スターの始めるプロデュース生活   作:焼肉定食

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八坂、プロデューサーやるってよ

 

 

 俺の名前は八坂(やさか)……(ほし)。 都内の大学に通う何の変哲もないスーパーイケメン(自称)大学生だ。

 

 突然だけど良い子の皆は就活って知ってるかな…? あぁ、うんそうだよな。もう目にも入れたくない言葉だよな。俺も同じだからわかるわ。

 

 でも人生を生きていく中で、大半の人間が避けては通れないイベントなのも事実。実際に俺も大学生活が後半に差しかかるにあたって、この人生の中でも最大級にクソなイベントに向き合わなきゃいけないんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社○○〇〇

 

八坂 星様

株式会社◯◯の◯◯◯と申します。

 

 このたびは、数ある企業の中から弊社の求人にご応募いただき、誠にありがとうございます。応募書類をもとに慎重に選考した結果、誠に残念ではございますが、今回はご期待に添えない結果となりました。

 大変申し訳ございません。何卒ご了承くださいますようお願いいたします。

 

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社✖️✖️✖️

 

八坂 星様

株式会社◯◯◯◯の◯◯と申します。

 

 先日は、お忙しい中ご足労いただきまして、誠にありがとうございました。

 さて、選考の結果についてですが、社内にて慎重に検討いたしました結果、誠に恐縮ながら今回はご希望に添いかねる結果となりました。   

 何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。なお、お預かりしました応募書類につきましてはーーー

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社△△△△

 

八坂 星様

株式会社◯◯の◯◯◯と申します。

 

 先日はーーー

 

 

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社□□□□

 

八坂 星様

株式会社◯◯の◯◯◯です。

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社☆☆☆☆

 

八坂 星様

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社◎◎◎◎◎

 

 

 

 

【選考結果のご連絡】株式会社………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 狂う〜^

 

 一体何回ご期待に添えないって言われればええんじゃボケぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 お前らは一体俺に何を期待しとるんじゃあのクソハゲボケジジイ共がぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

「はぁ……はぁ……くそっ」

 

 

 忌々しいメッセージの写し出された携帯端末をベッドの上に放り投げ、流れで自分の体もベッドの上に放り投げる。

 そのまま天井をジーッと見つめていると自然に目尻から涙が薄らと浮かんできそうだった。

 

 

「一体何社目だ……? これで」

 

 

 不採用、不採用、不採用……!

 

 

 もう、気が狂う…! 一体何をすれば「不」の漢字が外れるんだ?

 

 

「いっそのこと俺が企業して社長になるか? いやでもそれは無理だよなぁ……」

 

 

 そう、俺こと八坂星は現在進行中で就活というクソイベに大苦戦中なのである。

 大学3年生から就活の準備を始めて早1年ちょっと、気がつけば1社も内定を貰えないまま4年の秋に突入してしまった。このままじゃ大学を卒業しても行き先の無いニートマンになっちまう。

 

 

「……もういっその事ニートでいいか」

 

「いい訳あるかボケ」

 

 

 俺が呟いた独り言に何故か冷淡なトーンの返事が返ってきた。一人暮らしのハズなのにおかしいと思いつつ声のした方へと視線を向けると、そこにはキッチリとスーツを着こなしたいかにも仕事のできる女といった風貌の女性が立っていた。

 

 だけど不審者という訳ではなく、俺はその人を知っている。

 

 

 

貴子(たかこ)さん! 何勝手に入ってるんすか! 不法侵入ですよ不法侵入!」

「ええい、相変わらずごちゃごちゃとうるさい奴だ。玄関の鍵が開いてたから入っただけだ。戸締まりはしっかりしろ 」

「へいへい、ったく相変わらず口うるさいおばさーーー」

 

 

「死ね!」

 

 

「うぉっ!? そんなもん思いきり投げないでくださいよ! 危ないでしょ!」

 

 

 俺が言葉を言い切るが前に、激昂した貴子さんは部屋の中に置いてあったハサミを俺目掛けてぶん投げてきやがった。

 そしてそのハサミは俺の横を通り過ぎて後ろのカーテンに突き刺さっている。

 

 

 こ、この女……俺が避けなかったらどうするつもりだったんだよ。

 

 

 

「ちっ、相変わらず身のこなしだけはご立派だな」

「俺が避けてなかったらどうするつもりだったんすか! この爽やかイケメンフェイスに傷がつくとこでしたよ!」

「別にいいだろう。お前の顔なんて穴が開いてようが開いてなかろうが大して変わらん」

「酷い…!」

 

 

 俺が()()からの愛の鞭(ぎゃくたい)を受けてシクシク涙を流していると、その張本人様は俺を気にする様子も無く、ズカズカと家の中に入り込んできてはどかっとベッドに腰をかけた。

 

 

「ちょっと、もうちょっと優しく座ってくださいよ。ベッド壊れちゃうじゃないすか」

「そんな事はない。私の体重はリンゴ5つ分だからな」

「そのデカいケツしてリンゴ5つ分は嘘でーーー、っとストップストップ! 枕投げようとすんな!」

「ちっ」

 

 

 舌打ちをして乱暴に枕をベッドに投げつける貴子さん。

 

 相変わらず短気な人だ。えっ、お前が怒らせてるんじゃないかって…? バカ言え、こんなに可愛い()に対して怒りなんて沸く訳ないだろ。

 

 

「それで、何の用なのさ貴子さん」

「あぁ、姉さんからお前が就活に苦戦しているという話を聞いてな」

「お袋……余計なことを」

 

 

 賢い諸君であればここまでの会話でなんとなく察してるとは思うが、貴子さんは俺の叔母にあたる。えーっと、つまりは俺のお袋の妹が貴子さんだな。

 

 因みに俺のお袋が今年で44歳で、貴子さんはその5つ下らしいから今年でさんじゅうきゅーーー

 

 

「がふっ…!」

 

 

 突然、大谷◯平もビックリな速度で俺の顔に枕が飛んできた。ふっ……俺でなきゃ死んでるねこりゃ。

 

 

「って! いきなり投げてこんでくださいよ!」

「お前が失礼なこと考えてる顔してたからな」

「エスパーなの…? 貴子さんエスパータイプなの? サイケこ◯せんとか打てるの?」

「えぇいうるさい、少し黙れ」

 

 

 そう言って貴子さんはキリっと鋭い眼光で俺を睨みつける。

 俺は基本的に物怖じしない性格ではあるんだけど、この貴子さんの視線だけには弱い。きっと幼少期からの英才教育()の賜物だろう。

 

 

「話を戻す、就活の方はどうなんだ」

「このままじゃ就活どころか人生の終活になっちまうでごぜーますよ」

「そうか、私としてはそのまま終活を開始してくれても構わないのだが……それだと姉さんが悲しむからな」

「サラっと酷いこと言ったね」

 

 

「本当に血も涙も無いなこの人。こんなんだから39にもなって結婚のけの字も無いんだぞ」

 まぁこれ言ったら半殺しどころじゃすまないだろうから、心の中奥深くに留めておくことにしよう。

 

 

 

「おい、全部口に出てるぞ」

「あっ、やべ」

「……まぁいい、本当は半殺しにでもしたいところだが、今日はそんな暇はないからな」

「ふっ……まるでやろうと思えばいつでも俺のことを半殺しにできるかのような言い草じゃないすか」

「試してみるか?」

「ごめんなさい」

 

 

 だから怖いって……その目で睨まれたら俺もう何も言い返せなくなっちゃうよ。完全に調教済みだよ俺の体。

 

 

 

「……とはいえ少し以外だったな」

「何が」

「いやなに、お前がちゃんと真面目に就活に取り組んでいたとはな。そもそもを言えばお前が急に大学に行くと言い出した時から意外だったが」

「……別になんでもいいだろ。それは」

「ふふっ、まぁな。高校まであんなにやんちゃしていたお前が、理由は何あれ更生したのなら良いことだ」

 

 

 そう言って貴子さんは静かに笑った。

 

 ……昔の話をされるのは少しむず痒い。というか俺にとってその話はぶっちゃけ黒歴史だ。喧嘩ばかりしていた頃の自分と、ナンパばかりしている今の自分ならよっぽど今の自分の方が好きだ。

 

 

「そういえば聞いていなかったな。喧嘩に明け暮れていたお前がどうして急に勉強をしてまで大学に行く気になったんだ」

「……それは」

「……それは?」

 

 

 

 

 

「大学生になって沢山の女子たちと素敵なキャンパスライフを送りたくなってーーー」

「あ、もういいぞ。喋らなくて」

「酷い!」

 

 

 

 くそっ…! もうちょっと隙あらば自分語りさせろよ! もっと隙を見せろよ!

 

 

「はぁ……だからか。大学生になってから妙にチャラつき始めたと思ったが……やはりくだらない理由だったな」

「くだらなくなんかないでしょ! 健全な青少年であるなら女子と仲良くなってにゃんにゃんにゃんしたくなるのは当然! そして俺は大学に入って色々な女子と関わるうちに世の真理に辿り着いたんだ! 年上の女性が最高だってことにな!」

「……うるさい」

 

 

 そう、決して年下や同い年が悪い訳ではない。年上の女性が最強すぎるんだ。あの全てを包みこんでくれるような包容力、こっちの知らない事を優しく教えてくれる優しさ、そしてそんな頼りになる中でも時折見せてくれる可愛らしい姿……全てが最高だ。

 

 ふっ……女は年上に限るね。

 

 

 

「年上好きか……お前にそんな癖があったとはな」

「あっ、でも貴子さんは対象外なんで勘違いしないでくださいね」

「それはこっちのセリフだバカ。お前みたいな顔だけの薄っぺらいバカはこっちから願い下げだバカ」

「今一回のセリフで3回もバカって言ったね! ? お袋にも言われた事無いのに!」

 

 

 今日だけでどんだけ俺の顔と心に傷を負わせれば済むんだこの人。普通、就活で苦戦してる甥に会いにきたんならもっと優しくするだろ。

 

 つーか、マジで何しにきたんだこの人。

 

 

 

「本題に戻ろうか、わざわざお前の汚い家に来たのには訳がある」

「俺に会いたかったからだろ? 照れるなよ」

「……………………ふぅ、実は今日はお前にいい話がある」

 

 

 なんとか理性で怒りを抑え込んだ様子の貴子さんは、こめかみにピキピキと青筋を立てながら震える声で言葉を続ける。

 

 

「で、いい話って? まさか働き口でも見つけてきてくれたとか? なんて、流石にそれは無いかーーー」

「ほぉ、お前にしては鋭いな」

「………は?」

 

 

 

 

 

「お前、アイドルのプロデューサーをやってみないか?」

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 あれから数日後、スーツを着込んだ俺はガタガタと激しく揺れる電車に揺られながら貴子さんから指定された場所へと向かっていた。

 

 

「……アイドルのプロデューサーか」

 

 

 正直考えたこともない職種だ。そもそもプロデューサーが何なのかすらよく分かっていない。

 

 ……ダメだ、これから面接だと思うと緊張してきた。とりあえず貴子さんとの会話を思い出して緊張を忘れよう。

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

『あ、アイドルのプロデューサーぁ?』

『あぁそうだ』

 

 

 いきなりそんな事を言い出した貴子さんに対して、俺は目をぱちくりとさせながら狼狽えることしかできない。

 だって流石に予想外すぎるだろ。そもそも働き口を紹介してくれるってだけでチビリそうなくらい驚いてるのに、それがアイドルのプロデューサーだなんて。

 

 

 

『な、何で俺を…?』

『あー、話せば長くなるが。実は私と土肥さん……あ、土肥さんというのはその事務所の社長なんだがな。私と土肥さんとで小規模ながらアイドル事務所を企業することになってな』

『………ふむ、続けたまえ』

『どの立場で話を聞いてるんだお前は……まぁいい。それで当然の事だが従業員を募集する事になってな。1人プロデューサーの男と、もう1人事務員の女性を雇うことにしたんだ』

『それでそのプロデューサーに俺を?』

『話は最後まで聞けバカ。募集をかけた2名に関してはトントン拍子で決まったよ。ただ、問題はプロデューサーとして内定を出した男の方なんだがな……』

 

 

 そこまで言って貴子さんは額に手を当てながら大きくため息を吐いた。まさか何か病気とかのトラブルが発生したんだろうか?

 

 

『その男、急にパチプロを目指すだとかふざけた事を言い出してな。一方的に内定を蹴ってそのまま音信不通だ』

 

『……俺が言うのもなんですけど、とんでもないヤツっすねソイツ』

『あぁ、本当にな』

『ですよね』

『本当にお前が言うなって感じだ』

『そっちぃ!?』

 

 

 このオンナ……厳し過ぎる!!

 

 

 

『どうしようかと思いつつも、とりあえずもう一度募集をかけようとしてたその時だ。たまたま雑談の中でお前の事を土肥社長に話してな、貴子くんの親戚なら是非会って話がしてみたいと仰られた』

『中々見る目がありますね……土肥さんとやら』

『あぁ……人を見る目はある。いや、あったハズなんだがなぁ……』

『おい』

 

 

 この女はいちいち俺に対して何か毒を吐かないと生きていけないのか? 綺麗な華に棘は付き物だけど、この人はもう全身がハリネズミばりに棘まみれだよ。

 

 

『まぁそう言う訳だ、だが勘違いするなよ?社長はお前と話がしたいと言っているだけで問答無用に受け入れると言っている訳ではない。もちろん当日は面接をするから準備してこい』

『あれ、もう帰るんすか?』

『要件は伝えた。こんな汚い部屋に長居する理由はないので早く帰りたいんだよ』

『別に誰も帰りなんて待ってないんだからそんなに急いで帰らないでもーーーぶっ!』

 

 

『じゃあな』

 

 

 貴子さんは去り際に、玄関に置いてあった俺のリクルートバッグを顔面目掛けてぶん投げて帰っていった。

 

 

 顔……潰れて前が見えねぇぜ。

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

 と、まぁ……そんなこんなで俺はその土肥さんが立てたアイドル事務所を目指している。

 

 履歴書は入れたか…? 寝癖は無いか…? ネクタイは曲がってないか…?

 一つ一つをきっちりと確認していく。この面接前特有のヒリついた緊張感だけは何度経験しても慣れることはない。

 

 そして俺は、自分に大丈夫だと何度も心の中で言い聞かせながら、目的地である事務所を目指して電車の揺れに身を任せた。

 

 

 

「ふぅ……よし」

 

 

 駅を降りて、改札を出たところで立ち止まってスマホの地図アプリを確認する。目的の事務所は駅から徒歩で10分。貴子さんとの約束まではまだ30分もあるから余裕だな。

 

 

「ふっ、随分と早い到着じゃないか」

「あれ貴子さん。早いすね」

「まぁな、お前も早いじゃないか。ただ、時間に余裕を持った行動とは感心だな」

「当たり前じゃないですか。俺がこれまで何度面接を経験してきてると思うんです?」

 

 

「それで、内定は?」

「ん゛ぅぅぅぅぅっ…!!!」(血涙)

「わ、悪かった。冗談が過ぎた」

 

 

 おぉ、流石の貴子さんでも血の涙を流されれば謝るんだな。今度から困ったらこの作戦を多用することにしよう。

 

 

「さて、まぁ時間は早いが構わんだろう。行くぞ」

「……はい!」

 

 

 カツカツとヒールの音を鳴らしながら、早歩きで人混みの中を進んでいく貴子さんの後ろに着いていく。

 

 せっかく舞い降りたこのチャンス……絶対に掴んでやるぜ!

 









《八坂 星:ヤサカ ホシ?》

年齢:22歳
身長:185cm
体重:75kg
好きなもの:年上の女性
嫌いなもの:自分の名前


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