ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
ただまあ、メンツが非常に強いので。
久々の戦闘描写で作者が呻いています。大した長さじゃないのに……。
誤字報告ありがとうございます。これまでどれだけご指摘頂いているやら……。
今回もよろしくお願いします。
「モータルインパクトォォォ!!!」
「単に攻撃するたびに叫んでて、よく声が枯れないよね」
「あとでガラガラ声にならないといいんだけど……」
いけない、バングルの副作用がちょっと強すぎるらしい。早いとこ改修しよう。
さすがに街道の魔物の相手は慣れたものだね。採取の際にもよく戦う事になってるし。
でも、今日の冒険はこれまでと変わってるところがいくつかある。
その1。
「さあ、始めようか!」
ついにアンペルさんの参戦だ。
あたしみたいな物理交じりやタオとかクラウディアの変則的な魔法と違って、杖を使った純粋な魔法って感じ。タオなら刃、クラウディアは音って感じだけど、アンペルさんは光線だ。
お陰で射程がすごい事になってる。30メートルくらいならピンポイント。
光線の色が紫色だから闇属性っぽくも見えるんだけど、あたしも白だし似たようなもんね。
加えて、とっても独特なのが。
「
攻撃中に時計が出現しては、魔物の動きが遅くなったりあたしたちの動きが早くなったりしてる補助魔法。加速分は慣れないと酔うわね……。
それにしても数十年のブランクありでコレかあ。現役時代はもっと上?
「アンペルさん……義手いらなくない?」
「ははは、何を言っているのかね? そのくらいこの魔法は繊細な物だという事だ」
「この数十年手抜きだったとしたら五月雨蹴りを見舞いしているところだ。手短に済ませるぞ」
変わった事その2。
リラさんは装備を新調したせいか、纏う精霊の力が明らかに濃くなってるね。
ちなみに当初スタルチウム製の予定だったけど、アンペルさんの杖も併せて結局クリミネア製となったらしい。
――先越されちゃった! 塔から帰ったらさっさと試さないとね!
火属性なら灯ってる感じだったのが、もはや燃え盛ってる。魔物はご愁傷さま。
見た目はあたしと変わらないくらいの腕の細さなのに、よくあんな大きな鉤爪を平然と振ってるよなあ。
「宿す量というより精霊の力が表に出やすくなった感じだね。素材がオーリム由来だからかな?」
「前の鉄鉤も鉄製品としては素晴らしい品だったけど、素材差には敵わないか……ライザ、そっちの金ぷにをお願いするよ」
「はい! 今度は加減しないと……」
その3。
言わずもがな。あたしの杖、セレスティアシーカー。
ハッキリ言おう――この杖はいけない。
「また橋を落とされては敵わんからな。地面を労わってやってくれ」
「分かってるって! 他の単発魔法も考えようかな……アストラルスフィア~」
さっき魔物の一掃に、街道と丘を繋ぐ橋の上でシャイニートレイルを放った時は……。
こんな感じだった。
「たくさん降ってきて! シャイニートレイル!!」
ボッ!!
あん?
……ヒュゥゥゥウウウウウウウウウ!!!!
「げっ!?」
自分で放っといてなんだけど……規模がヤバい!!
「これはいかんな」
「光の雨と言うよりは」
「
大人3人は妙に冷静だけれども、自爆全滅コースだよ!
「壁を張るからみんな僕の後ろに。避ける方はご自由にどうぞ」
「コイツぁ……俺にはまだ早そうだ。無駄に剣で受ける意味もねえか」
「とうとうライザの巻き込み体質が戦闘にも向いたよ……」
「すごいよライザ! 魔術士としてもやっていけるんじゃないかな?」
クラウディアの笑顔が胸に痛い……純粋な称賛なんだよね?
てな感じで、あたしたち4人とアルさんは錬成された壁の裏へ。
壁にドォン! ドォン! って衝突する光弾の音を聞きつつ止むのを待つ羽目になった。
ちなみにアンペルさんは魔法で軌道を曲げて、キロさんは避けて、リラさんは弾いて突破したらしい。リラさん曰く「少々手が痺れた」との事。なんの参考にもなんないね!
雨が止んだ後は……惨状だった。目的は達したけど。
橋の表面を無茶苦茶にして大半を崩し落としちゃった――主に十代組にドン引きされた。
橋はアルさんに修繕してもらいましたとさ。
いやだってさ! そこまで威力上がってるなんて思わないじゃん!?
アルさんに初めて杖を改造してもらった時に武器としての杖を初めて知ったわけだけど。
それが極まると、素人のあたしでさえこの威力になるらしい。そりゃあ市場に流せないよ。
というわけで、魔法に耐性のあるゴールドぷにに魔力を絞った魔法を放つはめになっている。
「魔物相手に加減というのも変な話だけど、精度の向上は必要そうだね」
「……ちょっとボトルの中で練習してきます」
「シャイニングぷに相手なら威力を測れたかもな。今度やってみるといい」
いつかの
リラさんの言ってるシャイニングはゴールドのでかぷに版だっけ? それを相手かあ。
とまあこんな感じで。
パワーアップした旅の2人と、杖がヤバくなったあたしと、「マーセナルスイングゥ!」と叫ぶレントが目立つ形で。
――ついにここまで来た。
「ここがリーゼ峡谷……悪魔の野、ね」
「崖に遺跡がへばり付いでるみでえだな。塔はごの先が」
「なんだか色んな遺跡を見過ぎて、ありがたみがどんどん無くなってきたよ」
「聞いてはいたけど……私でも分かるくらいに戦いの跡があるね」
ずっと奥まで続く崖の底を歩く感じになるんだね。
どういうわけか、崖の奥の方から強い風が吹き付けてくるよ。
あと、ちょっとレントの声がガラガラ気味になってきた。
「この参道はまだマシなのさ。この先は正に戦場跡といった感じだ」
「ゴーレムやイタチの変種なども多く徘徊している。油断するな。にしても……暑い」
「キロさんの力を借りる事になるのもこの先だね。地面に色々混じりすぎていて僕じゃそこで橋を錬成するのは難しそうなんだ。よろしく頼むよ」
「はいはい。今日の晩御飯は満漢全席だね? 楽しみにしておくよ」
「材料が揃わないし僕じゃ作れないって。リンすら滅多に食べないって言っていたし」
今のは料理の名前かな? アルさんが妙にげんなりしてるように見えるけど。
リンさん……王様だったっけ。じゃあ超豪華なご飯ってとこだね。
さて、パッと見でも今まで戦ったことのない魔物しかいないね。
ブルーフィンどころじゃない真っ青なイタチや黒いイタチ、緑のゴーレム。
あとは翼竜やら。色々いるもんだなあ。
あと誰も突っ込んでないけど。
「なんでここ、こんなに水浸しなの?」
深い所はあたしの膝くらいまであるよ?
アンペルさんのローブなんて相当水に浸かっちゃってる。動きづらいったらありゃしない。
「この先から流れている川が瓦礫で塞き止められていてな、この辺一帯はこんな状態だ。なに、少し進めば水は引く。深い意味はないから安心しろ」
「後で乾かしてあげるよ。レントの声も治しておこうか」
キロさん超万能だ。フェンリルに食べられたアルさんを乾燥させてたもんね。
ひょっとして……ブルネン家ってこの水の水源を辿ろうとしたのかな。
「Venti Impetus.」
ブゥオッ!
スパァン!
見えない風の刃で3体のゴーレムが細切れになっていく……。
風が吹いてる事もあって風の精霊が活性化してるらしいけど、ゴーレムを切るってのはやりすぎな気がする。しかも見えないから詠唱の直後にバラバラになる感じ。ちょっと驚くよね。
「吹き飛べ、シルフィードベイン!」
ビュゥオッ! バキャッ!
リラさんも同じく風の力がかなり使いやすいらしい。鉤爪も風断爪っていうそうだ。
青いイタチや、さらっと混じってた大きな黒イタチを消し飛ばしてく。
オーレン族二人の無双状態だよ……。
今までの杖でこの威力を出すのは大変だ――シーカーはやっぱりおかしいね。出せちゃうもん。
「俺のタービュランスも強化されてたりすんのかね?」
「レントのスキルは精霊に依るものじゃないからダメじゃない?」
「あたしたちの中で自力で風を使えるのレントだけだもんね。あたしはコレを使うのも手だけど」
まだ実戦に使ってないコレ。
見た目は結晶のようだけど、これでも風の爆弾だ。ホント錬金術って不思議よね。
「ほう、レーツェルフトか。中々の仕上がりに見える」
「薬品類はアンペルさんに全然及ばないよ。なんで水球と魔導書で
「私にとっては水と紙で水球になる時点で不思議だよ?」
「僕の錬成がどうこうと言われるけど、こっちの錬金術も大概だよね。葡萄から精霊の力を分離できるとか、わけが分からないよ」
「あんまり本を材料にしないでよ? 貴重品かもしれないんだから」
「タオ、そこは諦めてくれ。我々錬金術士にとっては宝石だろうが竜眼だろうがなんでも素材扱いだ。なに、ちゃんと使っていい物かどうか位は事前に確認している」
タオごめん。なんにも確認してないです。
古城とボトルで拾ったものを使ってるけど、重要なものじゃない事を願っててね。
「やはりこの辺りの魔物はそれなりに殴りがいがあるな。次からレントの鍛錬場所をここにするとしよう」
「フィルフサに比べると的が小さいね。代わりに柔いけど」
ゴーレムを柔いと言い切るキロさんですよ……。
リラさんは魔物をサンドバッグ扱いするの止めましょう?
戦いの残骸は主にあたしとアンペルさんでせっせと素材として回収する。
アンペルさんが言うには、この薄緑色の幻獣の毛皮ってのが動物素材の中でも上位の代物らしい。
頑張って集めよう。黒いイタチがドロップした理由は永遠の謎だ。
他には耳飾りに使ったリバーストーンなんかもあるね。在庫切れだったしラッキーだ。
さて、なんだか妙なものが増えてきたよ? これは遺跡じゃなくって。
「おっきな剣に……これ、矢?」
「以前話した事があったか? 古代の巨人が使っていた物と考えている」
「でけえっつったって……限度がねえっすか?」
「持っていた巨人さんの大きさが考えられないね……」
レントの剣の何倍あるのか。大きすぎて分かんないわね。
これがこの辺りに散らばってるって事は、持ち主は……。
「大きな剣だね。
「いくらなんでも……と言い切れないのが恐ろしいね。イズミさんの腕力って自力なんだよね? すぐ吐血する怪我人なのに……」
「先生……アルさんのお師匠様ですか? あの5人の中の1人っていう?」
「うん。肉弾戦で僕や兄さんが勝てた事は一度もないね。あっさり投げ飛ばされるよ」
「ほう? それは是非とも手合わせ願いたいものだ」
この弟子にしてその師匠あり――肉弾戦でエルリック兄弟に勝てるってなんなのかな?
師匠のイズミさんは女の人のはずだったよね? あっちにもリラさん的な人が居るんだなあ。
で、これが。
「……なるほど。ボオスのご先祖様、よくこの先に行こうと思ったわね」
「ああ、俺だけじゃ引いちまってる。大したもんだよ」
底が見えないくらいに深い溝。
向こう側へは……30メートルはある? リラさんコレ跳べるんだよね?
自然に出来た物じゃないよね。考えられるのは……さっきキロさんたちが使ってたみたいな風?
――故意に道を寸断したかのような。
「この距離なら全然問題ないね。あちらへ運ぶのは簡単だけど、アルはダメそう?」
「大地に魔物とフィルフサと……人が混じり過ぎている。安心してあちらに渡れるくらい丈夫な橋っていうのは錬丹術でも無理だね。崖沿いの道なら可能だろうけど」
「そっか」
ここ。あたしたちが立ってる地面は、ホントに戦争をした跡なんだ。
でも、そうなると疑問があるんだよね。
あの塔へこの道以外からも入る方法があるならまだしも、ボオスのご先祖様みたいな方法しかないんじゃフィルフサから逃げられない。
あるいは逃げてから分断した? なら塔はフィルフサだらけって事になるけど、古式秘具は島に持ち帰られてるんだから今も居るって事はないよね。
いつ、なんのために分断したのかな……悩んでもしょうがない。行ってみないと分かんないか。
「それじゃ運ぶよ。Musca!」
一昨日キロさんがやってくれたみたいに、あたしたちをあちら側へ風の力で運んでくれる。
あたしは一回経験済みだけどみんなの反応はどうかな?
「うわぁ~~~!」
「うああああああああ!?」
「うおおおおおお!?」
「ほう!」
「お~」
「うむ」
誰が誰か分かったかな? すごい温度差よね。
今日がスカートじゃなくてよかった。絶対スースーする。
「しょっと」
「アッサリなもんだね。流石だなあ」
「あと10人くらいなら問題なしだよ」
難しさがわかんないけど、出来る人には出来るんだよねえ。
あたしの錬金術もみんなから見るとそんな感じなのかな。
さて溝の向こう側だけど、こうして立ってみても特別違いはないね。
人が立ち入る事がないからかな?
「あれは……みんな、ちょっとこっちに来て!」
一方でタオは何か見つけたらしい。駆け寄っていく。コケないでよ?
て、これって!
「……おいおいおい。ここにもコレがあんのかよ」
「古城にあった石碑にそっくりだね。この先の塔に召喚装置があったりするのかな?」
「いや、それは違うぞクラウディア。これが召喚装置そのものなんだ」
「これが!?」
衝撃の事実だよ!?
えっ、じゃあ城から噴き出てた炎とかも全部石碑のせいだったの?
「いくつか召喚方法はあるが、これは魔物が感知する特定の波長を放射して呼び寄せる効果があるものだ」
「では、古城の竜も元々この世界に存在していた魔物だったんですね。石碑の効果はサメに対する僕の音爆弾に近いわけですか」
「喚ぶ」と書いてあっても実際は「呼ぶ」タイプもあるらしい。紛らわしいね。
音爆弾は……該当する生き物が多過ぎません?
あたしたちの場合は呼ばれる前にショックで倒れるけどさ。
「相変わらず面倒なものをそこらに作ったんだね。タオ、これにはなんて書いてあるのかな?」
「え~っと……ほとんど古城のと同じですね。「炎」が「風」になってますけど」
「では呼ばれるのは風の竜という事か」
「特別狙い撃ちというわけではないさ。その波長を感じ取れる魔物が近くにいた場合は引き寄せられるわけだ」
「で……近くにいるとあんな感じで待ってるわけなんだね?」
キロさんが峡谷を成している崖の方を見やると……うん。
――青い竜が元気にバッサバッサと飛んでるわ。
……いや、まてマテ待って!
「え、なに!? もう少し決戦みたいな雰囲気ないの!?」
「こんな所で時間食ってらんねえってのに!」
「なんでこんな目にばっかあうかなあ!」
「完全にこっちを見てるね。落ち着いていこうね!」
結構気合十分なあたしたちと。
「この辺りには竜の巣でもあるんでしょうか?」
「可能性はあるな。もしそうだったら随分と生態系が豊かな土地だ。竜肉も美味い」
「雷でも落とそうか?」
「……いや、ここは私が相手をしよう」
わりといつも通りな皆さま。なんなのよ、もう……。
というか、アンペルさん単独で行くつもりなの? さすがにそれは……。
「先生! いくらなんでも危ないですよ!」
「なに。君達若い連中やリラ達、そして我々の用事に付き合ってもらっているアル君ばかりに戦いをさせるつもりはないのでな。誇りたくもないが――元宮廷錬金術士の腕前を示させてもらおう」
タオが先生呼びになってる。実際タオにとってアンペルさんは先生だしね。
「宜しいので?」
「ああ、任せてくれ。あのボトルの中に比べれば肩慣らしもいいところだ」
「大口叩いて被弾したら承知せんぞ?」
「見学させてもらうね」
「ああ、少し待っていてくれ。悪いが……」
あたしたちの前に――悠々と高度を下げる竜にアンペルさんだけが向かっていく。
身体から溢れるような魔力。なんか最近見たよねコレ?
そっか、レントのアレだ。
――フェイタルドライブ!!
キュゥィィイイイイイイイイン!
「一撃で、これで終わらせる!」
アンペルさんを中心に渦巻く紫色の魔力の渦。
その中で構えを取るアンペルさん。
ギィェァアアーーーーー!!
いつか聞いた――赤い竜と同じ鳴き声を耳にして。
「フンッ!」
キィン!
アンペルさんが竜に杖を向けた――音が止んだ。竜の叫びも羽ばたき音も。
「……えっ、これ何が起きてるの!?」
「分かんねえ……景色が歪んでやがる。うおっ!? ライザが白黒だぜ!」
「周辺に魔力が満ちて……世界の色が抜け落ちたのかな?」
「これが……先生の本気」
魔力で紫色に染まった世界が、今度はモノクロの世界に変わる。
辺り一帯がグニャグニャになってアンペルさんの杖の先に向かって集まるような。
ふおっ!? 元に戻った。
「……へえ、すごい。こんな事出来るんだ。相対性理論ってやつかな」
「まったく。意地を張らずにあの時義手を作るなりすれば、私も楽だったものを」
「義手を作るのは難しかったんじゃないですか? それにしても空間を歪ませらせるとは」
落ち着いてるわねえこの3人。毎度のことだけど。
あたしたちを囲んでいたらしい空間は、あたしたちを置き去りにして竜だけを囲んでいく。
どんどん小さくなって、アンペルさんの杖の先に一つの立方体の箱を模った。
中からはキンキンと音が鳴って……竜に魔力弾でもぶつかってるのかな?
その音に合わせてさっきの魔力が箱の中から迸ってる。中はとんでもない事になってそう。
「これでチェックメイトだ……ハアァッ!!」
キィン!
ドォォオオオオオオオオン!!
なかなか聞けなさそうな気合の入ったアンペルさんの声とともに箱を一閃……中身が破裂した。
残ったのは……もう何か分からない。破片というかなんというか。
幸いグロいのを通り越してるね。元が生き物には見えないから。
「まあこんなものだろう……いかん、失敗したな。素材が何も残っていないではないか」
「そこ!?」
本人もアッサリしてるよ……あたしたちの周りの大人組はなんなのかなあもう。
「せっかくの竜肉が残念だが、あれがお前なりのフェイタルドライブか」
「ああ。一度練習しただけだが形にはなっただろう?」
「あれが……フェイタルドライブ」
「箱の中がどうなってたのかわかんねえけど、俺のとは完全に別物だったな。つか、竜を一撃かよ……」
「レント君も使えるの!? 私も考えないと。やっぱりフィナーレかなあ」
「あたしもやっぱり隕石を……ちなみにアレ、何が起きてたの?」
アルさんは空間を曲げたって言ってたっけ。
「ライザは重力の概念は分かるかな?」
「あたしたちが持ってる重さが……実は星に引っ張られてるって事でいいですか?」
アルさんが説明してくれるらしい。つまり魔法的な物じゃなくて……難しい話だ。
「それで大丈夫。細かな説明はとても難しいんだけど、重力っていうのは突き詰めると時間と空間に干渉が可能なんだよ。アンペルさんが作ったあの箱の中は……多分時間と空間が滅茶苦茶な状態になっていたんじゃないかな」
「時間を部分的に逆行させたりもしているぞ? 名付けるなら「リワインドフロー」といったところか。私の魔法は重力を基盤とするものだが、単なる重さの干渉よりは空間干渉の方が得意でな。完全に攻撃に転用するとああなるわけだ。虚勢ではなかっただろう?」
ちょっとアンペルさんが意地悪そうな顔してる。疑ってたわけじゃないよ?
「私の大魔法もさっきのに近い事が起きているのかな? 今度試そう。呼ばれて来たらいきなり木っ端みじんにされた竜はご愁傷さまだったね」
「会話が成り立てば交渉の余地もあっただろうが、所詮羽の生えたトカゲだ。そんな知能もなかったさ。変に甚振るよりアンペルのやり方が有情だったろう。食えなかったのが残念だ」
全っ然わかんないけど重力でペチャンコにしたわけじゃないんだ。
で、キロさんはそんなこともできるんですね……何属性?
それにしても……あたしたちがヤバいと思いながら戦った羽付きトカゲ、もとい竜を一撃かあ。
あたしも今の杖なら。いや、杖ありきなんじゃダメだね。鍛えなきゃ。
「なあアンペルさん。一匹なにかを呼び寄せたらしばらく何も来ないのか?」
「いや、近くに波長を感じる魔物がいればまた寄ってくる。とはいえ、破壊した場合に何が起こるか分からんからな。可能そうなら後日封印するとしよう」
「じゃあ先に進もうぜ。また来られちゃかなわねえ」
ちょっとレントは先を急いでるかな? まあもうすぐそこだもんね。
次のが来たらリラさんかキロさんあたりのフェイタルドライブが見れる気がするけど……そんな場合じゃないね、反省反省。キロさんのは冗談抜きで塔ごと吹っ飛びそうだし。
ここから先はひたすら上りか。トレッペの高台に比べりゃ楽なもんだ。
つづら折りだから一気に登り切る必要もないし。ランバーはへばってそうだけど。
「正に城塞といった感じだな。やはりあの塔を防衛拠点としてフィルフサと争ったのだろう」
「役目は……囮?」
「塔がか? 何故キロはそう思うんだ?」
「聖石を配置する意味だよ。クリント王国の者達が聖石からそのまま魔力を使っていたとは思えない。アレを餌にフィルフサを誘き寄せていたんじゃないかな」
「……ああ、そうだったんだ」
まぁたあっちだけで話進めちゃってるよ……。
とりあえず、意図的に塔へフィルフサを集めてたと。
でも竜を使っても流星の古城はボロボロになるくらいだったんだから、勝てる見込みなんて……。
「タオ、今のってどういうことだ?」
「おとりって事なら、
「フィルフサをこっち側に誘き寄せたって事でいいんだよね? じゃあ道の分断は……隔離?」
「古城はボロボロだったけど塔には秘策があったのかもね。水の古式秘具の事もあるし」
もしそうじゃなかったら……ここの人たちは。
ああやめやめ。塔に着いたら分かること。
ほら、こんなこと考えてたら階段も上り終わりだね。
ここから先はそんなに広くない一本道。塔があんなに近い――あとちょっとだ。
おかしいね? 全然疲れてないなあ、なんでだろなあ……。
「なんだかライザが遠い目をしているよ?」
「気持ちはよくわかるぜ。危ねえから近づくなって言われてた土地だったのに、むしろ危なかったのは身近な人だったってな」
「今の僕たちも大概のはずなんだけど、比較対象が雲の上だもんね。もしかしたらこの世界のトップ4人なのかもしれないよ?」
「さすがにそれは……あ~アルさんは5人の英雄の1人だった……」
タオの予想が大きく外れてない気がするのはなんなんだろう。シーカーもそうなんだけどさ。
そういえば、そんなアルさんをわざわざ異世界から喚んできてまで大精霊がお願いしようとしてる事はなんなんだろう?
今はこっちを優先して貰ってるとか。たしか大精霊にとっては数百年経ってるんだっけ?
ならそこまで急ぎって事じゃなさそうだけど、そのうち教えてもらえる時が来るのかな。
ここから、道が開けてる。ああ。
――あれが。
「ついに、来たんだな」
竜(天統べる覇者)はかませと化しました。本編でもそんな感じの印象しかない……。
大人組は影のボトルで経験値を稼いでいるので今のライザ達よりかなり強いです。
ライザだけは武器の都合で別格ですが。
次は塔の探索編です。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。