【悲報】ワイ、トレセン生活終了のお知らせ【契約破棄しちゃった】 作:おおおユウゴ
初投稿です。僕にはその「資格」があるッッツ……!
トレーナーに契約破棄した。
そしたら空いたワイの枠に、ワイのかわりに、ワイの世代の最強バが入ったとのこと。
……えっ。それなんてザマァ系? 最近のはやりですかそうですか。
いや、ワイが阿呆だったんよ、そうなんよ。
ワイ(十六歳八ヶ月)は現役のなんJ民……じゃなくて、いや、そうだけどそれよりも先にいうべきなのは、現在トレセン学園にかようごく普通のウマ娘だってこと。
強いて言うなら、せっかくトレーナーと契約したのに、それをこっちの勝手な都合で、一方的に打ち切っちゃったってとこかな……。
結果、メイクデビューも終わったこの時期、もう他のトレーナーのスカウトが終わってるようなこの時期に、トレーナーなしの未勝利戦だけしか勝ってないマヌケが一頭。
いやね? ワイも思うんよ、調子乗りすぎてたって。
トレーナーの言うとおり! ──じゃ駄目だ、ワイにはこのほうが向いてるやり方だ、なーんて小娘の青臭い理想論をふりかざしてたらそりゃあそうなるわ。
でもさぁ、でもさぁ……まさかここまで才能の有無ってやつがさ、ひどかったとは思わないじゃん? うわっ、私の才能、なさすぎ……? 一人でセルフ管理するとか、無理でした。
トレーナーがついてからまだ二週間くらいなのに、その指示アタマっからガン無視して、そんでで身につけた実力なんて……。──ないんだな、これが。
なんの実力も! 得られませんでした! んで契約破棄したら、もう次のトレーナーを決めろ、つまり手に入れろ……そうでなきゃレースに出さん──とか、無理ゲーにもほどがあるよね? オタワだよ、いや、オマタ、じゃなくてオワタだよ、オワコンだよ。むりー……。
しかもなんか、おなじチームだったウマ娘たちが、ワイのこと周りに悪く言いふらしてるみたいだし。
ちょっと女子〜、ワイくんのこと悪くいうのやめなよって。いや、ほんとやめてくだしあ。自業自得? うん、まあ、はい……。
そんなわけで、ワイはいまや絶賛ボッチ中。退学したあとのため、中卒で働ける職をさがすのがこのごろのマイ・トレンド。
今は月曜日の朝、遅刻しそうなんで焦って走ってる……わけでもなく、正直もうどうでもよくなって二時間目に間に合えばいいや、とぶらぶら歩いて向かうところ。もういっそ死んじゃおうかな。
そんな風に思ってると、後ろから声をかけられた。
「あの、すみません」
振り向くと、そこには一人の女子がいた。
制服を見る限り、どうやらワイと同じトレセン学園の生徒らしい。だがワイはその顔に見覚えがない。こんな美少女、一度見たら忘れないだろうに。
しかし、彼女のほうは違ったようだ。
「あなたですよね、最近、トレーナーとの契約を破棄したというのは……」
そう言って彼女は微笑みかけてきた。
──なんというか、天使みたいな笑顔だと思った。そんなに気安く微笑むなんて……ホモだな、間違いない。そうじゃなきゃワイみたいな美女子に、こうも照れることなく話しかけられるはずないじゃん。
え? ちがう? わかってんよそんなこたァ。
「えっと、誰?」
思わずそう訊いた。
「私はカフェ、マンハッタンカフェといいます。よろしくお願いします……」
マンフェ?(幻聴)
だがそんなアホくさいことをワイが考えている間にも、相手──マンハッタンカフェさんは、ぺこりと丁寧にお辞儀なすった。
ワイも慌てて頭を下げる。
「こちらこそ、よろしゅう、いやどうも。……それで、ワイ……いや、アタシに何の用事ですかね?」
「……いえ、とくにこれといったことはないんですけど。ただ少し気になったものですから。……ところで、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「はい、はい、なんでも聞いてください……まし」
「どうして契約解除をしたのですか?」
うぐぅ。
痛いとこつかれた。
「それは……。ほら、あれだよ、トレーナーとの相性の問題っていうか」
正確には私の個性の問題というか、まあつまりアタシが意固地になったというか、え~そのですね、とにかくトレーナーの問題ではないところに問題があったんですね。シャミ子……じゃなくてアタシが悪いんだよ。
「へぇ、じゃああなたにとって、彼はそれほど悪いトレーナーではなかったのですね」
「まぁ、そうだね。少なくとも、あいつの指示を聞いてれば、もっと速く走れただろうし、メイクデビューも勝ててたかもね」
「ではなぜ、契約を破棄を?」
うっ。
「……」
「……答えられないのですか? ……それとも話せない事情でも?」
「そういうわけじゃないんだけどさ……。ごめん、言えないんだ。いろいろあってね。だから、もう行かせてもらうよ」
ワイは立ち去ろうとする。
「待ってください」
腕を掴まれた。
振り返ると、真剣な眼差しの彼女と目が合った。
「あなたは、走りたいんですよね? 勝ちたいと願っているはずです」
なんでそんなこと知ってるんだよ。初対面だろ?
ワイはまったく、なかば慄いたようになりながらマンハッタンカフェさんの言うことを聞いている。その通りではあるからだ。走ることが嫌になったから、走ることの才能がなかったからという、そんな理由で今のアタシへと、アタシが成り下がっているわけじゃあない。
いうのはなんであるが、アタシにはそこそこの才能がある。努力をしないので、それは生かされないけれど。
アタシには夢がある。気力がないので、叶えられないが。
アタシには信念がある。力がないので、実現できないが。
アタシには明日がある。これまでの自分のせいで、もう意味がないのだが。
「あなたがどんな過去を背負っているのか知りません」
彼女がなぜそういったのか、彼女が何を思ってそういったのかは、アタシの知るところではない。
「でも、あなたのその目は、とても強い輝きを放っています……! 走ることに飢えた獣の目。勝利を渇望する走者の瞳。きっとあなたには野望があるんです。未来があるんです。このまま腐らせてはいけない……絶対に、いけませんッ!!」
彼女はそう叫んだあと、はっと我に返り、「失礼……しました」と言って去っていった。
…………えっつ、なんだったん、今のは?
……ワイ、勝ったわ。は? なにに? わかんね。美少女に声掛けられただけなのに喜ぶなんて……、アタマ童貞かよ。あたしゃ女子だよ。
だがそうしてボーッとしてたのが悪かった。
バアン! そんな音がしたと思ったら、ワイの身体が吹っ飛んだ。ツッコミにしては殺意高すぎぃ!
……視界に見えるのは黒塗りの高級車と、その運転席でスマホを片手にあぜんとする男の顔。
……死にたいって思ったらこれですか。なんだ、その……。
かみさまくそくらえ。