孫悟天に憑依したので最強を目指す   作:なっき

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第二話

 待ちに待った運命の日。

 今日開催される天下一武道会。そこで物語が動き始める。

 魔人ブウの復活を目論むバビディ。その下っ端が大会の途中で兄ちゃんを襲ってしまうのだ。それから一行は界王神と共に魔人ブウの復活を阻止すべく動くことになるが、結局魔人ブウは復活を果たしてしまう。

 原作知識を持っている俺になら魔人ブウの復活を阻止できるかもしれない。

 

 ――勿論、そんなことは絶対しないが。

 

 折角、強敵と戦える機会をみすみす逃す手は無い。魔人ブウと戦えるこの日を一つの楽しみとして今日まで修行してきたのだ。頭の奥では事前に魔人ブウの復活を阻止すべきだろうという考えもあるのだが、それは俺が持つサイヤ人としての血が許さない。これがお父さん達が持っていた強者と戦いたいと言う感覚なのだろう。サイヤ人とは色々な意味で恐ろしい。――とはいえ、仲間達や人々が巻き添えになるのは流石に避けるつもりだ。

 ……その為にも気を付けることと言えば、楽しくなりすぎて兄ちゃんみたいに調子に乗らないようにすることだろう、――何が起きるか分からない。でも、俺も勝負に夢中になりすぎるとまじで正常な判断ができない時があるんだよな……。倫理観がぶっ飛ぶというかなんというか……。修行中も何度かトランクス君にドン引きされることがあった。血は争えないということなのか。

 ま、きっと――いや絶対大丈夫だろう。知らんけど。

 

 ……それにしてもようやく今日、お父さんと会えるのか。

 あぁ、まじで楽しみ……。主人公と会えるというのは本当にワクワクする。やっぱり顔は俺と同じなんだろうか?

 ……無理だろうけど、超サイヤ人3で俺と戦ってくれないかな?

 そしたら――、

 

「いやー、それにしてもまさか神様の神殿にあんな場所があったなんてなー。時間の流れがゆっくりなんて不思議だよなー。本当にこっちの世界じゃあ一日しか経ってないし。悟天、よく知ってたよな?」

 

 俺が考え事をしているとトランクス君が話しかけてくる。

 

「……兄ちゃんから聞いたことがあったんだ。兄ちゃんもあそこで強くなったって言ってたから」

「……ふーん、なるほどな。確かにしんどかったけど俺達滅茶苦茶強くなったよな! パパともいい勝負ができたりしてな!」

「…………どうだろうね」

 

 ……多分できるんじゃないだろうか?

 勝てるかどうかまでは分からないが。ベジータさんも相当な修行をしているようだし。 

 

 俺達は、周りの人達には内緒で『精神と時の部屋』で一年間だけ修行をしていたのだ。お母さんと兄ちゃんには、トランクス君の家で泊まりに行くと言っている。逆にトランクス君は僕の家に泊まりに行くと言って家を出てきたらしい。

 今では俺達二人は、昨日までとは比較にはならないほどの充実した気をその身に宿している。体もお互い一回り大きくなっている。

 

 ――目的は勿論、魔人ブウとの戦いに備える為。

 

 トランクス君には魔人ブウのことは言えないので、今日久しぶりに皆で集まるから、うんと強くなって周りを驚かせようと提案したわけだ。当然トランクス君は喜んでその提案に乗って来た。まあ、正直俺も周りを驚かせたい気持ちはあったから嘘ではないのだが。

 精神と時の部屋に入れる時間は二年間。その期間を過ぎると入り口が無くなってしまう。修業期間を二年間ではなく一年間だけにしたのは、勿論理由がある。……まあ、俺達なら時間を気にせずともゴテンクスになって次元の壁に穴を開けて強引に脱出することができるかもしれないが。ドラゴンボール好きの俺はちゃんとフュージョンの動きも覚えてるし。けど流石に不確定要素が大きい為やめておいた。

 

「それにしても、まさかあんな超サイヤ人の変身があるなんてな! 俺達まだまだ強くなれるな!」

 

 すっかり強くなることに魅力を覚えたトランクス君が楽しそうにそう言った時だった。天下一武道会の会場がある島が見えてきた。気を探ると既に兄ちゃん達は会場にいるようだ。そのまま俺達は、気を頼りに兄ちゃん達の元へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

「うわーすっげぇ人だな……、これ全部今日の試合の観客か?」

「そうみたいだねー。こんなにいっぱいの人達初めて見たよ」

「なんか、皆サタン、サタンって言ってるけど、そんなに凄いのかな? 世界チャンピオンらしいけど」

「…………さあ?」

 

 天下一武道会の会場に来た俺たちが、そんな雑談をしながら兄ちゃん達を探しているとようやく見つけた。

 

 ……うわぁ、すげぇ。

 

 クリリンさんに18号さん、ヤムチャさん、亀仙人、ベジータさんにブルマさん、ピッコロさんもいる。まだお父さんはいないようだが、ここまでドラゴンボールメンバーが集まっているのは壮観である。感動のあまり涙が出そうになりつつ、そのままトランクス君と近づいていく。

 

「――あっ、悟天! それにトランクスも!」

 

 最初に気付いたのは兄ちゃんだった。例のグレートサイヤマンの格好である。……うーん、かつてはダサいと思っていたのに今では格好良く見えてしまうから不思議だ。兄ちゃんのその言葉に横にいたお母さんが鬼の形相でこちらに振り向いてくる。

 

 ……やっぱり怒ってるか。いや、そりゃあ怒るか。嘘ついたわけだし。

 

 力では圧倒的にこちらの方が上なのに、お母さんに怒られると怖いと感じるのはなぜなのだろうか? 全身がガクブル震えるんだよな……。

 ちなみに近くにいたブルマさんも怒り顔でトランクス君を睨んでいる。「……ひ、ひぇぇ、ママ怒ってる」と、トランクス君も俺同様に恐怖し、顔が青ざめている。

 

「悟天っ! おめぇどこさ行ってだ!! ブルマさんの家に泊まるって言ってたのに、嘘じゃねえかっ!! ……って、悟天? なんだか体が大きくなってねえか?」

 

 修羅と化すお母さんだったが、俺が一回り大きく成長していることに気付いたようで驚いている。同じタイミングでブルマさんも我が子の突然の成長に気付いたようでポカンとしている。

 

「ご、悟天。その体……、それに抑えているけど気の量も大幅に上がっている……。……これは、まさか精神と時の部屋に行ってたのか?」

 

 兄ちゃんは自分も経験があることからか、すぐに俺とトランクス君が精神と時の部屋にいたことを見抜いてくる。ばれるとは思ってたけどこんなにすぐばれるとは。

 

「えへへ、正解! 流石、兄ちゃん。僕とトランクス君で一年間、修行してたんだ! 強くなる為にね!」

「そ、そうそう! 言っておくけど俺達、滅茶苦茶強くなったんだからな! 覚悟しておいてよ!」

 

 怒られるのを誤魔化せないかなーと明るくそう言うと、トランクス君も俺の意図を理解してか乗っかってくる。すると、皆驚きと呆れが混ざったような表情を浮かべる。

 

「……はぁ、隠れて一年間も修行なんて……、こんなところまで悟空さに似ちまって……」

「まあまあお母さん……」

 

 お母さんは額に手を当て、苦い表情を浮かべている。俺が隠れて修行をしていたことは、あまりお気に召さなかったらしい。

 ……いいじゃん、修行。噓ついたのは悪かったけど……。

 

「はぁ……、ベジータといい、本当サイヤ人って皆こうなんだから」

 

 同じく呆れるブルマさん。その横にいたベジータさんは口にこそ出さないが、修行をした俺達に興味があるのか、探るようにこちらを見つめている。

 ちなみに他の人達は、「はは、流石は悟空の息子じゃ」、「まったくだ」、「その年であの部屋で修行って……末恐ろしいな」といった反応。微笑ましいものを見るような感じだ。

 ちなみに俺たちはその後、揃って説教を食らった。やはり噓をついて一日行方を眩ませたのがいけなかったらしい。どれだけ強くなっても俺たちはまだまだ子供ということらしい。

 

 

 

「……なんか思ってた反応と違うな。もっと皆驚いてくれると思ったのに。周りには呆れられてるし……、ママには怒られるし……」

 

 説教後、俺にそう言うトランクス君は少し涙目である。説教をくらったのが堪えたらしい。

 

「まあまあ、トランクス君。実際にどれだけ強くなったかを見てもらえれば驚いてくれるよ」

「……そうだよな? ……よし、進化した俺を見せてやるぜ。早く大会始まってくれないかな?」

 

 ちなみにピッコロさんだけは唯一、俺達が精神と時の部屋で修行していたことを知っていた。神様の神殿にいるわけだし当然だが。少し離れたところにいるピッコロさんは、怒るお母さんとブルマさんを見て気まずそうにしていた。まあ、俺たちが絶対秘密にしてと頼んだのからピッコロさんは悪くないわけだが。……本当、ピッコロさんは良い人だと思う。

 

 

 

 そんなわけで、ひと騒動が収まり、クリリンさんが「それにしても悟空、まだなのか?」と呟いた時だった。

 

 ――その時は来た。

 

 力強く、これまで感じたどんなものより穏やかで充実した気。傍にいるだけで安心感を与えてくれるような不思議な感じ。

 俺達の後方に突然現れた、天使の輪を頭上に浮かべた俺と瓜二つのその者は、嬉しそうに、そして少年のようにワクワクした様子で俺達を見つめる。 

 

「やっほー! はは、結構変わっちまったかな……、皆。……でも、元気だったか?」

 

 お父さん――孫悟空が帰ってきた。

 




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