといた)、青イタチを足止めできてた事もプラスに働いて、なんとか
見つけられたのは偶然だったけど、音爆弾と足止めの戦いについてはアルさんさまさま。
ホントに、大けがをしていたかもしれなかったんだから。
島へ向かう船の中、いくつか話を聞けた。
助けてくれた2人――アンペル・フォルマ―さんとリラ・ディザイアスさんは、クリント王国の遺跡探索のために旅をしていて、クーケン島に向かうルベルトさんの馬車に相乗りしていたらしい。
そのアンペルさんの特技というのが「錬金術」ってものとの事。
あたしに反応したのは「
形を見た瞬間、アルさんの音爆弾を想像しただけだったんだけどね。
「破裂する玉」こと爆弾。たしかにアルさんから聞くまで知らない言葉だった。
ここまでの話をつなげると……爆弾は普通錬金術で作る物って事だよね。
ならアルさんは錬金術を知ってたりするのかな?
ルベルトさんのお話では、クラウディア(さんはいらないって)は意外に行動派みたいで、隊商を抜けてどこかへ行っちゃうことが結構あるらしい。今回はその現場に出くわしたわけだ。
ホント、無事でよかった。
島に到着したルベルトさんたちを、モリッツさんが出迎える。
古老も一応いるけど、こういう場を仕切るのはやっぱりモリッツさんの方がずっと上手だ。
そもそも古老はルベルトさんたちを招くのに反対していたもんね。
土地が小さくて高い山もないこの島では、淡水の確保がとっても大変。
普通ならずーっと深く地面を掘ると水が出るらしいんだけど、クーケン島の下には硬い岩の層があるみたいで掘れないんだってシンシアさんから習ったかな?
大昔は噴水から水がたくさん出ていたくらいだったって事だけど、いつしか枯れちゃったって。
水がない中、そんな環境でも育つクーケンフルーツがこの島のみんなの命をつないだ。
で、何世代か前にブルネン家が水源を見つけた事でヴァッサ麦なんかが作れるようになったんだ。
だから水源を持っているブルネン家、その当主のモリッツさんがある意味一番の権力者といえるってお話。加えて偉ぶってるとも言える――跡取りのボオスも含めてね。
なぁーにが「ブルネン家の男として」なのか知らないけど。
ルベルトさんとモリッツさんが商いのお話をしてる間、あたしはクラウディアにそんな説明をしつつ話が終わった所で解散した。
クラウディアたちは旧市街の御客人用の御屋敷。アンペルさんたちも学び舎の隣、つまりアルさんの工房のすぐそばの空き家を借りる事になったらしい。
3人での帰り道、アルさんはいるかなと思ってお店を見てみたけど……「CLOSE」の札。
今日の事はまた後日お話しよう。報告とお礼をしなきゃ。
そんな事を思っていた、その後で会いたくない奴に遭ってしまう。
ボオスだ。お付きかなんなのかしらないランバーもいる。うっとおしいなあ。
「よう、ライザとその他オマケども」
「誰がオマケだ」
レントとボオスの間で火花が散る。3人の中ではレントが一番ボオスと険悪といえるのかな。
とはいってもあたしも同じだ。毎度のごとく説教じみた事を言ってくるこいつがキライ。
タオはいじめられている事もあって怯えてる感じだ。
「掟を破り島を出て、魔物にやられた挙句流れ者に助けられる。そんな恥知らずで身の程知らずなガキどもが一人前に反論か?」
もう知られてるか。護り手の人たちから結果だけ広がったかな。
小さな島だから噂が広まるのはあっという間。
残念な事に元々のあたしたちの評判は言わずもがな。いろいろ尾ひれが付きそうだね。
「そんな目にあっても相変わらず反抗的な目だな、ライザ。いい加減あるべき所で為すべき事をしたらどうなんだ」
「あたしはその「為すべき事」とやらを探すためにいろいろやってんのよ。ただブルネン家に生まれたからって、その道しか考えないあんたに言われたくないわ。それに、掟を破る流れ者のアルさんに助けられたとして、あの人に同じセリフを吐けるんでしょうね?」
「……何故そこにエルリックさんが出てくる。あの人は確かに元々流れ者だ。だが、今までにどれだけこの島に貢献されてきたと思っている? 掟を破る事になっているのも、それが島民の為になると確信して、俺達にもしっかりと納得できる説明をして行商人のように信用されての事だ。ライザ、お前はあの人を自分と同じ目線で語れる人などと思っていないだろうな?」
あいっかわらずムカつく説教が好きなやつ。
全部間違っていると言えないところが余計に腹立たしいわね。
まあたしかに……アルさんは世界が違うわよ。「島民の誰々が」じゃなくて「アルさんが」の枠組みなんだから。それに関しては同意してやろう。
「お前如きがエルリックさんを語ろうなんておこが「まあまあ」」
何か喋ろうとしていたランバーだけど、誰もそっちに意識は向いていない。
向いているのはもちろん、ちょうど話に上がっていたこのお方。
「「「アルさん!」」」
「やあライザ、皆も。僕の名が聞こえたけど何か御用だったかな?」
いや~な雰囲気が一気に消える。
にこやかな表情を浮かべて――買い物帰りかな? 布袋を抱えたアルさんが登場だ。
この人の前でケンカじみた事は出来ない。出来る限り見せたくないもんね。
「ボオス君、モリッツさんから今回の商いのお話を少し聞いたよ。良い販路になるといいね」
「ありがとうございます。良いお話に出来るよう、俺もブルネン家の男としての責任を果たすつもりです」
「うん、頑張ってね。そういえばその商人さんがさっき到着したって小耳に挟んだね。今から晩餐会に向かう所かな?」
「ええ。そろそろいい時間ですのでこれで失礼します。行くぞランバー」
「はい!」
随分とお行儀のよい事。気持ち悪いくらいの変わりようだね。
まあ……差はあるけどあたしたちも変わらない、かな。
「お邪魔したかな?」
「イジワル言わないで下さいよアルさん……」
ようやくタオが前に出てくる。
遠目にあたしたちを見て状況を察して、こっちに来てくれたんでしょうね。
ここはアルさんの工房のすぐそばなんだから、そりゃあ通りがかるよね。失敗したなぁ。
「ごめんなさい。いい気分になるものじゃなかったですよね」
「雰囲気はいいものじゃなかったけど、喧嘩自体は否定しないよ? 皆考えが違うんだから時にはぶつけ合う必要もあるんじゃないかな」
結構意外な意見がアルさんから出てきた。
やさしいアルさんだから、みんな仲良くねって感じかと思ったけど。
「アルさんはケンカ肯定派なんすか?」
「喧嘩っていう方法を勧めるわけじゃないけど、言いたい事を言えないって事はそれだけ親交がないと言えるし、皆同じ意見しか持ってないなら最初から考える必要もないよね? 大変ではあるけど競わせる事で新しいものが生まれたり、より良い考えが出てきたりするものだよ。それに」
「それに?」
「手っ取り早いよね」
それで勝った負けたなら、わりとすっきりしない? というアルさん。
うん、意外だ。
競わせる考え方は分かる。特にいろいろと新しい事を考えるアルさんだもん。
色んな案を競わせて、一つの成功にたどり着かせていく。
そんな事を繰り返してきてるんじゃないかな。
だから――手っ取り早い方法って答えは、あたしには意外だった。
過程をすっ飛ばして結果を出す手段をアルさんも選ぶ事があるっていうのは。
「なんつーか、意外っすね?」
思った事そのまま口にするんじゃないわよ、レント。
「僕もどうしても袋小路に嵌っちゃう事はあるからね。それから抜け出すのに強い刺激が必要な場合もあるんだよ。でも勝った負けたで終わるんじゃなくて、それを通してより良い形に出来れば、とは思うかな」
やっぱりただでは終わらないアルさん。その先を考えるんだ。
「さてと、もう直に日も暮れるね。3人は商人さんを見に行っていたのかな? 気を付けて帰るんだよ」
そう言ってアルさんは工房に帰っていった。お買い物帰りだったもんね。
「アルさんへの報告は明日にしましょうか」
「なんかアルさんと約束してたのか?」
「そうじゃないけど、いろいろ教えてもらってたから」
「じゃあ、今日のライザの落ち着きようとかって」
「そ」
今2人に話してあるのは、魔物の知識をアルさんから聞いたって事だけ。
そのうち他も話すとしましょうかね。
ちょっと説明が多い回ですね、省略すべきか悩み物です。
相変わらず戦闘描写は難しい……。
ライザが成長した結果、原作とは少し違った展開になりました。
短いですが第一章はこれで完結です(原作通り)。
次から錬金術がまともに話に入ってきます。
次回もよろしければご覧いただければ嬉しいです。