孫悟天に憑依したので最強を目指す   作:なっき

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第六話

 天下一武道会、その会場の屋根の上に全身を衣服で覆い、やたらと胴体が長く手足が短い不自然な見た目の怪しい男が立っていた。

 

「……へへへ、楽しみだな悟天?」

「ひひ、そうだねトランクス君」

 

 肩車しているトランクス君と俺は小声で悪そうな表情を浮かべ、そんなやりとりをしていた。尤もトランクス君が楽しみにしている内容と俺が楽しみにしている内容は異なるが。

 衣服に開いた穴から覗いた先には、大人の部に出場する選手が勢ぞろいしている。試合が終わった後、大人たちの会場に来た俺達は原作通りマイティマスクになりすまし大人の部に混ざっていた。これからの展開を考えるとやはりお父さん達の近くにいた方が素早く行動できると考えてのことだ。行動とはつまり、いち早くバビディ達の元までたどり着くこと。魔人ブウもそうだが、ダーブラも相当の手練れ、是非一度お目にかかりたいと思っている。できれば一戦交えたいとも。

 後は、もし流れが変わって天下一武道会がそのまま開催されたら大人達と戦えると考えたからだ。どちらに転んでも構わない。

 

 大人たちの部の対戦の組み合わせは原作通りの結果となった。そして特に何か予想外のことが起こることも無く、そのまま第一回戦であるクリリンさんの戦いが一瞬で終わる。続いてピッコロさんが界王神様相手に棄権。そしてビーデルさんとスポポビッチの対戦が始まった。ここも原作通りの展開となった。一方的にいたぶられ始めたビーデルさんを見て兄ちゃんが切れた、とあまりにも同じ流れで逆に驚いた。

 

 その後、ビーデルさんに仙豆を与え戻って来た兄ちゃんとキビトさんの戦いが始まった。例の如く兄ちゃんが超サイヤ人になるように促されている。中々戦いを始めない二人に苛立つ観客。しかし一方で俺は密かにワクワクしていた。

 

 

 

 ……もしかして、兄ちゃんの全力が見られる?

 

 

 

 兄ちゃんはこの二年間、勉強の合間に修行を行っていた。あくまで勉強がメインだからそこまで力を付けることはできない、精々現状維持くらいだろう……普通は。

 だが俺は知っている。

 兄ちゃんがこの大会への出場を決めてから、精神と時の部屋に一日籠っていたことを。

 

 つまり兄ちゃんは一年間、猛修行している。

 

 ある日、兄ちゃんが一日家を空けて帰ってきた時、明らかに以前より気が充実していたのだ。基礎能力が底上げされていることは明白だった。しかし、兄ちゃんに聞いても「はは、内緒だよ」とはぐらかされてしまう結果に終わった。

 精神と時の部屋で修行したに違い無いと確信した俺は早速ピッコロさんを問い詰めてようやく聞き出せたのだ。

 どうも俺に実力をどんどん詰められて兄としてどうにかしないといけないと考えていたところに、父さんが一日帰ってくるのを知った。そこで強くなって俺を驚かせ、また父さんに強くなった自分を見てもらいたいと思い、精神と時の部屋での修行に踏み切ったらしい。ちなみに修行の指導役としてピッコロさんも精神と時の部屋に入っていたらしい。

 

 俺は拗ねた。

 

 どうしてそんな面白そうなことを俺に内緒でするのかと。滅茶苦茶一緒に修行したかった……。

 しかし最高に嬉しかったのも事実。

 戦いが好きでない兄ちゃんが自らの意志で真剣に修行してくれたのだから。俺には分かる。確実に兄ちゃんはセルとの戦いの時より強くなっている。セルを直接見たわけではないが、色々な人から聞いたおかげでセルと戦った時の兄ちゃんの強さはある程度把握している。一体どこまで強くなっているのか。早く見てみたいと思うのは自然なことだった。

 

 そしてその時は来る。

 

 

 

「超サイヤ人の壁をさらに越えた超サイヤ人……にまでなってあげましょうか?」

 

 

 

 兄ちゃんがキビトさんに向かってそう言う。なぜか言葉の途中で少しの間があった。その理由を考える間もなく兄ちゃんが気を一気に解放していく。

 

「はあああっ!!」

 

 気合の咆哮と共に、どんどんと兄ちゃんの気が膨れ上がっていく。爽やかで人の良さそうな青年でしかた無かった兄ちゃんから猛々しい気迫が辺りにまき散らされていくその姿はただただ格好いい、鳥肌ものだ。やがて気の膨張が最高潮に達する。

 

 ……す、すごい。

 

 超サイヤ人2。

 しかし、俺やトランクス君とは比べものにならない。戦闘力は俺達より遥かに上だ。離れて見ているにも関わらずその暴力的なまでの気に押しつぶされそうになる。兄ちゃんを見ていたトランクス君も「……す、すげぇ」と驚愕している。一年間修行したとはいえ、五年間のブランクがあってこれだ。兄ちゃんの底なしの潜在能力が垣間見える。

 しかし違和感がある。

 これだけの全力の変身をしておきながら、兄ちゃんの気はあまりに穏やかで静かなのだ。超サイヤ人になった時特有の興奮状態がほとんど見られない。それを証明するように兄ちゃんは涼し気な表情を浮かべている。通常の超サイヤ人でなら興奮状態を抑えられるようになっていたが、まさか2の状態でもできるようになったのか? だとしたら凄いことだ、超サイヤ人2を極めているに他ならないのだから。

 まさか既にさらにその上まで……?

 いや、でもそんなこと可能なのか……? 

 だとしたら……。

 俺は思わず笑みを浮かべる。

 

 ベジータさんと父さんの反応も気になり視線を移す。

 ベジータさんは、兄ちゃんからのプレッシャーに圧されつつも嬉しそうに不敵な笑みを浮かべている。まるでそれでこそ倒しがいがあるとでも言いたげだ。

 そう言えば以前、トランクス君がベジータさんに兄ちゃんが修行を再開したことを伝えると、嬉しそうにしていたと話していたのを思い出す。本人は否定したらしいが。なんやかんやベジータさんって兄ちゃんの強さを認めて期待しているような気がする。そもそもこの大会に兄ちゃんが出ることになった時もベジータさんはそれを理由に大会に出ることにしていたし。

 それにしても、ベジータさんの実力は兄ちゃん以上に不明確であったが、今の兄ちゃんを見ても気負けしていないあたりやはりベジータさんも相当強くなっているらしい。超えるべき存在がこんなにいてくれるとは素晴らしい。

 そして最後に父さん。

 

 父さんは兄ちゃんを見て今日一のキラキラとした嬉しそうな表情を浮かべている。まさに「おら、わくわくすっぞ!」と言い出しそうな雰囲気である。確かに兄ちゃんが強くなっているのが嬉しいのは分かるが、いささか大げさな反応な気がする。

 

 疑問は残るが、何はともあれ原作より遥かに強くなっている兄ちゃんを見て、修行をしていて良かったと改めて思う。ドラゴンボールファンがこの光景を見たら涙するに違いない。

 しかし喜びも束の間。この後の展開を思い出し、途端に気が重くなる。

 

 ……この後、兄ちゃんが襲われるんだよな。

 

 界王神様の策略により兄ちゃんがスポポビッチとヤムーの二人に襲われるのだ。やはり大好きな兄ちゃんが襲われるのを黙って見るのはきつい。我慢できなくて二人を攻撃してしまったらどうしよう。……気を落ち着けて頑張って見守ろう。

 そんなことを考えているとスポポビッチとヤムーが兄ちゃんに向かって飛び出した。当然、二人の接近に気付く兄ちゃん。

 

「なんだ! 貴様らっ!」

 

 二人の方へ振り向き構えを取る兄ちゃん。しかし次の瞬間、界王神様によって拘束されてしまう。このままあのじょうろみたいなやつを刺されてしまうのだろう。……あぁ、兄ちゃん。

 

「がっ!? くっ、……が、ああああっ!!」

 

 ……え?

 

 これは予想外。兄ちゃんが額に血管を浮かび上がらせるほど気を全力で凝縮させ、気合として一気に解放する。それと同時になんと拘束を打ち破ってしまった。さらにスポポビッチとヤムーは兄ちゃんの気合いによって上空に吹き飛ばされてしまう。間近にいたキビトさんも飛ばされまいと必死にその場で踏ん張っている。少し遅れてこちらにもその余波が突風となって襲い掛かってくる。物凄い気だ。観客席からも悲鳴が上がる。

 

「す、すげえな悟飯さん。なんて気合いだ……てかあの二人何者なんだ?」

 

 トランクス君の呟きに反応することもせずに急いでリング上に視線を戻す。

 

「ば、馬鹿な……、界王神様の拘束を破ってしまうとは……、下界にこんな人間がいるとは……」

「……はあ、はあ……えっ、界王神様!?」

 

 信じられない様子で放ったキビトさんの呟きに兄ちゃんも驚いている。スポポビッチとヤムーの二人は、上空に留まったまま二人して何かを相談している。そしてそのまま尻尾をまいて逃げて行ってしまう。恐らく、自分達では敵わないと判断し、バビディ達の元へ向かったのだろう。二人としては強いエネルギーを持つ存在がいたという情報を持ち帰るだけでも十分だと踏んだのかもしれない。

 

 ……やっぱり原作の兄ちゃん刺され損だったじゃん。

 

 それからどうなるのか見守っていたが、父さん達は界王神様と共にスポポビッチとヤムーが飛んでいった方へ飛び立つ。原作と異なるのは、無傷である兄ちゃんとキビトさんも同じように飛び立っていってしまったこと。

 

「お、おいおい……。何が起きてるんだよ、みんな行っちゃったぜ」

 

 飛び立っていく皆を見て呆然と呟くトランクス君。俺達は離れたところから試合を見ていたので、父さん達がどんな会話をしていたか分からないのだ。よし、ここだ。ここで動くんだ。

 

「……ねえねえ、トランクス君」

 

 そう言いながら俺は肩車しているトランクス君を降ろして衣服の下から出る。

 

「お、おい! 悟天! そんなことしたらばれちゃうじゃないか!」

 

 トランクス君の言う通り観客達の一部から「お、おい、あれ少年の部の子達だぞ」と気付かれてしまう。しかしどうでもいい。

 

「それよりもだよ、トランクス君! 僕達も行こうよ! 絶対何か面白いことが起きるよ!」

 

 俺の言葉に一瞬呆気にとられるトランクス君。しかし、すぐににんまりとした笑みを浮かべる。流石トランクス君、それでこそ悪友だ。

 

「……そうだな、悟天の言う通りだな! よし、俺達も行こう!」

 

 そのまま俺達は父さん達を追うように飛び立った。

 




めっちゃくちゃ久しぶりです……。
覚えている人いますかね?笑
いや、本当遅くなりました。頑張って投稿続けます。

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