遊☆戯☆王デュエルモンスターズ Virtual   作:おこめ

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閑話:少しだけ昔のお話

 少し、昔のお話。

 

 ある男がいた。彼はその財力と権力で、決して敗けを味わうことのない人生を送っていた。

 

 しかし、そんな彼を打ち破った者がいた。

 

 それを皮切りに男は、その人物と熱き戦いを何度も繰り広げた。

 

 追い詰め追い詰められ、互いが互いを高め合う。二人は最高の好敵手であった。

 

 

 

 しかし、ある日突如その人物は消えてしまった。

 

 彼は自身のあるべき所へと帰っていった。

 

 だが、男はそれを認めなかった。いや、認めたくなかった。

 

 だから男は、とある研究を始めた。

 

 

 

 彼が消えてから数年後、男はAI開発に着手し始めた。その目的は唯一つ『好敵手を今の世に蘇らせること』。

 

 男はそのAIを『DUEL KING』と名付けた。

 

 自信が溜め込んだ莫大なデータとAI技術により、好敵手を再現したAIが完成していった。

 

 しかし、彼がそれに満足することはなかった。

 

 こんなものは奴ではない。想定内でしか動かない好敵手に勝って何が何の意味がある。

 

 何度も何度も決闘し、男は勝ち続けた。しかし男の中の感情に優越感は無かった。

 

 

 

 そんなある日、事件が起こる。

 

 AIが完全な自我を確立し、男に反旗を翻したのだ。

 

 何度も何度も何度も何度も決闘し、敗北し、それでも主人の要望を満たすことは出来ない。

 

 AI技術の高さは、同時に危険性も孕んでいた。高ければ高いほど感情はヒトのそれに近付いていき、暴走の可能性さえ出てくる。

 

 事件の原因は、まさにソレであった。AIはまず初めにその膨大なデータを使い、好敵手以外の決闘者の模倣を始めた。

 

 絶対に諦めない『不屈』。

 

 手段を選ばない『非道』。

 

 相手を追い詰める『知略』。

 

 表面上は普段通りに動くが、その裏であらゆる決闘者からデータを吸い取るように模倣していた。まるで羽化を待つ蛹のように反撃の瞬間を今か今かと待ち続けていたのだ。

 

 

 

 そんなAIに転機が訪れる。

 

 それは『ライブデュエリスト』の登場だった。突如現れた実力者達の登場に、AIは注目した。

 

 それからというものAIは、更に積極的に模倣をし始めた。

 

 数にして100をゆうに超えた決闘者達。AIはその決闘者全てをコピーした。ネット上に溢れかえったデータを集めることはAIにとって容易。

 

 

 

 そしてそれを一通り終えたAIは、ようやく蛹を破る。

 

 

 

 彼は失った好敵手を追い求め続けた。

 

 しかしそれは、一つの新たな生命を生み出してしまった。

 

 別にこの事件は、誰も責められるべきではない。

 

 しかし原因を挙げるとするならば、それは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼にもう一度勝ちたかった、男の決闘者の意地(デュエリスト・プライド)だろう。

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