デリ○ル呼んだら先生が来た   作:海之

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強盗したらファンができた。

「申し訳ありませんが、ご融資はできかねます」

 

無情な言葉がアルの脳に響いた。依頼達成のために融資を受けにきたものの、けんもほろろに断られてしまったのだ。

 

散々待たされた挙句にこれでは、と鬱憤晴らしに強盗でもしてやろうかと思いはしても、ガードを気にして実行には移せないでいる。

 

アウトローとしてあまりにも情けない姿だとアルは心で泣いた。

 

そうして、すごすごと退散しようとした瞬間だった。

 

けたたましい銃声が銀行に響き渡る。

 

見れば覆面の集団が今まさに押し入ろうとしていた。

 

警備を制圧し、行員と客を瞬く間に掌握したかと思えば、次の瞬間には鞄をブツで満して逃走していく。

 

まさに疾風迅雷、電光石火の所業。

白昼堂々の大胆かつ効率的な仕事ぶりを目の当たりにしたアルは、慌ただしくマーケットガードを要請する行員達を尻目に思った。

 

なんて…なんてアウトローなの。

 

否、感銘を受けた。

これこそアウトロー。

あの日憧れた姿が目の前にあった。

 

ふと気付くと、警備員の一人が走り去る背中を狙っている。

 

いけない!

そう思った瞬間、カヨコのデモンズ・ロアも斯くやという轟音が鳴り響き、警備員が腕を押さえて蹲った。最後尾を走っていた仮面の人物が振り向きざまに発砲したのだ。

時代遅れのリボルバーによる目にも留まらぬ一撃は、正確に小銃を射貫いた。

相当のエネルギーを秘めた弾丸は当然反動として射撃手に返ってくるのだが、自然にリボルバーを仕舞うその所作に発砲の残滓は全く無い。

 

草臥れたトレンチコートに目深に被った中折れ帽とリボルバー。煙草でも咥えていればどこぞのガンマンの様な完璧な姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分前

 

銀行強盗というのは非常に手間のかかる犯罪だ。

まずは防犯カメラ、人員の配置、逃走経路、当日の動線、マーケットガードの到達予想時刻等々、およそ作戦の遂行に必要な全てを頭に叩き込む。十名にも満たない人員で、何倍もの人質と警備を掌握し続けること不可能だ。外部の人間の目もある。迅速にかつ大胆に、思い切りよく動かなければならないのだ。

 

しかし、作戦なんかよりも何よりも大事なことがある。

 

それは目的のブツの存在だ。

どんな強盗団も無いものは奪えない。

 

決行日に確実に目的の物(目録)があるという保証。これが何よりも大切だった。

 

その点今回は幸運だった。運び込まれる瞬間をこの目で確認しているのだから。 

 

後は作戦だ。急造の作戦では必ずボロが出る。ならば勢いで押し切るのが吉だろう。

 

 

 

 

「シロコ。銀行の大まかな図面はこんなもんで、ここ、この小さい部屋に警備員が詰めている。突入と同時に制圧する必要があるからホシノに頼みたい。制圧後俺と合流してくれ。また、カウンターには席の数と同じだけの通報スイッチが付いているから、カウンターの見張りは2人くらい必要になる。これはセリカとシロコ。客については俺とヒフミで牽制するとしよう。ノノミは全体を監視。アヤネは外部の動きを監視して欲しい。ちなみにカメラの配置を重ねるとこうだが、どれも半年以上前の情報だから過信はできない」

 

入手した図面を広げて作戦を伝えると先生がジト目でこちらを見つめてきた。

 

「随分手馴れてるね。それにこの図面何処から…」

「強盗はしたこと無いぞ。警備側をやったことがあるだけだ。後、少し古い図面ぐらいなら簡単に調達できる。ここはブラックマーケットだからな」

 

本当だ。疑いの目を向けるな。

ブラックマーケットにおいてあらゆる情報は取引対象になり得るのだ。今回の図面もその一つだ。あまり持ち合わせが無かったので古い情報になってしまったが、作戦会議に使用するには十分な代物だった。

数時間後には"例の銀行の図面を購入した人物"についての情報もまたブラックマーケットで出回るだろうが。

今回は口の堅い知り合いから変装した上で購入したので問題無いと思われるが。一応、後でナナシに探らせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、銀行強盗は成功した。

 

目録も無事、ガードも振り切れた。

 

のだが、些か成功し過ぎてしまったらしい。

 

バックいっぱいの現金の山。

使った所で罪には問われない(端から違法な金のため訴える訳にはいかない)だろうが、カイザーから足がつきそうで面倒な物品。

 

セリカはこれは返済に充てるべきと主張したが、ホシノはこんな方法に頼ったら何れ違法な手段を平気で取ってしまうと諫めた。

 

「銀行強盗しておいて今更だが、こういう事は避けるべきだ。いつか必ず、あの時やってしまった事に死ぬ程後悔する瞬間が来る。大人として生徒にそうなって欲しくは無い」

「もう、わかったわよ!」

 

セリカは未練が有りそうだったが現金については処分する事になった。

 

「何者かがそちらに接近しています」

 

アヤネの言葉にハッとする。が、どうやらマーケットガードの追っ手では無さそうだ。アヤネによるとどうやら便利屋が着いてきていたようだった。

 

マーケットガードすら振り切ったのに追跡できたのかよ。優秀な連中だな。

 

慌てて覆面をつけ直すと、アルが息を切らしながら現れた。

 

「ハァハァ、落ち着いて、私は敵じゃないから」

 

そう言って呼吸を整えるとアルは嬉しそうに再び口を開いた。

 

「銀行をものの5分で攻略して見事に撤収、稀に見るアウトローぶりだったわ。このご時世にあんな大胆なことができるなんて…私も頑張るわ!本当の意味で自由な魂!そんなアウトローになりたいから!」

 

一息に言い切ったアルに唖然としていると、組織名を訊かれた。困惑する我々を尻目にノノミが進み出て自信に満ちた声色で答えた。

 

「私たちは覆面水着団!」 

 

何だその名前は。

 

「超クール!カッコ良すぎるわ!」

 

それで良いのかアル。

あれよあれよと言う間に普段はアイドル活動をしているが夜になると覆面スク水で悪人を倒す怪盗と言う設定が生えていった。

なぜか感銘を受けるアルだったが、ふと目が合った。

 

「と言うことはその大人の人も夜は……」

「あぁ………えぇっ……とぉ…マネージャーです。服はいつもこれです」

「そして私はプロデューサー!」

 

先生、黙って。

 

そうしてワチャワチャしていると後ろの方で便利屋の面々が呆れているのが見えた。分かる、俺もそう思うもん。 

 

そろそろ帰ろうと思ったのか、アビドスの面々が共に適当なセリフを並べて走り去ったので慌てて追走した。

 

 

いろいろあったが、こうして我々は銀行強盗を済ませて無事に帰還したのだった。

 

 

 

 

 

 

その後、銀行から入手した資料を整理した所、どうやら全ての糸をカイザーが引いていたと言う事実が明らかになった。

 

金貸しがなぜ学校(債務者)を潰そうとするのか、やはり、想像通り(金ではない別の目的)だったのかもしれない。

 

その辺りをアヤネと調べてみようか。

 

 

 




後日

「あれ?そのコート捨てるの?」
「強盗で使ったもんだからな。量産の安物でルートは追えないがやはり証拠は消しておきたい」
「ねぇ…やっぱり銀行強盗を……」
「してねぇよ」
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