間違えて極振りしてしまったのでこのまま進めようと思います。 作:名もなき駅員
今回から二話くらい文兎編ですね
そして時を遡り、その時文兎は…
「んー、名前…名字と名前から頭文字貰ってナフ…何か言いにくいな…ナブ…ナプ…うん、ナプが一番良いな」
という事で手早く「ナプ」と入力。
決定ボタンを強めに押すと、回りに様々な武器が現れる。見渡す限り、ホログラフィーで形成された格好いい形状のものばかり。
その中でも目を引くのは、大盾だった。
「大盾と短刀…攻撃力は低めだけど防御力はナンバーワンか…防御力を上げればダメージは消える…消えるってマジかよ?ぶっ壊れ武器じゃねーか」
ナプはその時は気づかなかったのだ。ダメージが無くなるのは序盤のみで、中盤辺りになると防御を上げても意味がない。つまるところ不人気装備だった、という事を。
「ステ値は…まあ普通に割り振るか」
ナプは実に捻りのない、言わばナプらしくない真面目な割り振りをした。攻撃力は皆無なため後々悲惨なことになりそうである。
「ヴォイ!ゲームの中でくらい身長弄らせろよ!180行きてぇんだよ俺は!」
いくら暴れても運営には響かないので罵声を浴びせるだけにして、ナプは渋々ゲームをスタートした。直後、ナプは眩しい光に思わず目を瞑り…次の瞬間、活気の溢れる城下町が目に入った。
「Oh yes!取り敢えずはステータスだな!」
軽い音を立て、青白いパネルが表示された。
ナプ
LV 1 HP 440/440 MP 12/12
STATUS
【STR 0〈+9〉】【VIT 55〈+28〉】
【AGI 15】【DEX 5】
【INT 5】
装備
頭【空欄】 体【空欄】
右手【初心者の短刀】
左手【初心者の大盾】
足【空欄】 靴【空欄】
装飾品
【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
なし
「hmm…どうしたもんかな」
ひとまず何をすればいいのか探す事にして、町の外に出掛け、森に入った。
「よぉーし、ここら辺なら誰もいないか?」
すると、草むらからガサガサと音を立てて鹿のような一角獣がやってきた。
見るからに凶悪である。
「え、何かつよそ」
ナプは言葉を言いきる前にぶっ飛ばされた。それは、鋭利な角を利用した突進だった。
「AHHHHHHHHHHHHH!!!!(純粋な痛み)」
ナプは急な理不尽に宛もなく叫んだが、よくよく考えてみると痛みがなかった。防御力を上げればダメージが無くなると言っていた事を思い出す。
「このままならいけそうだな」
必死に突進してくる鹿を片手で制し、余裕の態度を取る。と、その瞬間。
「ぐおお!?背後取られてるし!」
後ろから全身が燃えている蝙蝠が飛んできた。焦ったナプがステータスを開くと、HPバーがぐんぐん減っているのが見えた。
「『やけど』状態じゃねぇか!」
実際には『炎上』という状態異常だが、ナプはそんなパリピがやらかしたような単語は使いたくないようだ。ぶつくさ言いながら蝙蝠を短刀で刺し殺し、鹿に炎を擦り付けながら耐性獲得までただひたすらに待つ。
すると。
『スキル【炎上耐性小】【最低最悪】を取得しました』
【炎上耐性小】
【炎上】での継続ダメージを軽減する。
取得条件:炎上状態を20分間継続する。
【最低最悪】
自分が受けた状態異常を近くにいる敵に付与し、ダメージを10%軽減する。
取得条件:自分が受けた何らかの状態異常を敵かモンスターに付与する。
ナプはガッツポーズを取る。
だが、炎でのダメージが消えない。まだ十分な耐性にはなっていないらしく、これでは駄目らしい。仕方なく更に40分待つ。
『スキル【炎上耐性小】が【炎上耐性中】に進化しました。スキル【生存本能】【絶対防御】を獲得しました』
【炎上耐性中】
強力な炎攻撃のダメージを軽減する。
取得条件:炎上状態を1時間継続する。
【生存本能】
このスキルの所有者のHPを三倍にする。
【MP】【DEX】【INT】のステータスを上げるために必要なポイントが通常の五倍になる。
取得条件:HPが半分を切った状態を一時間その場所から動かずに保つ。
【絶対防御】
このスキルの所有者のVITを常時二倍にする。【STR】【AGI】【INT】のステータスを上げるために必要なポイントが通常の三倍になる。
取得条件:一時間敵から攻撃を受け続け、かつその敵からのダメージを受けないこと。また、魔法や武器によるダメージを与えないこと。
ナプは不適に笑い、残った鹿に目を向ける。鹿も燃え尽き始めているので短刀で楽にすると、機械音声がナプの耳に響き…
『レベルが3に上がりました』
スキルポイントが5割り振られたので、全てHPに入れる。ナプとしては、今はとにかく体力を上げる必要があると考えた。
「ふぅ…今俺のHPは1620、VITは148か」
序盤にしては割と強くなってきたと満足感を得るナプだが、町に戻り少し思う。それは…
「服がダセェ…」
そう。
ナプは未だ初期装備のままなのだ。回りを見渡すと上級プレイヤーらしき人達がちらほらといて、その装備は格好いいことこの上ない。そしてその中に、なんとも素晴らしい大盾装備の男性がいた。
どうにかそういう格好良くて強い装備の入手方法をゲットせねばとナプは燃え、その男性に話しかける事にしたのだが。
「「あのー、そういう格好良い盾はどこで手に入れれば良いんですか?」」
見知らぬ誰かと声がハモった。
ナプよりも声の高い、恐らくは女性の声である。
「え??」
突然の出来事に大盾の男性も困惑して固まっている。そしてナプが隣を見ると…ナプと同じく大盾初期装備の、黒髪の可愛らしい少女がいた。
「「え、えっと…」」
「俺…で良いのかな?」
「「あ、はい!」」
「待って、一旦どっちから喋るか決めて?ハモってると聞きづらいから」
ナプと黒髪の少女は同感だったようで、どちらが先か決める事にした。
「「あ、じゃあそちらから…」」
声がハモったので、ナプズはGOサインだと取り大盾の男性に向かって話そうとする。
「「じゃあ私から…」」
相手も行っていいと受け取ったようで、またしても声が被ってしまう。このままでは埒があかないので、二人はじゃんけんで決める事にした。
「順番ジャンケンジャンケンポン!俺はパーを出したぞ。まあ、勝っても負けても楽しかったらいいじゃないか」
「えっと、勝ったのは私なんだけど…」
ナプのマイペースぶりに翻弄される女の子。大盾の男性は咳払いをしてから口を開いた。
「じゃ、そっちの女の子からどうぞ?」
「私はそういう格好いい装備がどこでどうすると手に入るか聞きたくて…」
「あ、俺もそうなんすよ」
どうやら目的は一緒だったようで、ナプは自分もだ、という同意の意志表示をした。
「あ、これか…これはオーダーメイドだよ。生産職の人にお金を払って作って貰うんだ」
「むー…成る程…」
初期装備の女の子は納得し、唸っている。ナプもなるほどと手を叩いた。ただ、今はゲームを始めたばかりで仲のいい生産職などいない。
「紹介してあげようか?同じ大盾装備のよしみでね」
「おお、マジすか!あざす!」
「お願いします!」
これが詐欺である可能性もよく考えればあっただろうが、ナプはそんな事どうでも良かったので、即座に了承していた。幸運だったのは、この人が本当にただの親切なプレイヤーだった事だろう。
ーー
「あら、いらっしゃいクロム。どうしたの?盾のメンテにはまだ早いはずだけど」
水色の髪を垂らし、トレンチコートに身を包んだ女性が、カウンター越しに裁縫のような作業をしていた。
「ああ、大盾装備の新入りを二人見つけてな。衝動的に連れてきた」
クロムも普通に受け答えをする。
しかし、その答えがまずかった。
「クロム、衝動的に連れてきたの?通報した方が良いかしら?」
「待て待て!今のは…なんつーか、言葉の綾だって!」
「冗談よ」
一連の茶番であるには間違いないが、生産職の人は割と本気で発言していたようにも感じられる。
「はぁ…てか、この二人は同時に話しかけてきたし、元々そういう関係だろ」
ナプはもちろんそんな事あるわけがないので、驚き固まる。隣の女の子は手をぶんぶん振り、全然違うという事を示す。
「ファッ!?」
「違いますよ!たまたま言葉が重なっただけって言うか…」
「そうなのか?」
ナプはうっかりその子と同じポーズを取ってしまった所為か、懐疑の目を向けられる。
「おいおい、文兎だよな?」
いきなり声をかけられたので、何だと思って振り向く。そこにいたのはなんと凜々だった。ナプは驚いて…取り敢えずすっとぼけた。もう救いようがない。
「どちら様ですの!?私はナプ子ですわ~↑!」
「こんな時にボケんなっつってんだよ」
思いっきり頭を叩かれた。当たり前だ。
「AHHHH…(ひっぱたかれた痛み)俺は文兎じゃなくてナプだ!控えおろう!」
【VIT】値が高いので全く痛くないのだが、反射的に痛みの叫びが出てしまう。
「ハイハイスゴイネー。で、何やってんだお前」
「いや、実はね」
二人と出会ってここに来た事をそのまま話す。
「もうフレンドなれよ」
「あ、いいですね!」
「AHHHHHHHHHHHH!!!!(感激の痛み)」
「ウルセ…」
するとBRAVEが椅子に座りながらナプ達の目を見て、何とも怠そうな顔をしながら答える。理由は恐らく、というか間違いなく昨日夜通しゲームをしていたからだろう。
そして今日も夜通しだろう。
「装備は大体数百万くらいらしいけど、ナプと…メイプルさん、だっけ?買えるのか?」
「「ぜ、絶望的に足りない…」」
ナプはメイプルとハモリながら3000Gしか入っていないインベントリを見る。このままでは装備は愚かポーションすらもままならない。
「ハハ、ハモったな」
「「う、からかわれた…」」
「ま、俺は後半日くらいここから動かないから。取り敢えずフレンド登録だけしておくか?」
半日動かない、と言う言葉に少し違和感を覚えたナプだったが、スキル獲得でもしようとしているのだろうと考え、メイプル、クロム、イズ、そしてBRAVEとフレンド登録をした。
「OHHHHYESSSSS!」
「宜しくお願いします!」
まあナプのキャラは初見だと理解が難しいです。
漫才のボケを日常的にやる奴って言えば分かりやすいかも
あと知っての通りナプも初日で体力が千を超えたバケモン初心者プレイヤーです。