ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
読者の皆様はどのようにお考えでしょう?
誤字報告ありがとうございます。
ちょっとこの章は作者もエネルギー切れなもので、いつもより更に多くなってしまっているかも……。
今回もよろしくお願いします。
「おはよう二人とも……徹夜明け?」
「あれっキロさん? もう朝なんですか?」
「ふむ、ここには陽の光が無いからな。どうしても時間の感覚が無くなってしまうようだ」
クーケン地下構造体、通称「中枢」の心臓部にてひたすら画面に向かってあーだこーだ言ってるこの二人。宣言通りぶっ通しで取り組んでいたらしい。アルじゃあるまいし、身体壊すよ。
「朝の8時を過ぎたところです。最低限の仮眠は取られた方がいいですよ――特にタオは身長が伸びなくなるよ?」
「ええっ!? それは……イヤだなあ」
「はははっ、タオは今が伸び盛りだからな。私よりも理解が進んでいる事だし、一度家に顔も出した方がいいだろう」
「私以下の身長で一生を終えたくないでしょ? クラウディアから朝食を預かっているから、食べたら一回寝に帰りなよ」
「ううぅ……わかりました」
昨晩アルが一報入れてあるとはいえ、普段真面目なタオが戻らないのはよろしくない。
加えて後1、2年もしたらライザくらいの身長は超えるだろうに、それを妨げちゃうのもね。
――こっちの年齢不詳はその辺の心配が要らないし。100は超えてないらしいけど。
「うむ、まともな朝食というのはやはりいい。ライザ達の進捗はどうなのかね?」
「歯車を一つ完成させましたよ。予想よりずっと早い。大したものです」
「そうか……本当に大した才能だな。私が今までに見てきた錬金術士の中でも最高峰にいるのかもしれない」
「ライザがですか? なんだか想像が付かないんですけど」
最高峰の錬金術士の外面がガキ大将じゃ無理もないね。
「私達の錬金術は機能に見た目が付随するのが基本、アル君の様な精密な道具調合は不得手だ。故にライザも武器の調合や
「今のライザなら出来るだろうね。物事を表面的に理解出来ていても本質を理解するのは困難な事が多いのだけど、あの子はその辺りの考え方が比較的凝り固まってなくて柔軟」
「本質、ですか?」
「理解」が難しい事を説明するのは難しい。それこそアルの真理のようなものだ。どう話すかな。
「例えば私のような精霊術士の場合、精霊を使って火を放つとか凍らせるとかは自然に出来るんだけど、何故精霊を使ってそんな事が出来るのかを正しく把握するのは難しいんだよ。これが出来ないと精霊と契約できない。リラがこれに該当するね」
「タオの場合なら……そうだね、ヤギのミルクの出し方や育て方は分かるだろうけど、なぜヤギがミルクを作れたりミルクの味が変わるのかは知らないんじゃないかな? ……それにしても、契約なんてあるのかい?」
「ん。契約するとその精霊の特性を身に宿せるし、条件が揃っているなら自身と
精霊は力を貸してはくれるけど、人に対して完全善意の存在ではない。対価があるからこそだ。
私達の価値観で測ってしまうと大変な事になっちゃう。
「なんだか……分かったような分からないような? キロさんも契約しているんですか?」
「しているよ。多分ちょっと変わり種?」
「この前の氷狼フェンリルかい?」
「違う。けど、彼は比較的楽に召喚が出来ている面はあるね」
「ふむ、実に興味深い話だな。別次元の存在と言える精霊を身に宿せる事もそうだし、エレメントとは別に術者との相性があるというのもある種我々と同じような特性と言える」
いけないいけない。研究者連中にこんな事を話しちゃうと帰ってこられなくなる。
アンペルには今後もリラと一緒に門を閉じる役目がある。人のままで居てもらわないと。
「まあ今はここまで。他にやるべき事があるんだから。アンペルも少しは寝ないと肝心な時に役に立たなくなるよ?」
「む……リラに蹴り起こされるのは勘弁願いたいからな。その辺で仮眠を取るとしよう」
「僕もお昼まで休んで、昼食を取ったら戻ってきます。先生の分も持ってきますよ」
「助かる。持つべきものは優秀な弟子だな」
「その弟子の才能が高すぎるのは悩み物だと思いますが?」
「違いない。既にどちらの方面でも追い抜かれそうだからな……このままでは私が小間使いになってしまう」
そう言って、二人は外へ向かう階段を上っていく。
さて、こっちも作業に取り掛かるとしよう。
「進捗は?」
「大体6割ってとこかな。今日中に把握自体は完了させて改良箇所の洗い出し。明日中に部品の錬成、明後日中にライザの部品と合わせて組み込みってのが理想だね」
おかしい。
この島は古式秘具の中でも相当の代物と思えるけど、一日足らずで調査完了の上に改良検討。
アルのスペックが高いのは重々承知だけど、記憶で見た限りのアルは流石にそこまでには辿り着いていない。凄まじいとはいえまだ理解できるレベルの優秀さだった。
単純な機械ならまだしも、これは古式秘具。こちらの錬金術、こちらの要素のシロモノだ。
最盛期のエドさんでも同じ事が出来るのか私には分からない。これも加護の為せる技なのか。
そも、光の大精霊様は何故エドさんではなくアルを選んだ?
あっちの世界という枠組みだけなら最高峰として
単に時代が……アルが20歳の時からしか喚べなかったとして。
当時真理を見たメンバーでは――エドさんは錬金術を喪失するも西国で探究中、ホーエンハイムさんは逝去、マスタング大佐は出世、イズミさんは隠居、アルはシンで錬丹術の修業中だった。
人格面で喚びやすいのはイズミさんかアルだ。家庭事情はともかくイズミさんも性格的には協力してもらえそうな気はするし、なんせエルリック兄弟の師匠。間違いなく優秀だ。
ただ、知名度はアルの方が圧倒的に上だ。これは大精霊様がどうやって錬金術師の存在を把握されていたかによるけれど、表向き有名なのはアルと言える。
あの世界で実力があって、性格が温厚気味で、有名で、かつ世界に対する影響が少なかったから?
仮にそうであったとして、人知を超えた存在である大精霊様がそんな事を考慮するだろうか?
今のところ、想像できるのはそこまでかな。
それと、先日も考えたアルの加護について。
アルに与えられているのは光の加護、これはフィルフサに関する事に主に作用している。
つまりは……フィルフサに対する対抗手段として与えられているとも考えられる。
となると――災厄自体がフィルフサに関係する何か?
光の大精霊様が恐らく大精霊様の中でのリーダー格だろうから災厄の担当を担っている可能性もあるけど――
一つ、オーレン族の中でも極々一部のみに知られている正体不明のナニカがいる。
『
どういう存在なのかは分からない。分かるのは「居たという事実」だけ。
特に広める事でもなかったからリラにも話していないけど……無関係ではない気がする。
世界を構築する「闇」の上に「常」が付くほどのナニカ。
自分で考えておいてなんだけど……超絶関わりたくないね。面倒事の匂いしかしない。
女王の相手だけでもいっぱいいっぱいなのに、この上御伽話ですらない存在だなんて。
その為に喚び出されたアルに丸投げしたい所だけど、私も無関係じゃいられないんだろうなあ。
あーこれはフラグというやつに違いない。
「どうかしたのかい?」
「アルのせいで余計な面倒事に巻き込まれそうって考えに行きついた」
「えええ……」
本人は不満げだけど、事態解決のキーであると同時に一種の爆弾なのは事実。
そして、そんな存在に自身の手綱を握らせたのは他でもない自分である――なんたる自業自得。
幸いにして今まで変な命令は下っていないからいいけれど。
「まあ……ここに喚ばれた理由が理由だからねえ。予定外でクーケン島に来ちゃった以上、関わった人にも何かしら影響は及ぼしちゃうんだろうけど」
「そういう問題じゃない気がするんだよね」
ここに居るのがアルではなく、別の誰かだった場合はどうなっているんだろう?
エドさんの場合……ライザ達とは悪友になれそうな気もするけど、ボオス達とは対立しそう。
ただこれは性格面というよりテンションの問題かな? エドさんは結構真面目タイプのはずだし。
オートメイルの整備が出来ないって点で彼には過酷な環境になりそうだ。
仮に錬金術が使える時の彼が召喚されたとしたら……帰る為の手段探しを最優先するんだろうね。
――アルを救う為に。
ホーエンハイムさんなら……割といけそうだけどフラッといなくなりそう。
ただ、私が知っているのは晩年の頃だけ。西の賢者と呼ばれていた頃はどうだろうね。
マスタング大佐はこの島の雰囲気に合わない気がする。あの人は良くも悪くも軍人だ。
彼はアメストリスを変えるという使命の下に出世した。多分エドさんに近いものになるだろう。
軍人という枠組みを失った場合は……ただの女好きになったりしないよね?
イズミさん……
レントの父親を大人しくさせられそうだ。問題は身体の負傷かな? 突然吐血するからなあ……。
最終手段は
「そう考えると……結構当たりなんだね。アルが来たのって」
「なんだかクジの様な扱いをされてる?」
しまった。声に出てたか。
「いやね? アル以外の人がここに来てたらどうなっていたのかと」
「ああそういう……んー本当の目的達成だけなら兄さんか父さんの方がずっと優秀だろうけど、二人とも一か所でのほほんと過ごす人じゃないからね。兄さんならあっちへ帰る手段を求めてこっちの錬金術の研究に没頭しそうだし、父さんは別の危機を感じて世界中を回っている気がするよ」
「そこまで間違ってない予想だったかな。大精霊様もいいガチャを引いたね」
「ガチャってなんだい?」
エドさんはともかく、ホーエンハイムさんのは止めて欲しい――別の危機って。
さて、そんなこんなを考えている間に溜まっている図面の束。
よくまあこんなものをスラスラと描くものだ。複写すらしたくないんだけど?
「終わったの?」
「一番の問題児以外はね。機械部分はともかく……エネルギー源は賢者の石みたいなシロモノしかダメかなあ? 僕じゃ人工太陽は作れないし……」
「こらこら。制御をミスったら星そのものを消し飛ばしそうなものを考えないでもらえるかな? 島どころか大陸まるまるのエネルギーを賄えそうだよ」
あんなものを掌でサラッと作れてしまうあたり、数を揃えた賢者の石がどれだけ強力な代物かよく分かる。法則無視は伊達じゃない――けど、多分そんなものを作ろうとした瞬間に大精霊様に感知、追放されるんじゃないかな。
「まあ冗談は置いといて……その戦士の証? とやらに期待するしかないんだろうね。僕の錬成で作った物は、この石で見てみる限りこの世界の錬金術には合わない」
ポケットから出したのは――私達の世界を浄化した時に錬成された赤い石。
「やっぱり使えないの?」
「多分ね。僕がこっちの錬金術や魔法を使えないのと同じで、こちらの錬金術のシロモノに純粋な僕の錬成物は使えない。素材がこちら製だったり機械的な部品とかなら大丈夫だけど、エネルギー源となるとね。言語が違うようなものかな? 橋渡しとなる物があればいいけど」
「……つまりは」
「キロさん経由、かな。一番可能性がありそうなのは」
成程――またライザに叱られかねない。
使う時に常に私が側にいないといけないんじゃ本末転倒だね。
「今の所他の使い道もなさそうだし……落としたら大変そうだから仕舞っておくよ。取り敢えず今は改良部品の錬成に注力しよう。お腹は空いてないのかい?」
「あれ? もうそんな時間?」
「もうお昼過ぎだよ。アンペルさん達も降りてくるんじゃないかな……そこまで真剣に考えていたのかい?」
「別の事だけどね。作業も終わったんでしょ? なら工房に戻ろう」
「そうしようか。ライザ達も忙しい事だし……お昼は何を作ろうかな?」
「ら~めん。昨日の朝言ってたし」
「よりにもよって今かい? 生地を寝かせる時間は無いし……乾麺あったかなあ」
「クラウディアがどのくらい綺麗に食べられるか見てみたい」
「君……性格悪くないかい?」
それはどうかな? 悔しいけど――あの子は啜る音を立てずに食べられる気がする。
結果。
ライザは案の定悪戦苦闘――これが普通のはずなんだけど。
レントはなんとリラから話を聞いて箸の使い方を練習していたらしく楽々突破。
クラウディアは……ポニーテールにした上でフォークとスプーンで別の物を食べるかのように突破した――音を立てずに。すごく様になってたね。
でも、器をガッ! と持ってスープの残りを直飲みするのは止めさせないと……。
ルベルトに怒られそうだ。「飲み切った!」って達成感のある顔は見ごたえがあったんだけどね。
ラーメン大好きバレンツさん。某生徒会書記かもしれません。
連載初期の頃にご感想をいただいていた内容の説明に近いものになりました。
既にここら辺を書いてしまっていた為、どこまでお話ししようかと思ったものです。
二人の想像が正解か否かは今後をご覧いただければと思います。
次は一日経過して島の修理をしつつ、遂にクラウディアのお店が正式オープンです。平和だあ。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。