ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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ようやくここに到着です。無印ライザのシンボルですね。

今回もよろしくお願いします。


60. 74日目③  先駆者達の聖なる塔

「ついに、来たんだな」

 

「そうね。長年の夢が叶った今のお気持ちは?」

 

「なんだよその言い方……島のやつらを見返したいって思ってここを目指してきたけどよ。今は色んなことを知っちまったから……とりあえずは達成感だけだな」

 

「それでいい。力というのは誰かを見返すだの見返りを求めるだの、そんな事の為に身に付けるものではない。自身と守りたいものを守れるように強くなれ、レント」

 

「……ウィッス!」

 

まっすぐ伸びた石畳。

その先に島から薄っすらとしか見えてなかった塔が、目の前にはっきり悠然とそびえたってる。

なるほど。大樹に支えられてるってこういう事だったんだね。

 

「塔に樹が絡みついてるね、こんなの本でも見た事ないよ。しかもクリント王国の建築様式とは違う感じかな?」

 

「王国の、というよりは錬金術の分野だけで組み上げた物なのだろう。しかし自然の力というのは凄まじいものだ、数百年でここまで成長するとはな」

 

「あの大きな聖石の影響を受けているのかな。聖石化した樹の結晶も……ライザは採っておくといいかもしれないね」

 

「そうですね! これ採取道具にツルハシ作った方がいいかなあ」

 

キロさん絶対収集癖あるよね。この前のポケットの中身もそうだったけど。

 

それにしても高い。何メートルくらいあるんだろう? 200くらい?

上からの景色はどんな感じなのかなあ。

 

「周辺にも色々とあるようだが、まず塔に入るとしよう。フィルフサはいないようだ」

 

「ここに居たクリント王国の兵士の成れの果てなのか、騎士鎧がうろついているようだな」

 

「妖精達は……せっかく転生出来たのに本質を変えられなかったんだね。聖なる力を宿した怨念なんて初めて見る。気を付けて行こう――お腹空いた」

 

「塔の中で落ち着ける場所はあるのかな?」

 

「見晴らしを考えるに、あの高台が一番安全そうかな。戻ってきたらそこで食べようか」

 

「わかりました! 戻ってきたら準備しますね!」

 

アルさんが目をやったのは塔の東側の崖の上。キロさんが運んでくれるならあたしたち(レント除く)でも問題なさそうだ。

キロさんの腹時計はあたしの陽時計より正確みたいね……。

たしかにお昼時か。行って帰ってきたらちょっと遅いお昼になりそうだね。

 

「待って! ここにも碑文があるよ」

 

さすがタオ。古代文字へのアンテナが強いわね。

 

「タオ、なんて書いてあるかわかるかな?」

 

「ちょっと待ってくださいね。ええっと、「聖なる塔」……こっちは固有名詞? それと「暴虐の魔物フィルフサを、誘いて滅ぼすべし」でいいと思います」

 

「名詞の部分は「ピオニール」だね、パイオニアの別の読みかな? 僕の知る意味と同じなら「先駆者」という意味だね」

 

「タオも随分と読めるようになったな。自分達を先駆者と呼称するか、実にクリント王国らしい――ピオニール聖塔、か」

 

「誘いて、ということはやっぱり意図的にここへ集めたのかな。わざわざ聖石まで付けて」

 

「暴虐なのは事実だが、誘ったのは自分達という事を忘れているらしい。開拓の果てにあったのは自滅だったわけだ」

 

おおう、流浪の2人が特に辛口ね。

これまでクリント王国のやらかしの数々を見てきたんだろうから色々思うんだろうね。

 

「このまま真っ直ぐ行っても入れるみてえだが、土台側にも入り口があんぜ。どっちから行く?」

 

「順路的にはやっぱり下からじゃない? あとで戻ってくることになりそうだし」

 

「そうだね、見れる箇所は全て回った方がいい。先ず下に降りようか」

 

アルさん先導のもと、2方向に伸びる階段を下って土台の方へ。

下の入り口は扉がないね。壊れちゃったのかな。

 

……ああ、()()からだったんだ。

 

「……もしかしなくても、ボオスの家にあったやつだよね」

 

水生みの小屋にあった古式秘具の置き場。祭壇って感じがする台座と同じ形のものが、ここにも。

 

「あの古式秘具、元々ここにあったんだね」

 

「下段は空洞か。古式秘具で持ち出したリラ達の水の貯水槽としてフィルフサとの籠城戦に用いたんだろう。これだけの拠点だ、相当な物資が必要になっただろうからな」

 

「聖地から水を奪っておいてフィルフサを呼び寄せ、危なくなったらその水を使って籠城か。実に合理的で見上げた心がけだ」

 

「そしてここに水が無かったらボオスの先祖に発見される事はなく、クーケン島は今の状態を保っていないだろうし、ライザ達も多分生まれていない。私もここにいない。不思議な縁だよ」

 

「……口にしても詮無い事だった。すまない」

 

「リラさん……」

 

「その怒りは間違っていないよ、リラ。でも今は前を見よう。優先すべき事が他にある」

 

リラさんの怒りは察するに余りある。

あたしが察する側っていうのがそもそもおかしいのかな。

いや、それも違う……う~ん。

 

「ここはこの貯水槽だけの様ですね。では上段に向かいましょう。何があったかも分かるかもしれません」

 

「そうだね、分かりそうな事から明らかにしていかないと。ここに階段は無いみたいだから外から入ろうか」

 

キロさんはどうしてこんなに落ち着いていられるんだろう?

リラさん以上に怒っていても不思議じゃないのに。

最初に会った時からあたしたちを気遣ってくれていた所があったし、昔のクリント王国の人たちも追い出していなかったって話。

キロさんを含めた霊祈氏族の人たちはこういう性格の人が多かったのかな。

 

 

 

 

 

 

「中も魔物だらけだな。鎧やら妖精やらだぜ」

 

「なんで塔の中にサメがいるんだろう?」

 

「クラウディア、今更じゃない? 城にもいたんだし」

 

「そこら中に蔵書が残ったままだね……この走り書きは」

 

「タオ、あまり読まない方がいい。そこいらに散らばった紙のほとんどは身にならん内容だ」

 

塔の中は、螺旋階段がずっと上まで続いてる。

中心の柱に大樹が絡みつくように伸びて、そこからの枝で塔が支えられてる感じだったんだ。

それにしても魔物がかなりの数だ。狭いから避けようもないよ。

 

「少々面倒だが調べるというなら全て始末するか」

 

「そうですね。リラさんは休んでいてください。峡谷で活躍して頂きましたし」

 

「そうそう。ここに1人働いてない大人がいるんだから」

 

「……事実なんだけど、言い方酷くないかい?」

 

「なんにせよアルが動くのが一番早くて安全。階段に沿ってマスタングさんの焔を放てばいい」

 

あ~錬金術なのか怪しい「焔の大佐」さんね。

どんな方法なのか聞いてなかったけど、キロさんは詳しく知ってる?

 

「あの時のアレか……アル君、やれるか?」

 

「下から上にですから、一度に全てでなければ。とはいえ周辺の資料は燃やさずに置きたいですから、何回かに分けていきます」

 

「距離も威力も自由自在なのだな。使い手がアルのような人間だったのが幸運だ」

 

アンペルさんとリラさんも知ってるらしい。ボトルの中で使った感じかな?

でも掃討なんて……結構な数いるよ?

 

「それじゃあみんな、あまり深く息をしないようにね。これ難しいんだけどなあ」

 

「私が大まかに風の流れを作るよ。それに沿わせればいい」

 

「了解だよ。それじゃ」

 

アルさんがポケットから出したのは――あ~あの時作った、「ライター」だっけ?

カチンと蓋を開けて、手パンして、シュボッ。

 

一瞬火花が空気に飛んだように見えて。

 

 

ゴウゥッ!!!

 

 

螺旋階段を昇っていくように炎の河が駆け上がってく。

……うわあ。

 

「やっぱりこの錬金術おかしいよね。指パッチンで連発でしょ? 雨の日は無能だけど」

 

「この錬金術は秘伝だからね。大佐もそうだし、理論を考えた中尉のお父さんも凄まじいとしか言えない。ただ僕にここまで精緻な制御は出来ないはずなんだけど……」

 

「キロの精霊が炎の通り道を作っているんだろう。着火の寸前に風の流れが変わっている」

 

「加えてフィルフサを消し炭に出来る炎自体も加護に制御されているという所か? 残りの数が分からないが何度もする必要は無さそうだな」

 

やっぱりこれも錬金術らしい。指パッチンで連発ってなんなんだか。

一応、普通じゃなさそうなのがある意味救いだ。

単なる着火器具があたしのアイテムの比じゃない代物になってるんだから。

 

「なんだか強くなったと思う分だけ目標が遠く見えるなあ。あっちじゃ全然凡人枠なんでしょうね、あたしたち」

 

「いくら何でも目標にするには遠すぎねえか? 俺なんて剣じゃどうしようもねえんだが」

 

「あれだけの炎を放って、手すりが焦げてすらないあたりすごい制御だよね。心強いと言えばそれまでなんだけど」

 

「さっきの着火道具、すごいなあ。魔法も無しに一瞬で火を点けるなんて」

 

久々にクラウディアが商人モードになってるけど、ああいう道具じゃないから……いや、合ってるのかな?

階段に溶けた剣や盾らしきものがへばり付いてるよ。熱いなんてもんじゃなさそうだ。

 

 

 

「流石に全てを調べる時間はないな。小部屋の資料を流し見していく事にしよう」

 

「本類は僕ら3人で。ライザ達は他に目立ったものがないか見ていってくれるかい?」

 

「「「分かりました!」」」

 

「古代文字の知識が本当に役立つ時が来るなんて思ってもみなかったよ」

 

「「芸は身を助く」という言葉がある。何事も身に着けておくことだ」

 

「タオは調べ物に向くんだろうね。緑羽氏族と仲良くなれそうだよ」

 

階段の外側に小部屋が、対になる内側にはテラスみたいなスペースがあるね。

でも小部屋に置かれた大きな弩が、戦いがあったことを暗に示してる。

窓も急ごしらえな木の板を打ち付けてあるね。ホントに大急ぎだったんだろうな。

 

「……タオ、この辺の資料も今見るべきものでは無さそうだ。上ならまだまともな蔵書が残っているだろう」

 

「そう……ですね、先生。もうどうにも出来なさそうですから」

 

「アル。一応何が書いてあるのか聞いていいか? 気分が悪い物ならすまないが」

 

「一言で言えば「遺書」。中身は「絶望」や「懺悔」といった所です」

 

「……そうか。絶望の淵で心変わりか、薄々感じていたのか」

 

「クリント王国も一枚岩じゃなかったんだよ。だからこそ私達も即排除とはならなかった。私達と正しく交流を持とうとした一団もいたから」

 

クリント王国の人たちも――あたしたちと同じ人間だから、考え方はみんな違う。

資源を奪ってしまえという人も居れば、それを悔やむ人たちも居たんだね。

 

「ただ、この塔を囮にして逃げる事が出来た人達がいるようですね。別れた家族の、せめてもの幸福を願うとありますから」

 

じゃあこの辺りに生き残った人たちの子孫がひっそりと暮らしてたりする?

他の資料を見たらわかるかな。

 

「ここで得られる物はあまりないな。上の階に進むとしよう」

 

ここに残ってる紙は同じような物しかないみたいだね。

素材は集められるけど他の場所を見る方が優先だ。目立ったものもなさそうだし。

 

それにしても、魔物が一匹もいない件について。マップ攻撃かな?

 

 

 

「ふむ。ここの資料は高級騎士の記録か」

 

結構上の階まで来て、アンペルさんが役に立ちそうな本や資料を見つけたみたい。

この部屋は錬金術用っぽい釜やらフラスコも残ってるね。残ったままってのが気になるけど。

こっちは絵画……見た事ない景色だけど写生なのかな。

 

「……本来の防衛拠点は流星の古城。だが竜もフィルフサに敗れここまで敗走したようだ。だが、奴らも女王が全ての元凶であった事は理解していたようだな」

 

「竜は負けてたんだ……という事は追い払うための手段も?」

 

「いやライザ、残念ながらそれは無かったと見える。この塔を囮に、領民を逃がす時間を稼ぐと書かれているからな。後は……命果てるまで騎士の本懐を、といった所だ」

 

……そっか。

守るべき人を守ろうと、最後まで戦った人たちも居たんだね。

 

「こっちは多分錬金術の資料なんだけど……なんだか文法が無茶苦茶?」

 

「暗号化されてるんだね。僕の世界では一般的で、錬金術が悪用されないように書いた本人にしか分からないようにするのが当然だった。これもその類だと思うよ」

 

「解読は出来そうかね?」

 

「時間はかかるかと。一旦は置いておきましょう。後日改めて行ってみます」

 

アルさんの世界の錬金術は勿論才能が必要。だけど逆にある程度の才能があるなら、錬成陣さえ描ければ使えるんだっけ。

秘匿するのは当然だよね。

 

 

 

更に上の階に上る……っと。

 

「……宝物庫の番人、といったところかな? 比較的魂が魔力に塗れていないね」

 

「あの炎を生き残る強度か」

 

「届いてなかった可能性もありますけど、今までの騎士鎧とは別種みたいですね」

 

今まで見たことない大きな騎士の鎧があたしたちに背を向け、堂々と立ってる。

なんなんだろう、この鎧。

 

「ここにも記録があります。書き方からして……貴族の人?」

 

「私が読もう」

 

「いえ、僕も読むべきだと思いますから。「息子が、妻が、そして私も。我が家系が途絶えることは無念、いや当然の報いか」」

 

誰かの懺悔の記録、かな。

 

「「我が領地が蹂躙されるのを、ただ傍観していた無能な領主にこれほど相応しい末路はない。王命に従い、門によって繫栄し、報いとして全てを失い、その救いを再び錬金術に求めるなど、なんと滑稽な事か」……ここまでですね」

 

「自業自得の自作自演、だな。そしてその後悔の念が鎧に宿ったのが――アレか」

 

巨大な緑の鎧の騎士。あたしたちが近づいてもただ外を俯瞰し続けてるね。

映っている光景はかつての領地か、今際の際に見たフィルフサの軍勢か。

 

「はぁ……レント、楽にしてやれ」

 

「ウィッス。早いとこ眠らせてやろうぜ」

 

「そうだね。みんな、いい?」

 

「分かったよ」

 

「せめて安らかに、だね」

 

加減なんてしない。あたしたちの全力で、眠ってもらおう。

 

 

 

「4人揃って頼もしくなったものだ」

 

「まったく、らしくもない。奴らに情けを掛けようなど」

 

「それでいいんだよ。私達が憎悪を募らせた所でその相手はもういない。彼らのやった事は許される事じゃないけど、今の私達の戦いはそれを晴らすための物じゃないんだから」

 

「……そう、だな」

 

「私も理不尽を許しているわけじゃない。でも……堪えなきゃだよ、リラ」

 

「その言葉。ああそうか、君はそれで……」

 

 

 

近付いても正面に立っても動かないわね。襲い掛かって来る気配がない。

構え……っと。

 

 

ジャキ

 

 

「やっこさんもやる気になったみてえだな」

 

床に突き刺したままだった剣を引き抜き、盾を身体の前に構えてきた。

魔物を相手にする感じじゃないね。ホントに騎士を相手にする気分だよ。

 

近衛騎士(ロイヤルガード)……ううん、聖騎士(パラディン)かな。魔物に墜ちてもなお正々堂々としたいみたいだね」

 

「絵に描いたような騎士像だよ。この国の騎士もこんな感じなのかなぁ」

 

「防御はガチガチ、剣は言わずもがな、加えて多分タフよねえ。まあ、この子に任せましょうか」

 

今のあたしにはみんなが力を貸してくれたシーカーがある。

先鋒はあたしとレント――最初の頃みたいだね。

 

「ジャベリンで武具を弾くからレントは……雷鳴剣? アレで。タオも出来るだけ武具を狙って。クラウディアは補助をお願い!」

 

「轟雷剣だ! 鳴るより轟くほうがかっけえだろ」

 

「レントのこだわりは分かんないけど了解だよ。狙うなら盾かな」

 

「キロさんは氷の刃で石を切ったんだよね? じゃあ冷やせばいけたりする……?」

 

クラウディアはメイン火力になる気満々らしい。

じゃあいくよ!

 

「防いでみなさいな! 飛んでけジャベリン!」

 

()()()()()()やれば、落ち着いていけば大丈夫。

 

――そう考えてました。

 

以前のエクリプスジャベリンは最初に3本、止めの1本の計4本の形だったんだけど。

 

 

キキキキキキキキキキィン!!

 

 

「は?」

 

「加減しろバカ!」

 

「このフロア持つかなあ……」

 

「すごいよライザ!」

 

数えるのがめんどくさいくらいの本数が出てきた。しかもすっごい光ってる。

バカってなによ! あたしのことだね!! ごめんなさい!!!

ええい、やけくそだ!!

 

「どっせい!!」

 

ブォン!

 

シーカーを振って、敵に槍を飛ばし……。

 

 

ズドドドドドドドォォォォン!!!

 

 

バチッバキャッベキンッボキッドゴォッ!!

 

 

うわあ。

もはや光線にしか見えない槍が殺到。

光の塊の中、剣やら盾の破片やらが見えた。加えて紙が舞った。

 

光が収まった後には……剣を失い、盾は砕け、マントはボロボロ、鎧の一部も壊れた状態で。

 

それでも。

 

「……あの状態でも、立っていられるの?」

 

「これが、騎士ってものなのかな」

 

けど、脚にはひびが走って。

 

 

ベキャン。ドスッ。

 

 

左脚が割れた。

とっさに右膝を床に突き、上半身を倒さないように――未だに頭はあたしたちの方。

 

「……まだ闘志を失っていない、のかな」

 

「そうだな。でも、ここまでだ。後は俺がやる。情けの一撃っつってたか……クソ親父め」

 

レントが剣を右手に持ったまま騎士に近付いてく。

傍らで――真上に剣を向けた。

 

「まだ練習中だけどよ……最初の一撃はアンタにくれてやる」

 

カッ! バチバチバチッ!

 

そのまま落雷も無しに剣が雷を纏った!?

 

「じゃあな……迅雷撃!!

 

掲げられた雷の剣が、騎士の首に振り下ろされる。

完全に胴と離れた瞬間に騎士は魔力の光となって消え去った。

 

「……ライザの杖が、今のやつじゃなかったらヤバかったかもな」

 

「あたしがうなずくのも変な話だけど、そうかもね。間違いなく強かった」

 

「そこは同意するんだけどさあ……ライザ」

 

「なに?」

 

「これどうすんのさ?」

 

こそっとスルーしようとしてたのに……。

 

小部屋の壁に敷き詰められた本棚、その一角がえぐれてる。

 

わかってたわよ! 仕方がないじゃない? あの状況でキャンセルとかありえないし!

全力でって言ったし!

 

「私、構えただけだったよ……」

 

「僕としてはそれでよかったんだけど、貴重な古書がぁ……」

 

タオがすっごい凹んでる。悪かったわよ! なんかで埋め合わせするから。

クラウディアの意気消沈はどうすりゃいいかな。

 

「お疲れ様」

 

アルさんが流れを断ってくれる。とても助かる。

 

「ライザの魔法すごかったね。床を貫通しそうだった」

 

キロさんで流れが元に戻りそう……。

 

「後悔で鎖に縛られるくらいなら、そうならぬようにもっと前から動くべきだったんだ。よくやった」

 

リラさんが話題を変えて。

 

「思いのほか派手にやったな。まあこの程度、戻すだけなら造作もない」

 

「はあ?」

 

アンペルさんが変なことを言い出したよ?

 

「アンペル、お前そんな事まで出来たのか」

 

「短時間分だけだがな、加えて無生物限定だ。元の状態は見ているし問題はない」

 

コツコツとあたしが吹っ飛ばした一角へ歩み寄り、杖を構える。

 

「時よ、巻き戻れ――クロノリバース!」

 

戦ってた時みたいに時計が現れて、左回りに回転しだして……。

 

「……すごい。魔法ってこんなこと出来るんだ」

 

「改めてここが僕の世界と別物だと認識させられるなあ」

 

「こっち出身の私にとっても中々の出来事だよ。高位精霊ならともかく人の身で時を逆行させるなんてね」

 

アンペルさんの言葉通り、時間が巻き戻って飛び散った紙やらガラス片が元通りの位置へ。

20秒くらいで大体戦闘前の状態に戻った――すごい。

 

「まあこんなものだろう。範囲外に飛び散った分は戻せなかったが」

 

「実は錬金術士よりも魔術士の方が大成出来たんじゃないか?」

 

「さてな、本職の者達の腕前は凄まじい。比べられるものではないさ」

 

本職の魔術士っていうと、あたしたちの中ではキロさん的な感じになるのかな?

あたしが使ってる魔法は錬金術に比べてけっこう適当にやってるところがあるしなあ。

理論を真面目に考えたのってシエルライトくらい?

フェイタルドライブはそういうの考えるべき……う~ん、性に合わない。

 

「でよ、戻せたのはいいけど続けてここを見んのか?」

 

「それも良いが……いっその事最上階まで行くとしよう。高さ別に階級が異なっている節があるからな、錬金術の施設ならば最も高い箇所に錬金術の重要な資料を置いているだろう」

 

「どうせ上まで行くんだし先に見た方が気が楽かもね。私も聖石が気になっているし」

 

たしかにあのでっかい聖石が、間近で見るとどうなってるのかは気になるね。

もうそれなりに上ってきたはずだし、なんにせよあとちょっとだ。




キロの一言……ハガレンの名シーンの一つですよね。

次は聖塔の最上階です。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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