孫悟天に憑依したので最強を目指す 作:なっき
「……それで? 2人はおめおめとここに逃げ帰ってきたわけなの?」
巨大な頭部と瞳、全身の黄土色の皮膚をローブとマントで包んだ小柄な存在、バビディがスポポビッチとヤムーに問う。笑みを浮かべているもののその口調は冷たく侮蔑の意が込められていた。
傍に控えるプイプイとダーブラもやはり二人を馬鹿にしたように冷笑を漏らしている。
「ち、違います! 強いエネルギーを持つ者を見つけたのですが我々では歯が立たなく!」
「そ、そうです! この計測器では測定できないほどの力を持つ者を見つけたのです。そいつをあなたがたが捕えてエネルギーを奪えば、魔人ブウの復活に近づくはずです!」
必死にバビディに説明する二人は、全身から冷や汗が吹き出し、恐怖に怯え切っている。主人がご立腹であることを二人も感じ取っているのだ。
「計測器で測定できない? ……ふふふ、何を言うかと思いきや。命令をこなすこともできないばかりか言い訳すらまともに言えないらしい」
地球に強い人間がいないと確信しているダーブラが呆れたようにそう言い放つ。
「全くだね。……僕はお前達のような無能が大嫌いなんだよねー。役に立たないのなら早く始末しないとね」
バビディは世間話でもするような軽い口調でそう言うと突然魔術を発動させてスポポビッチの体を操り爆発させてしまう。続いてヤムーも部下に始末させてしまう。
無能な部下を屠ったことで少し腹の虫が収まったバビディは嬉しそうに邪悪な笑みを浮かべる。
「……さて、確かにあの二人は能無しだったけど計算通り餌役程度にはなったらしいね」
「ふふ、そのようですな……。あれで隠れているつもりらしい。全部で……7匹です。その内3匹は素晴らしいエネルギーを持っているみたいです」
「あの三人を宇宙船の中に誘い込んでさ、エネルギーを奪うのが確実だよね」
「……しかし、界王神がそうはさせないでしょう」
「他の雑魚を適当に倒せばきっと怒って宇宙船にやって来ると思うんだよね。……ああ、でも界王神には手をださないでね」
「……お任せください」
そうしてダーブラを残してバビディとプイプイは宇宙船に入っていく。
残されたダーブラは敵に気付かれないように力を込めていく。
「……さて、やるか」
小さく呟くと同時に猛スピードで隠れている七人の元にまで詰めていく。ダーブラが最初に狙ったのは確実に不要と判明しているキビト。敵側もこちらが接近する直前に勘付かれていることに気付いたようだが遅い。ダーブラは一瞬でキビトの目の前にまでたどり着く。片腕を突き出し、後は気功波を発射させるだけ。それで間抜けな表情を浮かべているキビトは跡形も無く散るだろう。
……死ねっ!
「突撃ぃっ!!!!」
ダーブラがまさに攻撃をしようとした瞬間、突然子供の叫びが聞こえる。
巨大なエネルギーが猛スピードで近づいて来るのをダーブラは瞬時に感じ取る。しかしそれはあまりに速かった。その正体を確認する間も無くダーブラに強烈な衝撃が襲う。
「があっ!!??」
あまりの威力にダーブラの意識は刈り取られ、後方遥か遠くにまで吹っ飛んでいく。そのまま数キロ離れた岩山に突っ込み、その中心部までめり込んだところでようやく止まった。
そしてダーブラに攻撃を放った本人は、「間に合った~」と安堵するように幼い声を漏らす。
「ご、悟天!? どうしてお前がここに?」
悟飯が驚愕の表情を浮かべる視線の先には超サイヤ人2に変身した悟天がいた。先ほどの攻撃方法は至極単純。悟天の超サイヤ人2での全力加速からの全力頭突きだ。
悟天は変身を解き、「兄ちゃん! 面白そうだから来ちゃった!」とサプライズを成功させたような満面の笑みでピースサインで悟飯に応える。
呆然とする七人を前に悟天はやはり嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。
よっし! 間に合った。犠牲を出さずに済んだ。
「た、助かった……」
「ダ、ダーブラが吹っ飛んだ……。あの子供はいったい……?」
キビトさんは胸に手を当て命拾いしたことに安堵し、界王神様はダーブラに攻撃した俺をまん丸に見開いた目で見つめている。
無事驚いてもらえたようで良かった。
……それにしてもさっきのがダーブラか。
不意を突いたことでそこそこの威力はあったはずだ。現にそれなりのダメージを食らってそうではあるが、ダーブラの気はまだ健在だ。流石に魔界のトップを名乗っているだけのことはある。そう来なくては。頭突き程度でまいってもらっては困る。
……さてさて、それでは早速ダーブラと続けて戦うか。
唾にだけは気をつけないとな。
俺が気合を入れて腕をぶんぶんと回しながら戦う準備をしていると慌てたようにトランクス君が飛んで来た。
「おい悟天! いきなり変身して置いてくなよ! ……ってこれはどういう状況?」
トランクス君は状況がよく分からないようで、宙に浮いたまま困惑したようにあたりをきょろきょろと見渡している。
「……全く、トランクスまで来たのか」
息子が来ていることに気付いたベジータさんはそう言いながら呆れたように溜息を吐く。
「ははは、いやーさっきの一撃は凄かったなぁ! セルの時の悟飯くれえの強さか? あの時の悟飯より若いのにてえしたもんだ!」
父さんは勝手に付いて来た俺達を咎めることなく寧ろ歓迎するように楽しそうに笑う。
「父さん! 笑い事じゃないですよ! 悟天、トランクス、ここは遊び場じゃないんだ。二人は早く帰るんだ!」
「……その通りだ、ダーブラとかいう奴の攻撃を防いだのはよくやったが、ここは危険だ」
そんな中、兄ちゃんとピッコロさんは俺達に帰るよう促してくる。二人のことは大好きなのだが過保護なところが玉に瑕だ。赤ん坊を単身で他の星に送り込む鬼畜なサイヤ人を見習ってほしいものだ。
「…………いや、いい機会だ。トランクスに悟天、お前達二人であのダーブラとかいうふざけた野郎を叩きのめせ。実戦経験を積むにはちょうどいい相手だ」
しかし、ベジータさんが素晴らしい提案をしてくれる。
流石……それでこそサイヤ人の王子というもの。
でも意外だ……。
ベジータさんは今、父さんと早く戦いたくてしょうがないはず。自分でとっととダーブラを倒せば済む話なのだ。多分ベジータさんなら一瞬で片づけられるだろう。それなのにこんな提案をしてくれるという事は、やはりベジータさんは俺達二人を認めてくれているということなのだろうか?
「ちょ、ちょっとベジータさん! 何を言っているんですか? 相手はセル並みの強さはあります! 危険ですよ! それに二人はさっき大会で戦って消耗もしているはず……」
怒れる悟飯を前にベジータは何かを考えるように瞳を一瞬閉じる。そして瞳を開くとゆっくりとした口調で答える。
「……トランクスと悟天の強くなりたいという想いは本物だ。そしてサイヤ人は命を懸けた戦いを乗り越えてこそ強くなるものだ。悟飯、お前がそれを一番よく知っているだろう。しかしこの二人は実戦の経験が圧倒的に不足している。……俺は興味があるんだよ。凄まじい速さで成長するこいつらがどれだけ強くなるのかにな……」
ベジータさんがそう言うと皆、驚愕の表情を浮かべる。
当然だ、基本的に自己本位なベジータが息子であるとはいえ自分以外の誰かにここまで言う姿を誰が想像できただろうか。
まさかベジータさんがここまで言ってくれるなんて……。
俺は感動し胸の奥が熱くなっていた。ベジータさんは決して嘘は言わないし、滅多に人を認めない。そんなベジータさんが俺のことを認めてくれているのだ。
そんなベジータさんの言葉に最初に反応したのは父さんだった。父さんは嬉しそうに笑う。
「……はは、ベジータも変わっちまったな。……ベジータも相当強くなってるもんな、その理由が分かった気がするぞ。……悟飯、ベジータがここまで言ってるんだ、別にいいんじゃねえか? オラもベジータに賛成だ。オラも二人が強くなるところ見てみたいぞ。二人もやる気満々みたいだしよ」
父さんまで……。
尊敬し、大好きだったキャラである二人にここまで期待されてやる気が出ない訳が無い。正直、感動のあまり涙が出そうである。
……絶対に強くなってやる。
期待に応えて見せる。
事実、今の俺の強さなんてまだまだ序の口にしか過ぎない。
その為に精神と時の部屋に入れる日を後、1日残しているのだ。
トランクス君も普段厳しい父親にこんなこと言われて泣きそうになっている。そして俺と同様にやる気を出している。こんなにやる気に満ちているトランクス君は初めて見た。
ベジータさんと父さんにここまで言われてしまえば流石の兄ちゃんも反論できないのか、「……わ、分かりました。でも危険だったらすぐに助けに入りますからね」と引き下がった。ピッコロさんも同様だ。
界王神様は何か言いたげだったが、先ほどの俺の攻撃を見たこともある為か、唾に気を付けるよう注意を促すだけに留まった。
……最高だ。
まさかこんな展開になるとはな。
ダーブラと戦えることにもなった。
まあ、できれば一人で戦いたかったけど贅沢は言えない。
「よしっ、とりあえずあそこにいるダーブラとかいう奴を倒せばいいんだよな? でも唾に当たると石になるってのが厄介だな……」
「大丈夫だよ! 僕達二人掛かりで戦えば勝てない相手なんていないよ!」
そう言うとトランクス君はそうだなと楽しそうに笑う。恐らく俺も同じ表情を浮かべているだろう。今ならどんな敵だって倒せるだろう。
その時だった。
轟音と共にダーブラがいる岩山が爆発を起こし粉々に砕け散る。
どうやらようやく意識が戻ったらしい。
砂煙が晴れるとその中心には、怒り狂う魔界の王がいた。荒れ狂う気がビリビリと肌に突き刺さる。失神させられたことがよほど癇に障ったらしい。
「貴様らああっ!! この俺様を怒らせたことを後悔させてやるぞぉ!! ずたずたに引き裂き殺してやる!!」
数キロ離れていると言うのに思わず耳を覆いたくなるほどの大声が鼓膜を揺らす。ダーブラの怒りに呼応するようにここら一帯の大地が震える。
「……へー、思ったよりずっと強そうだな。少なくともミスターサタンよりは強そうだ。いけるか悟天?」
トランクス君の言う通り、ダーブラから感じる気はかなり大きい。
唾というチート技もあるし、一対一なら確実に勝てるかは不明だ。
それでも……。
「勿論! それより早く戦おう!」
「そうだな、いくか!」
俺達は待ちきれないとばかりに超サイヤ人2に変身し、飛び出した。
こんな馬鹿なことがあるのか。
俺様は魔界の王。
俺様に敵う存在などいるわけがない。
例えそれが魔人ブウだとしても。
それが、こんなガキどもに……。
ドサッ……。
悟天とトランクスと対峙するダーブラがとうとう大地に倒れ込む。
終始、抜群のコンビネーションで一切の隙を与えず優勢に戦いを進めた悟天とトランクスは、ようやく集中状態を解いてお互い向き合う。
そして、
「「いえーいっ!!」」
とハイタッチを交わすのだった。
沢山の感想ありがとうございます。
覚えてくれている人が多くて感動しました……。
それから相変わらず誤字が多くすみません、報告頂いた方ありがとうございます。