ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
ですがここまでこれで通しましたので、よろしければお付き合いください。
新作がリリースされましたね。作者はライザを引くのは諦めました……。
今回もよろしくお願いします。
「ふむ、それなりに形にはなったか。オーリムのフィルフサについては問題ないだろう」
「はぁ~っ、なんとかなった……」
「まだまだ連携には課題があっからな。各々の役割をもっときっちりしねえと」
「ライザの使うアイテムは特に効果や範囲を把握しきれていないしね」
「発動時間はかなり短縮できたけど……もっと速攻を狙うべきなのかな?」
「誰も慢心していないな。心配はなさそうで何よりだ」
「う~ん。お借りした力のお陰で威力も速度も上がったけど……応用性も上げるべき?」
「僕も錬丹術と苦無投げの精度を上げないとね。今日一日集中して詰め込むとしようか」
訓練2日目、多分午後?
文字通り悪夢だったわ……ほぼ休みなしでの戦闘だったし、時折リラさんたちから妨害が入る。
休みの代わりにキロさんが回復してくれたけど、直後に炎弾が飛んでくるオマケつき。
臨機応変に戦うためなんだろうけど、何も周りを火の海にしなくてもいいのに……。
「さて、引き延ばさずに最終段階に入るとするとしよう」
最終段階……最終試験。ああぁ~ついにか。
という事は。
「ライザ、レント、タオ、クラウディアの4人で、私、アンペル、キロ、アルの4人と戦闘する」
悪夢の中の悪夢。どうしろと……。
「少し時間を取るからどうやって戦うか考えてみて。僕らがどう戦うかは皆知っているよね?」
「勿論大魔法は封印するから安心して。とはいえ、単体の速攻魔法は遠慮なくいくよ?」
「私も武器は付けず精霊を降ろす事もしない。が、加減はせん」
さらっと恐ろしい事を言ってる。ボオスの想像してたミンチ姿がチラついてくるわね。
「私はしっかり戦わせてもらうぞ。他の3人に比べて力不足だからな、それで丁度いいだろう」
「僕は……今回は肉弾戦じゃなくて錬丹術をメインに戦わせてもらうから、最初はちょっと慣れないかもね。初見でどう判断するか、即断即決で動いてもらうよ」
エグい……こういうのキロさんが何て言ってたっけ? 無理ゲー?
過去一困難な戦闘だね。死ぬ心配がないのがせめてもの救いだ。
さて。
「どうするよ? 真っ向勝負じゃアンペルさん以外に勝てる気がしねえ」
「キロさんの魔法が単体に限定されるなら、全体攻撃は私達だけ……かな?」
「ううん。アルさんの錬金術……錬丹術があるから、キロさんの単発連射と先生の範囲魔法、それとアルさんの遠隔錬成は飛んでくるよ。こっちと変わんないどころかもっと手数が多そうだ」
「加えてアンペルさんが何のアイテム入れてるか分かんないしねぇ……4対4じゃ勝ち目無いし、1対多の状況にも持ち込ませてもらえない。まだタイマンに持ち込む方がマシかな」
勝つ事は……まあ無理だろうなあ。だから出来る限り善戦する事が目標だね。
一つ手を打てるとしたら――虚を突く事。そのための準備はしてきた。
ただ事前の練習は勿論ない。ここで話をする一発勝負になる、か。
「私のフェアリーズギフトは……掛けられて1人までだね」
「後はあたしの羽衣で全員に防御バフ。ギフトをかけてもらうのはレントかな。せっかく火力を上げてもらっても、あたしやタオじゃ活かしきれないし」
この神秘の羽衣には、アンペルさんからもらったエルドロコードを突っ込んだ。
おかげさまで全属性に耐性を得られる優れもの。今日のために準備したんだから頼むわよ。
「分かった。俺も初手はウォーシャウトだな……で、誰を足止めすりゃいいんだ?」
「まあ……リラさん一択よね」
「タンク役のレントしか時間を稼げないよね。動きも一番よく知っているだろうし」
レント以外のあたしたちがリラさんの一発を受けたら終わりが確定。
リラさんが優先して狙うのは――無条件なら多分回復持ちのあたしかクラウディア。
それを何とか妨害してもらう。
「分かった。俺の役割は決まりだな」
「私は……アンペルさんを見つつ全体を牽制、かな? アルさんの遠隔錬成が怖いけど」
「かなり難しい立ち回りになるけど大丈夫?」
「やってみる、としか言えないかな。凍麗の舞を放ち続けるくらいになりそうだね」
「と、なると……僕もおんなじような役割だったりする?」
「そうだね。特にタオはデバフ持ちだから、早いうちにみんなに攻撃を当ててもらいたいけど……理想論ね。初手かな? その後の相手はキロさんだから」
「ひうっ……」
タオの気持ちはと~ってもよく分かる。
一撃必殺クラスの攻撃を連射してくるキロさん相手なんて、本当なら永遠に勘弁願いたい。
でも、移動速度に劣るクラウディアじゃキロさんと対峙するのは激ムズ。
それに、あたしにはあたしの役目があるしね。
「あたしがアルさんの相手をする。アルさんに出来ない事があるのか正直想像出来ないけど……手数だけならあたしは比較的多い部類だしね。一応だけど訓練で戦った事もあるし」
冒険前の訓練での話だけどね! 二カ月以上前の話だ。
あの時は手加減なんてもんじゃない。遊びですらないレベルだったんだろうなあ。
今回も手加減はしてもらえるだろうけど、ある程度は実戦的。
しかも直接攻撃じゃなくて錬成メイン。というと、岩の拳が飛んでくるのかあ……。
「大丈夫?」
「正直大丈夫じゃないなあ……でもやらなきゃだし。あ、それと」
おそらく現状、あたしだけが打てる唯一の手。
――大事なのはタイミングと、悟らせない事。
「……おい、これ」
「そ。お馴染みでしょ? それと、こっちも」
「僕らが?」
「上手くいくかな?」
「やらないよりはやった方がまだマシかなって」
必勝法なんてない。出来る限りの事をするだけ。
……女王と戦うよりも緊張してるんじゃないのかな?
「準備は出来たか?」
「戦闘前に回復するね。フェアじゃないから」
リラさんが仁王立ちしてる。どこからでも来いって感じね。
キロさんはわりと律儀らしい。
では!
「はい!「「「よろしくお願いします!!」」」」
「いい覚悟」
「頼もしい限りだ」
「それじゃあ……始めようか!」
アルさんが右手にコインを持ってる。
キィン!
あれが落ちたら。
チャリン!
開始だ!
「フェアリーズギフト!」
「ウォーシャウトォォッ!!」
「神秘の羽衣!」
「
「新技だぁ!」
バフは良し! タオはハンマーブーメランかい! それと今は戦闘中だよクラウディア!
あっちは?
「Intendo. さてまずは」
「なかなか器用だな、返すぞ。一点狙いだな」
「あの布がこう化けたか。ではこっちはいやらしく挑むとしよう。そぉら」
「まあハンマーならいいかな……」
ガキッ!
ブンッ!
キロさんが何か詠唱。内容? 知るかい!
リラさんはハンマーを軽々と弾き返して……あたしに突進――こわっ!
威圧感が最初の斥候の時の比じゃないよね!?
アンペルさんのは……。
「毒!?」
紫色――明らかにヤバい何かが飛んでくる! こっちもあたしかい!
「させねえ!」
「しっかり防げよ?」
バシッ!
レントが毒ビンを弾きつつあたしとリラさんの間に割って入って。
ゴォン!!
甲虫が体当たりした時よりひどい音が剣から鳴り響く。
「うおっ……!」
「足元注意だよ」
「ついでに空もね。Impetus.」
バチバチバチッ!
ゴウッ!
いきなり地面が盛り上がる……アルさんの錬成!
さらに上から突風が近付いてんのかしらねえ! 見えないけど! というか全部あたし!?
「横に飛ぶわよ!!」
レントはリラさんの、あたしはアルさんの方向へ。
さっきまで居た所の地面が盛り上がって空からの風と衝突し、ガレキが周辺に飛び散る。
ホントに殺す気ないんですよね……?
でも、これで
さあ、後はやれる事をやるだけだ。
「僕の相手はライザなのかな?」
「相手って言ってもらえるレベルか分かんないですけどね! シエルライト!」
とにかく攻め続けるしかない。
なにせあっちは高速かつ多彩な全体攻撃持ち、加えて威力が半端ない。
あたしが
既にクラウディアは凍麗の舞でアンペルさんを牽制。自陣で現状最強クラスの範囲魔法だ。
レントはリラさんと演舞状態。互いが互いの動きを知ってるからこそかな。
タオは、キロさんの炎弾から逃げ回ってる……頑張れタオ。
「行きます!
「壁って便利なんだよ!」
パンッ!
バチバチバチバチバチバチバチッ!!
カカカカカッ!
プラジグの電撃を土壁で防ぎつつ、足元に何か……五本の釘。
遠隔錬成陣!?
ボッ!
「ふおっ!?」
土で出来たパンチがあたしの脇腹を掠めて飛んでいく。あっぶな!
壁で身を固めながら遠距離攻撃とか酷くない? 釘投げんの早すぎだし足も器用過ぎ!
だったらこっちは上から行きますよ!
「誘引火瓶!」
これは上から炎が降ってくる。あたしもわりかし酷いわよね……。
ピシッ
……っ!? 土壁にヒビが!
バカンッ!
パンッ!
――手合わせの音。
「せえのっ!」
アルさんが殴りつけた壁の破片が……。
バチッ! バチッ! バチッ! バチッ! バチッ! バチッ! バチッ!
「うっそ!? しかも何発も!? うおわっ」
「わがアームストロング家に代々伝わりし芸術的錬金法……」
「合っているけどこっちの解説をしなくていいよ! ちゃんと戦って!」
「燃え上がれ! 黄昏の炎!」
ボウッ!
「あらら。お返しだよ、Uri.」
ドウッ!
「ほっ! うおああぁぁっ!!」
なぜか遠くのキロさんの解説が差し込まれた。余裕あるなあ。
案の定、マッチョの少佐さんの技らしい。すっごいイメージに合う!
タオはなかなかに善戦してるみたいだね。やっぱり戦闘時はちょっと性格変わるらしい。
「同じ技じゃ芸が無いね……次は見えないよ?」
パンッ! ――カシャン
「げっ!」
よりにもよって、大佐の炎!?
ちょいちょいちょいちょい!
シュボッ……ゴウッ! ドォン! ボンッ!
「ひっ!? ふおっ!?? うわっちっちっちっ!!!」
飛び退いた足元から火柱が上がる――食らったら死んでるって! 連射はもっと無しですって!
マトモに当たんなくたって服燃えたら本番はともかくこの場じゃさすがに戦闘止めますよ!?
嫁入り前の小娘をなんだと思ってるんですか!? 場合によっちゃ引き取ってくださいよ!
逃げてばっかいられない――ええい!
「飛んでけジャベリン!」
キィィィィィィィィン! ブォン! ブォン! ブォン!
「おっと」
シーカーになったおかげで本数がはるかに増えたジャベリンだけど。
アルさんなら……案の定ジャベリンの間を抜けてくるよね!
それで……よし!
「プラジグ!」
すぐに壁は張れないはず。当たれば御の字。動きを止めろ!
「コレ、お借りするよ」
「んな!?」
ジャベリンを避雷針代わりに!?
魔法の槍にそんな効果があるの? というか飛んでる槍を捕まえないでください!
でも、いい!
「シャイニートレイル!!」
前より雨の量は多いけど――また雨の中を抜けられっ!?
「ライザ! 後ろに飛んで!!」
クラウディア!? とにかく飛ぶっ!
バキバキバキッ!!
「ふむ、避けられてしまったな」
「ライザは傷つけさせません! せいっ!」
「うおっ!? 相変わらずそれは投げる物なのかね!?」
アンペルさんの
……あれ?
「他所に気を向けるのは一瞬にしようね? 皆にもパンチのお届け物と行こうか。クラウディアはまだ未学習らしいし、ね!」
バチッ! バチッ! バチッ! バチッ! バチッ!
……いつの間にか檻の中に閉じ込められてるんですけど~?
汎用性あり過ぎじゃない? 加えて拡散性の狙撃とか。
あとちょっと私怨混じってますよね? ってみんなに警告しないと!
「岩パンチが行ったわよ!」
「なっ……ぐっ、げっほ!」
「目だけでなく音を聞き空気を感じろ!」
「レント! こんのお!」
「上手く砕くものだね。でもそっちに意識が向きすぎだよ、Gelida.」
「ふわっ!? ビックリした……その氷、頂きます! タオ君は私のそばに!」
「他人の魔法を乗っ取ると来たかね! ではこれはどうだね、シャインレーザー!」
「大蛇の牙! 先生の魔法は知っているんですよ!」
「知っていても避けられなければ同じだろう? アクセスシフト!」
「偶には私も肉弾戦で挑もうか。ふんっ!」
あああ、みんな戦ってるのにあたしは何やってんだ!
でも今の手持ちにフラム系統はない……あたしに向かってトレイル使えばワンチャン?
「ぐっああ゛あ゛!! ライザしゃがめ! ブラッドスラストォ!!」
ちょおい!?
ジャンピング土下座!!
ベキャッ!
頭の上をレントの剣が通過する――あんたもあたしを殺す気かい!
「余所見とは舐められたものだな!」
「トンデモねえっすよ! おらぁっ!」
サンキュレント!
頭と身体がお別れするとこだったけどね!
「皆なかなか粘るね。嬉しい限りだよ」
「鍛えてもらってますからね! ……とは言っても」
あたしたちと大人組にある大きな差の一つは、スタミナ。
アイテム込みでもレント以外はどうあがいても勝てない。
だから短期決戦しか勝ち目無いんだよねえ。
みんなもそろそろスタミナ切れのはず――合図を送りましょうか。
「躍動シロップ!」
「仕切り直しかな?」
仕切り直しというよりは、集中を高めるための切り替えですかね。
集合だ。
「これでアイテム4種、手の内は晒したな。それだけの数をコアクリスタルで扱えるだけでも大した物だが」
「私は2種が限界だったからな。さて、続きだ」
「とはいっても……あまり集まるのは得策じゃないかな? バフの掛け直しはありだけど」
「それでも――諦めているわけじゃないんだよね?」
「そうですね!」
キロさんの言う通り最初の羽衣のバフは切れて、今は躍動シロップ分のみ。
羽衣はコアチャージの消費デカいんだよなあ……。
でも、もちろんあきらめてないですよアルさん!
こっちが集まったという事は――そっちも集まってるって事ですから!
「ふん!」
アルさんたちに投げ付けて……。
ボフン!
「……煙幕か。悪くはないが目が見えない程度なら」
そう、目が見えないだけならこの人たちの場合はある程度対応してくる。
でも――耳もダメになったらどうですか、リラさん?
「「「「ピィン」」」」
「まさか」
製作者は気付きますよね!
「みんな耳を」
コンッ カツッ ボスッ カンッ
ッキィイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーン!!!!
「っあぐっ!?」
「ぐっ……これ、は」
「うあああああぁっ……ううぅん」
「ぐうっ」
お世話になってます音爆弾! 4人いるから4個分!
1個でもキツい音爆弾をこんだけ使えば流石に怯んでくれますよね!
特に、オーレン族のリラさんとキロさんには効果絶大のはずだ。
こっちは耳栓してあるんですよ!
でもって。
「みんな……せーのっ!」
「うりゃっ!」「おらっ!」「それっ!」「はあっ!」
別にコアクリスタルが無くったって――使い捨てなら問題なし!
ドッボウゥビュオォォシュウウゥゥゥゥッ!!!!
レントは
あたしは新作の
さすがにこれだけ受けたらちょっとは効いてるはず!
アルさんたちだから大丈夫だよね……?
煙幕と土煙が晴れて。
「――御見逸れしたよ」
バキャッ
いつの間にか作られていたらしい要塞からアルさんが出てきた――ノーダメくさい。
ええぇ……耳塞ぐの間に合った感じ?
「一応勝敗は付けないとね」
カカカカカッ
パンッ!
「っみんな散っ」
「遅いよ」
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!!
あたしたち全員を、周りの地面が壁のように取り囲んで。
――真っ暗になった。突然なもんだから……こうなる。
「うおっ、何だコレ! 中に何かあんのか!?」
「ちょっと! どこ触ってんのよ!」
ガッ!
見えなくてもコイツの頭の位置は長年の付き合いと勘で分かる。
「いってぇ!?」
「……このもじゃもじゃは?」
「ぼっ僕の頭だよ! 離れてクラウディア!」
「あっ、ごめんねタオ君。苦しかったね」
タオは純粋だし問題ない。むしろ受け側みたいだし。
レントは後できっちりシメる。
「Recuperet. あ~ひどい目に遭った。未だに頭がグワングワンしているよ……」
「下手な麻痺より遥かに酷いな、助かったぞキロ。お前達、いいものを見せてもらったぞ」
「まさかコアクリスタル外のアイテムを連打してくるとはな。固定観念に囚われていたようだ」
「見事だったよ、4人とも。まさかこんな形で効果を実証されるとは思わなかったけど」
バリンッ! と壁に穴が空いて、光が入る。
残念だけど、夏の青空には程遠い……淀んだ赤紫色の空。
だけど待ってくれていた4人は――笑っていた。
あ~負けたか。
「どうでした?」
「どうもなにも、アルが居なければこちらは全滅だ。まさかあんな隠し玉を持っているとは思わなかった。私も修練が足りんな……お前達の事を何一つ言えん」
「私達の場合は特に耳が長所な分、さっきの音はヒドイよ……アルも何て物作ったの? オーレン族を手籠めにする為?」
「作ったのはリラさんに会う前だし? それにクーケン島の護り手なら皆持っているよ」
「途端にあの島が恐ろしくなってきた……」
「アイテムを使い捨てにしてしまえば、コアチャージの残量も
大人組としても実りのある戦闘だったらしい。
とりあえずは。
「お前達の成長が嬉しい。これならば蝕みの女王と対峙しても心配ないだろう――よろしく頼む」
「私達の因縁の決着は、ライザ達にお願いするね」
乗り切ったぁ~~。
以上、子供組の成長記録でした。
せっかくなのでシステム外要素盛りだくさんです。
本当は錬丹術なら手合わせ不要だと思いますが、なんとなく付けています。
手加減ありとはいえ、ライザ達もこのくらい強くなりました……二カ月で。
ひと夏の成長とはこの事です。
次は訓練の振り返りから。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。