ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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やっと本章のメインです。次が本章最終話なんですけどね……。

昨晩初めて「評価のコメント」の存在を知りました。最初に頂いたのは2ヶ月以上前……。
随分と遅くなってしまいましたが、評価、コメント頂きありがとうございました。

誤字報告ありがとうございます。やはり妙な間違いをしてますね、なんでなんだろう……。

今回もよろしくお願いします。


70. 77日目①  あたしたちの足元に

緊張して寝付けないかと思ったけど、ぐっすり寝た。関係ないわね!

 

時刻は4時。

さすがにまだ太陽は東を赤く染めてるまでで見えてない。

 

鍵は……うん、ちゃんと両方持ってるね。

お父さんはもう起きてるかな。

 

 

 

「おはようライザ、早いね」

 

「おはよう、お父さん。今日は朝から用事があるから」

 

あたしが知ってる限り、お父さんは寝坊した事が無い――これが日常なのよね。

そういえば。

 

「お父さん、昨日キロさんに会ったんだって?」

 

「ああ。裏手で大きな水音がしたから何事かと思ったら、そこにいらっしゃったよ」

 

アンペルさん曰く、キロさんが投げられた速さは音より上との事……もう想像すら不可能。

投げるリラさんもリラさんだし、無事なキロさんもキロさんね。

 

「風貌は聞いていたからね。割とすぐに分かったよ」

 

「どんな話をしたの?」

 

「互いに……お世話になってますってお話をしたくらいさ。急がれていた様にも見えたしね」

 

タイミングはリラさんたちを呼びに行って戻った後。ケガ人がいないかの確認途中かな。

まあそんなに長話してもいないか。

 

「……ただ」

 

「ただ?」

 

「シャイナスさんはこう仰っていたよ。「ライザが日常の大切さに気付き始めている」と。ライザが何をしているのか僕には分からないけど、色々な視点を得られているようだね」

 

キロさんがそんな事を……。

 

実際その通りだ。日常、平和の大切さを、ありがたみを。

あたしはそこから離れる事でやっと実感できた。

 

絶対、護らなきゃいけない。

 

「話をさせてもらった際……ライザは僕と違う価値観を持っている、という事に改めて気付かされたよ。僕は農家を継ぐ事に疑問を抱かなかったけれど、ライザには当てはまらなかったんだね」

 

「う~ん……農家の仕事は大事だと思ってるよ? だけどまあ、それに一生を捧げるってのはピンとこないかなあ」

 

「ライザは僕より視野が広いらしい。僕としては農家を継いでくれると嬉しい事には変わらないけどね。色々と経験して、本当にやりたい事が見つかったなら――応援しようと思うよ」

 

「お父さん……」

 

まさか、お父さんからこう言ってくれるとは思ってなかった。

 

正直――メチャクチャ嬉しい。

 

「おやライザ、今日は早いんだね。おはよう」

 

「おはようお母さん。今日は早く出るから」

 

「おはよう母さん。今日はクーケンフルーツの方もやろうか」

 

「そうだね。バレンツさんの販路の枠にウチのも入るって事になったし、今までより時間を取る事も考えるかい? どっかの誰かが手伝ってくれると助かるんだけどねえ」

 

「あはは……」

 

ルベルトさんの取り扱い品にうちの作物も入ったんだ。

つまりは、もうその辺りまで話が進んでるって事か。

 

「まあ母さん、ライザも色々考えてくれているようだから。もう少しは応援しようじゃないか」

 

「あなたは本当にライザに甘いねえ。まあライザが少し変わってきてるのはあたしも分かるけど。でも、あと2週間もしたら乾季だよ。そうしたら約束通り収穫を手伝ってもらうからね?」

 

「うん、わかってる」

 

「随分素直だね。アルフォンス君の教育の賜物かい?」

 

間違っちゃいないね。アルさんの影響はとっても受けてる。

 

そして……タイムリミットの一つは2週間。

 

岩壁で塞いでるとはいえ、それが大侵攻の予定時期って事だ。

それまでに女王を倒してみせる!

 

 

 

 

 

 

「おはよう、ライザ」

 

「おはようございます。アルさん、キロさん」

 

「おはよう……眠い」

 

鍵はあたしが持ってるから遅刻しちゃいけないって思って早く来たけど、アルさんとキロさんはもういた。ちなみに門の前ではランバーがフラフラしてる……門番の意味ある?

 

「君もコーヒーを飲めばよかったのに」

 

「アレ、目覚めにはキツイ」

 

「コーヒーって眠気覚ましなんですけどね?」

 

眠気覚ましを寝起きに飲めないとはこれ如何に。

というか、また同衾してないですよね? 泊りはしたんでしょうけど。

 

「なんでライザ達はこんなに朝早くても平気なの?」

 

「う~ん……明るくなったら勝手に目が覚めるというか。むしろクラウディアたちの朝がゆっくりでびっくりでしたよ」

 

「この島ならではだよ。僕もそこまで早起きじゃなかったし……そうか、あっちの世界は」

 

「そ。今はあんな太陽だから昼も夜もない。波が去ったら休む、ただそれだけだよ」

 

何でそうなったのか分かんない――真っ黒な太陽らしい。

それもアルさんが聖域を浄化したら元に戻ってくれるのかな。

 

「あれ? もういる。おはようライザ、アルさん、キロさん」

 

「おはようタオ。別に遅刻じゃないわよ」

 

「おはよう。今日は沢山本を持って来てもらって悪かったね」

 

「いえ、やっと本当に必要になる日が来たんですから。喜んで持ってきますよ!」

 

アルさんも読んでたタオの本だけど、島の地下に関係するものだったのかな?

もうなんか、ほとんど読めてるくさいわね。

 

「キロさんは……まだ眠そうですね」

 

「おは……ふあぁぁ」

 

「まあまだ日も昇りかけだしね」

 

戦闘時だとあっという間に敵を蹴散らしていく人なのにこのギャップ。

あっちにいた頃はロクに寝れなかったでしょうし、その反動が来てるのかな。

 

 

ギィ……

 

 

「早いな。まあ集まっていても不思議な時間ではないが」

 

「ああボオ……とレント!?」

 

開いたブルネン邸の門。ボオスは当たり前として、なんとレントも出てきた。

つまり……レントもブルネン邸に入れんの? ダメなのあたしだけ!?

 

「ようライザ、タオ。アルさんたちもおはようございます」

 

「おはよう。昨晩はここに?」

 

「ボオスとランバーに稽古付けてました。俺が指導役なんてまだまだだと思うんすけどね」

 

って事は、ボオスからレントに頼んだって事?

思わずボオスの方を見ると、フンッて感じの顔をしてる。

 

「俺達が武器を使うとしたら剣だ。元騎士であるアガーテでもいいが、あれは護り手もやっているし、戦闘能力もあくまで護り手の範疇だろう。フィルフサ相手にどうなるか分からん。それに島を走り回っていたお前達と比べると特にランバーは体力に劣る。レントは夜間暇だと聞いたのでな。ランバーには体力づくりをさせて俺相手には稽古というわけだ」

 

「それでランバーがあんなフラフラに……」

 

最近はトレッペの高台階段一気上りにクーケン島周回マラソンだもんね。おつかれ。

……夜に島を泳いで往復させてないでしょうね? なんか心配だ。

 

それにしても、ボオスがねえ。

 

「ボオスも、戦うつもりなの?」

 

キロさんから確認が入った。それを聞いたボオスの顔は……少し悔しそうな。

 

「……残念だが、キロやライザ達と比べると俺の戦闘技能では話にならない。前線では邪魔にしかならないだろう。だがキロ達を除いて島内でフィルフサをまともに知っているのは俺だけだ――アガーテに知らせた場合は他の島民に不安が波及しかねんからな。水を忌避するというなら島には来ないだろうが……万が一もある。戦えずとも護る為の心構えくらいはしておきたい」

 

「そんな理由だったから俺も受けたんすよ。護りたいって事なら気持ちはわかりますし」

 

へええ。まさかそんな事になってたなんて。

でもまあ、あたしたちとは違う方向で島をずっと護ろうとしてきたボオスだ。

今の状況を知ってたらそりゃ動くわよね。今のボオスなりの……為すべき事ってやつかな。

 

「そっか、頑張ってねボオス。私達も頑張るから無茶はしないでね?」

 

「分かっている。俺が本当に為すべき事はキロ達の水を返す事だからな。フィルフサはこいつらに任せるさ」

 

違いない。全てはあたしたちの先祖がやらかした事なんだし、あたしたちで始末をつけなきゃ!

あたしなんかはクリント王国の錬金術を使う者として放っておくわけにはいかない。

 

「それに……」

 

「? それに?」

 

まだ何かあるんです?

 

「レントに鍛えられると――リラみたいになっちゃうかもだよ?」

 

「……うん?」

 

はい?

 

「それは……どういう意味だ?」

 

「だって急ぎだからって対岸からこっちまで投げ飛ばすような事する? 弟子を魔物がいるかもしれない湖で遠泳させる? ライザの杖で頭殴ろうとする? あっちじゃあるまいしわざわざナマモノとか毒食べさせる? まず可食不可食とか調理法を覚えさせるべきじゃない? たった18年しか生きていない子供の人生をなんだと思っているんだって思わない? レントはリラよりずっと常識人だと思うけど加減してあげてね?」

 

「お、おう……」

 

「いや、遠泳は勝手にやってるんすけど……まあ了解っす」

 

キロさんが早口で色々まくし立てる――結構溜まってたみたい。

当たり前だけどオーレン族も人それぞれらしい。

 

「そんな目にあっていたのかい?」

 

「推定マッハ1.5(時速1800km)だよ。久々に本気で死ぬかと思った……筋肉は全てを解決するみたいな思考になっちゃいそうで不安だよ。同じ筋肉でも少佐とは随分な違いだと思わない?」

 

「いやまあ、俺は元々そこまでやるつもりはないんで……」

 

「あんたの常識が野生じみてきてるのは確かなのよね……」

 

「音爆弾を沖から投げてくれた時は相当に手加減してくれていたんだね」

 

「……俺の頭狙ったってのは冗談だったんだよな? 狙おうと思えばマジで狙えたのか?」

 

「アレを排除にかからなかった自分に称賛を送ろう。殴られたら人形(ヒトカタ)を留めん気がしてきた」

 

ボオス、それはあまりに極端……いや、あり得そうな気が?

マッチョの少佐さんは結構な常識人らしい。絵とかも上手なんだもんね。

 

「む、私達が最後か。待たせてすまない」

 

ちょうど(くだん)の人を先頭に残りの3人がやってきた。

若干ボオスの顔が引きつってる気がする。

 

「まだ時間には早いですよ。おはようございます、リラさん、アンぺルさん、クラウディア」

 

「おはようライザ。本当に島の人たちは朝が早いんだね。もう色んな人が作業をされていたよ」

 

「日とともに動きだし、日とともに休む――良い事だ。本来の生物としての習慣だな」

 

「それでお前さんは、動き出しにあれほどのエネルギーを摂取する必要があるのかね?」

 

「以前教えただろう? 一日で最も大事な食事は朝だ」

 

夏は日が真上に昇って暑くなり過ぎるから、外仕事は涼しいうちにやっときたいのよね。

朝食は一日のエネルギーの元だからしっかり食べるってのも確かにそうだ。

 

だけど。

 

「ねえクラウディア」

 

「どうしたの?」

 

「リラさん、朝ごはんどのくらい食べたの?」

 

「ええっとね、食パンを三(きん)と、それから……」

 

「三斤!?」

 

枚じゃなくて、斤!? それがこのお腹の中に!?

……いやオオイタチマザー丸ごとよりずっとマシなのかな? 昨日のカレーも考えれば今更だわ。

 

「麦も調理法次第で味わい深い物だな。パンは水分を持っていかれるのが玉に瑕ではあるが」

 

「以前僕が作った麺も小麦粉ですよ。本当に使い方いろいろですね」

 

「パスタでも作られたんですか?」

 

「ううん、拉麺(ラーメン)ってシン料理。今度作ってあげるよ」

 

「クラウディアもアレの難しさに戸惑うといいよ」

 

あたしのポイズンキューブも小麦粉製だしね。

それにしてもキロさんのつぶやきは一体?

 

「では全員揃ったようだから行くとしよう。ランバー、誰も通すな」

 

「はい! レント、ボオスさんを頼むぞ」

 

「おう」

 

いつの間にかランバーが起動してる。

レントともこんな感じになったか。男ってのは付き合いやすいわね。

 

「ライザ」

 

「はいはい。よいしょっと」

 

言われなくとも開けますよっと。

問題なのはこっちの鍵なんだよねえ。ちゃんと動いてくれるといいんだけど。

 

 

 

「へええ、ここの奥にこんなものが」

 

「島に点在する石碑と同じ物だと思って、気にした事など全く無かったがな」

 

古式秘具が安置された小屋よりさらに先――突き当たりに石碑があった。

見た目は他の石碑とおんなじだけど……あー窪みってアレね。

 

「おいタオ。これ、なんて書いてあんだ?」

 

「ええと……「クーケン地下構造体管理部へ。管理者以外、立ち入りを制限す」かな」

 

「わりとしっかり出入り口って書いてあったんだね?」

 

「タオのように読めればの話だがな。しかし管理者と来たか」

 

「話は後だ、まずはとっとと入るとしよう。ライザ、頼む」

 

「わかりました」

 

早くしないとリラさんが物理的に扉を開けかねない。

この窪みに置いてっと、上手くいってよ!

 

……おっ! 光って浮遊天球みたいに回り始めた!

 

「ライザ、下がって」

 

「あっはい!」

 

アルさんの傍までバック。

石碑の文字が光り始めて……魔法陣? みたいなもんが文字に重なるみたいに出て来て。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

「……また随分な仕掛けだね。モーターも無いだろうに大したものだよ。マグレブ(磁気浮上)技術?」

 

「使えてよかった……こんなおっきな岩が動くなんて」

 

「なんで普通の扉じゃダメだったんだろうな?」

 

「これが人工島クーケンへの……本当の入り口」

 

「これは……地下への階段、ですか?」

 

石碑は魔法陣に押されるように後ろ側へズレていって、ぽっかりと大きな入り口が顔を出した。

クラウディアの言うとおり、島の底に向かって大きな階段が伸びていってる。

先は真っ暗で何があるのか全然見えないね。

それとアルさんはいちいち仕組みを考えるのやめましょう?

 

「……魔物やフィルフサの気配はなさそうだね。だけど」

 

「何かの音がするな。周期的な物だ。生物の音ではない」

 

「中枢で機能している設備の音なのだろう。酸素はあるだろうか?」

 

「辺鄙な田舎の島におかしな仕掛けがあったものだ。島の外にもこんな物が溢れているのか?」

 

何にも聞こえないよ? オーレン族は耳も大変いいらしい。

幸い地下にわかりやすい脅威はいなさそうだ。

 

「僕が先頭を行きます。空気の確認にもなりますから。皆さんはその後を」

 

そう言ってアルさんが――ライターだっけ? を取り出してシュボッ! と火を付けた。

 

「またあんなものを……」

 

「気にしてたらキリがないわよボオス。昨日散々思い知ったでしょ?」

 

「ボオスの初見がマトモな使い方の時でよかったよ」

 

いきなり大佐の炎だったら、この場で説教だったかもしれないですもんね?




まだ入らない……1話使ってしまいました。
昨日の投擲には流石のキロもちょっとイラッとしています。

次で第七章は終わりです。島の中枢、真相の奥の真実へ。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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