間違えて極振りしてしまったのでこのまま進めようと思います。   作:名もなき駅員

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主人公二人目が出てきたので初投稿です
ここから凛々視点になります。
凛々もこれからすくすくぶっ壊れていくと思います。


暗殺特化と初ログイン。

陬がゲームの設定を始めた時。時を同じくして凜々は…

 

「初期設定が必要だとか書いてあった気がするが…まさか陬が全部やってくれたのか…?」

 

アイツはいったいどこまで過保護なのだろう、と頭を悩ませる凜々。原因は概ねボケ大量発生型ミーム災害こと文兎のせいである。

 

「まずは名前か…凜々…凛々しいって英語で何だっけ?お、Braveって出てきた…んじゃま、【ブレイブ】にするか」

 

どうせファンタジータイプのMMORPGならばかっこいい名前で行くべきだと思った凜々はブレイブという名前でゲームをプレイすることにした。

 

 

「次は初期装備か…陬は杖とか弓とかやりそうだし、そうなると俺は戦士かな…」

 

だがその瞬間、ブレイブの脳に天の邪鬼な考えが浮かんでしまった。そして、持っている人が少ないような、扱いづらいトリッキーな武器を探すためしばらく歩いて回ると。

 

「…クナイ?」

 

クナイ

木に柱に飛び移り、暗闇の中から敵を斬る。時には罠を仕掛け、忍者のように術を使う。夜の世界はクナイ使いのみぞ知る…

 

「夜の支配者…へぇ、ピッタリじゃん」

 

クナイが目に映った瞬間に即断した。

何故ならブレイブは深夜まで動画やゲームで時間を潰し、オールしてしまう、言ってしまえば昼夜逆転気味の生活を送っているからだ。夜の世界など、これ以上ない程ピッタリなのだろう。

 

「ステータスか…まあこれは普通に割り振ってと」

 

【STR】+10

【AGI】+70

【DEX】+10

【INT】+10

 

ステータスは特に捻ることもなく、サポートという事を前面に押し出した如何にもな値に設定した。と、ブレイブ自身は思っているが、実際はかなりリスキーなステータスにしてしまっている。

いくらサポート役と言っても少しは【HP】や【VIT】に振るところを、0のままスタートしている。ブレイブは無意識の内にノーダメ縛りプレイを開始してしまったのだ。

 

「じゃ、こんなもんでいいかな」

 

そして、ブレイブの体が光に包まれ…

次に目を開けたときは、活気溢れる城下町。彼が最も苦手とする、人混みの中心であった。

 

「げっ…」

 

ーー

 

何はともあれ状態の確認だろうと思ったブレイブはステータスを開く。ヴォン、と音を立てて青いパネルが表示され、自身のプレイヤーネームが書かれた文字の下には数字がズラリ。

 

ブレイブ

LV 1 HP 37/37 MP 55/55

 

【STR 10〈+10〉】【VIT 0】

【AGI 70〈+15〉】【DEX 10】

【INT 10】

 

装備

頭【空欄】 体【空欄】

右手【初心者のクナイ】

左手【空欄】

足【空欄】 靴【初心者の足袋】

装飾品

【空欄】

【空欄】

【空欄】

 

スキル

なし

 

「成る程なぁ、じゃあまずはそこら辺の平地でモンスターを倒してみるか…」

 

ーー

 

「よし、来るなら来い!」

 

ブレイブは森の方へ出て大声で叫んだ。

すると、大きい声に反応したのか元から近くにいたのか詳細は不明だが、十数匹のモンスターがウジャウジャと湧いてきた。

 

「うぉぉ!?」

 

『スキル【挑発】を取得しました』

 

【挑発】

モンスターの注意を一点に引き寄せる。

三分後再使用可能。

取得条件:十体以上のモンスターの注意を一度に奪うこと。アイテム使用可。

 

スキルの説明などどうでもいいとばかりにブレイブは一目散に退散し、何かないかとステータスを漁るように開く。

ない。

次に自分の手元を見ると、クナイがあった。どうやらクナイには共通で投げてもMPを消費すれば戻ってくる機能があるようなので、一体の蜘蛛に向けてナイフを投げた。

 

「よし、おらっ!」

 

無事、一体倒した。

ブレイブはこれならいけるとようやっと見えてきた勝利を考え、再びクナイを放とうと手をモンスターに向ける。クナイが戻り、ブレイブの手の平に収まった。

 

「もう一丁!」

 

投げる。今度は横にいる一角兎にとどめを刺した。しかし、もう一度繰り返そうとして手を向け、スキルを発動しようと試みるも、一向に戻ってこない。ブレイブは嫌な予感を感じ、それは的中した。

 

「…マジすか?」

 

MPが0になっていた。

唖然となるブレイブの耳に、機械的な通告が響く。

 

『スキル【儚き体力】を取得しました』

 

【儚き体力】

MP消費を8%カットする代わりに、状態異常を受けたとき効果が10%上昇する。

取得条件:戦闘開始から1分以内にHPかMPのどちらかを0にする。

 

人を小馬鹿にしたようなスキルにブレイブは猛りこそするものの、慌てる様子は一切見えない。何故なら全て計算ずくなのだから。そもそも彼の武器は腕っぷしではなく頭脳である。

それに加えて先ほどクナイを当てた敵の素材はもう拾っていた。

倒した敵が蜘蛛なのが幸運だったと言えるだろう。

 

「全力ダッシュ!」

 

蜘蛛の糸は面積当たり鋼鉄の350倍。外せと言う方が不可能なほどに頑丈なのだ。そんな糸を出す生物が巨大になったとしたら、その巨体から出される糸の頑丈さなど言わずして分かる。

 

「こ、これ…めっちゃ疲れる!」

 

ブレイブは速く設定した【AGI】で敵の周りを颯爽と回りながら、手に持った糸で身動きが取れないように雁字搦めに堅く縛り付ける。

 

「ふぃ~」

 

動けなくなったモンスター達をクナイで刺してHPを減らし、ダメージエフェクトの塊へと変えていく。ポトリと小さな音を立てて落ちた素材を拾い、インベントリに押し込んでいく。

すると、ピロリンという愉快な通知音が鳴る。

 

『スキル【ワイヤー】【孤立】を取得しました。レベルが4に上がりました』

 

【ワイヤー】

鋼鉄並の強度を誇るワイヤーを射出し、操る。

MP消費はなし。代わりにインベントリから【糸】系アイテムを消費する。

射出したワイヤーは一定時間で素材化し、その場に落ちる。

使用後、再使用まで五分かかる。

取得条件:【糸】系アイテムでモンスターを二重以上に縛る。

 

【孤立】

周囲にプレイヤーやモンスターがいない場合、全ステータスが三倍になる。

取得条件:ゲームを開始してから誰とも会話せず、独り言を十回以上言う。

 

「余計なお世話じゃい!」

 

憤慨するブレイブ。だが悲しいかな、このゲームのシステムは割と失礼なのだ。

 

「まあ丁度いいか。俺今ソロプレイ中だし」

 

ブレイブは試しにと全力で走り回る。自分の足が急激に速くなった事で体幹が少々不安定になるものの、すぐに慣れることが出来た。次のスキルを確認するため、ブレイブは右手を木の幹に向けて口を大きく開く。

 

「【ワイヤー】!」

 

ブレイブの掌から射出されたそれは宙を素早く移動し、木の枝に巻き付く。離さないと言わんばかりにぐるぐる巻きにくっついたところで、ブレイブは糸を巻き取る。すると今度はブレイブが引っ張られるように前のめりに移動を開始する。

 

「風が気持ちいいなぁ…!」

 

ブレイブは無事スキルの確認を終えたのだった。

そして次にやるべき事を考える。先程の戦闘からも分かる通り、装備は調えておいた方がいい。だが彼は生産職ではなくジャパニーズニンジャなので装備は作れない。どこで手に入るのだろうと頭を悩ませていると。

 

「ん?」

 

違和を感じ取ったブレイブは顔を上げる。

そこにいたのは、ゴーグルとトレンチコートを装備した水髪の女性だった。

格好いい装備だなと見とれるが、すぐにそんな事を言ってる場合じゃないだろうと気を引き締め、早く強い装備を手に入れないと、と意志を固める。

 

「あの、そこのプレイヤーさん」

 

意志を固めた瞬間、いきなり後ろから話しかけられた。ブレイブはもちろん振り向く。

 

「え?」

 

話しかけてきたのは、先程ブレイブが見とれていた装備のプレイヤー。遠目でも何となく分かっていたが、女性プレイヤーだった。

 

「どうしました?」

 

「今材料が少し足りなくて…蜘蛛の糸がないのよ。分けてくれるかしら?」

 

ブレイブが蜘蛛を倒したのを見て縋りに来たのだろう。まあ余分にあるしこれくらいは、とブレイブはインベントリを器用に操作して手のひらに出現させた糸を渡す。

 

「それくらいならいいですよ。どうぞ」

 

「ありがとう!って、これは…少なくとも蜘蛛の糸じゃないわよね…ワイヤー…?」

 

彼女はブレイブの渡した糸を見て驚愕している。それを見て、軽くやっちまったという表情を作るブレイブ。間違えたとは言え、【ワイヤー】で生成した糸の方を渡してしまったからだ。

 

「あっ、間違えました…」

 

「いえ、いいわ。というか逆にこっちの方をくれないかしら…もちろんお礼はするわよ!」

 

「それはいいですけど、お礼とかいきなり言われてもなぁ…あ、そうだ。交換条件代わりっつーか、こちらからもお願いがあるんですが…そういう格好いい装備ってどこで手に入るんですか?」

 

「ああ、これは自分で作ったのよ。私、こう見えて結構有名な生産職なのよ?」

 

ブレイブは驚愕した。

彼女はイズという、ここら辺では有名な鍛冶専門の生産職らしい。確実にナンパの類ではないとブレイブは思っていたが、とんでもない人に貸しを作ったものだと再実感する。

 

「ええ。良かったら私の工房に来る?お礼に一着、好きな防具を作ってあげるわ!」

 

「マジすか!じゃあ、お願いします!」

 

ーー

 

ブレイブとイズが訪れたのは、町の中にある如何にもな工房。様々な武器が並ぶお洒落な工房は、イズの生産性の高さを理解するには十分だろう。

 

「どういうのをお望みかしら?」

 

「そうだなぁ…」

 

クナイ使いはHPがないため重い鎧、そうではなくとも【VIT】を上げるものはいらないだろうとブレイブは熟考する。だからといって【DEX】や【INT】などもあまりピンと来ていない。【STR】でもアリとは思っているものの、ブレイブにとって重要なのはやはり【AGI】なのだ。

 

「【AGI】を上げる奴が欲しいです」

 

「分かったわ。本当は二日くらいかかるけど、今日は限定スキルとかアイテムも使って半日くらいで完成させるから、適当に暇を潰しててね」

 

「い、いいんですか?貴重なアイテムなんじゃ…」

 

イズの何気ない一言にブレイブが焦る。

 

「いいのよ。そこに椅子があるから、座って待っててね」

 

「は、はあ…」

 

そして座って待つこと4時間。

新しい客がやってきた。

 

「あら、いらっしゃいクロム。どうしたの?盾のメンテにはまだ早いはずだけど」

 

クロムという大盾プレイヤーが来た。

ブレイブはある程度ゲームを進めるとこんな装備も手に入るんだなという知識と、まだまだ先は長いのだろうなという非情な現実を感じていた。

 

「ああ、大盾装備の新入りを二人見つけてな。衝動的に連れてきた」

 

クロムの声と同時に初期装備のプレイヤーが二人、そそくさと入ってきた。二人は知らないようだが、ブレイブはその内の一人に見覚えがあった。黒髪ウルフカットで、非常に心許ない大盾と短剣を装備している青年である。

 

「クロム、衝動的に連れてきたの?通報した方が良いかしら?」

 

イズがそう言ってきた。本人は恐らく冗談めかしているのだろうが、目は笑えていない。

 

「待て待て!今のは…なんつーか、言葉の綾だって!」

 

クロムさんは急いで言葉を取り繕っている。このやり取りだけでもこの二人は相当仲が良いのだろうと言うことが伝わってくる。

 

「冗談よ」

 

「はぁ…てか、この二人は同時に話しかけてきたし、元々そういう関係だろ」

 

「ファッ!?」

 

「違いますよ!たまたま言葉が重なっただけって言うか…」

 

「そうなのか?」

 

二人とも否定している。そんな中、話を聞いていたブレイブはやはり一人の言動に既視感を感じ…というか、ブレイブの脳内でたった今正体が確定したところだ。

 

「おいおい、文兎だよな?」

 

「どちら様ですの!? 私は文子ですわ!」

 

「何言ってんだお前」

 

頭を思いっきりはたいた。

文兎は涙目になっている。

 

「AHHHH…(ひっぱたかれた痛み)俺は文兎じゃなくてナプだ!控えおろう!」

 

「ハイハイスゴイネー。で、何やってんだお前」

 

「いや、実はっすね」

 

格好いい装備を求めて大盾の上位ランカーに話しかけたところ、同じく初心者のメイプルという同じく初心者の人と偶然言葉がハモって同時に連れてこられたようだ。

 

「もうフレンドなれよ」

 

「あ、いいですね!」

 

「AHHHHHHHHHHHH!!(感激の痛み)」

 

「ウルセ…」

 

ブレイブはめんどくさい人の相手をするように耳を塞ぎつつ、二人に向き直って質問する。まずブレイブは、初心者である二人に金があるのか?という疑問があった。

 

「装備は大体数百万くらいらしいけど、ナプズと…メイプルさん、だっけ?買えんのか?」

 

「「ぜ、絶望的に足りない…」」

 

「うお、ハモった。仲良いなお前ら」

 

「「う、からかわれた…」」

 

またハモった。いくらなんでも息が合いすぎだとブレイブは若干引いていた。その理由は、ナプの感性がおかしく、そんなナプと息の合う人間など絶対にヤバい奴に決まっているからだ。それはつまり、その内二人は親友になる可能性が高そうだとも言える。

 

「ま、俺はあと半日くらいここから動かないから。取り敢えずフレンド登録だけしておくか?ついでにメイプルさんも良かったら」

 

「OHHHHYESSSSS!!」

 

「宜しくお願いします!」

 

イズ、クロム、ナプ、メイプル…

ブレイブのフレンド欄は何時の間にか新しくできた友達で埋め尽くされていた。

 

ーー

 

更に九時間後。

 

「完成したわ!力作よ!」

 

「えっ、早!?」

 

『スキル【八方塞ぎ】【極限集中】を取得しました』

 

情報量の暴力を受けたブレイブは、ひとまず【八方塞ぎ】と【極限集中】は後で確認する事にして、イズが作成した装備の確認を始めた。

 

【ノーネームⅩ】

【AGI+100】【DEX+30】【INT+30】

 

BRAVE専用の装備とでも言うように、その機能は至れり尽くせりである。見た目もブレイブの最近の若者のような風貌によくあったフードの付いたパーカーで、忍者というよりも暗殺者に近いデザインだ。

 

「おお!有り難う御座います!」

 

「Ⅹまで鍛えるのに時間がかかっちゃったの。ごめんなさいね」

 

「いやいやそんな!それに、おかげでスキルも獲得できたんで大丈夫ですよ!」

 

「名前はどうするのかしら?」

 

「あんま格好いいの浮かばないですけど…宵闇…うん、【宵闇】がいいかな」

 

かくして、イズの最高傑作であるこの装備は【宵闇】という名前を刻まれたのだった。

 

早速試そうとブレイブは準備を始める。

今日は学校なので早めに終わらせておきたいところだろう。今は午前四時なので、後三時間弱だ。

 

「森に行くのはどうかしら?それかクエストもアリだけど、間違って変なクエストを受けたりしたら死んじゃうから危険よ」

 

クエスト、という単語にブレイブは突っかかった。そう、クエストである。上手く行けば、イズに貰った防具に続いて強い武器なんかも手に入るかもしれない。

一縷の希望を抱いたブレイブは、そうと決まればと言う風に全力で駆け出す。

 

「有り難う御座いました~!」

 

「ええ、気をつけてね」




書き終わってみたら6000文字弱…
凛々改めブレイブは機動力高めなのでサリータイプですね。
【孤立】の能力的にパーティーよりソロのほうが実力出せそう…
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