ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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聖塔の最上部へ。

途中で一度視点が切り替わります。

今回もよろしくお願いします。


61. 74日目④  遺されたもの

「でっかい……」

 

「島から時折光って見えたのはこれなのかな?」

 

「多分な。バカでけえ魔石だなんて思いもしなかったぜ」

 

「どこで手に入れたんだろうね? やっぱり……」

 

間近で見るとホントにでっかい。

魔石よりも明るい大きな聖石の結晶。それが塔の真ん中に来るところに置かれてる。

 

その周りにも、今までの小部屋とは比べ物にならないくらいの蔵書と錬金術の道具の数々。

アトリエを超えた――研究室ってのはこんな感じなのね。

ここで新しい錬金術が生み出されてたのかぁ。

 

「ずっと目標にしてた塔の、その頂上まで来たわけだけど。どうだいレント?」

 

「……外で言った時はたしかに達成感があったんだけどよ。今は思っちまうんだ――ここから見下ろした景色が全部フィルフサだったなんて絶望、どれだけのもんだったんだろうってな」

 

「あたしたちが絶対にそうさせない。それを心に決めてそのために頑張る。でしょ?」

 

「……そう、だな。その通りだぜ。今まで鍛えたこの力、こいつはそのためにあったんだな」

 

「そうだよ! じゃあまずは調査を頑張ろうね!」

 

ザムエルさんを負かすことばっか考えてたレントから、こんな言葉を聞けるなんてね。

あたしも口から出まかせにするつもりはない。全力で事に当たろう。

 

「浮遊天球もあるあたり間違いなく本命だな。やはりここが塔の司令部か」

 

「これだけあると、全ての確認は8人でも1日2日で終わりそうにないですね。ある程度当たりを付けないと」

 

「まずフロアの構造が分からない。とりあえず一周回ってみるべきじゃないか?」

 

「賛成だね。ここにも魔物がいるみたいだから駆逐して安全を確保しよう……ここで第2パーティーを試そうか」

 

今までは螺旋階段だったけど、頂上はフロア全体が一つの部屋らしい。

たしかに全体図を確認したいね。

 

で。

 

「第2……? あー女王戦の時の。アルさんキロさんペアって事ですか」

 

「ん。まあライターの火で塵にしちゃうくらいだから測りようがないけど」

 

「錬金術は極力抜きでやるよ。本来僕はそっち向きだから」

 

錬金術が無くても、魔法の補助が無くても、多分加護が無くても十分強いのよねえ。

冒険に出る前の訓練でどれだけ手加減してくれていたか実によく分かる。

根気良く付き合ってもらってホントにありがたい。

 

「まあキロ達なら先程の大鎧が10体居ようが問題ないだろう。どうする、アンペル?」

 

「我々もライザ達との連携を覚えるべきだろうからな。4人がどのようなスキルを使えるのか把握しきれていない。リラも詳しいのはレント限定だろう?」

 

「それじゃあ僕らは此方から回ります。迷路みたいな構造じゃないでしょうから逆側で落ち合うとしましょう」

 

そう言って、アルさんとキロさんは左回りに進んで行っちゃった。

あっちの魔物は悲惨だろうな……。

 

「あたしたちもアンペルさんとリラさんのスキルが分かってないしね。3人組かな?」

 

「たしかに6人じゃ多すぎるしな。俺とリラさん、ライザとアンペルさん、タオとクラウディアを分ける形でいいんじゃねえか?」

 

「物理、錬金術、魔法……そうだね。先生、戦い方を参考にさせてもらっていいですか?」

 

「勿論構わないとも。私とリラは別れて……レントがこちら側でいいかね?」

 

「単に男と女で分けた様な形だが……まあいい。交互に戦うとしよう」

 

「よろしくね、ライザ!」

 

「うん、よろしくね。リラさんも前衛よろしくお願いします」

 

あたしたちがパーティーを決めた所で。

 

 

 

バキャッギヤオバチバチバチバチッウウウゥゥゥゥゥゥンン…………

 

 

 

表現しにくい……魔物――サメかなあ? の雄たけび……じゃない、悲鳴?

打撃音やらよく分からない音に交じってひと際よく響き渡った。

 

「あちらの心配は一切不要なようだ。私達もとっとといくぞ」

 

「……ちょっと同情できちゃう?」

 

「さっき、あっちの魔物は悲惨そうって思ったとこだよ」

 

あっちの魔物にとって、久々に迷い込んだ人間はどんな風に見えてるんだろう。

狩る側が狩られる側ってね。

 

 

 

 

 

 

「クーケン島はシェルター扱いだったか」

 

「この塔は囮で、こっちにフィルフサを誘き寄せている間にクーケン島へ避難させたと」

 

「そういう事だね。クーケン島はクリント王国が造った人工島――だから水脈が無くて汽水を浄化して水を得てたけど、何百年か前に機能を停止した。これが故障なのか、浮力を維持する為にエネルギー供給を断ったのかは分からないけれどね。今はその維持の為のエネルギーすら尽きかけているんだと思う」

 

本当にギリギリのタイミングでこっちに来たものだね。

ライザ達はまだ知らないけど、フィルフサの大侵攻なんて無くても大問題だよ。

 

クリント王国が作った人工島って事になると、仕組みは分からないけれどエネルギーにしているのは錬金術由来のもの。なら噂に聞く「賢者の石」とかになるのかな。

その維持を()()でやる分に何日持つかって……随分と重要な話じゃない?

私の力だけじゃなくてアルの加護の力も使えるか試さないと。

 

「機能の場所への道は何処かに穴を開けるとして、そのエネルギー源に当てはあるの?」

 

「……使い方にちょっと抵抗があるけど、現状コレだけだね」

 

ポケットから取り出されたのは――オーリムの浄化の際に錬成された赤い石。

案の定「賢者の石もどき」か、そりゃそうなるよね。

何かの命をエネルギー源にするっていうのはご飯を食べるのと同じ事だけど、あっちの賢者の石みたいに見えちゃうか。難儀なものだよ。

 

「分かってると思うけど、手段がないなら躊躇しちゃダメだよ。天秤にかけるとかもダメ。島を救おうと思うかそうじゃないかだよ」

 

「耳に痛い話だね。兄さんなら他に思い付くのかな……こういう所は敵う気がしないんだよなあ」

 

失礼かもしれないけど、エルリック兄弟って性格と考え方が結構ズレてるんだよね。

 

喧嘩っ早いわりには理知的、正統派の錬金術師のエドさん。

温厚だけど激情家、法則に囚われない考え方をする変則的なアル。

 

鎧の時期は感覚がおかしかったせいか、アルは不安定にもなっていたみたいだしね。

今も似たような感覚のはずだけど、よくバレずに10年も振舞っているものだよ。

 

ホーエンハイムさんは正に親って感じだね。トリシャさんは比較的アル側になるかな?

 

「今はその石を供給源と見るしかないでしょ。島が後何日持つのか分からないけど、女王に挑む前に一度オーリムに戻ってソレを錬成する事も考えないと」

 

「その指輪で何日維持出来るかも分からないからね。気遣いに感謝するよ」

 

バレてたか。

 

「気付いてた?」

 

「依頼を受けた直後は分からなかったけどね。宝石部だけじゃなくてリングまで特注って話になった所で、何かしら精霊が関わるって事は予想出来たよ。適当な依頼だとは最初(ハナ)から思っていなかったし」

 

幸いにして何百年も私のポケットに入っていた七煌石だから、そこらのやつよりは遥かに多くの魔力を帯びている。変質すらしているのかもね。

伝導体となるリングはゴルドテリオンだけじゃ親和性不足っぽかったから、無理矢理戦士の証を混ぜてみたわけだけど。

 

それでも期限までに何日分充填できるか。

 

後はライザが精霊の小瓶を調合出来るというなら……クリント王国の者達が求めた()()の調合も試してもらうべきなのかな。

リラは知らなかったけど、私は聞いた事がある。彼らから直接。

アレのおかげで色々な目に遭ったけどライザなら悪いようにしないし。

 

さて……ここまでどうやって上ってきたのかな? このサメは。

 

「共食いしているみたいだけど、それでも数はいるね。アレが群れのボスかな?」

 

「こっちに居ると感覚がおかしくなるよ。サメが陸生なのも、そのサメが口から火を噴いているのも。そういえばアルの世界では「うに」と「くり」もこの世界と同じ?」

 

「逆だよ。実は未だに慣れてないんだよね! っと」

 

 

バキャッ!

 

 

一瞬で接敵して鼻っ面をアッパーで打ち上げる。

 

 

ギヤオ!?

 

 

「煩いなあ。Tonitrum.」

 

 

バチバチバチバチッ!!

 

 

ウウウゥゥゥゥゥゥンン…………

 

 

感電させちゃえば喉も動かせまい。落下ダメージはもう感じないでしょう?

 

「魔力の使用にどのくらい制限をかけているんだい?」

 

「ん~、1小節までにしておきたいね。峡谷みたいに風の力が溢れてる~っていうならまだマシだし、多分だけど……ここに雷の大精霊様が降臨された残滓があるから雷もまだ消費は少なめ」

 

「了解、基本こっちで始末するよ。ここに大精霊がねえ」

 

ボトルの中での召喚時は正直焦った。指輪の魔力も丸ごと持っていかれると思ったからね。

昨日の闇の大精霊様の話の通りなら、ひょっとすると数日内にここに降臨されるかもしれない。

 

喋りながらもサメを蹴り飛ばしていく姿を見ていると、本当に単独で女王を討伐出来そうだ。

だからこそアルは影側に回ってもらいたい。あっちは未知数過ぎる。

 

ライザ達4人の全てのスキルは知らないし、武器もゴルドテリオン製はライザだけって前提だけど、あの子達4人とアル1人なら間違いなくアルに軍配が上がる。

経験に差がありすぎるものね。ライザ達は僅かひと月足らず。一方他の面々は最低10年。

あちらでの経験も相まって、戦闘に対する躊躇がアルにはない。正しく線引きされている。

何気にこの男、こっちの世界に来てからも伊達に1人で死線を潜っていないんだよねぇ。数年前の街道のでっかい鎧はなんだったんだろう。

 

「お終いっと。これはカブトムシとクワガタのキメラ? 餌かな?」

 

「お疲れ様。キメラじゃなくて、ただのトライホーンだよ。外にもいたよ?」

 

自然が成した進化を、どこぞの屑男の研究と一緒にされちゃたまんないよね。

さてこのエリアで目ぼしいもの……ん?

 

「これもトラベルボトル? 随分と数があるね」

 

「何の為にこんな状態にしたんだろうね。アンペルさんに聞かないと分からなさそうだ」

 

古式秘具のはずだけど……まあ古代の国にとっては当たり前の産物か。

門も随分沢山造ったみたいだしね。リラ達も結構な数を閉じてくれたらしいけれど。

 

ボトル同士を干渉させているのか、別の意図か。まあいいや。考察している場合じゃない。

 

 

 

「この塔での、アルなりの目的はあるの?」

 

「島の機能、正確には「地下構造体」って言うみたいだけど「中枢」とでも呼ぼうか。そこへの入り口の鍵があれば一番いいかな」

 

「鍵? 錠前みたいな?」

 

「ううん、多分だけど錬金術的な何かだよ。それが中枢機能へのアクセスキーにもなっているみたいなんだ」

 

「それもタオの本に?」

 

「暗号みたいに回りくどい書き方をされていて時間がかかったよ。後はライザ達にこの辺の説明をどうしたものか」

 

モンガルテン家が島に関わってるってそういう。

随分と重要なお役目を貰っていたみたいだけど、それを活かせなかったって事は「使い方が分からなかった」というより「そもそも中枢に入れなかった」と。

となると、鍵はここにある可能性が一番高いわけだね。探すとしましょうか。

 

ライザ達には……う~ん。

たかだか10年少々の人生経験しかないあの子達に、生誕地が消えてなくなるなんて話は重すぎる気がする。フィルフサの事だって、本来あの子達抜きで進むはずの話だし。

 

とはいえ、今は何もかも時間が足りない。

凡そ日数が分かっている大侵攻が――始まりまでおそらく2週間少々。

災厄とやらの封印にアルが取り掛かるまでが約3年。

さて島のエネルギー残量は……だね。

 

何分優秀だからこそ協力してもらっているけど線引きが難しいね。

後であの子達の協力が必要になる可能性も考えると明かしておくべきか……お。

 

本棚に据え付けられているね。これは。

 

「宝箱? アル」

 

「なんだい? ……金庫? 隠し物か重要な保管物か、だね。鍵が……扉を作るか」

 

錬金術師は鍵の概念を考えた人に謝るべきだと思うんだ。

手合わせ2秒で複雑な機構もただの引っかかり扱いなのはどうかと思う。

 

さて中身は……巻物と、部屋に浮いている天球のミニチュア?

 

「当たりを引いたね」

 

「なんなのこれ?」

 

「多分中枢の鍵だよ。やっぱり島に渡ってなかったんだ。フィルフサに破壊されるくらいなら厳重に保管する事を選んだ感じかな。こっちのは……これは封蠟? なら封書って事だね」

 

「じゃあ戻ってから早速中枢に行ってみる?」

 

「……簡単じゃなさそうだね。経年劣化で回路が死んでいる。物理的にじゃなくて魔力的に」

 

ポンと渡された……ああ、たしかに。

殆どエレメントの要素がない。なら錬金術的な要素もないに等しいか。

 

「錆びた鍵ってとこだね。魔力的に研磨をするなら錬金術――つまりは」

 

「アンペルさんかライザ、2人の力がないとどうにもならない。或いは錬成で無理矢理こじ開けるかだけど」

 

「入口って何処なの?」

 

「確定じゃないけど多分トレッペの高台の最奥――ボオス君が案内してくれた水生みの小屋の更に奥だと思う。島の外から見たんだけど、あそこにも石碑があるんだよ」

 

ボオスの家の敷地の中って事は、彼の家も管理者の一族だったのかな。

家中ひっくり返しても塔の事までしか出てこなかった辺り、もう確認のしようもなさそうだけど。

 

「ん~……この辺は隠さずに、封書はアンペルさんに読んでもらおうかな。ヒントは今までに十分出てしまっているからその内気付いてしまうだろうし。幸い沈むって事はここに書いていない」

 

「どんな中身だったの?」

 

「この一帯の管理者の遺書であり懺悔。後は……クーケン島に退避したみんなは息災か。そんな中身だよ」

 

「……はあぁ~」

 

後悔先に立たずとは言ったものだけど、なぜこうも最期を迎える時に漸く言葉にするのだろう。

せめて直接聞く事が出来れば、少しは私とリラの心情も違ったと思うのに。

 

今更気にしても仕方がない。当の本人達はもういない。

その子孫は壁の向こうの音を聞く限り息災だしね――ライザがアイテムでも使ったかな?

 

「さて一応パーティー適性を、って(てい)で別れたけど、連携にならないって事でいいかな」

 

「アルがほぼ単騎でやっちゃったからね。光の加護を試すなら別だけど……あーアル、一個こんな事出来ない? っていうのがあるんだけど」

 

「なにかな?」

 

「一度、私達で先に女王本体に殴り込まない?」

 

ライザ達に任せるにしても女王本体の事前情報は欲しい。あの影も似た戦術なのは間違いないし。

対フィルフサ特効のアルやリラ、アンペルがいるなら倒せずとも情報は持って帰れるはずだ。

 

「殴り込みって……まあ有効な手ではあるよ? だけど女王の復活タイミングや場所、あと対決後や復活後の行動が読めないからハイリスクハイリターンだね。完全な乾季が訪れる前に侵攻してくる事はないだろうけど、逃げられちゃうと尾を引きそうだ」

 

「何処かに行ったとして……その間門を開けっ放しにしておく筈もない、か。戻ってきた時にリラ以外皆が生きているかもあやしいしね。今なら大石塔にいるんだろうけど……逃がすと別の場所が荒らされるか。私単騎じゃ難しいだろうし」

 

開けっ放しにした場合、私は生涯アルに仕えるようなものだしね。自分で決めたルールだけど。

アルに仕える、か。ほとんど奴隷としては機能し無さそうだね。

 

さて逆に、下手に影に挑んだ場合は全滅しかねないか。

誰でも嫌だけど、特にライザとアンペルが行動不能になった場合を想像したくないね。

私なら召喚であの世界を破壊できる可能性もあるけど――そんな手段は考えるべきじゃない。

 

「そんなとこだよ。影側の戦力が分からない以上、僕はボトル側かな。ちなみにだけど女王を除くフィルフサで一番強い種ってのはなんなんだい?」

 

「ホーンデーモン――黄色の甲虫だよ。ボトルの中で貴方が一撃で分解してたやつ。やっぱり甲虫の域を出ないから別種である女王とは比較出来ないかな」

 

フィルフサの厄介なところはその数にある。

甲虫、サソリ、ハリネズミ。これらが大挙して押し寄せるとどれだけ大魔法を連発してもジリ貧になっちゃう。

だから女王以外のフィルフサの強さが分かったとしても、女王の強さには繋がらない。ただボトルの世界のフィルフサが異常に強い事だけは確かだね。

 

「そっか。となると今後やる事は……まず鍵の修理、中枢の状態確認、エネルギー源の代替可能かの確認、ライザ達の戦闘経験積み、武器やアイテムの調合、そんなところかな。乾季まで何日くらいかってわかるかい?」

 

「ここ数日の湿度から思うに精々半月じゃないの? 鍵が即修復できれば島が何日持つか分かるだろうし代替物の検討も出来るだろうけど、ダメならアルの錬成でごり押し。ライザ達には経験を積んでもらって私達で武器の作成――そんなところじゃないかな。アルは文字通り不眠不休になりそうだけど」

 

「そこは幸か不幸か加護のおかげで問題ないからね。とはいえ何が起こるか分からないから、()()()()()()()()()()()()()()()

 

しまった……厄介な一言を言わせちゃったなあ。扱いや期限的にどうなるんだろう。

 

「あっちも終わったみたいだね。こっちの収穫を報告しようか」

 

「ん、了解だよ」

 

不安だ。あの時のように、自身を対価にするなんて真似は勘弁してほしいよ。

 

 

 

 

 

 

「室内で使うもんじゃなかったわね……」

 

「もう、どうすんのさ。また蔵書が滅茶苦茶じゃないか」

 

「下の階みたいに粉々になった本はないみたいだね?」

 

「散っちまった本を軽く閉じるくらいにしようぜ。片付ける時間はねえからな」

 

正論ですね……元々レントは鍛錬を除けば常識人だけどさ。

やっぱり持ってると使いたくならない? 新アイテムって。

 

「毎度の魔法使用は止めておくか。錬金術のアイテムは威力調整が出来んのが難点だからな。コアクリスタルを同じアイテムで埋める意味合いは薄いが故に、品質や特性には注意を払う事だ」

 

「そもそも建造物の中で風のエレメントを用いた攻撃は威力が下がる。サメ相手なら有効だが騎士相手なら雷を使え」

 

「はぁい……」

 

単にノリで使いましたと言える感じじゃなくなったよ……。

正直に話すとあたし1人だけ正座する事になりそうだから黙々と整えよう。

 

あっちの2人はどうなってるかな。ケガの心配は一切ないでしょうけど。

パーティーとしては……わりと連携出来てるんじゃない?

本気を出すとリラさんが強すぎたり、あたしがシーカーに振り回されたりはあるけど――前衛2人に補助が使える後衛1人でバランスはいいよね。

 

男パーティーは逆に前衛がレントなだけだけど、攻撃型のあたしたちと違って防御に回れるから十分に機能してる。

ただ、さすがにアンペルさんとタオの魔法は系統が違うみたいね。

 

加えて甘えかもだけど、リラさんやアンペルさんの指示があると安心できる。

やっぱり戦い慣れてるなあ。どっちかにはいてもらいたいね。

 

よし、とりあえず整理終わりっと。

 

「そちらも終わりましたか」

 

「む……大きさ的に四区画のようだがアル君達の方が一区画多く回れたか。時間をかけてしまったようだ」

 

「うぅぅ……」

 

2割くらいさっきの片づけかな……。

アイテムを使う場所は考えよう。

 

「キロ、アル。そっちは何かあったか?」

 

「ん、結構な収穫があったよ。ただ連携にはならないね、単騎で攻め過ぎちゃうから。この辺の敵程度じゃ連携だとか光の属性を使う前に終わっちゃった」

 

「まあ君達2人の場合は、ボトルの世界レベルでないと評価自体も難しそうだな。それで収穫というのは?」

 

「この2つです。まずはこちらを読んで頂ければ分かるかと」

 

アルさんが持ってるのは巻物と……小さな天球のオブジェ?

さらっと巻物渡してるけど――中身は古代文字だよね? 全部読んだんですよね?

 

2人で戦って、一区画多く進んで、なんか重要そうなものを見つけて、中身も確認してる。

 

――何というか、すみませんでした!

 

「そちらは……錬金術の承認器具か? そしてこちらはクリント王国高位錬金術士の封蝋だな。署名人は「南フルークスター管区長」」

 

「まず一旦通しで読んでみてください。その方が状況の把握がしやすいですので」

 

「かんくちょう」ってなに?

アルさんに促されて読み込み始めるアンペルさんだけど……表情は厳しい。

あんまり嬉しい知らせじゃなさそうだね。

 

そういえば。

 

「アルさん。そっちの方から何かの咆哮が聞こえたと思うんですけどなんだったんですか?」

 

「え~っと……最初のサメかな?」

 

「多分そう。アルが殴り飛ばして、空中で私が雷で焼いた」

 

「「「「うわあ」」」」

 

「殴ってアレを打ち上げるか。いいアッパーだ」

 

中々にむごい事になってた――痺れされたとかじゃなくて焼いたってのがまた。

まあ光の短剣もクレーター作る威力だし、連携もなにもないよねえ。

 

「先生が承認器具って言ってたそっちはなんなんですか?」

 

「そのままの意味かな。タオ、ここの文字は読めるかい?」

 

「ええと……Pass of Heart Gate?」

 

「ぱすおぶはーとげーと? なんだそりゃ」

 

「区切れば大丈夫だよレント君。ハートゲートがよく分からないけど多分通行証なのかな?」

 

たしかアルさんの人体講座によれば……ハート――心臓。

 

「そのまま考えると……心臓の門? 意訳すると中心への扉? って事でいいのかな。鍵みたいなもんって事ね。アルさん、触らせてもらっても?」

 

「うん、どうぞ。僕よりライザの方が分かるだろうからね」

 

これのどこが鍵だ。鍵穴の形がサッパリね、どうやって挿し込めと。

複雑っていうとボオスんとこの錠前を想像するけど、こっちはどう見ても置物だよ。

 

あたしの方が分かるって……うん? なんだこれ?

これ自体も一つの力の源……みたいな感じだけど、放ち方が複雑。見た目通りただの鍵じゃないわけだ。

でも、上手く機能してないのかな? 品質が低すぎてアイテムとしての役割を果たせてない、そんなとこかな。

 

「分かった?」

 

「ボロボロですけど、すごく高度な錬金術が使われてる事くらいは。これ自体が力の源みたいですね。なにで出来てるんだろう……」

 

「少し触っただけでそこまで分かるんだね。やっぱり修復にはこちらの錬金術が必要不可欠か」

 

やっぱりって事はアルさんもコレが壊れてる事は分かってるんだよね。

ただ修復はアルさんでも一筋縄ではいかないって事か。

なんの鍵か分からないけど、直す必要があるなら新しくレシピを考えないといけない。どんな素材ならいいのかなあ。

 

「……成程な。仮説は正しかったわけだ」

 

アンペルさんが読み終わったらしい――仮説?

 

「アンペルさん、何が書いてあったの?」

 

「掻い摘んで説明する。これは先程言った「管区長」――つまりこの一帯の統括を行っていた錬金術士の遺言という事になる。王国の中でも中核となる力を得て一時の繁栄をもたらしたものの、同時に死を呼ぶ病になってしまったとな」

 

遺言……さっきまでの遺書と同じような方向のお話か。

 

「この管区長は融和派だったようだな。共生碑建立への感謝、水を奪って軍勢を引き入れた事への後悔、呼び寄せてしまったフィルフサに対する心情を吐露したような内容だ」

 

「共生碑……ああ、あの共生記念碑だね。という事は、あの時の彼なのかな」

 

「知っているのか?」

 

「最初期の頃、私達聖地を守護する霊祈氏族と接触を図った者達だね。彼らはクリント王国の者達の中で最も友好的だったと言えるよ。でもいつしかこちらに姿を現さなくなり、水が消え……資源を根こそぎ掘り返していった。そんな経緯だよ」

 

「……それに対する懺悔を今頃ここで行うなど身勝手にもほどがある。結局は自分達が楽になりたいだけだろうが」

 

「まあ最後まで話を聞け……この塔は元々錬金術の研究施設だったが、王国内での錬金術の地位が上がるに連れて先程の通り統括所として機能していた。だがフィルフサの大侵攻を間近に受けて迎撃不可能と判断した結果、聖石をフィルフサを誘き寄せる為の設備として使い誘導――城と平原に匿っていた住民を別の土地に避難させた」

 

という事は、やっぱりこの辺りに生き残ったクリント王国の人たちの村があるのかもしれないね。

 

「重要なのはここからだ。ここからはそのまま読むとしよう。「この遺言を読む誰かに我が未練を託したい。我らの、せめてもの抗いが成就したかどうかを。この地より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。偶然、緊急避難の役に立った」」

 

「えっ?」

 

ちょっと待って――汽水湖上の島? そんなの一個しかない。

 

そんな、まさか。

 

 

 

 

 

 

「……その名を、「クーケン」という」




原作では大事な場面なんですが、本作ではネタバレが早く……。

次が第六章の最終話になります。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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