孫悟天に憑依したので最強を目指す   作:なっき

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第三話

 ……本当にお父さんって愛されているんだな。

 

 皆がお父さんとの久しぶりの再会を心から喜んでいる。特に兄ちゃんとお母さんのあれほど嬉しそうな様子は初めて見た。いつも俺の面倒を見て育ててくれた二人が涙をボロボロ流すものだから、こちらもつられて泣きそうになってしまった。原作を知っている俺は二人の気持ちが痛いほど分かるから一層心にくるものがあった。

 

 ……それにしても本当にそっくりだ。成長した自分自身を見ているようだ。

 

 誰よりも早く超サイヤ人3の領域にたどり着いた天才。

 現時点で最強の実力の持ち主を前に俺の鼓動が早まっていく。

 

「……ん?」

 

 再会のやり取りがひと段落したタイミングでお父さんがこちらに気付いた。顔が自分と同じだからだろう、驚いたように口をポカンと開けている。そのことに気付いたお母さんが可笑しそうに微笑みながらこちらを見つめてくる。

 

「……悟天、お父さんだぞ」

 

 お母さんのその言葉にお父さんが「ひゃー、そっくりだと思ったらやっぱり、オラの子か!」とたまげている。俺がどう反応したものか困っていると、お父さんが歩み寄ってくる。お父さんが浮かべる表情は、――とても穏やかで優しい。そのまま傍まで来たお父さんは俺を抱きかかえると軽々と持ち上げる。

 

「――そっか、悟天か、元気そうだな! ――はは、本当にオラにそっくりだ!」

 

 楽しげな様子でそう言うお父さんだが、すぐにはっとしたように何かに気付いた様子を見せる。そして、実に嬉しそうにぱぁっと表情を明るくすると、

 

「……悟天、おめえ相当な修行をしているだろう? 分かるぞ、その年でてえしたもんだ! 流石、オラの子だ! こりゃ、今日の大会楽しみだ!」

 

 目をキラキラとさせながらそう言うお父さん。これは強い者を見つけた時に見せる表情。これも俺と同じだ。そしてお父さん――孫悟空にそういう風に見て貰えたことは素直に嬉しく、そして誇らしいと思う。

 

「……はぁ、本当悟天は悟空さに色々とそっくりすぎるだよ。時間さえあればずっと修行してるんだべ」

「ははは、やっぱしそうか!」

「……まったく、笑いごとじゃないだよ」

 

 困り果てたようにそう言うお母さんだが、お父さんとやり取りするその様子は楽しそうだ。七年間、ずっと一人で俺と兄ちゃんの世話をしてきたもんな……。兄ちゃんも嬉しそうにお父さんとお母さんのやり取りを見守っていた。

 

 

 

 

 

 その後、俺たちは大会のエントリーをするべく受付までやってきた。

 

「えー!? 少年の部!? いいよ、そんなの!! 大人達のところに混ぜてよ! 悟天もその方がいいよな?」

「当たり前だよ!! そんなのいいよ!! 僕たち強いから! 他の子達の為にも絶対そのほうがいいよ!」

 

 俺とトランクス君は受付のおじさんに猛抗議していた。天下一武道会はルールが昔と変わって、15歳以下の子供は少年の部で戦うことになってしまうのだ。さらに優勝者は、ミスターサタンと戦えるという余計な特典付きという。

 

 ……くそ、大人たちのところならクジ運次第で強い人と戦える可能性もあるのに! 途中でバビディ達の下っ端が横やりを入れてきて戦えない可能性もあるが……。年齢だけは修行だけではどうしようもない。ウーロンさんに変化の術でも教えて貰ったらよかった。

 

「だめだめ!! 決まりだから!!」

 

 そう言われた俺たちだったが諦めない。俺は、「じゃあこれを見てよ! 僕たちの実力が分かるから」と必死なあまり、まあまあな威力の気功波を適当なところに打とうとしたところ、兄ちゃんに「悟天、もう諦めろ!」と止められてしまった。

 結局俺とトランクス君は原作通り、少年の部での出場となった。

 

 

 

「ちくしょうっ!! 大人達と戦ってみたかったのに!!」

 

 選手控室にて地団駄を踏んで悔しがるトランクス君。気持ちは凄く分かる。

 周囲を見ても幼さが抜けきらない子供ばかり、やる気が出るわけが無い。……まあ、俺も子供だけど。

 

「……なあ、悟天」

 

 俺が落胆していると、トランクス君から声がかかる。視線を向けると、そこには先ほどのまでの悔しがる様子とは一転、悪戯心に満ちた表情を浮かべるトランクス君がいた。こういう時トランクス君は大抵、凄く面白いことを考えている。

 

「どうしたの?」

「こうなったら大会中に俺たちの実力を最大限発揮してやろうぜ?」

「どういうこと?」

「――例の超サイヤ人に変身しちゃうんだよ! 精神と時の部屋で身に付けた変身だから、まだ誰も知らない! 大人達もきっと驚くぜ!」

 

 …………滅茶苦茶面白そうじゃないか。

 

 やっぱり最高だ、トランクス君。

 ちなみにこの大会中、超サイヤ人に変身することは禁止されている。先ほど兄ちゃんに釘を刺されたばかりだ。理由は、セルとの戦いの時にテレビを通して超サイヤ人としての姿を多くの人に見られているからだ。あまり正体を知られたくない兄ちゃんらしい考えだ。

 ……兄ちゃんには悪いと思う。ま、でもいいよな。どうせばれるんだし。原作通りいけばだけど。

 気を付けるとしたら、俺達が変身することによって、バビディの手下である二人組が襲ってこないかどうかだ。変身した俺たちは、魔人ブウ復活の為の絶好のエネルギー源だろうから。

 襲ってきたら……、んーそうだな。軽く攻撃して気絶させたらいいか。後でバビディ達の宇宙船の場所を聞き出せばいいだろう。その辺の細かいところは、多分界王神様が対応してくれるだろう。まあ、そもそもあの二人組が少年の部の会場まで来るか分からないが。

 

「やろう、トランクス君!」

「よし! でもあくまでも真剣勝負だからな! 最近、負け越してたから絶対今日は勝ってやるからな、悟天!」

「勿論だよ! 今日も勝つよ!」

「よし、そうと決まればプランを練るぞ! いきなり変身するのもあれだから――」

 

 

 

 

 

 ほどなくして少年の部が開催したが、展開は予想通り。俺とトランクス君は苦も無く、あっという間に決勝まで駒を進めた。

 年齢が二桁に届かないにも関わらず、圧倒的強さを誇る無名の俺達に会場の人間は大興奮。決勝戦が始まる瞬間を今かと待ちわびている。

 そして、その時は来る。

 

「皆さん、お待たせいたしました! 少年の部、決勝戦を行います!」

 

 という、例のサングラスをかけた司会者の方の案内によって、会場全体が湧き上がる。俺とトランクス君がリングに上がると、より一層大きな歓声巻き上がる。その中にはお父さんやお母さん、クリリンさんのものも含まれている。

 ……たまには、こういう大勢の人に見られて戦うってのもいいな。

 いつもとは異なる環境下で戦えることに喜びを感じつつ、そのまま歩みを進め、トランクス君と対峙する。最初は不満がっていたトランクス君も、早く戦いたいと言うように不敵な笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。

 

「トランクス君、じゃあいくよ」

「……あぁ、負けないぜ、悟天」

 

 短く言葉を交わした俺たちは、互いにお辞儀をして構える。

 

「――それでは、始めぇっ!!」

 

 試合開始の合図と同時に俺とトランクス君は動く。互いが一瞬で間を詰め、そこから激しい攻防を繰り返す。瞬き一つする間に無数に繰り出される拳や蹴り、頭突き――それらを互いに的確に躱し、防ぎ、カウンターに繋げていく。拳がぶつかり合うたびに衝撃波が発生し会場を揺らす。あまりの高次元の戦いに、あれほど湧いていた観客達は何が起きているのか理解できず、言葉を失う。

 シンとした会場の中、俺とトランクス君はまだまだこんなもんじゃないぞと言うように、その動きをさらに加速させていく。

 

 十分間ほど経っただろうか。相も変わらず一進一退の攻防が続いていた。互いに体は暖まりフルパワー同士での戦いだ。最初こそ戸惑っていた観客達も今や、俺たちの戦いに夢中になり、大歓声を送っている。

 

 ――ここだっ!!

 

 こちらがわざと隙を見せると、それにつられたトランクス君が大振り気味のパンチを繰り出してくる。それを最小限の動きで躱し、そのままトランクス君を思い切り上空に向けて蹴り上げる。

 

「ぐっ、くそっ!」

 

 しまったと言わんばかりに苦悶の表情を浮かべるトランクス君。

 ――まだまだ!

 俺は一瞬で上空に先回りし、トランクス君を地面に叩きつけべく、渾身のかかと落としを放つ。が、これは寸前で体を捻る形でうまく躱されてしまう。避けられたことで俺とトランクス君の上下の位置関係が逆転する。

 ……まあ、読んでるんだけどね。

 無理やり攻撃を避けてバランスを崩しているトランクス君に、流れる様な動作で体勢を整え、殴りつける。しかし、流石はトランクス君。直撃は許してもらえず交差した腕で防御されてしまった。だが、構わずそのままさらに上空高くに放り投げるようにその拳に力を込めて殴り飛ばす。

 ――これだけ上空に飛ばせば多少激しい攻撃をしても観客達に被害は及ばない。

 

「――はあああ!!」

 

 息をつく間もなく俺は上空に両腕を突き出し、手の平をトランクス君に向ける。気を集中させ、無数の気弾を手の平から放っていく。気弾を操り、トランクス君の逃げ場を奪うように360度全方位から着弾させる軌道を描かせる。

 トランクス君は吹っ飛ばされつつも、状況を把握し、すぐさま上空で踏みとどまる。そのままトランクス君は一気に膨大な気を体内の一点に集中させる。――そして気弾が着弾する寸前、集中させた気を、自身を中心として全方位に向けて一気に放出させ爆発させる。

 

 ズドオオオオオッッンン!!!

 

 鼓膜を破らんとするほどの大爆発は半径数十メートル以上にも及び、俺が放った気弾は全てかき消されてしまう。さらに俺は爆発に巻き込まれないように慌てて回避するが、その先にトランクス君が先回りしており、地面に向かって思い切り殴りつけられる。……くそ、やられたっ!

 

 ――ダァァンンッ! と大音量を上げて、俺はリング上に足を突く形で着地する。上空数十メートルの位置から思い切り叩き付けられたものだから、リングの一部が砕けてしまう。

 数秒後、俺の前にトランクス君がスーと降りてくる。

 

「へへへ、やっぱり悟天と戦うのは楽しいな」

 

 その言葉に嘘偽りが無いと言うように、満面の笑みを浮かべてそう話しかけてくる。

 

「うん、僕もだよ、トランクス君」

 

 俺もトランクス君に応える。多分、俺もさぞかし楽しそうな表情を浮かべていることだろう。

 

 ――でも、足りない。

 ――もっと、――もっと激しく戦いたいっ!

 

「トランクス君!! そろそろいこうよ!!」

 

 俺は、もう待ちきれないとばかりにそう叫ぶ。

 

「へへ、そうだな! よし、いこうぜ、悟天!!」

 

 そう言い切るや否や、俺とトランクス君は同時に気を集中させていく。みるみるうちに膨張していく気。

 観客達は突然戦いを中断させた俺達に不審な目を向けてくる。しかし、次の瞬間、それは驚きに変わることになる。

 

「「はああああっっ!!!」」

 

 俺とトランクス君が叫ぶと同時に眩い白い光が辺りを包む。

 光が収まった直後、そこにいたのは、黄金色のオーラを纏い、激しく逆立った金色の髪に緑色の瞳を持つ二人の戦士だった。放たれるあまりのエネルギー量に、二人の周囲には青白い無数のスパークが発生している。ただそこにいるだけ、それだけなのに、会場が――いや大地が二人のパワーに耐え切れないと言うように激しく揺れ動く。

 

 ――――超サイヤ人2。

 

 伝説と言われた超サイヤ人をさらに超えた形態。

 先ほどまでと比較して100倍もの戦闘力を得た俺たちは、互いの顔を見てやはり楽しそうに笑い、同時に再び構えを取った。

 

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