ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
多分ですが、この辺りを下書きしている際に新作が発売されたのかと。
連載まで随分と時間がかかったものです。
誤字報告ありがとうございます。
今回もよろしくお願いします。
「午後からは訓練ですか?」
「うん。前に話したボトルの世界での戦闘を経験してもらおうと思っているんだ」
中枢の交換部品を作った翌日の朝。工房での朝食にてそんなお話が出た。
たしかに聖塔での素材集め以来まともな戦闘はしてないもんね。入り江での採取くらいか。
話に聞いた限り、例のボトルの中のフィルフサはあたしたちが今まで戦ったどの魔物よりも強力らしいし、気合を入れないといけないね。
戦うわけじゃないけど……影とはいえ、ついに女王にお目見えか。
「僕とアンペルさんは中枢の改造をするから、ボトルの世界での教官役はキロさんとリラさんにやってもらうつもりだよ。リラさんには後で話をする事になるけど」
「まあ今のリラの役割はランバー少年を鍛えるって事だけだし、言っちゃなんだけど他のメンバーに比べれば優先度低いし。大丈夫でしょ」
「なんだかキロさん、ずいぶん辛口ですね? じゃあ午後は休業って張り紙しておきます!」
まだ投擲された事を引きずってそうだ。そしていつもの事だけど、そのトースト何枚目ですか?
「まあ午前は午前、午後は午後だよ。今日はライザも錬金術は休憩してフロアに立ってよ。一応貴女の
「立つのは全然大丈夫ですけど、一応、一応かあ。そうだよねえ……」
アルさんの道具とクラウディアのお菓子に比べたら、あたしのアイテムの売り上げは雀の涙だ。
バーバラさんの軟膏とか、たまに魚のエサ団子を買ってく人とかくらい。
クラウディアのお菓子は物によっては子どものお小遣いでも数が買える値段らしいけど、昨日だけであたしの売上合計は軽く抜かれてるんだろうなあ。
お母さんたちには誤魔化してあるけど、自分でもどうかと思う。
あたしに商才は無いんでしょうね……。
「ふう、御馳走様。さて準備に取り掛かろうか。クラウディア、昨日のピン貸して貰える?」
「そのまま持っていてもらっていいですよ? 私より似合ってますし」
「ライザも変えてみたらどうだい?」
「あたしですか? う~ん、ポニテにするには長さがちょっと足りないし、前みたいに結うのはめんどくさいし……」
「帽子のリボンを外すだけで誰だか分からなくなると思うよ?」
やっぱりあたしの判別基準って頭のコレなんですか?
「うん? ……ああ、ライザだったのか。誰かと思ったぞ」
「アガーテ姉さんですらそういう反応なんだね?」
キロさんの一言に従って、帽子を脱いでフロアに立ってみたんだけど。
一発であたしと気付く人は6割くらい。マジですか?
まさかアガーテ姉さんにすら一瞬気付かれないとは思いもしなかった。
よっぽど目立つんだね、あの帽子のリボン。タオも言ってたっけ。
「シャイナスさんも普段と見た目は変わっているが、纏っている雰囲気は変わっていないからすぐに分かるんだ。ライザは年がら年中あの頭だろう?」
「まあそうなんだけどさ。そっか、あたしの本体は帽子だったのか……」
「何をわけ分からない事言ってるの? いらっしゃい、護り手さん。食べていく? 持ち帰り?」
「アガーテと呼び捨てて頂いて結構ですよ、シャイナスさん。他の護り手達への差し入れでして。いくつか種類を入れて頂けると助かります」
「何人?」
「10人といった所ですね」
「なら……焼き菓子、ケーキ、プリンで詰めようか。甘いのとあんまり甘くないのを混ぜよう」
「お手数をお掛けします」
「そっちはお客、こっちは商売だよ。クラウディアー……」
キロさん、すっごいやり手じゃない? 看板娘的な。
もしこっちで生まれ育ってたら全然違う人になってた気がする。
「ほら、ライザも仕事なのだろう? カールさん達への報告もあるんだからしっかりな」
「はーい。じゃあまたね」
昨日はお菓子を分けてもらってお母さんたちに出したらかなり喜んでた。
まあこの島で甘味は結構貴重だし、何より美味しいしね。
加えて、この店のお菓子はあたしの
という事で、クラウディアのお店の手伝いをしている事は話してあったりする。
ガランガラン
お、次のお客さんはっと。
「いらっしゃいませ~」
「お邪魔するわねー……へ~、クーケン島ってすごいのね。こんなお店まであるなんて」
騎士……いや冒険者? っぽい女性。島では見た事ないから観光の人かな?
「先日オープンしたばかりなんです。お菓子専門は島ではここだけですよ」
「それはいいタイミングで来たわね。雰囲気もいい感じ……お菓子だけじゃないのかしら? 結構専門的な道具も置いてあるのね」
そのお客さんはアルさんの作った道具を見て感心してる。間違いなく外の人だね。
やっぱり外にはアルさんが作るような道具を置いてる所もあるんだ。
「道具店も兼ねてるんですよ。ホントはそちらが本業なんですけど――島には観光に?」
「ええ。冒険者をやっているんだけど、行商人から
「あたしはライザです。今はここの店員をやってますけど……アトリエを開いたりもしてます」
「アトリエ……というと、メルルちゃんやトトリちゃんみたいな? あなたも錬金術士?」
すごい! まさか錬金術を知ってる人に会えるなんて!
世の中狭いもんね!
「パミラさんは錬金術士に会った事があるんですか?」
「ええ。というかこの辺りでは珍しいみたいだけど、別の地方ならそれなりにいるわよ? 名前だけなら両手足じゃ足りないくらいは知っているもの」
世の中広かったよ……そんなに錬金術を使える人っているんだ。
やっぱり島の外、いや外国にも行ってみないとダメかあ。
と、いけないいけない。
「話し込んじゃってすみません。ここで食べていかれますか?」
「持ち帰りにするわ。広い景色を見ながら食べるお菓子って最高じゃない? え~っと……あ! プディングがあるじゃない! ホントにすごいわねこのお店!」
「は、はあ?」
プディング……プリンでいいのかな?
あたしにとっては珍しいものだけど、世界を巡ってるだろうパミラさんでも珍しいものなのかな。
「何かあった? ライザ」
「あ、キロさん。いえ、こちらのパミラさんがプリンを見て感動されたみたいで」
「とっても綺麗に出来ているプディングだし、冷えているなんて夏には最高じゃない! 6つ頂くわ……貴女、ひょっとしてオーレン族?」
え!? キロさん達も知ってるの!?
「そうですけど。他の同胞にお会いした事が?」
「ええ。名前は聞いてないんだけどオーレン族で……コナードル? 出身って言っていたかしら。王都にいたわよ?」
「あーたしかルベルトさんも言ってましたね。リラさんに似た人を王都で見たって」
「コナードル……緑羽氏族の誰かかな? 太ももムチムチでした?」
「だっただった! あれだけ堂々と見せつけられるのって中々自信あるわよね!」
「あぁ、確定だね。緑羽氏族の女性だ。相変わらずの氏族装束だね……」
判断基準はそこなんですか?
パミラさんはプリンを6つ受け取るとウキウキで店を後にしていった。
また島のどこかで会いそうだね。
「私が王都に行くのは難しいけどリラならいけるかな? アンペルが嫌がるか」
「王都にしかないお菓子もあるそうですし……それにしても、やっぱり他にもオーレン族の人がこっち側にいたんですね。ただ、判断基準が服装って?」
あたしも帽子とリボンが目印って事が今日証明されたわけですが。
「だって下着に前掛けだけ付けたかのような格好だよ? そもトップスと下着が一体というか……以前私がアルのシャツを着ていたのを覚えているだろうけど、上はともかく下半身についてはあの時の比じゃないよ? 側面なんて布地ないし」
「それはまた……」
男性は目のやり場に困りそうだ。あれ、そう考えるとあたしの服も危険域? そう言う事?
オーレン族は氏族毎に着る服が違うらしい。
キロさんは霊祈氏族――巫女さんらしいから法衣っぽいのは分からなくもないかな。
比較的オーレン族の中ではノーマルな服装だそうだ。
でもリラさんの……なんていうんだろう、ベルトで身体を締め上げてるようなのも氏族衣装なのかな? アレ胸がキツそうなんだよなあ。
「リラには午後から会うんだし、その際に話をしてみようか。大きな街に拠点を構えているならあちらは困窮してないんだろうし、すぐにはそこから動かないでしょ」
「そうですね」
この辺はオーレン族間で考えてもらう事だよね。あたしが口出す事じゃないや。
さ、仕事仕事!
「ほう? 緑羽氏族が王都に?」
「間違いなさそう。女性で……相変わらずの装束を着ているみたい」
「こっちを見てくれと言わんばかりのあの装束は理解出来なかったな。まあ機会があったら足を伸ばす程度に考えておこう。門の場所を知っているかもしれないしな」
リラさんも似た感想だった――リラさんのも割と強調されてますよ? どことは言いませんけど。
午後の訓練をリラさんは快諾。ランバーはボオスに回収されていった。生きてはいるらしい。
ちなみにアルさんとアンペルさんは朝から中枢で作業中。訓練の都合でタオはこっちで待機になった。アルさんが大きなリュックを背負って部品を運んだらしいけど……あのリュックに入り切る量だっけ? しかもトレッペの高台の頂上だよ?
「ライザ、なんの話なんだ?」
「王都にオーレン族の人が居るって話。以前ルベルトさんも見かけた事があるらしいし、多分その人なんだと思う」
「へえ、王都にもいるんだね。やっぱり二人に似た感じの人なのかな?」
「ルベルトさんはリラさん似、今日のお客さんはキロさん似って言ってたしそうなんじゃない?」
「銀髪系に色白の女性なんだよね? 見た事あったかなあ。あ、火元の確認は終わったよ。みんな武器を忘れないようにね」
あたしのシーカーを筆頭に、全員の武器は基本ここに置いてある。多分島で一番安全だし。
レントの剣もザムエルさんのお古に比べて圧倒的に鋭くなってるし、タオのハンマーはもはや農業用の物じゃないからね。「武器としても」じゃなくて正真正銘の武器なんだから。
島でボトルを扱うのは危険という事で、訓練は拠点で行う予定だ。
「やっぱつええのかな?」
「誇り高い種族とは言ってたよね。リラさんが白牙氏族で、キロさんが霊祈氏族……まだイメージ出来るけど緑羽氏族ってなんだろう? 羽が生えてる?」
「空でも飛べるのかな? 楽しそうだよね!」
「分かってるのは太ももがムチムチって事だけよ」
「なんだその情報……」
仕方ないじゃない、それしか聞いてないし。またパミラさんに会ったら聞いてみよう。
ところでクラウディアの視線があたしに向いているのは気のせい? なんか変な事言ったっけ?
「さて改めて伝えておくが、このボトルの中のフィルフサ共はお前達が戦った事があるどの魔物よりも強い。気を抜くと怪我では済まんぞ。気を引き締めろ」
「見た目は同じフィルフサでも青ぷにとシャイニングぷにくらいの差はあると思って。数で囲まれた場合や緊急時はフォローするけど、基本的には4人だけで戦ってもらうよ。各個撃破か纏めてか、バフが要るのか速攻か、引き際はどうするか。しっかり考えてね」
「青ぷにが……シャイニングぷに並み?」
「つまり中身は全部バケモンって事だな。古城の竜がかわいく見えらあ」
「怖いけど……いきなり女王に挑む事を考えたらまだマシなんだよね」
「私は力不足だろうから強化は必須かな。頑張ろう!」
拠点に移動して、今は紫色のボトルの真ん前。もうそれだけでイヤな感じがする。
このボトルの中は魔境らしい。まあ影の女王を封じるためだけの世界らしいしね。
今回のコアクリスタルの中身は誘引火瓶と
安全優先なら
あたしは回数に制限があるから回復は基本的にクラウディアにお願いして、緊急時はあたしになるのかな。遊撃があたしの役目だし気を配らないと!
「覚悟はいいようだな、後は実戦で学べ。ではライザ、頼むぞ」
「はい――じゃあみんな、ここに手をかざして」
6人で入るのは初めてだね。まあ使う魔力は変わらないから関係ないけど。
さて、参りましょうか!
パミラという女性は複数のアトリエ世界に登場する女性で、
ライザのアトリエ以外ではパメラ・イービスという名で登場しています。
(ライザだけはパミラ・エービス)
プレイされている方には御馴染みですね。
ここらへんで2が発売されて少しは本作にも反映しようとした結果、遡ってルベルトが知っている事にしたり、バニラの命名話に出したりしたんだと思います。
次は影のボトルの世界で修業に入ります。レベル150+難易度CHARISMAです。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。