ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
ルビ振りがうまくいかず、どうしてもズレてしまう……。
いつの間にやら60万文字を超えました。ここまでの読了、ありがとうございます。
あと20万文字ないくらいです。よろしければ引き続きお付き合い頂けると嬉しいです。
今回もよろしくお願いします。
「さてと」
アルと別れて対岸へ――作った時間をしっかり活用しないと。
回らなきゃいけない箇所は4つ。
坑道、火山、峡谷、塔。それぞれ氷、炎、風、雷。
会えるかどうかわからないけど、祭壇に祈りだけでも捧げておこう。
私は……残念ながらライザ達みたいにホイホイ強くなれるわけじゃない。
自力で強くなれる限界にはとうの昔に到達してしまっている、と思う。
なら、外から足し算するしかない。少しでも出来る事をやる。
性格的には……まず、風かな?
『それで各地を回っておる、と?』
「はい。お力をお借り出来ないでしょうか?」
一発目で会えた。かなり運がいい。闇の大精霊様に感謝しないと。
この分なら全員降臨されていそうだ。
そばにいた翼竜は鬱陶しかったのでミンチになってもらった。
曲がりなりにも私は巫女だ。七百年くらい前だろうけど、光以外の五柱には会った事がある。
風の大精霊様は比較的穏やかな性格をされている――助かるなあ。癒しだよ。
『光のやつが何かをやっておるのは知っておったが、そういう事であったか。あやつは責任感が強いのは結構だが、何処か抜けておるからな』
「風の大精霊様は災厄の封印についてはお聞きになっていない、と?」
『存在自体は知っておる。が、封印が解けかけておるというのは知らぬな。道理で最近力の流れ込み方が妙なわけじゃ。汝の話ならば光と闇のやつは関わっておるのだろうが、他のやつらは知らぬじゃろう』
どうにも封印に関わっているのは光と闇の大精霊様二柱で、他の大精霊様方は二柱に力を持って行かれているような感じなのかな?
『まあよかろう。本来ならば力試しをすべきじゃが事情も理解はした。事が終わった際には返してもらうぞ?』
「はい! ありがとうございます!」
戦わなきゃいけないと思っていたけど、まさかノーテストで力を借りられるとは。
風の大精霊様ありがとう! 心の清涼剤です!
『わらわはよいが……他のやつらはこうはいかんぞ? 炎のやつは最初から殴りに来るだろうし、氷のやつは会話にならんし、雷のやつはクソ真面目じゃしの』
よく存じております。だから最初にここにお邪魔したのだし。
さて、次は……近いのは塔だけど順番的に……イヤだなあ。
『なかなかやるではないか』
「……けっほ。ありがとう、ございます……」
火山の山頂の祭壇。火の大精霊様を祀る場所。
会えたのはいいけど、話をする前にいきなり
風の強化を受けていなかったら危なかった……案の定だよ、殺す気ですか?
いくら何でも勘弁願いたい。さて。
「少しおh」
『貴様の事情などなんでもよい。力は見せてもらった。持っていけ』
やり方は無茶苦茶だけど、相変わらずサッパリしていらっしゃる。
そのままアッサリ消えちゃった。
時間短縮はありがたいんだけど――もうちょっとなんとかなりませんか?
後の二柱は……どうしようかなあ。火を得られたんだし……。
「力をお貸し願えないでしょうか?」
『…………』
水没坑道の奥地、氷の大精霊様の祭壇にて。
いらっしゃらなかったので、フェンリルの力を借りて場を整えて祈りを捧げていたら降臨して頂けた。
でも終始無言。こういう手合いが一番困る――分かってはいたけどすっごい気まずい。
氷の大精霊様は冷淡で寡黙、しゃべって一言二言。
どうでるか。
『……力を示せ。アイスボルト』
ヒィン! ビシィッ!!
「!! ほっ!」
乗ってくれた! 試してくださるみたいだ。
久方ぶりな威力の攻撃だ、ヒヤッとするね。でもクラウディアよりマシな気がするのが怖い。
「Ignis Hastam !」
ボウボウッ!!
『
ドォン!!
炎の槍は下向きの引力で逸らされた。卑怯くさい。
点攻撃じゃ届かないね、面で攻めないと。
『
ビュオッ!!
点だけど、もはや面ですね! 嫌がらせかな? ……避けられない!
ええい!
「Ignis Murus !」
ゴウッ!
炎の壁! 某大佐の真似事だ。攻撃が氷でよかった。
このまま――お返しする!
「
『む』
二本の槍でダメなら、二十本の大槍はどうですか?
「ᛖ
『フローズンバースト』
ボゥボゥボゥボゥ!
ドォンドォンド……ドオォォォォォォン!!!
氷の大精霊様に炎の大槍が殺到する。
超常の存在だ。死という概念がないから大丈夫だと思う。多分あっさり相殺されているし。
……ほら、案の定無傷で出てきたよ。まともにやってられないね。
『……意外に楽しめた。報いてやる』
「っありがとうございます!」
今までで最長の一文を引き出せた。あぁ疲れた。
最後は、最後なんだけど……う~ん。
『却下だ』
「ええぇ……」
即刻NGが出た。Oh...
雷の大精霊様は精霊らしくも、一番人間味のあるところがある。
だからといって人間の考え方の枠に嵌めちゃいけない。
話を聞いて貰えるだけでもありがたい存在なのだから。
『既に他の力は得たのであろう? その上でわらわの力を望むなど、汝は何になるつもりだ?』
3柱が力を貸したんだから4柱目も、と考えたんだけど裏目に出たらしい。
雷の大精霊様に浅知恵は通用しなかったよ。
「何にも。戦うからには出来る事をしておきたい、それだけで御座います。あの森を取り戻す為、災厄の芽を摘む為にも」
『過ぎたる力は滅びを招く。本来汝らのような器に幾つも宿す力ではない。分かっておるだろう? それほどの力を宿せば汝も人ではいられなくなるぞ』
ごもっとも。
精霊と契約するのに魔力を消費するのとは逆に。
大精霊様から力を与えられるのは、いわば
本来なら既にマズい状態の気がするけど――どういうわけか私はほぼ負荷を受けていない。
アルの加護に干渉しているせいかな? ありがたい事だね。
「私はもう十分に生きましたし……その後を見守ってくれる友も得ました。ならば私の命を尽くすのは今この時と考えております」
『どうであろうな? 汝が中に何を飼っておるのか見えぬが、真っ当なモノで無い事は分かる。汝の器の崩壊はソレの解放と同義だろう? 或いはソレごと無に帰せると?』
多分……難しいです、はい。
だって私も全貌を把握していないし。
「……保障は致しかねます」
『で、あろうな。まあ汝の周辺が騒がしくなっておるのはわかる。妙に懐かしい気配もするしの』
「懐かしい、ですか?」
『ふむ。いつの頃か経験したモノ、あるいはそれに近しい気配じゃろうな。相当に古い記憶じゃが未だ忘れずにおるという事は……それだけ印象深かったのであろう』
珍しい。大精霊様が感慨にふけっているような感じだ。
それにしても……大精霊様にとっての大昔って、どれだけ古いのか想像もつかない。
私の先祖ですら生まれてない、現生の生物がいた時代なのかもあやしい頃だろう。
その頃の……なにかの気配に、なにかが似ている?
これは全然分かんないね。
『無駄話が過ぎたな。わらわの尺度では汝にこれ以上の力を貸すのは過剰じゃ。汝にその気がなくとも……この塔を作った者共のように、知らぬうちに滅びの道を辿るやもしれんぞ』
「それは……」
避けたいね。私が彼らと同じ道を辿るというのは皮肉もいい所だ。
リラ達に私を処分してもらわないといけなくなる。
仕方がない。話を聞いてもらえただけでも大収穫なのだから。
「分かりました。時を頂きありがとうございました」
『汝にわらわの力が必要と判断した場合は力を貸してやる。足を運べ』
もしもの時の言質も取れた。十分だね。
雷の大精霊様が約束を違える事はまず無いし。
三柱分も大精霊様の助力が得られたんだから不足は無いと思いたい。
陽は天頂間近……徒歩で帰るには時間がかかるね。訓練に間に合わない。
借りた力を早速使わせてもらおう。
「おかえり。用事は済んだのかい?」
「ただいま……全部じゃないけど上々だね。3属性分。残りの1つも必要に応じて貸して頂けるって」
「それは助かるね。闇の大精霊と話した時にも思ったけど、割と人間味がある存在なのかな」
工房に戻って、ロミィと……ジェナ? と二言三言交わして。
作業スペースではここの主が荷物の準備をしていた。
人間味は――ゼロでは無いけどスケールが違うってところだね。
ただ、人の身であまり関わらない方がいいのは間違いない。
アルで言う所の禁忌に近いのだから。
「そっちは?」
「ボオス君の案は無理だね。エネルギー不足、ないし漂流させるにも時間がかかる。フルに強化したリラさんに引いてもらう方がまだ現実的かな。現状で既に魚に困っているから、ほんの少し水流を調整してきたくらいだね」
維持だけでざっくり12日分しかないからね。維持しつつ動かすのは莫大なエネルギーが要りそう。
リラを馬代わりにするのはいいけど、そんなに丈夫な綱があるかな。蜘蛛の糸の綱とか?
「それと、こっちが使えるかどうかだけど……」
アルはポケットから賢者の石もどきを取り出す。
「やっぱりこのままでは不安定過ぎてダメだね。エネルギーの大本は同じなんだろうけど供給のされ方が合わない。前は言語の違いって言ったけど……直流と交流みたいなものなんだろうね。動力炉が壊れそうだ」
「ホントによく指輪が使えたね……緻密に錬成したからよかったのかな?」
アルクァンシェルもどきは、真にアルクァンシェルとしていいのかもしれないね。
あれは私の魔力を長年に渡って受け続けて変質しているっぽいし。
リング自体にもフィルフサの要素を混ぜ込んであるから、アレも賢者の石に近いのかもね。
となると……やっぱり島のエネルギー源自体はフィルフサ、あるいは精霊由来。
だけどクリントの錬金術で作った物じゃないとダメ、と。
なら、その制御の特性に足り得るのは……。
「僕の事は何か言っていた?」
「ううん全然。光と闇の大精霊様、それと他の大精霊様達では情報共有していないみたい。ただ……私の周りのナニカの気配が雷の大精霊様にとっては懐かしいものだって」
「ふぅん……キロさんが纏っているなにか?」
「私、千年も生きていないはずだけど。まあ今はいいでしょ」
次に会った際に何か思い出してもらっているかもしれないし。
「じゃああっちに合流しようか。お昼は?」
「時間が無かったからサンドイッチを山のように。食べていくかい? 僕はいいから」
「移動しながら食べるよ、時間がもったいない。貴方も必要がなくても食べなさい」
ライザ達よりは強いつもりでいるけど、大精霊様達には勝てる気がしない。
影の女王も近しい力を持っていたら、力を借りた今でもあやしい。
私もとっとと身体を慣らさないと。
バァン!
「はぁ~いそっちのお嬢さん! 女の子のお昼ご飯はコレだぁ~~!!」
「えっロミィ?」
店番をしていたロミィが作業場に入ってきて、右手に何か……こぶし大のシュークリーム!?
心なしかロミィの笑みにも黒い物が混じっていて、小さな手には軽く血管が浮き出ている……。
ああ、イヤな予感が。これはアルを独り占めしているようなものの対価――ロミィパンチ?
理不尽だ……そんなつもりは全然無いのに。
「ロミィさんの奢りだよ! はいっ口を大きく開いてアーンしてぇ!!」
「ちょっまっ」
バクゥッ!!
「よくその口の大きさでそのサイズのシュークリームが入るよね?」
「ロミィさんもちょっとビックリした」
頬袋は便利だ――オーレン族はげっ歯類の特性があるんだろうか?
「という事があってね」
「それはまあまた……」
なかなかキロさんもすごい事をするわね。
まさか大精霊の力を借り受けるなんて。
でもキロさんはそれだけ本気でこの件に取り組んでくれてるんだ。
でもって、エネルギー源はあたしかアンペルさんの調合が必須、ね。
休んでる場合じゃないね!
「よし! さあ、あたしたちも訓練再開しよっか!」
「うん! キロさんたちにだけ頑張ってもらうわけにはいかないもんね!」
「もちろんだぜ! 次はそろそろ複数体か、それとも甲虫あたりか?」
「どのくらい出来るかな……そういえばライザ、バングルを知らない?」
「ああーっと、アレは……まだ改良できそうだから預からせてもらうね?」
とりあえず叫び癖と狂戦士化は無くなるようにしとかないと……。
という事でキロにバフがかかりました。話に大きな影響は無かったりします。
無印ライザでは大精霊のテキストって少なすぎるんですよね……ほぼ想像です。
次は修行の最終日、総仕上げです。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。