ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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遂に女王との決戦に向けて。まずはライザ達の視点からです。

今回もよろしくお願いします。



90. 84日目②  蹂躙された大地を進んで

「ホント、あの時のまんまね」

 

「そういう風にしてもらったんだからな。つっても外はフィルフサだらけなんだ、油断すんなよ」

 

「えっと、キロさんの拠点はこの坂を下って……」

 

「あっちの……川だったところの奥だね。焚き木がここからでも見えるよ」

 

周りが汚染されてるとは思えない、切り取ったように浄化されたエリア。

本当はこういう光景がどこにでも広がってるはずなのよね。

それが変わっちゃってるのは……今もおかしな事になってる空の色が示してる。

 

あとは水、か。

 

フィルフサはいないから道なりに行く必要もない。そのままショートカットでいいわね。

あの時アルさんが作った鎧だけは残ってるね。汚染と見なされなかったからかな?

 

岩……岩……ああ、これか。

 

「これ……キロさんが運んだのか? アルさんじゃねえよな?」

 

アルさんなら錬成で済んじゃうもんね、という事はキロさんも結構な馬鹿力?

割と大きいわね……まあフィルフサが来ないようにするためだし当然なんだけど。

さ、アンペルさんお手製のフラムロッドの出番だね。

 

「クラウディア。言ってた策ってどんなの?」

 

「新しくしてもらったフルートなら旋律をかなり遠くまで届けられるから……それで完全に氷漬けにするか、最低でも動きを鈍らせるようにするつもりだよ」

 

「この前のキロさんの大魔法みたいだね……」

 

「参考にさせてもらったよ? とは言っても私の場合は一気に、っていうのは難しいけれど」

 

先日のボトルの中の……久遠の氷縛? あれって参考に出来るもんなの?

 

現状あたしのシーカーを除いて、ゴルドテリオン製なのはクラウディアのフルートだけ。

かつ全体に干渉可能で、氷属性ならあたしのアイテムも併用できる。

凍り付いたやつなら粉砕出来るかもしれないか。

 

「わかった。クラウディアの魔法の後にあたしのアイテムで全域に攻撃。残った敵を各個撃破――それでいい?」

 

みんな頷く。

レントでもタオでも時間かかっちゃうしね。

申し訳なさもあるけど、ここはクラウディアに期待だ。

 

さあ、それでは。

 

「んじゃ、行くわよ? せーのっ! 吹っ飛べ!」

 

 

ブォン!

 

ドォオオン!

 

 

……これ、威力ヤバくない?

この威力を無制限に使えるような道具は正直ヤバい気がする。

採掘道具としては優秀と言えるけど、普段使いは考えものだね。

 

「木っ端みじんだな。んじゃ、念の為にまずは俺が見てくる。ここで待っててくれ」

 

綺麗サッパリ。さすがの品質だ。

 

ここからは未知の領域。斥候は何が相手でも戦えるレントが買ってくれた。一番安心できるしね。

ただ……1分ぐらいした後に戻ってきたレントの顔はげっそりしてた。

 

「どうだったの?」

 

「……文字通りウジャウジャってやつだな。俺やタオじゃやってらんねえな。デケえのだけでもざっと50はいる」

 

50、かぁ。

各個撃破で退治は出来るだろうけど、時間も体力も使っちゃう。

そんなに上手く一体ずつ相手なんてのもあり得ない。どっかで一回バレたら一気に攻められる。

到着までの残り時間はあと50分くらい。時間はかけたくないんだよね。

 

と、なると。

 

「クラウディア――いける?」

 

「うん、任せて! 元々そのつもりだったから」

 

今の話を聞いても物怖じしないこの子は何なんだろうか?

まあお任せしよう。本人もやる気満々だし。

 

 

 

鎧の場所を後にしてみんなで揃って穴をくぐる。

そこに広がっていたのは……。

 

「うーわ」

 

「どうだ? 言った通りだったろ?」

 

「虫の群れみたいに見えるよ……気持ち悪い」

 

「これは……確かに各個撃破は時間がかかっちゃいそうだね」

 

全部合わせたら数十倍ってもんじゃないんじゃない、コレ?

 

見える景色を埋めつくさん限りのフィルフサフィルフサフィルフサ。

 

よくもまあここまで集まってきたもんだ。

キロさんの予想通り、一部のフィルフサはもはや踏み台と化していて……そこからさらに壁を越えようとしてるフィルフサもそれなりにいる。

そんな光景を目にしてるはずなのに、クラウディアは全然怯んでない。むしろ。

 

「演奏しがいがありそうだよ」

 

ニコッと笑った――氷の女王の微笑みだ。いつからこうなっちゃったかな……。

 

「どうするつもりなの?」

 

「いつも通り、旋律に思いっきり魔法を乗せて冷気を振りまくよ。でも今日は最終楽章だね」

 

なかなかぶっ飛んだ事を言ってる自覚はあるのかな?

 

「……アルさんの覚悟を私にも。みんなと一緒にいる為に」

 

一切の躊躇なく、敵陣の前に立つ。

大丈夫なんだろうけど……いや、クラウディアの心配じゃない。

蹂躙されるだろう聖域の事ね?

 

「私に力を――光よ、満ち溢れて」

 

クラウディアの身体から魔力と冷気が立ち上る。今まで感じた事が無い圧。

 

「全身全霊を込めた一曲を」

 

あたしの使う魔力弾、それの高密度版と言えそうな氷の渦がクラウディアの手の中に納まってる。

そして、それを。

 

「ここが私の初ステージ。奏でるのは――あなたたちへのフィナーレ!」

 

空に向けて解放した。

解放したのはいい。それはまあ、おかしくもなんともない。

 

だけどさあ。

 

 

カッ!!!

 

 

「ええぇ……」

 

「氷の、デケえ鳥!?」

 

「本で読んだ事がある! 炎の不死鳥ってやつにそっくりだよ!」

 

もう単なる演奏の魔法じゃない――召喚魔法と化してるよ!

目に見えて五線譜が飛び交ってるけどさ!

 

 

ヒィーーーーーーン!!

 

ビュウォォォォオオオオオオオオオオオ!!!

ピキミシペキパキパキパキ…………

 

 

鳥がフィルフサの上空を飛び回り、その端からどんどん凍り付いていく。

世界が青白色に染まっていく。

 

「私たちの邪魔はさせない! これで!」

 

動く物も居なくなる。

ついでに樹とかも凍ってる……後処理がヤバそう。

 

終幕(フィナーレ)だよ!」

 

 

キィェエァアアアアアア!!!

 

 

って鳥の鳴き声と共に――なんか宇宙(銀河)が見えた。

 

そして完全に。

 

「……うわぁ。氷室の拡張版ね」

 

「クラウディアはぜってえ怒らせちゃなんねえな」

 

「下手すると湖ごと凍り付きそうだね」

 

あたしたちの評価はなかなかにヒドイ。

いやだって……参考にしたとは聞いてたけど、キロさんの大魔法並みだよコレ?

まさか仲間の中にこんな逸材がいたとは。

 

「ふぅ……ご清聴、ありがとうございました!」

 

「聞く前に凍り付いていそうだし、クラウディア吹いてたっけ?」

 

たしかにフルートに口を当ててない、タオの疑問はもっともね――気にしちゃいけない。

これを湖にぶっ放したら島と対岸を氷で繋げられるんじゃないかな。

 

でもって、これが。

 

「クラウディアの……フェイタルドライブ?」

 

「うん。締めの一曲、「ソング・オブ・フィナーレ」。ぶっつけ本番だったけど……なんだか鳥さんが出て来てたね?」

 

「気にするとこはそこなんだな?」

 

さっきまで一面フィルフサの群れ群れ群れだったけど、見渡す限り白銀の大地と化してる。

なんじゃこりゃあ状態だ。下手すりゃ大侵攻そのものすら足止めできるんじゃない? 単騎で。

 

 

 

凍り付いたエリアに降りてみた、けど。

 

「……さ、寒っ!」

 

「俺たち完全に夏服だからな……腹冷やすなよ」

 

「冬でもこんな景色見た事ないけどね。北国の冬ってこんな感じなのかな」

 

「や、やりすぎちゃったの、かなぁ……」

 

いけない! 率直な感想がクラウディアへの精神ダメージになりそう!

 

「え!? あぁうん、そんな事ないよ! こんくらいやんなきゃ止まんないって! ねえレント?」

 

「あ!? お、おう! さすがだぜクラウディア!」

 

「そう? よかったあ……」

 

「虫っていうんだったら……これは冬眠してるような状態なのかなあ」

 

とりあえずクラウディアへのフォローは良し! あたしたちが士気下げてどうすんのよ。

タオの言葉は忠告になりそうだ。溶けたら動き出すんじゃあ堪ったもんじゃない。

 

と、なると……粉砕するのが早いか。コレを使いましょうかねえ。

 

「この氷像を砕いちゃえばいいのよね?」

 

「だけどよ、すげえ数だぞ? 時間内に間に合うか?」

 

「道中の氷像だけ壊していくのが無難なのかな」

 

「どのくらい凍ったままで居てくれるかなあ?」

 

「砕くだけなら……多分これでいけるから大丈夫」

 

元々生きてるフィルフサを吹っ飛ばす用だったけど――こんな使い方になるとは。

芯まで凍っちゃった樹木は一緒に砕けちゃうかな。後でキロさん達に謝っとこう。

 

「みんな下がっててね……全部まとめて吹っ飛ばす! 大嵐の旗印、バニッシジーゲル!」

 

最初作った時はなんだこれ? 状態だったこの不思議な模様のタペストリー。

キロさん曰く、風属性の魔法陣に似ているらしい。

 

そんな魔法に近い代物のせいなのかな――その効果はとんでもないようで。

 

「これ……さっきよりヤバくねえか?」

 

「大惨事だね」

 

「凍っているから何が起きてるか分からなさそうなのが救いかな?」

 

「あはは……」

 

 

グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ゴォオオオオオオオオオオッ!

バキン!ベキッ!バキバキ!ボキャッ!

 

 

早い話――竜巻が召喚されちゃった。さすがにテストしておくべきだった。

氷像と化したフィルフサだけじゃなく、予想通り樹木も粉砕しながら氷の竜巻が立ち昇っていく。

 

竜巻なんて、本物は見た事ないけど実際にこんな感じなのかな。

地震もそうだけど自然ってすごい――これも封印ものだ。

 

そのまま竜巻は地上を離れて、赤紫色の空へと消えてった。

後に残ったのは。

 

「どうするのさこれ」

 

もうなんか無茶苦茶になった――おそらくキロさんたちの集落()()()土地。

凍り付いた地面が削り取られ、樹木も半分以上が根元付近からへし折られて飛んでった。

フィルフサは綺麗サッパリ消え去ったけど、それ以外も色々と吹っ飛んだ。

 

氷も大半が吹き飛んだから寒くはなくなった……それはいい。そこは重要じゃないね。

 

ハッキリ言おう。

 

「ヤッバイ……」

 

「手遅れだな。戻ったらリラさんたちに土下座考えとけよ?」

 

「ごめんねライザ。私がもっと加減出来ていれば少しは地表が残ったのに……」

 

なんかクラウディアのフォローが変な方向に向いてる気がする。

これはもうそういう問題じゃない。地面を直すアイテムって作れるのかなあ……。

 

「とりあえず今は良しとしてよ、道は開けたんだし。キロさんたちに謝るのは……考えとくよ」

 

「まぁたアルさん依頼コースか。ま、道が出来たのは事実だな」

 

「ライザも農家の娘なんだから、自分で開墾するなりしたらいいんじゃない?」

 

「私も後で一緒に謝るよ。そもそもの原因は私なんだから」

 

クラウディアありがとう。あたしの心のオアシスはあなただけだよ。

たしかに「お願いアルさん」コースが一番確実だけど、またアルさん頼みなのもなあ。

そしてタオ……あんたあたしをこっちに何年置いておくつもりなのよ?

 

さあてと、土下座は考えておくとして。

 

「タオ。残り何分?」

 

「え~っとね……28分かな」

 

ゴールまでどのくらいの距離か分かんないし、先に進まないと。

 

「ライザがあらかたふっ飛ばしちまったけど……太陽の方向ってえと」

 

「あっちだね……あれが、聞いていた塔?」

 

「祭壇って聞いていたけど、聖塔とは全然違うんだね。屋根のない聖殿みたいな」

 

森が消し飛んじゃったせいで、向こう側にある遺跡がはっきりと見える。

黒い太陽の方向には長い階段が続いていて大きなシンボルになってるね。

 

この角度じゃ頂上は目視出来ないけど――明らかに異質なナニカがいる。

間違いなく。

 

「……いこっか。時間までに準備しなきゃ」

 

「だな、こっからは任せろ。二人には働いてもらったからな、露払いはこっちでする」

 

「うん、たまには僕も前に出なきゃね。レント、索敵は僕がやるよ」

 

「ありがとう、二人とも。ライザ、お言葉に甘えよっか」

 

「わかった。よろしくね」

 

 

 

 

 

 

先に進むほど塔に似たような人工物が増えてくる。

あっちの入り江みたいな遺跡って感じだけど、こっちには何一つ機能してそうなものがない。

 

だって。

 

「……うし! これで最後だな」

 

大型のフィルフサに、そこら中を蹂躙されていたから。

――大侵攻が起こったら島の対岸もこうなるわけか。

 

「お疲れレント。あっち側は……いなさそうだね」

 

「これで女王との戦闘中に横やりを入れられる事はなさそうかな?」

 

「ボトルの中の訓練がなかったら絶対に間に合ってなかったよ。あと10分もないや」

 

下準備のための殲滅。

思う事がないわけじゃないけど、こっちもタダで負けるわけにはいかない。

 

実に濃い濃い訓練の日々と真に武器となった杖は、一か月前には目にしただけで腰を抜かしてた相手を一撃で屠るまでにあたしを押し上げた。

当時のあたしが今のあたしを見たらどう思うんでしょうね?

 

「じゃ、塔を上りがてら最後の確認をしときましょうか」

 

「俺が前衛でディフェンダー、タオとクラウディアが後衛でアタッカー、ライザが遊撃でサポーターだな」

 

「私はレント君とライザの強化が初手だね」

 

「僕は女王の弱体化狙い……効いてくれるといいんだけど」

 

「安心しなさいな、タオは強いんだから。あたしもみんなを強化した後はアタッカー寄りの回復役。レントは我慢しちゃダメだからね?」

 

「わかってる。そんな慢心できるほど丈夫じゃねえのはよく知ってらあ。お前らも遠慮はすんなよ? いざって時はまず俺を盾にしろ」

 

正直こんな手段は取りたくないけど、レントを除いたあたしたち3人は防御が貧弱極まりない。

特に魔法が主体のタオとクラウディアは機動力不足。何かあっても避けられない可能性大。

 

なら……避ける事を最初から捨てて、レントを盾に防ぎつつ絶え間なく攻撃する。

あたしはレントの体力管理を最優先。必要に応じてヘイトをとる。

 

でもって。

 

「翅を広げたらこの階段に向かって全力退避。まずは全員で防御か回避の準備をする、と」

 

「陣形を崩さねえのが大前提だが……間違っても階段の反対方向で戦わないようにしなくちゃな」

 

どんな攻撃かわからないけど、吹っ飛ばされて塔の下に落下なんて笑えない。

せめてこの階段から転げ落ちる程度にはしたいなあ。

 

「攻撃が予想通りスペシャルアタックだったら、防いだ後はレント君もアタッカーになって」

 

「全力で、短時間で削りきる……うわぁ緊張してきた」

 

「できる限り二発目は避けたいから振り絞るよ。もう一発来そうだったら……レントはよろしく」

 

「おうよ」

 

あの影と同じ大きさだったとして、あんなバカでかいサイズのフィルフサのスペシャルアタックを何度も受けるなんて現実的じゃない。

倒しきれたらそれでよし。二発目が来るようなら、あたしとレントでヘイトをとる。

 

なんにせよ消耗戦は不利ってのがあたしの見込みだ。

二発目までで倒せなかったら……悔しいけど退却ね。それ以上はケガじゃすまない。

島が沈むよりも先にあたしたちだけ最悪のシナリオを迎える事になる。

 

ああ……もうこの先がてっぺんかあ。

 

「タオ」

 

「あと1分25秒」

 

「ちょうどいい感じだな」

 

「アルさんたちもたどり着けているよね?」

 

「心配無用よクラウディア。アルさんたちだよ?」

 

オーレン族の戦士二人に、国が誇った錬金術士、とどめは異世界の英雄だもん。

負けるわけがない……むしろボトルの世界ふっ飛ばさない?

 

「あと15秒! いよいよだよ」

 

「頼もしくなったわねタオ。でも忘れちゃダメだよ――生き残る事が最優先だからね!」

 

「俺としちゃライザの変貌にびっくりだぜ」

 

「レント君は平常運転だね!」

 

なんか緊張感がないなあ。まあそれはそれとして。

 

「じゃあ、いこっか!」




鳥のオノマトペが無理ゲーです。
無印ライザの中ではクラウディアのフェイタルドライブが一番特殊な気がします。

アトリエシリーズ未プレイの方へ。
今更ですが、無印ライザでは全ての敵が「スペシャルアタック」という攻撃を所持しており、
ライフが半分を切ったあたりで1ターンを使用して強力な攻撃を飛ばしてくるようになります。
本作では古城の竜がアル戦闘参加寸前にモーションを取ったやつです。

次は……この辺では不要ですね。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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