間違えて極振りしてしまったのでこのまま進めようと思います。 作:名もなき駅員
防振りを書くと夢が膨らみますねぇ…
今日も今日とてゲームを開始せんとログインするのりまんじゅう。昨日受け取った金のコインについて確認するも、情報はなしである。
「今日は【採掘】とか【採取】とかをゲットしたいかな。攻撃系スキルはもうお腹一杯だ」
のりまんじゅうは生産職である。素材集めのスキルが欲しいのに、理由などいらないだろう。
ということで出発…しようと思ったところに、見覚えのあるプレイヤーの顔が。
その顔を見ていたら、目があった。慌てて目を剃らしたのだが、足音が非常にゆっくりと、そして強く響いている。
「もしかして、のりまんじゅうさん?」
「え、アッハイ。貴女はメイプルさん…?」
鎧を纏った黒髪の子にそう問われたため、のりまんじゅうは慌てながらも答えつつ問い返す。のりまんじゅうの目が狂っていなければ恐らく、初心者兼ランカーとかいう頭のおかしい戦績を誇るメイプルだろう。
「やっぱり!そうだよ、私メイプル!そっか、貴女がのりまんじゅうさん…あ、そうだ。私のことはメイプルで良いよ!」
「そ、そうかい?それなら、私ものりまんじゅうと呼び捨てで構わないよ」
漆黒の鎧を被ったVIT化け物と、寂れた服で身を包むDEX化け物が握手を交わした瞬間だった。メイプルはのりまんじゅうとフレンド交換をした後に頼み事をしてきた。
「私欲しいスキルがあるんだけど、この盾だと手に入らないみたいで…」
だから生産職であるのりまんじゅうを頼ったと、メイプルは素直に答えた。しかし、のりまんじゅうは小道具の作製に特化しているせいで武器や防具はてんでダメなのだ。
期待するだけ無駄である。
「私は初心者だ、恐らく頼っても良いものどころか禄なものを作れないだろうね」
のりまんじゅうが罪悪感や嫌悪感の欠片もなくそう断言すると、メイプルは明らかに動揺していた。
「ええ!?だ、だってイベントで爆弾とかたっくさん作ってたよね!?」
「ああ、あれかい…あれはそういうスキルだよ。新しいものの作製は慣れていないと難しいし、そういうものはちゃんと店を構えてる人に作って貰った方が良いのではないかな?」
メイプルはそう諭されて提案を飲むものの、どこかしょんぼりした様子をしていた。
「うぅ…分かった…どうせならのりまんじゅうとお話ししたかったのにな~…」
のりまんじゅうの目の色が変わった。それならば話は別だろう。ただ仲良くしたいだけなら全然構わないし、こちらとしても助かるのだから。
「そういう事なら全然構わないけど…」
「え、本当!?じゃあ素材とスキル集めしようよ!ふふ、やった~!」
はしゃぐメイプルはどこか子供のようで、何とも可愛らしい。のりまんじゅうも承諾し、その方向性で話は進んでいくのだった。
ーー
「【悪食】!」
メイプルがそう叫びながら盾を振るうと、モンスターの命が一瞬で刈り取られる。魔力に変換するスキルの裏は、ただ一つのとんでもないスキルだけのようだ。まあ、強力には変わりないが。
「私も負けてはいられないね…【接着錬金】!」
15m以内の動かせる物体を引き寄せる特殊アイテム【吸引石】。トンカチに付けた結果、殴った地点に吸引力の変わらないただ一つの空間が出現する結果となった。
遠目で見ればまるで重力を操作しているようにしか見えない事だろう。
「それで、どこに向かうんだい?」
「もう少し先の洞窟!なるべく早く着きたいけど、二人ともAGIがゼロだしなあ…」
のりまんじゅうはどうにかして足を速くする方法を考え、そして思いつく。何ものりまんじゅうやメイプルの足が速くならずとも、他の方法で行ければよいのではないか、と。
「不安だが、まあやるしかなさそうだね」
のりまんじゅうは自身の足下に大量の爆弾を設置する。ざっと100個というところだろう。そこに乗り、メイプルを担いで姿勢を直す。
「何をするの?」
なに、簡単な事だ。足が遅いなら…
「爆弾で吹っ飛べばいいのさ!」
メイプルの響き渡る叫び声を地上に残しながら、のりまんじゅう達は空を舞う。
「うぇああああああっ!?」
ーー
「せーの…ほっ!」
「ま、またそっち!?私はいつになったら釣れるのかなぁ…」
洞窟には湖があり、そこにいる魚を一緒に釣って欲しいというのが、メイプルののりまんじゅうへの頼みだった。
「まあ、私は【DEX】が300を越しているし…」
「うーん…私は今日はもうあと二匹くらい釣ったら引き上げかな…」
つまり後40分程度らしい。のりまんじゅうは気長に待とうと釣り竿を握りなおした。
ーー
「じゃ、私はログアウトするね。付き合わせちゃってごめんね!」
メイプルから謝辞を述べられたが、こちらも楽しかったので必要ないだろう、と感謝を返す。
「大丈夫だよ、私も楽しかったし。それと、私の分の鱗を全部渡しておくよ」
のりまんじゅうは思い出したような素振りでアイテムスロットからざっと500枚ほどの鱗を出し、地面に落とすことで間接的にメイプルに渡す。メイプルはそのえげつないという言葉すら可愛く感じる量に少し驚きながらも、感謝の意を伝えた。
「す、すごい…!ありがとう!」
「謝礼はいらないよ。またね」
「うん、またね!」
別れの挨拶を交わし、のりまんじゅうはゲームハードの電源を落とした。そして布団に潜り、明日に向けて睡眠を始めるのだった。
ーー
次の日、のりまんじゅうは少し真剣な面持ちで呟いた。
「…しかし、武器や防具か…」
昨日メイプルに言われた「盾を作って欲しい」という言葉について、のりまんじゅうは一晩考えていた。それは普通ならば知り合いの軽い頼み程度のもので、出来ないならば出来ないで軽く受け流して良いものだった。しかし、なまじのりまんじゅう自身が生産職のメイン技術である武具の作成に興味を持っていただけあって、メイプルの一言はのりまんじゅうの欲求を増幅させる結果となってしまった。
「NPCショップにそういうものはなかったし、生産職限定のクエストによって手に入れられる可能性も有り得るけど…こういう場合は誰に聞くのがよいのかな?」
しかし、残念ながらのりまんじゅうはゲームを始めたての初心者プレイヤーであり、無力だった。攻略サイトで調べることが出来るとは言え、ブレイブやナプ程ではないにせよ少しはゲームをかじった事がある。故に、のりまんじゅうの中のエンジョイ精神が不要なネタバレを避けているのだ。
そんなのりまんじゅうからすれば、最早攻略サイトは敵である。
「取り敢えずはショップに行けばいいかな。敵を倒して手に入れるなんて生産職らしさがないし、ショップの可能性はかなり高い」
その時、良く聞く声が後ろから聞こえ…
「よっ」
振り向くと、そこに立っていたのは黒いパーカーと白シャツが程良くマッチし、その右手にスチール缶を握りしめた人物、白銀の鎧に埋め込まれた淡く輝くターコイズの装飾を上手く着こなし、おどろおどろしい大盾を構えた人物。
ブレイブとナプだ。
「二人とも。どうしたんだい?」
「暇なら二層攻略に挑戦しないかってのを誘いに、な。早めに攻略しといて損はないだろ?」
「そうそう。早く攻略しないと強い装備やスキルを先に取られちまいそうだしな」
ナプの誘いと、それに追随するブレイブ。
のりまんじゅうとしてもこの誘いは嬉しい限りだし、前々から攻略したいと思っていたのりまんじゅうには丁度よかった。
「分かった。それじゃあ行こうか」
ーー
普通に走るブレイブ。
盾を下に敷きスノボの要領で滑走するナプ。
爆弾で吹っ飛ぶのりまんじゅう。
移動方法はそれぞれ個性的である。
そして、危なげもなくダンジョンに到着し…
「ここを攻略すれば二層に辿り着けるんだと」
ブレイブはそう呟き、移動を開始する。それに呼応してナプ達も歩を進めていく。
早速モンスターが出現した。猪のようなそのモンスターは、ナプの大盾で防御されると同時に炭化し、粉々になって消えていった。
「えっ」
あまりに呆気なさすぎるせいで、逆に呆気にとられるのりまんじゅう。二人の視点からすると恐らく攻撃を仕掛けたであろうナプが説明を始める。
「【炎子】だ。触れたら死ぬまで燃えるんだってよ」
「おっかなすぎでは?」
思わず口からツッコミが零れるのりまんじゅう。ナプは、へっ、と笑いながら歩いていった。
ーー
重い音を立てて扉が閉まり、大樹が鹿に変形する。ボスのお出ましと言うことだろう。
ボスの足下に召喚される輝く緑の魔法陣が、戦闘開始の合図となった。
巨大な蔓が現れ、三人に向かって伸びていく。
「くさタイプって…俺との相性最悪じゃないか! 唸れ、ブリッツ…じゃなくて、かえんボール!」
そう、前述の通りナプのスキルは【炎子】。迷う事なく大盾を突き出したナプは、外殻を貫こうとする巨大な蔓を本体へ浸食するように燃やす。
またブレイブも、そんな囮役を甘んじたナプを信じ、購入した罠を大量に設置していく。
「一気に決めるか!」
Dー3と書かれた缶を鹿の周りにまき散らしながら、皆にそう伝える。
「了解」
そう返したのりまんじゅうは、爆弾を無限に召喚、発射し、ボスを追いつめていく。
前回のイベントで幾度となくプレイヤーを惨殺してきた爆弾がボスに一点を置いて飛んでいき、ボスの体力は減らされる一方である。
「【A-2】!」
ブレイブが発したその言葉に反応したのかスキルが発動し、缶を象るアイテムが形を変え、黒に統一され緑の装飾が煌めく一本の斧へと変貌した。
「で、投擲っと!」
ブレイブが投げた缶が弧を描いて飛んでいき、鹿に当たると同時に破裂した。
「【接着錬金】」
のりまんじゅうがそう小さく呟き、トンカチにアイテム【猛毒】が付与された。
「【シールドアタック】!」
鹿からのヘイトを買うも未だにダメージを受けていないナプは、余裕の表情を浮かべて盾を突き出した。
そんな三人の連係攻撃に耐えることなど当然出来るはずもなく、ボスは虚しく散っていった。そして三人は、二層進出の権利を手に入れたのである。
書いてる私自身三人の戦い方は訳が分からん。