ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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やっと錬金術がまともに関わってきますが説明多めです。
独自解釈になりますのでご了承ください。

アトリエシリーズは「錬金術士」の物語と公式で明言されていますので、
作品の中でも表現は区別しようと思います。
(違いを理解していないキャラは「錬金術師」を「錬金術士」と訳してます)

今回もよろしくお願いします。


第二章 まずは一歩のはじまり ~あたしたちのやりたい事~
7. 33日目①  錬金術士と錬金術師の錬金術


翌朝。

今日も昨日みたいに冒険日和のいい天気だけど、今日の冒険は島の外へじゃない。

ある意味新しい世界へ、かな?

 

ちなみに、昨日家に帰って毎度おなじみ農作業のサボりの小言はお母さんから言われたけど、何が起きてたかは知らないらしい。

単にルベルトさんたちを見に行っていた事になってるよ。

 

さて、いくか!

 

 

 

にぎやかになってきた旧市街。

アルさんへの報告とクラウディアに会えるかな? ってのもあるけど、まず行く所があるよね。

待ち合わせてたレントとタオと合流し、向かう先は学び舎の隣――アルさんの工房の向かい側だ。

 

「ごめんください」

 

「開いている」

 

ノックして声をかければ、昨日も聞いたキリッとした感じの女の人の返事。

入らせてもらおう。

 

「お前達は……昨日の」

 

「はい、ライザリン・シュタウトです。昨日は助けて頂きありがとうございました」

 

まずは、昨日助けてくれたアンペルさんとリラさんへのお礼だ。

 

「3人揃ってお出ましか。島を出る事はなかなかのやんちゃらしいが、筋は通すタイプなのだな」

 

レントとタオも自己紹介して入り口近くにいたリラさんと、奥に置かれた……でっかい鍋というか、もはや釜? の前に立つアンペルさんにお礼を言った。

不思議な色に輝くお湯が入った釜の他に、ガラス容器に入った色とりどりの液体、何に使うのか分からない道具。アルさんの工房みたいだ。

 

「こちらもようやく荷解きが終わったところでな。見慣れん物が多いか?」

 

「こういう面倒な作業は嫌いだ」

 

溜息をつくリラさんを宥めつつ、アンペルさんが答えてくれる。

 

「すみません。じろじろ見ちゃって」

 

「いや構わんさ、寧ろ当然の反応だろう。それにお前さん……シュタウトがここに来たのは私にとって好都合でな」

 

「むず痒いのでライザでお願いできますか? みなそう呼ぶので。それで……あたしに用、ですか?」

 

「ああ。昨日使っていた……「音爆弾」といったか? アレについて話を聞きたくてな」

 

「私もただの田舎娘がブルーフィン相手に戦線を維持していたのには興味がある。戦士にとって大した魔物ではないが、素人がどうにか出来るモノでもない」

 

あの青イタチ、ブルーフィンっていうんだ。

 

そんな事を思いつつ……どう答えたものかな。

まあ「どっちもアルさんがらみです」としか言いようがないか。

 

「えっと、音爆弾はここの向かいのお店の店主さんから「もしもの時」ってもらった物です。近いうちに護り手の人たちにも配るって言ってました。魔物との戦い方もその店主さんからちょっと手解きを受けたんです」

 

ほう、という感じのアンペルさんとリラさん。

昨日匂わせたとはいえ、改めて聞いた内容に少なからず驚いてるレントとタオ。

 

「向かいという事は近くに住まれているのか。一度会わせてもらえないか?」

 

 

 

という事で、4人を連れてアルさんの工房へ。

なんかまた迷惑をかけちゃう気がするなぁ。

 

「お邪魔します」

 

「OPEN」の札が掛かった扉を開き、中に入る。

今日は売り場側に居てくれた。

 

「ああ、いらっしゃいライザ、っと。いらっしゃいませ、何かご入用ですか?」

 

初めて見るアンペルさんたちをお客さんと判断して、丁寧にお辞儀するアルさん。

あたしにとってはもはや隠れ家だけど、ここはれっきとしたお店である。

 

「ああ。用はあるのだが純粋な客というわけでもなくてな。私はアンペル、古代遺跡の調査の為に各地を流れている錬金術士だ」

 

「私はリラ。まあ護衛のようなものだ」

 

「錬金術士……」

 

錬金術士という単語にアルさんが反応した。

聞きなれない単語としてか、それとも知っている言葉としてかな。

 

「ご丁寧に。店主のアルフォンス・エルリックです。それでお買い物で無いとなると、私に?」

 

「君がライザに渡したという音爆弾について話を聞きたくてな。単刀直入に聞くが――アレは錬金術で作った物だな?」

 

そう問いかけるアンペルさんに、アルさんの回答は。

 

「ええ。全部ではありませんが」

 

だった。

 

 

 

「「「えええええええええええっ!!!???」」」

 

 

 

あたしたち島生まれ3人組の叫びが店内に響き渡る。

迷惑をかけたのはあたしたちの声が第一号だったか。リラさんがうっとうしそうな顔してる。

 

いやそうじゃなくて! アルさん、錬金術を知ってるどころか使えるの!?

 

「全部でない、とは?」

 

「加工や抽出、合成に手作業で限界がある部分は錬金術を使っていますが、出来る部分は手作業でやっています」

 

「部分的に使う錬金術……?」

 

変わらないトーンで話をするアルさんとアンペルさんだけど、あたしはそれどころじゃなかった。

 

「アルさん錬金術を知ってたの使えたのいつからなのどうやって覚えたの!?」

 

「ちょっと落ち着こうね? ライザ」

 

一息に聞きたい事を口にするあたしをどうどうと落ち着かせるアルさん。

 

「何年も前からだよ。だけどクーケン島で「錬金術」って言葉を聞く事が無かったから、敢えての説明もしていなくてね。それに誰かから教わったというわけでもないんだ。ここに来る前に教わったのか勉強したのか……」

 

その回答にアンペルさんが、うん? と首をかしげる。

 

「失礼かもしれないが、君はこの島の生まれではないのか?」

 

「ええ、10年ほど前に漂着した所を助けて頂いた身です。それ以前の記憶があまりないものでして。加えて私が使う錬金術は……この国における錬金術とは理論が違うモノみたいですね」

 

今度はアンペルさんも大きく反応した。

多分、違う錬金術ってところかな?

 

「私達の使う錬金術とは……違う?」

 

当たってた。

 

「材料の特性とエレメントに基づいた「リンケージ調合」が、ロテスヴァッサ王国における錬金術だと認識しています。私が使う錬金術は「錬成陣を用いて物体の構成を理解し、分解し、それを再構築するもの」です」

 

難しい言葉が多いなあ。

 

火、雷、氷、風の4つのエレメント。これは魔法を使うあたしやタオは特に馴染みがある。

けど他の言葉は……リンケージ? れんせいじん??

 

「それで合っている、よくご存じのようだ。という事は本当に別の原理に基づくものなのか?」

 

「是非見てみたい」ってアンペルさんの希望に「私も見せてもらっていいですか?」というアルさんも乗っかり、お互いの錬金術をアンペルさんの借家でやる事になった。

あたしたちも見せてもらえることになった。わくわくする!

 

 

 

借家に戻って、まずはアンペルさんから。

 

「改めて説明する必要もないと思うが、私の使う錬金術はアル君の言った通りリンケージ調合だ。調合したいアイテムを構成するマテリアル環を認識し、必要な特性とエレメントに合わせて正しい順番で素材を釜に投入する」

 

アル君という呼び方になったアンペルさんが説明しつつ、必要な素材なんだろう赤い石ころや木くず、黒い砂、赤い液体をそれぞれを確認しながら釜に入れていく。

 

素材の持つ「品質」によって宿るエレメント量が違って、大は小を兼ねても逆はダメで。

素材の量を増やして穴埋めもできるけど限度があるって事らしい。

まあ分からなくはないかな?

 

「そして錬金術に適性がある者の魔力を流しつつ、必要な時間撹拌をする。魔力に込められたリンケージの要素、それにエレメントが反応して各素材が一つに纏まれば――」

 

釜がぱあぁっ、と光り……すごい、お湯が全部消えた!

釜の底からアンペルさんが取り出したのは――あたしたちを助けてくれた時に使った爆弾、「タルフラム」ってやつだね。

 

「こうしてアイテムが完成する。必要な素材や特性、投入順など組み合わせは山ほどあるが基本的には全てこの原理に従ったものだ」

 

そうアンペルさんは説明を締めくくった。

 

「今の説明……分かったか?」

 

「ううん、僕も全然わからない」

 

レントは置いといて、タオも分からないってのは意外だね。

 

要するに順路に従ったパズルだ。

スタート地点は決まってて、そこから順路に沿って形に合った素材で埋めて、最後に魔力でまとめる。そんな感じでいいんだよね?

 

「初めて見ましたけど見事なものですね。原理自体は知っていましたが、実際に素材を魔力に沿って纏めるというのは理解の外です」

 

「と、言う事はだ。アル君の使う錬金術は」

 

「ええ。全く別の原理に基づくものですね」

 

そうアンペルさんに答えるアルさんは、鞄から20センチ四方の紙を取り出した。

それ、結構高級品じゃない? 島ではなかなか綺麗な紙って売ってないし。

 

「店でお話しした通り、僕が使う錬金術は「錬成陣」を用いたものです」

 

一人称が僕に戻ったアルさんが、紙に絵、というか図形? を白チョークで描いていく。

フリーハンドで紙いっぱいに真ん丸な円を描くアルさん、めちゃ器用!

 

「まず物質の循環を表す「円」、これを土台とします。更に物質を「理解」する為、「分解」する為、「再構築」する為の構築式を描き加えて一つの式を成します」

 

そう説明しつつ、アルさんはどんどん手を進める。

図形がどんどん複雑な模様になってくね。

まっすぐに引かれた線、等間隔の多角形、読めない文字。今度はあたしもさっぱりわかんない。

 

完成したらしい図形を机に置き、さっきのタルフラムをアンペルさんから受け取ると――図形の上にセットした?

 

「そして……錬成陣を起動させる。起動の駆動力には地殻変動、あるいは気の流れとも言える大地に備わるエネルギーをきっかけに、術者の理解と制御を以って構築式を物質に流すと――」

 

アルさんが図形に手を置いた。

 

一拍置いて。

 

 

バチバチバチッ!!

 

 

「っ!!」

 

アルさんを除くみんな……リラさんですら突如生まれた雷に驚いていた。

――そして。

 

「……なんと、これは」

 

色が薄くなった図形の上に、整った形の木材といくつか色別に分けられた結晶みたいなものが。

ええぇ。

 

「これは……タルフラムを形作っていた各素材のそれぞれを分別したのか」

 

「結果的にはそうですが、実際には全てを分解した後にそれぞれを形作る元素と要素に沿って再構築しました」

 

「セキネツ鉱の元の成分まで……」とつぶやく、アンペルさんですら驚きの出来事らしい。

うん。これはあたしもわからない。

 

 

 

整理してみよう。

錬成陣っていう図形が調合でいう順路で、地殻変動――地震の元だっけ? のエネルギー……っていうのは大地の魔力みたいなものかな? それで反応させる。

 

ここまではいいね。けどその後だよ。

 

素材を組み合わせて一つにまとめるなら分かる。

けど。なんで一つだったものをバラバラに、ここまで綺麗な形で別けられるの?

一個一個別々に作るために素材を~ってなら分かるけど。

レントとタオなんかポカン顔だ。

 

 

 

「成程、間違いなく私が使う錬金術とは違う理論に基づくものだ。その錬成陣とやらを使えば、誰でも同じようにそちらの錬金術が使えるのかね?」

 

アンペルさんの問いかけに、アルさんは首を横に振る。

 

「原理的には可能ですが、術者の錬金術への理解が起動条件になります。加えて、この錬成という過程の枠組みには「術者」本人が含まれていますから」

 

「……という事は、まさか」

 

「ええ――間違った理解、間違った構築式、エネルギー不足。これらを孕む中で術者の目指す形に錬成しようとした場合、規模によっては術者の存在を以て補う事になります。術者のイメージとエネルギーを持つ「身体」と「精神」から」

 

ゾッとした。

 

つまり間違えたら、ケガだったり心にダメージがいく?

冷汗が出てきたけどおかしくないはずよね? レントとタオも青ざめているんだから。

 

「……なんともハイリスクな錬金術だな。だが」

 

「アルのように正しい理解と技量、身の丈を超えた事をしなければいい。アンペルのように釜を使ってノロノロ調合する必要もなく何処でも出来る。戦闘用としてはかなりハイリターンだ」

 

旅人の2人もヤバさは理解しつつ有用性に目を向ける。

魔物との戦いは多いだろうし、すぐに出来るアルさんの錬金術には惹かれるものがあるよね。

 

「それではライザに作った音爆弾というのは」

 

「音を放つ炸薬、衝撃に反応する雷管、一定の膨張応力まで耐える樹脂。これらを作る為に、別の素材から必要な成分の抽出と合成をする過程で錬成をしています」

 

あたしにくれた音爆弾。こんな危ない方法で作ってくれてたんだ。

というか護り手の人たちにも配るって言ってなかった?

 

「あっあの、アルさん。音爆弾、ほっ他にも配るって、言ってたけど……大丈夫なの?」

 

途切れ途切れな言い方になっちゃった。でもまだ怖いよ。

 

「心配ありがとう、ライザ。大丈夫だよ」

 

一方でアルさんは微笑みながら返事してくれた。

 

「さっきリラさんが言っていた通りで理解と技量、素材が揃っていればリバウンド……さっきのケガの話だね、それは起こらないし規模の話もあるんだ。人の身体っていうのはエネルギーの塊だから、それが失われる程の大きな補完と、それでも為そうとする強いイメージがない限りはね」

 

「身体を代償に」なんて怖い事に考えが向いてたけど。やる事が小さければそこまでの事じゃないし、そもそもアルさんだ。失敗するとも思えないよね。

 

「この錬金術の基本は「等価交換」。何かを作るのに材料となる対価は必要だけど、その対価さえ揃っていればその中で完結させられるんだよ」

 

 

 

再整理しよっと。

 

「赤い10」っていう物を作るなら「赤いもの」と「合計が10になる数字」を用意。

そこに足し算と掛け算、等式を組み込めるよう、図形を準備。

 

で、「赤い」「合計が10の数字」をバラバラにしちゃって式を組み込む。

組み込むための魔力と計算式が合っていればOK。こんなとこ?

 

アンペルさんのリンケージ調合と違うのは、釜の中で順番に起こしていくんじゃなくて一つの図形だけでいっぺんにやらなきゃいけないって事よね。

で、逆に「赤い10」を用意すれば「赤」と「10」を作る形で別けられるんだ。

 

 

 

「ふむ。リスクの話は確かにあるが、それを踏まえてもなお有用と言えるな」

 

「アンペルさんの錬金術と大きく異なるのは「エレメント」の要素を含まない事です。魔力による制御はありませんから――例えば「氷のエレメントを持つ木材」って枠組み(カテゴリ)では括れません。必要な素材は固定されてしまうと思いますよ。僕には魔法の才能が有りませんからね」

 

「錬金術の過程でエレメントの存在を感知できない、という事かな?」

 

「ええ。何処に何のエレメントが含まれているのか僕には分かりませんから、含ませるなら丸ごと使うしかないわけです。だからライザの杖を補強するのは手探りでしたよ」

 

おおっと、ここで新事実。

ずいぶん色も形も変わったあたしの杖だけど、錬金術で魔改造してくれてたんだ。

特に布で包むことなく、そのまま右手に持っていた杖にみんなの視線が集まる。

 

「ライザ、お前アルさんに何頼んだんだ? えらく見た目が変わったから買い替えたのかと思ってたんだが」

 

「元々あたしもそこまでは考えてなかったんだよ。あんたたちが帰った後に島の外に行こうとしてるのがすぐバレちゃって。でもそれを踏まえて、併せて補強して貰ったってわけ」

 

「あの時にはもう外に行こうとしてたんだね……じゃあまさかアルさんの助手って言うのは」

 

「その体で勉強とか訓練とか付けてもらってたってこと」

 

なんというか、なにからなにまでアルさん頼りだなぁ。ついでに昨日の答え合わせだ。

その回答に今度はリラさんが「ほう」、と反応する。

 

「つまり、ライザに戦い方や立ち回りを手ほどきしたのはアルなのか」

 

「1週間の詰め込みでしたけどね」

 

「……一つ頼みがある」

 

あ、なんか嫌な予感。

 

 

 

「私と一戦交えてくれないか」




私の中ではこんな感じで理解しています。
アトリエ世界の錬金術はハガレンの真理にケンカ売ってるんじゃないかな?
分かりにくければアトリエ錬金術は魔法、ハガレン錬金術は可逆の物理化学と
お考え下さい。


次回もよろしければ、ご覧いただければ嬉しいです。
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