ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
今回もよろしくお願いします。
「よくも」
自分でも感情豊かな方だとは思ってる。
我慢するって性に合わない。
「よくも」
本気で喜び、本気で怒り、本気で哀しみ、本気で楽しむ。
人間ってそんなものだと思ってる。
「よくも」
でもあたしは――多分。
「よくも」
本気でキレた事は、一度もない。
「よくもよくもよくもよくもよくもっ!! やってくれたわねえっ!!!」
――もうどうだっていい。
ギイィイイイイィィィィィィオッ!!!
鎌が飛んでくる――撫で斬り。
何もしなければこのまま両断されるだろう。
何もしなければ。
ギィン!!
ギッ!?
どっかで見た事の猿真似。魔法陣を使った防御結界。
使い方なんざ知らない。こんなもの適当でいい。使い物になるのなら。
「
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!
ドォン! ボォン! ドォウン!
ボコボコボコボコボコボコ…………
星の力を結晶化したもんなんだろうナニカ。
試し打ちなんてしてない。周囲が大変な事になると思ってたし。
なんでもいい。アレを消す方が大事。
塔の頂上に地鳴りが発生し、アレの足元が火山の中身と化す。
グゥオオオオオオオゥッ!!?
アレにとっても痛いらしい。ついでに融解した地面に脚部が拘束された。
――都合がいい。
今はとっても頭が回る。
いつもの魔法じゃアレをすぐには倒せない。
魔力砲を何発か打ち込めばいいけど、そんなに時間をかけてらんない。
ただでさえ目障りなんだから……一秒でも早く消す。
そんな面倒な事はしない――手段が無いなら作ればいい。
ベースは、強力なフェイタルドライブであるらしい隕石召喚。
あたしに召喚魔法は使えない――そもそも知識がない。
でも、あの人がどんな感じで使ってるかは大体分かる。
あたしに錬成陣は使えない――そもそも才能がない。
でも、あの人がどんな錬成陣を描いてきたかは大体分かる。
なら、魔法陣もどきで錬成陣もどきを描いて、隕石もどきを作ってしまえばいい。
あたしは錬金術師でも精霊術士でもないけど――錬金術士なんだから。
ああ……コイツ水が嫌いなんだっけ? 意味不明だよ。存分にくれてやろう。
この際だ、しっかりと水のありがたみを知りなさい。
「今日の天気は」
アレの頭上。上空に魔法で光り輝く錬成陣のようなものを描く。
最初から隕石を錬成する為の錬成陣は分からない。なら試しながらやるだけだ。
だから、分かる物から作っていく。
「雨」
最初に降ってきたのは特性なんて持たないゴミの雨。
魔法の効果も、アイテムとしての効果もない。でも塵も積もれば山。
雨を降らせるのは難しいらしい。
ギッ!?
なんか喚いてる。五月蠅いな。
あぁ、何となく分かってきた。
「のち」
次はアイテム類。
今まで作った攻撃アイテムだの、インゴットだの、武器だの。
水も流れてきた。こうすれば作れるのか。
成程、錬成の便利さがよく分かる。魔力を素材に出来るなら。
効果はともかく、形作る事が自分の魔力だけで可能なら調合も何もない。
ただ作りたいと思えばいい。魔力を作りたいモノの形に固めるだけだ。
ガッ! ギッ! グウォオウ!?
隕石は……古城のやつがそうだっけ。
巨大な火の玉が空の果てから超高速で降ってくる。
実際にどんなのか見た事ないけど、聞いた限り町一つ簡単に消し飛ばせるらしい。
別に原理は複雑なものじゃない。むしろシンプルだ。
要は――デカい岩よね。
「隕石」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!
赤紫色の空に描かれた、魔法で描いた錬成陣もどきは変異を繰り返し。
陣いっぱいの大きさがある、ゴツゴツした巨岩を召喚する。
シーカーは賢い。隕石らしく真っ赤に赤熱しておいてくれたみたいだ。
オマケに、アレの周りに結界を張ってくれたらしい。
これで周囲を巻き込む心配はない。威力を体験するのはお前だけだ。
グウォオオォッ!
アレも本能で分かるのかな――頭上のモノが落ちてきたら最期だって。
だから藻掻いてるみたいだけど、脚は溶けた床で根元まで埋まってる。
加えて拘束結界。動けるものなら動いてみなよ。耳障りな音はもうこっちに届いてないから。
弓に引き絞られた矢のように、小刻みに振動する大岩。
シーカーの先端をソレに向けて――アレに向かって振り下ろす。
「
……ッ
なんか喋ったんだろう気もするけど、どうでもいい。
超高速で打ち出された隕石のように赤熱した大岩が、アレの頭上から真下に向かって塔を砕きながら突き進む。
その過程で色々な音が聞こえた……気がした。結界の中は喧しい事この上ないんだろう。
最後に岩が爆発して、猛烈な振動の後に上空から爆音が響き爆風と黒煙が結界内に立ち上った。
この勢いだと空高く、積乱雲みたいになりそうだ。
あぁおしまいだ。やっと視界から消えてくれた。
これで落ち着ける…………ふぅ。
という事で、決着です。大変短い話になりました。
絶大な才能をとある方向にガン振りするとこうなるんだろうなあと。
次はこの直後からです。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。