ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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第六章、最終話です。

多分ですが、下書き時にこの話で半年くらいは間が空いているようです。
何となく書き方が変わっています。

誤字報告ありがとうございます。漢字ミスくらいは無くしたい……。

今回もよろしくお願いします。


62. 74日目⑤  真相の奥の更なる真実へ

「……その名を、「クーケン」という」

 

「クーケン島が……あたしたちの住む島が、クリント王国の人たちの避難所になった人工島……?」

 

「……マジかよ」

 

「信じられないよ……僕らの島が人工島だなんて」

 

「「どうかここを訪れて欲しい。未だここに住まう人があれば、尋ねてほしい――息災か」と。そんな中身だ。アル君の予想が正にドンピシャだったわけだ」

 

アルさんはこの事実を予想していたの?

 

「どういう事なの? アルさん」

 

「……クーケン島に来て、普通の島でない事は割と早い段階で気付いていたんだ」

 

アルさんの表情は硬い。あんまりいい理由じゃないのかな。

 

「先ず鉱石がほとんど産出しないよね? これは火山であったり地層の隆起で生まれる島ではありえない現象。対岸なら鉱石が採れているんだから、島は別の地層って事になる」

 

「おかしいとは思ってましたけど……」

 

これはタオがよく言うやつだね。島にはちょっとした魔石があるくらいでアマタイト鉱すらない。

 

「他にはクーケンフルーツしか育たなかった土壌。岩盤で掘れないはずなのに、昔は水があった事実。立地条件としてあまりいい場所と言えない町の位置」

 

「ヴァッサ麦作り始めたのって最近の話だったか?」

 

「うん。ここ100年くらいの話だと思う……うちが栽培を始めたのもそうだったはず」

 

「昔は分からないけど……クーケン島は何かの経由地って立地でもないから」

 

わりと今まで聞いてきた話だ。立地の話なんてあたしから質問したのに。

 

「それから……みんなには話した事が無かったんだけど、僕には錬金術以外にもう一つ使える技能があってね」

 

まだあるんですか……。

 

「ボトルの世界でそんな事を言っていたな? どういったものなのか聞いても?」

 

「見て頂いた方が早いですね」

 

そう言って、アルさんはタガネを10本取り出して壁に向かって投げ付けた。

キレイに五芒星を描くように刺さってるわね。まさかナイフ投げまで出来るとは。

 

さらには埃を掻くように足で五芒星を描き、壁と同じようにタガネを打ち込み。

そして五芒星に触れると……。

 

 

バチバチバチッ!

 

 

壁に打ち込んだタガネ側でグーパンチが錬成された――つまり遠隔錬成?

 

「……こんな芸当まで出来たのかね? 随分と応用が利くものだな」

 

「これは「錬丹術」と呼ばれる――錬金術と基盤は同じですが独自の発展を遂げた技術になります。大きな違いはエネルギー源。錬金術は地殻変動のエネルギーを用いますけど、錬丹術は大地の気の流れを源にします。しかしクーケン島では錬丹術は使用できない。気の流れが読み取れないんです」

 

そう言えば峡谷で橋を架けられるかって話の時に、それっぽい言葉を聞いたっけ。

 

「大地の気の流れは精霊の力の流れ。その流れる方向を読まないと発動できないらしいよ」

 

「クーケン島は人工物だから自然の力の、精霊の力の流れに乗っていない。だから使いようがないのか」

 

「そんなところですね。なのでまあ、ハッキリとした違和感があったんです」

 

クーケン島が人工島だったこともすごい話過ぎてピンとこないけど、アルさんはもう知ってたって事は――既に何かしら行動を起こしてる?

さっきの鍵の事も知ってるみたいだったし……一体どこまで知ってるんだろう。

 

「ねえアルさん」

 

「なんだいライザ?」

 

「なにか、あたしたちに隠してる事ないです?」

 

そう質問したあたしに、アルさんは――苦笑いだ。

 

「ライザ達が知らない事について何個か考えている事はあるよ。でも今ライザ達に話すのは……多分キャパオーバーだ。近いうちに話す、というより知ってもらう事になるかもしれない。今は時間をくれないかな? どうするのが一番いいのか僕も悩んでいるんだ」

 

やっぱりまだあるんだ。

しかもアルさんが悩むほどなんて相当に大きな話になりそう。

話を聞く時は覚悟が要りそうだなあ。

 

そして当たり前かもなんだけど、あたしたちはまだまだ子供扱いだ。

あたしの成長不足のせいなんだけど……なんだか悔しい。

 

まだ、届かない。

 

 

 

 

 

 

「全然全く、想像してねえ事が分かっちまったな……」

 

塔の東側。切り立った断崖の空き地でお昼を食べてる最中にレントが呟く。

元々ここはあたしたちの――特にレントにとっての冒険の象徴だったはずだけど、それどころじゃなくなっちゃってるもんね。

 

「この一か月足らずで色々な事を知ったけど、ここでの出来事は三本指に入るよね」

 

「ぶっちぎり1番じゃなくて3番以内なあたり、感覚おかしくなってるわよね」

 

「他の町じゃ50年住んでいても知る事が無さそうなことばかりだよ? ライザたちはすごい星の下に生まれたんだね」

 

「ピッタリのタイミングで島に来たクラウディアも相当だと思うぜ」

 

とにかく濃すぎる! あたしが過ごしてた日常はどこに行った。

 

錬金術って未知の分野、竜に異世界にフィルフサ、リラさんたちオーレン族。

まあこの辺りまででも十分だけど……まだ、まだ飲み込める範疇だよ。

 

そこからアルさんの過去(別世界の英雄)、規格外の精霊術(加えて規格外の胃袋)。

フィルフサの大侵攻、島の真相――あたしたちのルーツ。

 

正直食傷気味だわ、せめて数年に分けて欲しかった……。

 

こんなことボヤいていられる状況じゃないはずなんだけど、まだ余裕があるのはここに居る大人組があまりに頼りになるからでしょうね。

 

「まずは……鍵の修復からになるかね?」

 

「そうですね。入り口に当たりは付けていますが錬成で穴を開けてしまうのは危険かと。真っ当な方法で出入りするのが得策だと思います」

 

「ボオスのお家の一番奥、なんだっけ?」

 

「あくまでアルの予想だ。可能性は極めて高いが他の石碑も確認しておくに越したことはないだろう。鍵穴の有無など気に掛けた事も無かったからな」

 

「私がライザの腕前についていけるか怪しいが、出来る限りの力添えはさせてもらうさ」

 

だからぁ持ち上げ過ぎだって。

アンペルさんも右腕が使えるようになったんだから、あたしと比べるまでもないでしょうに。

あたしよりも薬系統の専門じゃん?

 

まあ何にせよ、まずはコレの修復。どうしたものかなあ。

 

「ライザ、何とか綺麗に出来そう?」

 

「う~ん……いまんとこ全然レシピが思いつかなくてさ。手持ちの素材じゃダメなのかも」

 

「思いつきでもいいから必要そうなものがあれば言えよ? ライザよか効率は落ちちまうけど採ってきてやっからさ」

 

うわあ、レントが頼もしい。

塔の話もあって島の3人の中で一番ショックが大きそうなのがレントだろうけど、切り替えの早さもレントらしい。

一方でタオは何かお悩み?

 

「僕も手伝いたいけど、少し調べ物の時間を貰っていいかな?」

 

「何を調べるの?」

 

「その鍵の事だよ。アルさんは僕の家の蔵書で島の知識を得てるけど、全部に目を通してるわけじゃないらしいからさ。鍵そのものを説明してる本は無かったと思うけど、それに近い事が書いてあるのはあった気がするんだ。先生とライザが鍵の修復をするなら、アルさんと僕はそっち側になるのかなって」

 

「そうだね。書庫で読ませてもらう時間は貰っていいかな? だけど君達にもボトルの世界での戦闘経験は積んでもらいたいから時間割を決めないとね」

 

「そこは問題ないよ、ライザ達には私が付くから。踏み込み過ぎなければ私だけでも十分フォロー出来ると思う。まあでもライザは修復が優先かな?」

 

「あの世界にはアンペルかライザがいないと入れないそうだからな。私達は島の調査と……ライザの手足として動くとしよう」

 

リラさんに「ハチミツ採ってきてください!」 って言える神経してないよ? あたし。

 

ふうむ、錬金術的な道具の修復かぁ。

アンペルさんの義手みたいに普通の素材からじゃ多分無理だよね。

あの共振石、だっけ? アレみたいに何かしら神秘の力を宿してる素材じゃないと干渉すら出来なさそう。エリキシルかオーリム由来の素材になるのかなあ。

 

「乾季まで日数がないから……期間は3、4日くらいかな? それ以上かかりそうなら一旦入り口だけ僕の錬金術で抉じ開けよう」

 

「うっはあ、大忙しになりそう。なら早速なんですけど、この近辺で採れる素材の採取をお願いしていいですか? 多分ですけど役立つと思うので」

 

「任されたよ。魔物対応組と採取専門組でペアを組めばいいかな? 魔法で殲滅してもいいけど」

 

「一帯を凍らせますか?」

 

「クラウディアがどんどん武闘派になっていくよ……」

 

「ある意味俺よか好戦的かもしれねえな」

 

 

 

という事で地上に降りて採取開始。さすがに一帯を冬場にするのは止めてもらったよ?

聖石の影響を受けてるのか、神秘の力を宿してるっぽい素材が多いね。

今は選んでる時間が無いけど色んな調合に使えそうだ。

 

「すごいね。本当に金色の食料があるんだ」

 

あたしとペアを組んでくれてるキロさん。黄金うにや金のハチの巣を見つけて驚いてる。

たしかにかなり珍しくて貴重な代物ではある。クラウディアに卸すのに助かるよ。

 

「普通のうにより美味しいのかな?」

 

「美味しいですよ、結構な高級品で栄養価も高いって。3種のエレメントを宿してるって意味でも貴重な素材ですね」

 

「鍵修復の素材になりそう?」

 

「う~ん。神秘の力は宿してますけど……なんか違う、かな? やっぱり聖石や結晶系の方が合う気がします」

 

「じゃあ後でおやつに食べよう。こっちのハチの巣の方ってこれ自体がハチミツで出来てる?」

 

そう、金のハチの巣はハチミツそのものだったりする。

とっても純度の高いハチミツは、ハチの手(吻?)にかかれば巣の形に固められるくらいの糖分の塊なのよね。

 

エルツ糖の比じゃない甘さで食料として超優秀。加えてアルさん曰く1000年くらいは置いておいても腐らないらしい。つまりは素材の保存にも最適ってわけだ。

他ではほぼ見る事ないけど、この辺りのハチにとってはお茶の子さいさいみたいだね。

 

「私達の所は食べ物が多かったね、他も虫とかだったし。他のペアはどうかな?」

 

私達が採取したのはうに、ハチの巣、ハニーアントや金色の虫トライホーンなんかだね。

ちなみに今回のペアはレントとアルさん(武闘派)、クラウディアとアンペルさん(お菓子繋がり)、リラさんとタオ(苦労人枠?)っていうなかなか珍しい組み合わせ。

特にリラさんとタオってあんまり2人で話してるの見た事ないわよね。

そしてクラウディアがまさかの護衛側っていうね……。

 

「この辺りは大体見て回りましたし、一回集合場所に戻りましょうか」

 

「ん。誰かもう戻ってきてるかもだしね」

 

時間の区切りは設けたけど、それまでに終わってるペアもあるかもだしね。

 

 

 

「ここは宝の山と言えるな」

 

ホクホク顔で既に集合場所にいたアンペルさんの談だ。

アンペルさんは宝石調合が得意って事もあって、聖石関連をメインに採ってくれている。

 

聖石の欠片、聖樹結晶、聖樹の葉、聖樹の大枝などなど、まさに錬金術素材って感じ。

多分だけどこの辺の素材が鍵の修復に一番使えるかな。

 

「つつがなく、かな?」

 

「ああ、なんの問題もない。クラウディアの手にかかればそこらの魔物など近づく前に氷像になるからな」

 

「太陽の妖精は凍らなかったですね? 身体がホカホカなのかな」

 

いけない……クラウディアの常識が一般常識からどんどんズレつつあるわ。

この常識を他の町に持ち込まないようにしないと。

太陽の妖精って光熱の乙女(ホーリースピリット)の事でいいのよね? なんでアレを凍らせようとするかな。

 

「む、もう2組も戻っていたか」

 

リラさん、タオペアも戻ってきたね。

この二人は塔の中担当。何を集めてもらったのか予想が出来ない。魔導書ばっかじゃないよね?

 

「遅くなったよ。やっぱり錬金術的な素材を探すのって難しいね」

 

「そっか……リラとタオ組は唯一錬金術関係者がいないんだね。なにか見つけられた?」

 

「とりあえずこんな所だ」

 

リラさんが背負っていた袋から採取された素材を出してくれて、アンペルさんが解説してくれる。

焔の黒砂、メディウム薬骨、エメラルドグラス、化石樹……大地素材?

あたしが採取したことが無い物ばっかだ。やっぱり目線が違うと採取する物も変わるらしい。

この緑の砂(エメラルドグラス)はアンペルさんが以前調合に使ってたやつだね。

 

「錬金術素材としては優秀な物ばかりだ。なかなかに取り扱いが難しい物を採取してきたな」

 

「そうなのか? シルフィードを宿して素材を砕いていたら大体粉々になってしまってな」

 

シルフィード(風の精霊)で正解だったぞ。ブレイズ(火の精霊)だったら爆発していたやも知れん」

 

「採取道具も僕のハンマーかリラさんのキックでしたからね」

 

危ない橋を渡ってくれてたわ。

そっか、このペアは採取道具も制限があるんだ。鎌とか渡しておけばよかったわね。

いくつかスペアを作っておくことにしよっと。

 

「おや、僕達が最後みたいだね」

 

「遅刻はしてねえと思ってますけど、ちょい粘りすぎましたかね?」

 

「ううん、レントの言う通り遅刻はしてないよ。ちょっと早いくらい。で、何かよさげなものは採れました?」

 

このペアにはアルさんがいるから目利きは疑うべくもない。

担当エリアと採れる物の――今回の目的に合う合わないだけでしょうね。

 

「う~ん、鍵の修復って目的にはあまりそぐわなさそうな物が大半だね。でも珍しい物は入手出来たよ」

 

「アル君が珍しいと言うとは中々に期待大だな。何が採れたのかね?」

 

「これですよ」

 

アルさんが鞄から取り出したのは……白い花?

少し変わった形はしてるけどそこまで珍しそうにも見えない。

 

けど、アンペルさんはポカンとしてる。リラさんとキロさんも固まってる。

オーリム由来の花なのかな?

 

「……まさかコイツをこっちで見られるとはな。この辺りの植生はかなり特殊らしい」

 

「「ドンケルハイト」がこっちに咲いているなんてね。植生だけじゃなくて気候条件も相当に特殊じゃないと育たないはずなんだけど」

 

「どんけるはいと?」

 

やっぱり聞いたことない。どういう花なんだろう。

植物関係もどっちかっていうと薬に近くって勉強不足なんだよね。

 

「蘇りの花とか日食の花とか呼ばれてる、薬草としては極上と言われる花だよ。()()()()()()()にしか咲かないから法則を曲げる力があるなんて言われてたかな? 緑羽氏族でも管理できる物じゃなかったみたい」

 

「実際錬金術の力など加えなくとも瀕死の戦士を回復させられるほどの薬効を持っている。極めて貴重な代物だな」

 

うっは~。それは驚かれるわけだよ。

そのままの状態でも回復薬の最上級じゃない。

 

「ドンケルハイトは採取してしまうと1日と持たないので扱いも難しくてな。これを錬金術の素材として使用したのが「エリキシル剤」と呼ばれる回復薬の到達点だ。効果は万能の一言だな」

 

「そんなものがこの世にあるんですね……」

 

クラウディアも知らないらしい。市場には出回ってないよね。

それもコアクリスタルに入れられるんだよね? 医者いらずにならないのかな。

保存方法を考えないとかあ。

 

「アルさんはよくこれが貴重品って知ってましたね?」

 

「賢者の石みたいに人の命を使わない回復手段ってのは興味があって調べた事があったからね。エリキシル剤は知らなかったけど、ドンケルハイトは事典に見た目だけは載ってたよ」

 

「相当優秀だね、その事典」

 

「昔ロミィさんが仕入れてくれてね。中々値は張ったけどそれに見合うシロモノだったよ」

 

たしかにこんな珍しい花まで網羅してるなんてかなりの一品だよね。ロミィさんはさすがだ。

それにしても……レントは「粘った」って言ってたけど?

 

「アル君はコレを一体どこで?」

 

「実は採取したわけではないんですよ。魔物のドロップ品ですね」

 

「魔物のドロップとなると……あぁ、あの子か。それは憎しみも募るかもね」

 

「何度でも復活してきたっすね。採取はアルさんにお願いして俺はそいつをひたすら相手にしてた感じです。あと……こんな青い石ころも」

 

「おお~妖精結晶、やっぱりこっちでも入手出来たんだね。いくつか貰っていい?」

 

「いくらでも持ってってください。俺には価値が分かんねえんで」

 

アルさんに護衛なんて必要ないもんねえ。

そしてまさかのフェアリーピース補充。

 

キロさんが言うには、「幻を司る者」っていう大型精霊がいるらしい。

この辺の妖精たちは自然からの転生は出来たものの、人……クリント王国の人たちなのかな、その人たちへの憎しみはそのまま残っちゃったんだって。

そんな中で他の妖精から力を吸って大きくなった個体がソレだとの事。

 

んで、妖精ってのは自然の化身みたいなもんだから倒しても倒しても復活する。

それをレントが復活するたび倒してたらしい。その妖精に同情するわね……。

 

他のアルさんの採取は満遍なくって感じね。聖石、虫、植物、採掘類などなど。

これだけあればこのエリアで採取可能な素材はコンプリート出来てるかな。

 

鍵の修理は一旦聖石をメインにレシピを考えてみよう。

島に戻ったら素材だけ仕舞って、まずはボオスのやつに報告だけしておこうかな。

 

 

 

 

 

 

「……にわかには信じられんが、それが真相なのか」

 

「こっちも半信半疑よ。ここが人工島って事も、あたしたちが正真正銘クリント王国人の末裔って事もね」

 

島に戻る事には太陽も沈みかけてた。

今回はキロさんも拠点側に残留。島出身のあたしたち3人だけでトレッペの高台に来て、タオにボオスを呼んでもらった。門番めぇ……。

 

「正直まだショックだぜ。あの塔に行って、達成感どころか色んなもんを持ち帰る羽目になっちまった」

 

「レントは僕らよりもあの塔に懸ける思いが強かったからね。反動が大きそうだよ」

 

とりあえず飲み込むことは出来たけど、いまだに現実感が無い。

けど色々説明は付くんだよね。水の話とか掟の話とかたくさんある空き家の話とか。

元々避難所かオーリム探索のための拠点として機能させる予定だったなら、それなりに人が住める島として環境が整っていたのは納得だ。

 

「で、目下の目標はこの島の深部への到達。その為の鍵とやらの修理か」

 

「そ。加えてその入り口探しもあるけど、多分あんたの家ん中の石碑だってさ」

 

「……ああ、あの石碑か。鍵穴など気にした事が無かったからあるかどうか分からんが」

 

やっぱり石碑自体はあるんだ。さすがアルさんね。

やっぱりボオスんとこの石碑が当たりっぽいかな。

 

「俺は……俺が出来る事はあるのか?」

 

「そうねえ……あんたがあたしたちより向いてるのは島での人望ってとこだろうから、具体的すぎるところはぼかしてアガーテ姉さんとかモリッツさんにそれっぽい事を話してもらっとく事かな。さすがに大侵攻だの話してもパニックだし、クリントの末裔って知ったところでどうなるわけでもないしさ」

 

「まあそうだな。対岸で何かあっても島から出るな、くらいじゃねえか? 大半は何も言わずともそうするだろうよ」

 

「まあ、この島の気質を考えれば知らぬ存ぜぬだろうな。今回ばかりはそれが正解なんだろうが」

 

「僕たちも知らなかったら首突っ込もうとしてないよ。ただ気になるのは……アルさんや先生たちが気にしてるっぽい、フィルフサや水以外の事なんだよなあ。大侵攻の事抜きにしても焦ってるように見えるよ」

 

あたしたちにはキャパオーバーって言われたけど、あたしたちが知ってる事以外にもまだ何か問題があるみたいだもんね。大侵攻や影の女王を超えるようなのは勘弁してほしいんだけど。

 

「さてと、それじゃ早速採取してもらった素材から修理方法を考えてみましょうかね。とにかく触ってみないと」

 

「僕も調べてみるよ。明日からはアルさんも参加してくれるしね」

 

「俺は特別やる事はねえから伝令役かね。石碑を調べつつそこらじゅうを走り回る事にするさ。今なら島を3周くらいしてもまだ余裕そうだしな」

 

「あんた……人間辞め始めてない?」

 

いくら何でもそこまで小さな島じゃないわよ? このクーケン島。

まあ対岸まで泳いで往復するバカだから、あながち不可能じゃなさそうなんだけど。

 

「父さんにはあまり話す事も無いか。アガーテにはある程度伝えておこう、有事の際に護り手がどう動くかは決めておく必要がある。ああレント、よければランバーを連れていってくれ。アイツは体力不足だ」

 

「おう、いいぜ。基礎体力くらいは鍛えてやんよ」

 

「ランバー死んじゃわない……? まあよろしくね」

 

しかしホント、こうやって気を張らずにボオスと話が出来る日が来るなんてね。

世の中分からないもんだ。




これで第六章は終了です。
ここからまたしばらくは島での活動がメインになります。

また数日時間をいただきまして、
鍵の修復から始まる第七章を開始致します。

次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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