スターの始めるプロデュース生活   作:焼肉定食

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アイドル、キミに決めた!

 

 

「唯の顔になんかついてる? おーい、もしもーし」

 

 

 はっ……思わず顔がニヤけちまった。自分でも自分のチンピクセンサーの精度が高すぎて若干引いてるぜ。

 俺は目の前に立つ女の子の容姿を改めて確認するが、どこからどう見ても、誰がどう見ても美少女と呼べるレベルにあると思う。

 

 このチャンス……絶対逃してなるものか!

 

 

「キミ、名前は?」

「唯? 唯は唯だよ! 大槻唯! 17歳!」

「なるほど、じゃあ唯でいいか?」

「おけおけ〜! てか唯が自己紹介したんだからお兄さんのことも教えてよ!」

「俺は八坂だ。よろしくな」

 

 

 下の名前は……まぁとりあえず隠しておいていいだろ。どうせ笑われるだけだろうし。

 ってそんな事より今はスカウトだ! 都合が良いことに唯は俺のことをあまり怪しんでいない。やっぱりさっき助けてやったことが大きいんだろうな。サンキュー髭だるま。

 

 

「唯、実は俺はこういうものでな」

「ん? 何これ名刺? ……えっ!? アイドル事務所のプロデューサー!? 八坂さんプロデューサーだったの!?」

「まぁな、まだ新米ではあるが」

「ほぇ〜」

 

 

 間の抜けた声を上げながら、唯は俺から受け取った名刺を見つめている。まぁ突然こんなもん渡されても困るよな。

 

 

「それでな、唯。実はお前をスカウトしたいと思ってるんだが」

「スカウト? 唯を?」

「あぁ」

「それって、唯にアイドルになってほしいってこと?」

「そうなる」

 

 

 そこまで言って唯は悩むように下を向いて黙りこくってしまった。

 

 頼む…! 神様、俺様、大槻唯様…! アイドルをやるって言ってくれ…! 100円あげるから!

 

 

「んー、誘ってくれたのはぶっちゃけマジで嬉しいんだけど……唯はいいかな」

「な、なにぃっ!? なんでだ!」

「えー、だって唯アイドルとかよく分かんないし……今は別にいいかなって」

「そ、そこを何とか! 頼む…! 100円あげるから!」

「あははっ、いらねー☆ てかそういう訳だからさ、悪いけど唯もう行くね。あっ、ポーチ取り返してくれたのはマジで感謝してるから!」

 

 

 ま、まずいまずいまずい…! このままだとまたしても俺はダイヤの原石を逃してしまうことになる。ソレに何より、俺の直感が告げてる気がするんだ、唯は絶対に逃してはいけないと!

 

 だがどうする、ハッキリと断られちまったしこれ以上何をすれば……いや、今はとりあえず唯を引き留めねぇと!

 

 

「ゆ、唯! ちょっと待ってくれ!」

「ん? なに? 悪いけどアイドルならーーー」

「ち、違う!」

「じゃあ何?」

 

 

 

「い、今から俺とデートでもしないか…?」

 

 

「……ほぇっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

「店員さーん、オレンジジュースくださーい!」

「俺はアイスコーヒーで」

「かしこまりした」

 

 

 あれから数十分後、苦し紛れの策によってとりあえずは唯を引き留めることに成功した俺は、唯と2人でカフェへと訪れていた。

 

 さて……なんとか引き留めには成功したが、これから何とかして唯の説得をしなきゃならねぇよな。 だがどうする? どうすれば唯はアイドルをやる気になってくれる。ギャラの話でもするか?

 

 

「それにしても八坂さんも大胆だよねぇ」

「ん?」

「まさか道の真ん中であんなに堂々とデートに誘うなんてさぁ〜。てか、唯JKだよ? これって結構ヤバいことしてんじゃないの〜?」ニヤニヤ

「や、やましいことは何もしてないからいいんだよ。……でも今日のことは誰にも言うなよ」

「あははっ! まぁ別にいいけどさぁ〜☆」

 

 

 くっ……メスガキめ。ニヤニヤとした顔をしやがって…! 俺は年上に攻められる趣味はあっても年下に攻められる趣味はねぇんだよ。

 

 

「お客様、こちらオレンジジュースとアイスコーヒーでございます」

「ありがとうございます」

「は〜! 喉カラカラ〜! んっ……んっ……ぷはぁ〜! おいちぃ〜☆」

 

 

 テーブルにコップが2つ置かれると、唯は自らの前に置かれたオレンジジュースをストローでごくごくと飲んでいく。あまりにも美味そうに飲むその姿を見ているとこっちまで喉が乾くようだ。

 

 ゆくゆくは飲料水のCMもいけるかもな。

 

 

「ん? そんなに見てどしたん? はは〜ん、さては八坂さんもオレンジジュース飲みたくなっちゃったんでしょ〜?」

「バカ言え、俺はオレンジよりもりんご派だ」

「照れんな照れんな〜☆ ほれ、正直に言えば一口あげるよ〜?」

 

 

 そう言ってる唯は挑発するような表情を浮かべながら、自分の手に持ったコップとストローを俺に向けてくる。

 

 

「いいのか? 言っとくけど俺はこういう時遠慮しない男だぞ」

「別にいいけど?」

「そうか、まぁお前がいいなら。後からストロー替えてとか店員さんに言うのはナシだかんな。俺の心に傷がついちゃうから」

「へっ、ストロー?」

 

 

 俺が唯の差し出したコップに刺さったストローに顔を近づけると、ハッとしたような表情を浮かべた唯は咄嗟にコップを自分の体の方へと引き寄せた。

 せっかくオレンジジュースを飲めると思ってた俺は抗議の視線を唯にぶつけるが、唯は真っ赤な顔をして逆に俺のことをジッと睨んでいた。

 

 

「おい、せっかくオレンジジュースの口になってたのに今更引っ込めるなよ」

「や、やっぱ無し! 今の話ナシ!」

「……お前、まさか俺がストロー使うと間接キスになるって気づいてなかったのか?」

「は、はぁっ!? ち、違うケド!? 別に恥ずかしくなんかないし!」

 

 

 図星を突かれたかのように顔を真っ赤にして狼狽える唯。この反応を見れば俺の言っていた事が当たっているなんて一目瞭然だが。

 

 ははーん、コイツこんな感じで意外と……なるほどな。

 

 

「くくっ」

「な、何笑ってんのさ!」

「いやなに、お前バリバリのギャルなくせに結構ウブなんだなと思ってな」

「ち、違うし! 別にそんな事ないもんっ!」

「へいへい」

 

 

 まぁこれ以上イジめるのはやめておいてやろう。俺は年上を攻める趣味はあっても年下のガキを攻める趣味は無いからな。

 

 と、いうよりさっきから気になっていたんだがここの店員……

 

 

「ん? 何見てんの?」

「……さっきテーブルにジュースとコーヒー運んでくれた店員だよ」

「あー、あの人? 綺麗な人だよね〜」

「お前も分かるか。中々見る目があるな」

 

 

 さっきから思ってはいたことだが、あの店員さんはかなりの美人だな。それに俺の眼に狂いが無ければあれは俺よりも年上だ…!

 い、いかんぞ今は唯をスカウトしなきゃいけないっていうのに、あのお姉さんのことが気になって仕方ない…!

 

 そうだ……今はナンパなんかしてる場合じゃ……

 

 

 

「ってかさ〜、八坂さんさぁ。仮にも今は唯とデートしてんのに他の女の人にムチューなのはどうかと思う……ってあれ? いないし!」

 

 

 

「店員さん、今お時間平気ですか?」キリッ

「えっ、私?」

「はい、もしよろしければお名前をお聞かせいただいても?」

「は、はぁ……服部瞳子と申しますけど」

「瞳子さん……素敵なお名前だ。もしも今夜お暇であればお食事でも……ぐぇ!」

 

 

 突然、後ろから俺の耳を掴んできた唯が俺と瞳子さんを引き剥がしていく。

 

 い、いでででででっっ! み、耳がちぎれるぅぅぅぅ!!!

 

 

「はーい、店員さんに迷惑かけてないで早くお店出るよ〜」

「い、いででっ! ちょっ! 離せ唯! 耳がとれるっつうの!」

 

 

 ちょっ! コイツ意外に力強いな!? あぁ…!せっかく出逢えたっていうのに瞳子さんが遠くなっていくぅ…!

 

 

「てか一回離せ! 料金! 料金払わないと食い逃げになっちまうからぁぁ!!!」

 

 

 もちろん、お代は支払いました。

 

 

 

 

 

 

「……変な人ね」

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 唯に引っ張られてカフェを出てから5分くらい歩いた先にある公園にて、拗ねたように頬を膨らました唯がビシッと俺に指を刺す。

 

 

「八坂さんさぁ! 唯のことスカウトしたいんじゃないの!?」

「あ、あぁ……もちろんだ」

「じゃあ何で店員のおねーさんにちょっかいかけてるワケ…?」ジト-

「い、いやそれはだな……もうアレは俺にとって習性みたいなもんでな。綺麗なお姉さんがいたら声をかけない方が失礼だろ?」

 

 

 そうだ、この世の中に綺麗なお姉さんが多すぎるのが悪いんだ! 俺は悪くない! 悪いのはこの世界と魅力的すぎる年上のお姉さま方なんだ!

 

 

「ふーん、それならさっきの店員のお姉さんをスカウトすればいいんじゃないの? 唯はもう帰るかんね」

「ま、待て待て! 確かにさっきの瞳子さんも素敵だしスカウトしたい気持ちはあるがな、だからと言って唯が必要ないとかそういう訳じゃないんだよ! お前にアイドルになってほしいっていう気持ちに嘘はない!」

「でもさぁ、そういうのって二兎を追う者は……ナントカみたいなやつじゃないの?」

「二兎を追う者は一兎をも得ず、だろ? だが俺はこんなことわざを信じちゃいない。俺は二兎を追ってニ兎とも一緒に捕まえる!!」

「……どうしよう、言ってることは最低なのに堂々としすぎてカッコよく見えるかも」

 

 

 マズイな。唯の俺に対する好感度がグングンと減っていってる気がするぞ。俺そんなに不信がられるようなことしたか……? いや、してるか……

 

 だがこのままじゃ唯は絶対にスカウトに対して首を縦に振ってはくれないだろう。 どうする、頭をフル回転させて考えろ!

 

 

 ブブブブブ

 

 

「あ? 電話ぁ? くそこんな忙しい時に……しかも貴子さんかよ」

 

 

 こんなタイミングで電話かけてくるなよ貴子さぁん! 無視してもいいけど、それじゃ後が怖いからなぁ。

 

 

「悪い唯! ちょっと電話してくるからそこで待っといてくれ!」

「えー」

「絶対だぞ! 帰ったりなんかすんなよ!?」

「はいはい、それより早く電話出なよ」

「おっ、そうだな……絶対そこにいろよ!」

「わかってるって」

 

 

 、、、、、

 

 

「絶対だぞ!」

「わかってるってば!」

 

 

 、、、、、

 

 

「ぜーったいに帰ったりすんなよ!」

「んもぅ! しつこ〜い!!」

 

 

 

 俺は唯から離れた場所でスマホをポケットから再び取り出す。スマホの画面には貴子さんの名前が表示されている。

 

 頼む…! どうか長説教じゃありませんように! 頼むぜ貴子さん!

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

「はぁ〜」

 

 

 八坂さん、まーた唯のことほったらかしだし。さっき唯が怒った内容のことちゃんと分かってるのかな?

 

 

「……あれ、てか唯、なんでこんな怒ってんだろ」

 

 

 あれかな、唯のことスカウトしたくせに他の女の人にデレデレしてたからかな。女のプライドってやつ? ははっ、それは流石に無いか〜。

 

 

「……アイドルかぁ」

 

 

 別にやりたくないとかいう訳じゃないんだけどなぁ。歌もカラオケ好きだし、ダンスもまぁ嫌いじゃないし。なんならちょっと面白そうかもとか思ってるし。

 

 でも唯アイドルのこととか全然わかんないし、そんな中途半端な気持ちでやりますなんて言うのはどうなんだろ……

 

 

「あーもう! なんか頭ん中ごちゃごちゃになってきたんだけど〜!」

 

 

 

 

「あれ? キミかわうぃーねー! 1人ぃ?」

「よかったら、俺らとトゥギャザーしない?」

「げっ」

 

 

 あちゃー、ちょーっと面倒くさそうな人たちに絡まれちゃったかなぁ。ていうか八坂さん早く戻ってきてよ〜!

 

 

「ねぇねぇ! 俺ら楽しい場所知ってっからさ!」

「一緒にデートしようよ!」

「い、いや〜、唯ここで人待ってるから……」

 

 

 て、ていうか全然好みじゃないし〜! デートとかマジでノーセンキューなんだけど!

 

 ……あれ、でもさっき八坂さんに言われた時はここまで嫌な気持ちにならなかったのに。何でだろ?

 

 

「ごちゃごちゃうるさいなぁ!」

「きゃっ! ちょっ、離して!」

「いいからいいから! マジで俺ら楽しいからさぁ!」

「ちょっ! マジで……いやぁ!」

 

 

 ちょっ、力つよっ……! こ、怖いよ……!

 

 だ、誰か助けて…!

 

 

 

 

 

「おい、その薄汚ねぇ手を離せ。その女は俺が先に目ェ付けてたんだぞ」

「あぁん!?」

「誰だテメー!」

 

 

 

「…っ! や、八坂さん!」

「悪いな唯、電話が少し長引いちまった」

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

「その薄汚ねぇ手を離せ」

 

 

 ただの現状確認だった電話を終えて唯の元へと戻ると、たちの悪そうな男2人に唯が絡まれていた。しかも1人は唯の細腕を掴んで強引にどこかへ連れていこうとしている。

 

 

「ったく、力任せに連れ去ろうなんてクールじゃねぇなぁ。ナンパするなら正々堂々と話術で勝負しやがれってんだ」

「あァん!? てめぇ何だオラァ!?」

「女の前だからってカッコつけてんじゃねぇぞコラぁ!」

 

 

 オラオラコラコラうるせえ奴らだ。名前知らねぇしとりあえずオラとコラって呼ぶことにしよう。

 

 

「とっとと唯から手ぇ離せ。さもないとどうなっても知らねぇぞ? オラくんとコラくんよ」

「誰がオラくんだオラァ!」

「舐めてんのかコラァ!」

 

 

 

 俺は汚ねぇ唾を吐きながら喚いているオラとコラと唯の元へと近づいていく。するとコラの方が俺に向かって拳を振りかぶった。なんというかデジャヴな光景だ。

 

 

「すぅ……ふっ!」

「ひっ!」

「んなっ!」

 

 

 俺はすかさず足を伸ばして、コラの股間の前で寸止めをする。蹴りの風圧で公園の砂がふわりと舞い、ソレを見たオラコラはぷるぷると子鹿の様に震えている。

 

 

「……女の前だからってイキがってんのはお前らの方だろ? ソイツはお前らにゃあ勿体ねぇ女だよ」

「ひっ!」

「一回だけ言うぞ。ソイツからその薄汚ねぇ手を離してさっさと家に帰ってナンパの仕方をネットで検索して調べてこい。そんで1000文字以内のレポートとしてまとめて提出しやがれ!」

「ひ、ひいっ! 」

 

 

 オラは唯から手を離すと、すかさず唯はソイツの元を離れて俺の後ろに隠れる。

 

 

「く、くそ……! 何なんだよお前…!」

「俺たちはただ、可愛い子とデートがしたかっただけなのに!」

 

 

「はぁ……デートつったか? それだったら悪いな。今、コイツとデートしてんのは俺だ。先約がいるんだ、諦めて帰りやがれ」

 

 

「「ち、ちくしょー!」」

 

 

 オラとコラは泣きベソをかきながらバタバタと走って去っていく。ったく、去り際も不細工だったなアイツら。

 

 

「悪かったな唯、もう大丈夫だぞ」

「………っ」

「唯?」

 

 

「こ、怖かったよ〜! ひ〜んっ!」

「おわっ!」

 

 

 唯は涙を流しながら俺に飛びついてきた。ちょうど俺の腹辺りに顔を押しつけてグリグリと動かしている。

 

 

「ちょっ! てめぇ唯! 俺のスーツで涙と鼻水拭くんじゃ……はっ!」

 

 

 こ、この下腹部に伝わる2つの柔らかい感触は……!

 こ、コイツ…! 初めて見た時から気付いてはいたがガキのくせして中々のモンじゃねぇか! これは……82、83、バカな! まだ戦闘力が上昇するのか!? まさか84とは…!

 

 

「ゆ、唯! 人目に付くとマズいから早く離れてくれ!」

 

 

 俺は泣きつく唯の体を無理やり引き剥がそうと唯の肩に手を置いた。

 

 

「うぇぇぇぇん! 怖かったよぉぉ!」

「…………はぁ」

 

 

 しかし俺は、唯の肩に置いた手を離し、そのまま頭頂部へと持っていった。そしてそれから10分かそこらの間、泣きベソをかく唯のことをあやし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

「あ、あはは……何か恥ずかしいトコ見せちゃったね。ごめんね八坂さん」

「いや、お前もっと恥ずかしがることあるだろ。思いきり俺におっぱい押しつけて……ぶふぅっ!」

「さ、サイテー! 八坂さんデリカシーとか無いの!?」

 

 

 復活した唯のアッパーが思いきり顎にクリーンヒットした。脳が揺れて視界がクラクラとおぼつかない。

 

 

「そ、そんだけ元気になりゃ……もう平気だな」

「ふんっ! おかげさまで!」

 

 

 くっ……この俺にここまでダメージを与えるとはやるじゃねーの唯。お前こんなアッパー出せるならさっきのモブ共くらいなら頑張れば蹴散らせただろ。

 

 ってか何か大事なことを忘れてるような……何だったか……はっ!そうだスカウトだ!

 

 

「ゆ、唯! そういえばスカウトの話なんだが!」

「えっ? あ、あー、うん……そういえばそんな話あったね」

 

 

 し、しまった。唯にアイドルの素晴らしさを伝えて心変わりをしてもらう作戦だったのに俺がここまでしてきたのって、カフェでお茶して店員ナンパして公園でモブを撃退して唯のおっぱいを堪能しただけじゃないか…!

 

 こんなんじゃアイドルをやるなんて言ってくれる訳がない……

 

 

「ね、ねぇ八坂さん、さっきあの怖い人たちに向かってさ、唯はお前らには勿体ねぇ女だーって言ってたじゃん…? あれって本心…?」

「えっ、あーうん。まぁアイツらにはな、アイツらなんてメスのカブトムシくらいがお似合いだろ」

「じゃ、じゃあさ……何で唯のことスカウトしたの?」

「そ、そりゃあ……まぁ直感だよ」

 

 

 ……流石にチンピクセンサーとか言える雰囲気じゃねぇな。

 

 

「そ、それってさ、唯のこと見て可愛いって思ってくれたってことだよね!?」

「あーうん……まぁ、な」

「じゃあさ……最後に一個だけ質問」

「何だ?」

 

 

 唯はしっかりと俺の目を見つめて、初めて見る真剣な表情を浮かべると、震える唇から風の音にすらかき消されてしまいそうな程小さな声を出した。

 

 

「唯でも……アイドル、やれるかな?」

「……え?」

「だ、だからさぁ!」

「……っ! や、やれるやれる! 絶対やれるって! 俺も一生懸命サポートするからさ!」

「そ、そっか……じゃあ、いいよ」

 

 

 唯はさっきまでの真剣な表情から一転、ニッコリと花が咲くような満面の笑みを浮かべて俺に告げた。

 

 

「じゃあ、なってあげる! 唯がプロデューサーちゃんのアイドルに!」

「うぉぉぉぉぉ! スカウト成功だぜぇぇぇぇぇぇ!!! って、プロデューサーちゃん?」

「へへーっ☆ そう! 唯がアイドルになるなら、八坂さんは唯のプロデューサーになるんだからプロデューサーちゃん!」

「ちゃん付けかぁ……なぁ、それよりもご主人様とかにしないか?」

「やーだよっ☆ もう決めたんだもーん!」

 

 

 ま、まぁこの際呼ばれ方なんて何でもいいか。それこそ名前で呼ばれるなんかよりは100倍マシだ。

 そんな事よりスカウトが成功したという事実に興奮が隠しきれないぜ! 俺ってもしかしてスカウトの才能があるのでは…? 俺っていうか俺のチンピクセンサーだけどさ。

 

 

「じゃあこれからよろしくね! プロデューサーちゃん!」

「あぁ! ……はっ! そうだ唯! この後時間あるか!?」

「えっ、あるけど?」

「ちょっと着いてきてほしい場所があるんだ!」

「どこ?」

 

 

「俺たちの事務所だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

「という訳で! さっそくアイドルの原石をスカウトしてきました!!」

「こんちは〜! 大槻唯でーす☆」

 

 

 俺は唯を連れて事務所へと戻った。そしてそんな唯のハツラツとした自己紹介を見ていた貴子さんとちひろさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まっている。

 

 

「ま、まさか1日で連れてくるとはな……もう少しかかるモノだと思っていたが」

「はい……しかもこんなに可愛い子を」

「はっはっは! どうだ2人とも! 俺のスカウト力は!」

 

 

 宣言通り、仕事で2人を見返す事には成功したようだな。これでこの人たちも俺の評価を少しは見直してくれるだろう。

 

 

「大槻くん、あのバカに何か変なことはされなかったか?」

「何か卑劣な手で脅されたりはしてませんか? ちゃんとここはアイドルの事務所だって説明を聞いてますか?」

 

 

「おい! しばくぞクソアマ共ぉ! ちょっとは俺のこと信じろよ!」

 

 

 ま、まぁ変なことしてないかって言うと怪しいとこではあるな。カフェでデートはしたしおっぱいも堪能したし。でも決して無理やり連れてきたとかいう訳ではねぇぞ!

 

 

「金で釣られた訳などでは無いよな?」

「家族が人質にとられたとか!」

 

 

 

「んなことやる訳ねぇだろぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 こーして、我が事務所に記念とある1人目のアイドルがやってきたのだった。めでたしめでたし。

 

 

 





(大槻唯:オオツキユイ)

年齢:17歳
身長:155cm
体重:42kg
3サイズ:84-56-83
出身:埼玉
趣味:カラオケ


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