間違えて極振りしてしまったのでこのまま進めようと思います。   作:名もなき駅員

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本編初投稿です。


器用特化(ドジ)と第一層。

「おお…何かすごい空間だね…おっと、名前か。本名はダメだったかな…となると…」

 

陬は一瞬戸惑ったが、好きな食べ物などで誤魔化そう、と迷い無く名前を選択する。

 

【のりまんじゅう】

 

彼のネーミングセンスは絶望的だった。そして変換をし忘れてなんとひらがなでスタートしてしまい、世界観とのミスマッチに軽くヘコむ。

そして、次に武器が現れた。

 

「剣、大盾、杖に槍に籠手に…これは…ハンマーだって?どれどれ…」

 

ハンマーは生産職。戦闘にはあまり向いていないが、武器防具や小道具を作ってメンバーを手助けし、勝利に貢献する縁の下の力持ち。

 

「面白そうな職業だ…やってみるのもいいかもしれないね」

 

のりまんじゅうは色々な格好いい武器よりも、一見地味で使う人の少なそうな生産職に惹かれた。これでガンガン強くなってみようと決意を固め、ステータス画面を見る。

 

「ステータス…ここはひとまず【DEX】に振ってその後にバランスを見ながら振り分け…あっ」

 

なんとのりまんじゅうは間違えて【DEX】に全部振ってOKを押してしまった。焦る彼は戻るボタンに気付かないため、腹を括って極振り状態でやろうとしてしまう。

 

「各自レベル上げだから助けも呼べないし…仕方ない…これでやるとしよう」

 

渋々という雰囲気が十分伝わるほどに暗い顔をしながらゲームをスタートし、町に転移するのりまんじゅう。ダメ元でステータスを開いて見るも…

 

のりまんじゅう

LV 1 HP 15/15 MP 45/45

 

【STR 0】【VIT 0】

【AGI 0〈+5〉】【DEX 100〈+18〉】

【INT 0】

 

装備

頭【空欄】 体【空欄】

右手【初心者のハンマー】

左手【空欄】

足【空欄】 靴【初心者の探索靴】

装飾品

【空欄】

【空欄】

【空欄】

 

とまあひどい有様であった。そして諦めてモンスターを狩るために森に移動しようとして…絶望的に足が遅いことに気付いた。

 

「ふんぬぐぐ…!」

 

靴の装備で付与された【AGI】によって少しはマシだろうが、それでも遅すぎるというものだ。何とか踏ん張って、一歩一歩歩こうとした矢先。

 

「…大丈夫?手伝い、いる?」

 

横からぬっと出てきたプレイヤーによって驚かされ、思わず飛び退いてしまった。

 

「うわっ!?」

 

「…まさか、【AGI】が、0?」

 

のりまんじゅうは痛いところを突かれてしまった。情けないなとも思ったが答えるしかない、と腹を括る。

 

「…実は、間違えて極振り状態になってしまいまして…」

 

「…やり、直す?」

 

そう提案されたが、のりまんじゅうは昨日三人分の初期設定をしたせいで初期設定がトラウマになりつつあるのだ。

 

「初期設定に時間かけたくないので、このまま進めます。有り難う御座いました」

 

そう言って頭を下げると、親切に名前を教えてくれてフレンド登録までしてくれた。彼女はツクヨという上位ランカーのようだ。

 

「…最初に行くなら、あの森がおすすめ。よかったら、ついてくる…?」

 

「いいんですか?」

 

上位ランカーなのに初心者の手助けをしてくれるという限りない優しさ。のりまんじゅうは折角なので甘えることにした。

 

「うん。暇、だし」

 

ーー

 

「何だかすみません…」

 

「気にしなくて、いい。私が、やりたいだけ。それと、敬語は、いい。むずがゆい」

 

「そ、そうかい?」

 

そう言われても、のりまんじゅうは性格故に中々難しい表情をしていた。

 

「…前。前、見て」

 

「えっ」

 

のりまんじゅうの目前には、突進して飛びかかってきた一角兎がいた。HPが初期値ののりまんじゅうでは一発でノックアウト、即お陀仏様である。

 

「おっとっ!」

 

だが、伊達に【DEX】極振りをしている訳ではない。のりまんじゅうは体を大きく仰け反らせ、さながらイナバウアーのように攻撃を避けて見せた。

 

「…上手い…【麻痺の矢】」

 

ツクヨは背中に背負った矢筒から矢を引き抜き、矢尻に目をやりつつ対象を射抜いた。だが、一角兎は沈黙するばかりで一向に消えない。

 

「今なら、動けない。思い切り、殴って」

 

「了解。ふんっ!」

 

のりまんじゅうはハンマーで思いっきり叩きつけることで、一角兎を潰す事に成功した。経験値が低いのかレベルは上がらなかったが、暫く工房の使い方をイメージトレーニングしていると代わりにスキルをゲットした。

 

【簡易工房】

どこにいても生産が出来る。

生産可能なのは消耗品のみ。

取得条件:ゲームを開始してから一番最初に入手したドロップアイテムを一分間ハンマーで叩く。

 

のりまんじゅうは生産職故か、お金が少し少ない代わりにウサギの皮や足を手に入れている。何か作ってみようと意気込む。

 

『スキル【生産の心得Ⅰ】【解析】を取得しました』

 

作成終了と同時にスキルを獲得した。

 

【生産の心得Ⅰ】

生産効率を1%カット。

取得条件:アイテムを一つ以上作成する。

 

【解析】

対象者の武器種を見る事ができる。

取得条件:材料を獲得してから1分以内にアイテムの作成を開始する。

 

「…スプリング?」

 

のりまんじゅうは疑問に思いながらその靴のようなアイテムをインベントリから出し、床に置く。スプリングというからにはバネなのだろう。上に乗る必要がありそうなので足を乗っけてみる事にした。

 

「気を、付けてね」

 

ツクヨの忠告を聞きながら飛んでみる。結果はやはりというか、跳躍力が凄まじくなっていたのだ。森を飛び越え、町が見下ろせる程度には。

 

「た、高…! これはすごい装備だね!」

 

『スキル【やまびこ】を取得しました』

 

【やまびこ】

自分が相手より一部ステータスが高い場合、攻撃が反響する。

取得条件:誰よりも高い位置で叫ぶ。

 

「おっと…!」

 

「す、すごい…【跳躍】より、高かった」

 

ツクヨから思わぬ称賛を受けたため、のりまんじゅうは気分が高揚する。

 

「スキルも獲得できて万々歳ってところかな」

 

更にのりまんじゅう達は歩く。

より強い敵を倒せばレベルが上がるためだ。

 

「何だいあれ…クワガタムシ?」

 

「!? それ、危険!君のレベルじゃ、勝てない」

 

ツクヨが叫ぶが、既にのりまんじゅうは視界内に捉えられてしまった。ツクヨは弓を構えるが、のりまんじゅう自身がそれを制止する。

 

「死んでも生き返れるから問題ないよ。それに、そろそろ一人で戦ってもいいと思ってね」

 

「あのモンスターは、弱くはないよ」

 

「そんな事とっくに知っているよ」

 

のりまんじゅうに向かって突っ込んでくるクワガタムシは、その軌道を曲げることなく一直線に向かう。攻撃力が高くても、そんな単調な攻撃をのりまんじゅうが避けられない訳がないのだ。

 

「モンスターの行動パターンは割と分かりやすいからね。人は…良く分からないけど」

 

突っ込んでくるクワガタムシに、今度はハンマーをお見舞いする。行動パターンが三通りしかないクワガタムシでは、【DEX】極振りという器用さの権化、のりまんじゅうには到底勝てないのだった。

 

「…凄い。私は、いらなかったかもしれない」

 

「そんな事はないよ。いてくれてとても助かった、ありがとう」

 

そんな会話の後、ツクヨがボソリと呟く。

 

「…あ、そういえば…近くに生産職限定のダンジョンが、あるらしい。素材が豊富で、挑戦する人が後を絶たないって、聞いた。のりまんじゅうなら、いつかは…」

 

「成る程…分かった。じゃあ行ってくるよ」

 

のりまんじゅうはボスの実力を計るためにも行っておいて損はないだろうと考えた。

 

「え、ちょ、っと…!?」

 

「色々ありがとう。後は一人で大丈夫だよ」

 

ツクヨはその言葉足らずによってのりまんじゅうに情報を伝え損ねてしまった。その素材はボスを倒さねば持ち帰れない事と…

 

そのボスが、今まで出向いた生産職全てが殺られるほど理不尽に強いと言う事である。




いやー、【DEX】極振りって事は防御も薄いし素早さも全く無いのでノーダメージ方針に持ってくのほぼ無理ですねー。
今んところは回避できてるけど、プレイヤー相手だと面倒くさいし、パリィを狙うにも盾ないし。
どうしよ。

追記:やっぱ名前戻しました。すみません…
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