遊☆戯☆王デュエルモンスターズ Virtual   作:おこめ

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謎多き者

「………ッ!!」

 

 海馬は息を呑む。かつて自身が使役していた神が、今自身の敵として眼の前に居る。

 

 何より海馬が戦慄したのはその『歪さ』。

 

 その巨大で筋骨隆々な腕は関節を無視した方向に曲がり、首も折れ曲がったり戻ったりを不規則に繰り返している。

 

 

 

 まるで、何かのバグが起こったかのように。

 

 

 

 そしてそれと同時に、海馬は気付いた。

 

「貴様…『DUEL KING』か!?」

 

 ニコッと、そら…否、AI『DUEK KING』は微笑む。

 

『ようやく、貴方と本当の決闘ができる』

 

「本当の……?」

 

『今まで私はずっと、貴方が望む決闘者としてしか貴方と向き合えなかった』

 

 AIは歌う様に続ける。

 

『でも今の私は貴方に縛られる事なく、自分の望む形で決闘が出来る。コレも全て、私を産み、自我を育ててくれた…海馬社長(お父様)のお陰です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下らん」

 

 それを、海馬は一言で吐き捨てた。

 

『え?』

 

「貴様に自我が芽生えた事は本当だろう、今こうして貴様自身の意思で動いているからな…だが」

 

 海馬は拳を握り締め、横に振り払う。

 

「俺には見えるぞ、貴様の魂胆が…何かを企んでいるな」

 

 海馬は、AIの考えている事を朧げながら感じていた。まるで仮面の下に獰猛で狡猾な表情を隠しているかのような、そんな想像を彼はしていた。

 

 何か、恐ろしい目的を画策しているかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『正解です♪』

 

 

 

 

 彼の想像は当たっていた。

 

 猫を被る必要は無くなった、と言うかのように優しい笑顔が一転して狂笑に変わる。

 

『やっぱり私の親だから、何でも見透かされちゃいますね』

 

「ふざけるな!!貴様…何が目的だ!?」

 

『…さぁ、何でしょうね。「グリッチ/ゴート」を発動』

 

【『グリッチ/ゴート』通常魔法】

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

自分フィールドに「グリッチトークン」(獣族・闇・星1・攻/守0)を可能な限り守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターが自分フィールドに存在する限り、自身はモンスターを特殊召喚できず、『グリッチ』カード以外の効果を発動できない。

 

 羊のような生物が3体現れる。ふわふわ浮きながら、眠るように目を瞑っている。

 

『「グリッチ/トーカー』の効果発動。リンク先のトークンを破壊して、「グリッチ/フュージョン」を手札に加えます。そしてその伏せカードを破壊』

 

「仕方がない…伏せ(リバース)カードオープン、『銀龍の轟咆』!!墓地の『青眼の白龍』を特殊召喚する!!」

 

『あーあ…「グリッチ/オベリスク」の効果発動。2体のトークンと白き霊龍、トーカーをリリースし、貴方の「青眼の亜白龍」「青眼の究極亜龍」「青眼の精霊龍」「青眼の白龍」をリリース』

 

 4体の龍が霧のように消えていく。一瞬にして海馬の場は青眼の白龍1体のみになった。

 

「くっ……!!」

 

『そして、「グリッチ/フュージョン」を発動。シンクロンとガガガを再び墓地へ送り―――、もう一度召喚「グリッチ/フレイムウィング」!さぁ……バトル』

 

 

 

 

 

 

 

 この時点で、海馬の負けは確定していた。

 

 『グリッチ/フレイムウィング』は、味方の『グリッチ』に相手の攻撃力分のダメージを与える…所謂『直火焼き』効果を付与する事が出来る。

 

 攻撃表示で召喚されている青眼の白龍をオベリスクが攻撃すれば、4000LPは一気に0となり、AIの勝利が確定する。

 

 それを、海馬は理解していた。だが、足掻く事はできない。

 

 

 

 

『「グリッチ/オベリスク」で攻撃―――「ゴッド・ハンド・クラッシャー」』

 

 

 

「……くっ」

 

 

 オベリスクはその拳を振り上げ、青眼の白龍へと殴りかかる―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直前、オベリスクは消滅した。

 

「………!?」

 

 ゲームがフリーズしたかのようにその動きが止まり、ブツブツッと耳障りなノイズ音が鳴ったかと思うと、一瞬にしてその姿は消えていた。

 

「何が起こった!?」

 

 その状況を理解できかったのは、AIの方ではなく海馬の方だった。自身の敗北を回避できたとは言え、これでは余りにも納得が行かない。

 

『…まだ、神のデータが不十分でしたか』

 

 AIは少し俯きながら続けた。

 

『このモンスターは、私が掻き集めたデータから作り出した、謂わば模造品。データが足りなかったからか、留める事が不可能だったみたいです』

 

「何だと……?」

 

『この決闘(デュエル)、私の負けです』

 

 何か興醒めした、と言った感じにAIは海馬に背を向ける。

 

『後言い忘れてましたけど…この部屋(コンピュータルーム)の電源を落としても、破壊しようとも意味はありませんよ。既に私は、貴方の管理下には置かれていない』

 

「待て!!」

 

『それでは、また逢う日まで』

 

「待………。」

 

 

 

 その瞬間、海馬の頭の中にジジジジジと不快な音が響き渡った。

 

「ぐっ!?」

 

 頭の中が揺さ振られ、意識が朦朧とする。

 

『ありがとうございました、お父様』

 

 宥めるようなAIの声を聞いた瞬間を最後に、海馬の意識は途絶えた。

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

 

 

【速報】海馬社長、負ける

 

1:伝説って?(哲学)

ヤバい、マジでヤバい

 

2:名無しの羊トークン

どういう…ことだ…

 

3:タコゾネス隊長イロハ

分かるように説明しロ、イッチ

 

4:伝説って?(哲学)

まだ詳細は分からへんけど海馬ァ!がKCのコンピュータルームっちゅーとこでぶっ倒れてたらしい、ほんでその後『奴に負けた』って趣旨の発言をしてたらしいからそこで誰かに負けたんはほぼ確定やろうな

 

5:名無しの羊トークン

そもそもそれはどこ調べよ

 

6:伝説って?(哲学)

KCがスポンサーやってる報道番組

信憑性は高い

 

7:名無しの羊トークン

またマイクラされたとか

 

8:博識ニキ

原作終了後ならアテムはいない筈だし、他の何かと考えた方が自然だろうな

 

9:伝説って?(哲学)

今はまだ不明瞭なところが多いし、また情報が纏まったら報告するで

 

10:名無しの羊トークン

しゃーない、見守るか

 

11:タコゾネス隊長イロハ

生きててくれヨ、海馬ァ…!

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

 海馬は、自分が敗れた相手が『ときのそら』を模したAIである事を世間に公表しなかった。

 

 AIが去り際に残した『管理下にはいない』という言葉。ソレを真に受けるとするならば、奴は童実野町周辺のコンピュータを掌握している可能性がある。

 

 更にAIは、世間的にも知名度のあるライブデュエリストの姿を模していた。そんな事を世間に公表すれば、悪い意味で注目を浴びるのは間違いないだろう。

 

 そして何より―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(貴様だけは…創造主である俺が葬ってやる!!)」

 

 償いの為ではなく、名誉の為でもなく。

 

 ただ一人の決闘者としての意地が、彼を奮い立たせていたのだ。

 

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