ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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ボトルで女王とのエンカウントを終えて。
今まで培った知識でライザが最初に作るのは、それに相応しい物を。

誤字報告ありがとうございます。なんかゴソッと抜けてましたね……。

今回もよろしくお願いします。


80. 80日目④  友に捧ぐは冠たる音色

「ほう、リラのアインツェルカンプを見たか」

 

「うん。すごかった!」

 

「一言に集約され過ぎてるよライザ。飲み物何がいい?」

 

「こういう時はヴァッサ麦茶だな、頼むぜクラウディア。あれが……戦士の奥義ってやつか」

 

「極端すぎるとは思うけど……パワーとスピードとテクニック、全部揃うとああなるんだね」

 

「アレを使うとすぐに腹が減るのが難点でな。アル、何か腹に溜まる物はあるか?」

 

「小籠包でも蒸しましょうか。少し待っていてくださいね」

 

「アル、私も。10個」

 

「戦闘後と思えんやり取りだな。街道の行き来だけでも気を張るこちらは相当な間抜けだろう」

 

ボトルから脱出したのち、島の工房に戻ってきた。

アルさんたちの作業はもう終わっていたみたいで、戦闘用のアイテムを調合してくれてたらしい。

 

「なに、私は指示を受けて出力の上げ下げをしていただけだ。そこら中を飛び回っていたアル君とは並べられんよ」

 

との事だ。

あの……たんまつ? の使い方がちっともわからないあたしにはそれでも十分な気がするけど。

文字通りアルさんは飛び回ってたんだろう、あの広い中枢の隅々を。

ただの島の道具屋とは一体。

 

「もう中枢での作業は終わったの?」

 

「うむ。突き詰めればキリがないだろうが、ライザ達とアル君が作った部品はほぼ組み込んだ。全機能をフル稼働させた際の効率はずっと改善されたはずだ。とはいえ……メインの浮上設備に関しては、地震の事もあって安易に触る訳にもいかなくてな。寿命は1割程度しか延ばせなかった」

 

「いえ、僕たちの島の事をお願いしてしまってすみません」

 

「感謝する。少しでも期限が延びたのであればありがたい」

 

「そういや、お前街道に入ったのか? 何しに行ったんだ?」

 

「移住案の検討だ。北の町にどの程度空きがあるかと思ってな。徒労に終わるならそれはそれでいいが、案はいくつか構えておきたいしアガーテへの匂わせにもなる。島の財政とブルネン家の私財との相談になるだろうがな」

 

もちろん島のエネルギーを回復させる事が最高の結果だけど、延命には限界があるし……最悪手に入れられない可能性もある。

キロさんの人柱案は論外。となれば、島を動かさない限りあたしたちの移住は必然だもんね。

 

「古老達のような年寄りでは生活が成り立たんし、ブルネン家の伝手にも限界がある。俺達若手連中は王都など都会に出稼ぎに行くような形になるだろう」

 

「そんな形にならないように気張らないとね。みんなの頑張りを無駄にしたくないし」

 

「以前まで島の外に出たいって言い続けてたやつのセリフじゃねえけどな」

 

「ホントだよね。でも……今はライザの言うとおりかな」

 

「はい、おまたせ! 冷えてるからね」

 

「こっちはかなり熱いので、火傷には重々気を付けてください」

 

「ほう! なかなかに旨そうだな。饅頭の一種か……あっつ!」

 

「言われた先からなにやってるの? こういうのはフーフーしてから食べるんだよ……アッツ!」

 

「早くお茶を! 必要ならもっと冷やしますから!」

 

オーレン族にダメージが入った。ソレ、外からフーフーしてもダメなんです。

あの小籠包、以前食べたチャオズの一種らしいけど、外より中の肉汁が半端なく熱い。

沸かしたてのお湯を無警戒に飲むような感じになるのよね――身を以て知ってるよ!

 

「何匹ものフィルフサやガーディアン相手に無傷で戦えても食欲には勝てんらしい。ここ数年でリラに物理的ダメージが入ったのは……アル君の壁を除けば久々ではないか? 食を用いた攻撃は恐ろしいな」

 

「いっへいうわあいあ!」

 

「ひたやけろひた……えくふぇえっと……ふぁつおんわ」

 

「癒しの旋律を吹きますからちょっと待っててください!」

 

「ちゃんと気を付けてって言ったのに……」

 

「わりとシャレになんねえっすね」

 

「戦線総崩れだね」

 

「毒はよくても熱はダメなのだな。分からんものだ」

 

詠唱するキロさんにとって正しく発音できなくなるのは大問題だよね。リラさんはもう解読不能。

そうそう無いだろうけど、今後の料理には気をつかいましょ。

 

「そういえばボオス。あんたよくあんなのから逃げられたわね?」

 

「ホントだよね……僕なら腰を抜かして押し潰されてそうだよ」

 

「ランバーを帰す事だけを考えていたからな。余計な事を考えなかったのが良かったのだろう」

 

「為すべき事を為す、ねえ。ま、お前なりに本気だったのは分かったぜ」

 

「本当ならライザ達もまず逃げる事を考えてね。それが出来たら苦労はないんだけど」

 

「あー、ひどい目に遭った……緊急時は反射で行動出来るように反復するんだよ」

 

「先程反射的に行動を取れなかった私達がそれを語ってもな……クラウディア、助かった」

 

「まずはすぐに舌を冷やしてくださいね?」

 

「ライザなら、一先ずは目くらましのアイテムを使うくらいでいいかもしれんな」

 

目くらましのアイテムねえ、考えてみますか。

煙幕は作った事ある(まさかエルツ糖から作れるなんて)けど、エレメントが弱いせいかクリスタルコアには入れられない。音爆弾と同じで使い切りなのだ。

 

目くらまし、時間稼ぎ……時間といえば。

 

「ねえアンペルさん。もらったレシピの中に「時空の天文時計」ってあったけど、あれ何?」

 

「む、そんなものまで記述してしまっていたか……私の魔法が時空系の魔法なのは知っているな? 昔はヤンチャをしたものでな、その魔法の力をアイテムに出来ないかと純度の高い魔石に魔力を込めて錬金術で制御しようとした物だ。結局未完成で終わったが……それでよかったと思っている」

 

「時間なんて生き物の分際でどうこうしていいシロモノじゃないよ、それこそ神の領域。貴方も加減しないとマトモな最期を迎えられないよ?」

 

「これは手痛い所を突かれたな。今暫くは見逃してくれ。目的を成したら一人朽ちるつもりだ」

 

アンペルさんの見た目と年齢(不明だけど)が一致しないのはそういう事なのかな?

嗅覚的にオーレン族疑惑があるけど。

過ぎたる力はなんとやら、かあ。別の方向で考えよう。あたしの身の丈に合わなさそうだし。

 

 

 

「さて、今後のお話をしましょうか」

 

アルさんの言葉でみんなが向き直る。いつのまにか小籠包が無くなってる……。

 

「まずおさらいですけど……乾季が来るまで後10日程度。門は塞いでありますけど、こっちに来ないってだけであちらの聖地が荒らされる可能性は高い。そしてクーケン島のエネルギーに関しても今日改造はしましたけど、施したのは現在使っていない部分が大半ですから延びたのは精々1日分という所です」

 

アルさんがボードにチョークを使ってカツカツと書き込んでいく――読みやすい字!

キロさんはコクコク頷いてる。

 

「日程以外で残っている課題は……ライザ達に戦闘経験を積んでもらう事、装備の充実、そして島のエネルギー源の確保……これは女王の撃破にも関係するかもですが。キロさん、今日の成果はどうだった?」

 

「ん。ライザ達をボトルの中で戦えるレベルまで鍛えるのは日程的に難しい。一匹ずつならなんとか出来るかもだけど複数相手じゃ消耗が激しいし、何より影の女王は戦力が読めない。明日24時間丸々超絶スパルタで鍛えるなら違うかもだけど必要性は薄いし、それをするくらいなら判明した日からぶっ通しで訓練すべきだからね。だから――実行部隊は影の女王が私達、蝕みの女王本体がライザ達になるかな」

 

「通常のフィルフサ相手なら今のレベルでも問題ないだろう。が、蝕みの女王に備える為にも時間があるならボトルの中で鍛えさせたいところだな。2日もかければかなり違うはずだ」

 

「そうですね……情けねえっ……!」

 

くやしいけど、今のあたしたちじゃボトルの中では戦えない。今日身を以て知った。

ぶっ続けで訓練してもらったとしても……魔法を使っても多分身に入る分には限度がある。

やる気があっても実力が伴わないんじゃどうにもならない――これは遊びじゃないんだから。

その分、戦える環境で全力を尽くそう。

 

 

 

「次に装備面だね。武器は……クラウディアのフルートは僕とライザが作った時の物かな?」

 

「はい。思い入れはありますけど……言っていられないですよね。ライザ、お願いできるかな?」

 

「もちろんだよ! でもあたし楽器は全然だからアドバイスをお願いね」

 

「ライザの杖は傑作だが他の武器は……リラ、お前のはどうする?」

 

「強化されているに越した事はないが、慣れる時間も考えれば一旦は今ので十分だろう。優先度は低くていい。私よりもアルの装備は更新しなくていいのか?」

 

そういえばアルさんの手甲と甲掛、未だに素材の正体を知らないんだよね。

あたしに訓練付けてくれてた頃と変わってないはずだけど。

 

「僕のはまあ……大丈夫じゃないのかな? と」

 

「皆の武器とは毛色が違うからね。無欠陥のハイパーダイヤとか頭おかしい」

 

えっ、あれダイヤ製なの!? アルさんの習作――練習品ってそう言う事?

スタルチウム削るのに散々お世話になったけど……アレの上? はいぱー?

 

「私もちょっと勉強してね? ダイヤは硬いんだけど、その分割れやすい――方向性があるからだね。ならその方向性を細かくして複雑にしちゃえばいいっていう頭悪い発想。この世界に存在していいのかあやしい」

 

「ひどいなあ。似たようなのはちゃんと自然界にあるよ? ――隕石の衝突跡とか」

 

「あのサイズかつ無欠陥なんて有りえないでしょうが! どうやって傷つけるの!?」

 

「ま、まあアルの武器が強化不要な事は分かった」

 

リラさんが収めに入った――なかなか見られないわね。

それにしても……傷つける手段がない? 攻守とも最強クラスの代物だったとは。

 

「他の全員……キロ嬢もだったか。これらはクリミネア製だから一旦はいいだろう。それと防御用に全員分コレを調合しておいた」

 

アンペルさんがポケットから何かを出してきた。チェーンリングかな?

 

「魔石のチェインという宝石を編み込んだ装飾品だ。編み込んだ宝石の種類によって効果が変わるが、共通しているのは同じ装備が近くにある場合は共鳴し、所持者の活性を促進する効果があるという事だ。役には立つだろう。これなら普段から付けていてもそこまで目立たんしな」

 

宝石が専門のアンペルさんならではだね!

しかしまあ、キョウメイときましたか……キョウメイってなに? 共振じゃなくて?

 

レントの叫び癖も治るかなあ――あたしのせいなんだけど。

ただ識別のためにみんなスキル名は言ってるから、そこまで気にならなくなってきてるかも。

 

 

 

「なら火急はクラウディアのフルートだけだね。で、最後のエネルギー源の確保だけど……」

 

そう。一番の問題はこれだ。

 

「これだけは……なんとも言えないね。充分な大きさの戦士の証を女王が持っている事と、それをエネルギー源にする為の調合なり錬成が出来る事を祈るしかない」

 

「島の寿命優先ならアルに賢者の石もどきを先に作ってもらうって手がないわけでもない。ただ結局アレをこちらの世界のシロモノに使うとしても私経由になるっぽい――だからアルも人柱みたいなものだね。錬成はアルにしか出来ないんだから」

 

「加えて賢者の石もどきが代替資源に使えるかどうかも不明だ。実験するにはあまりにもハイリスクだからな。更には、錬成の都度アル君に禁忌に触れさせる様な真似だ。この問題はアル君に頼らず解決すべきだろう」

 

「……うん、そうだね!」

 

頑張ってきたつもりで、なんだかんだ色々とアルさん頼りだ。

水を奪った古式秘具の時に心に決めた――この件はクリント王国の錬金術士が解決すべきって事。

気合い入れろ、あたし!

 

 

 

「じゃあ纏めると……ライザ達の鍛錬に2日、その前にクラウディアのフルートの調合かな。アンペルさんも鍛錬側に御参加を。僕は中枢の制御調整、キロさんは念の為に入り江周辺の哨戒をしてもらって、終わり次第僕らも参加。ボオス君は引き続き今後に関する検討をよろしくね。それにプラス1日休憩を取って……4日後に女王と戦う事にする、でどうでしょう」

 

「長引かせても好転はしない、それでいいだろう。お前達はスパルタを覚悟しろ」

 

「ウィッス!! 全力でやるぜ!」

 

「こればかりは……弱音を吐いてらんないね。よろしくお願いします!」

 

「あたしたちがやるべき事だからね。フルートはこの後やろっか」

 

「ありがとうライザ。私も今晩中に日持ちするお菓子を作っておかないと。営業は……」

 

「それなんだけど、今日ロミィさんとジェナが来てね。頼んでみたら二人とも了承してくれたから後で話してみてよ」

 

ジェナ……父親のピーターさんとは逆に落ち着いてるわよね。あれ? 10歳くらいのはず?

ロミィさんはそもそも商売人だ。試食を通して多分全メニューを知ってるし助かるね。

 

「弟子達の足を引っ張る事は避けたいからな。私も全力で取り組むとしよう」

 

「杞憂だとは思うけど入り江以外も纏めて見回ってみるよ。やりすぎに注意しないと」

 

なんか物騒な一言が付いてますよ、キロさん?

 

「王都や他の町の情勢をルベルト氏や観光客から聞いておきます。ランバーには……船の点検をさせるか。エルリックさん、一応島を対岸に動かす為のエネルギー量を計算して貰えませんか?」

 

「わかったよ。大体の見積もりは立ててみるね」

 

「島に観光に来てる人にパミラさんって女性の冒険者さんがいるわよ。各地を回られてるみたいだから参考になるかも」

 

「分かった。女性の冒険者は少ないからすぐ見つかるだろう」

 

これでみんなやる事は決まったわね。

さあ、早速あたしはty

 

「じゃあ夕ご飯にしよう。お腹空いた」

 

……うん、そうだね、そうですね、わかってたよ! ホント正確な腹時計ですね!?

さっきの小籠包はおやつですらなかったらしい。

本当にこの人、あたしたちに会うまでどんな食生活だったんだろう。

 

 

 

 

 

 

「うーん、複雑だなあ」

 

「木管楽器の中では比較的シンプルな方だよ? 一番大事なのは歌口(うたぐち)の部分だね」

 

作るにしたって構造が分かんなきゃイメージのしようがない。

前回形はアルさんが作ったし、そのアルさんも元のフルートの形をそのまま真似たらしい。

どうせ作るならもっと素材に合った物にしようと思って、見てはいるんだけど……。

 

歌口って……口を当てるこの部分だよね?

ここから息を吹いてるんだしそりゃそうか。

 

「クラウディア、一回あたしが吹いてみていい?」

 

「うん。ええっと、右手はそのまま左手は逆側から持ってもらって歌口に下唇を当ててもらって……少し左を向いた感じだね。それで口をすぼめて息を吹き付ける感じだよ」

 

なにげに……体勢キツいわねコレ! 指も結構キツい!

えっ、クラウディア、戦いながらコレなんだよね? すっごい器用じゃない?

 

で、え~っと。

 

 

フーッ!

 

 

「猫の威嚇?」

 

「最初は音を出すだけでも結構難しいですから……吹き方はフーよりトゥーって感じかな?」

 

ううぅ……せめてリードが付いてたらマシだと思いたい。

んでキロさん、ネコの威嚇って。

 

「いろいろ口を動かしてみて、正しい位置に息を吹き付けられるようになるのが最初のステップだよ。当て方とか指の動かし方は次のステップになるから」

 

「ううん? むぅ~」

 

いろいろ口の形や角度を変えて吹いてみるけど、相変わらず笛の音は出ない。

あたしに演奏の才能はないらしい。

 

「もう少し上唇を前に出して下側に吹くイメージじゃない? 舌を意識して」

 

「キロさん、分かるんですか?」

 

「経験はないけどね。勘だよ勘」

 

「一度キロさんも吹かれてみますか?」

 

私? と言いつつフルートを受け取るキロさん。

……なんか嫌な予感がする。

 

「ん~確か指は…………C6(高音ド)~~♪」

 

「お~!」

 

「ああぁ、案の定鳴った……」

 

ネコの威嚇になる事なくしっかり音が鳴った。しかも高い。

 

「B5、A5、G5、F5、E5、D5、C5~~♪ ふぅん、こんな感じか。指が大変だね」

 

1オクターブ分の音を鳴らして、口を離して――キロさんがドヤ顔した。

イラァ……。

 

「すごいですね! 1オクターブ下るのは結構覚えるのが大変ですし吹き方も違うんですけど」

 

「クラウディアの演奏を何度か見ていたからね、耳は良いし。演奏は流石に無理そうかな」

 

「キロさんが吹けても意味ないんですけど~~?」

 

演奏って見取り稽古するものじゃないよね? 歌上手くても演奏できるのは関係ないよね?

もう最初の頃の印象が全く残ってない――ドヤ顔て。

 

「そうでもないよ? 錬金術風な理解はクラウディアより出来るだろうからライザに説明しやすいし。まあそこに、そっち方面の極致の人材がいるんだけど」

 

「せっかく関わらずにいようとしていたのに……」

 

今まで一言も発してなかったけど、もちろん家主たるアルさんもここに居る。

ただしキロさんに作業を禁止されているらしく、作業はせずにコーヒーを飲みながら読書中だ……どうせ難しい内容だろうなあ。

 

「ライザの錬金術はイメージが大切って事だけど、それは()()()()()()()()()()()()事が大事なのかい?」

 

「? どういう事ですか?」

 

作ろうとする物のイメージが精細であるほど、その通りに出来るつもりでいるけれど……。

 

「最近は部品の調合をお願いしていたから今みたいな感じだったけど……今までの通り機能をイメージする形から入った方がいいんじゃないかな? 剣ならよく切れる物、笛ならいい音が鳴る物ってね」

 

「模倣をするのはアルの分野だからね。アンペルも先日剣とか鎚とかを作ったわけだけど、()()()()使()()()()()()()使()()()()()()をイメージしたのであって刃渡りや柄の長さとかは考えていないと思うよ? まあ、吹けるに越した事はないけど」

 

最後の一言要りました!?

 

まあでも、そうだね。

あたしの錬金術はアルさんのと毛色が違うのを忘れてた。最近部品ばっかだったしなあ。

 

シンプルに考えればいいんだ。

いい音が鳴る事はもちろんの事。なにより、クラウディアのために。

 

となると。

 

「一回やってみるよ。調合しながら……あたしなりのイメージを形にしてみる」

 

「分かったよ。それじゃあお願いするね」

 

クラウディアからフルートを預かる。

やり直しは利かない。一発勝負だ。

 

でも、それで十分。

 

「ゴルドテリオンでやるの?」

 

「はい。でも……今回はあたしだけでやってみます。出来るようにならなきゃですから」

 

「そっか……じゃあ頑張ってね。カールさん達には話をしておくよ」

 

「ありがとうございます!」

 

幸いにしてセレスティアシーカーはゴルドテリオン製。おかげさまでゴルドテリオンを道具にするとどんなもんかって事は多分あたしが一番よく知ってる。あたしだけでいけるはずだ。

 

 

 

さてと……今回のフルートの最終形もゴルドテリオン製。

だけどイノセントスノウはスタルチウム製だから、クリミネアでの調合を挟みたい。

 

今回の調合に使えそうな素材はアンペルさんから融通して貰えた。まずはクリミネアだね。

 

クラウディアのフルートは宝石類と相性が良い。加えて氷属性。

これに該当しそうな素材は……これかな、ガラスの花。これでフルートとしての性質を整える。

 

うん。これでもいい音は鳴るんだろう。

でも、今のクラウディアならこの音じゃ力不足。

 

本番はここからだ。

 

「……日付は越えるかな、夜食を用意してあげようか。クラウディアは……寝なくて大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ? これでも隊商で鍛えてますから。それに、こんな時に寝ていられないです」

 

「天才っていうのはこういう子の事を言うんだろうね――加護の補助も無しに。やっぱり適性があるのか……錬金術に触れて2か月弱なんだっけ? 現代の錬金術じゃ最高峰の素材だよね?」

 

「僕は専門じゃないから多分としか言いようがないけどね。こうやって何かを考えている時の雰囲気は、どことなく兄さんを思わせるよ」

 

さあゴルドテリオンを投入。

 

以前はエレメントの動かしようが無かったけど――今なら分かる。

素材とエレメントの親和性に逆らっちゃいけない。

 

クリミネアのフルートにゴルドテリオンを混ぜつつ、それで一つに纏める。

そのためのイメージは、クラウディアに相応しい楽器である事。

 

それだけで十分。

 

んでもって、このフルートに相応しい宝石素材は……永遠の聖なる輝き、セイントダイヤ。

 

さあ、後はひたすらにイメージを込め続けろ。

クラウディアが、あたしの作ったフルートで最高の旋律を奏でる景色を……。

 

 

……Zzz...

 

 

「……混ぜながら寝落ちしてない? 釜からガランガラン音がしてるけど」

 

「……あ~確かに。もうこんな時間だからね。それにしても大したものだよ。ライザ」

 

「それじゃあライザは」

 

「うん。でも明日のお楽しみにしておこう。さあクラウディアも」

 

「はい。えっと……ライザはこっちで休ませてあげても?」

 

「そうだね、その方がいいかな。背負っていこうか」

 

「役得だね?」

 

「あのねえ……」

 

「お姫様抱っこの方が女の子の夢じゃないですか?」

 

「ライザ視点からだった……そう考えられない私の心は汚れているのかな……」

 

「とうに真っ黒でしょ? もっと言ってやっておくれよ、クラウディア」

 

 

 

 

 

多分……夢を見ているんだろう。

ちょっと大人になったクラウディアがあたしの作った黒いフルートを持って。

大きな建物の中で、たくさんの人に見つめられながら最高の音を奏でて。

 

――建物ごと凍り付いた、そんな意味不明の夢。




ファンタジー要素が混じらない中で最強クラスの素材、という事で
アルの装備は「割れないダイヤ」製となりました。首領・〇リークみたい。
ハイパーダイヤモンドは実在しますが、こんなのではありません。

フルートは借りてみましたが、鳴らなかったですね……。

さて完成したものの出来栄えは?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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