記憶の壊れた刃   作:なよ竹

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開戦

「――必殺! ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ミラクル・スウィート・ウルトラ・ファンキー・ファンタスティック・ドラマティック・ロマンティック・サディスティック・エロティック・エキゾチック・アスレチック・ギロチン・アタックゥ!!」

「ぐ、ぉ……!?」

 

 高空から落下するシャルロッテ。躱しきれないと檜佐木は判断すると、風死を盾にすることで敵の回転斬りを受け止める。しかし重すぎる一撃は容易に檜佐木の足場たる霊圧をガラスのように粉砕し、眼下の森へと流星のごとく落とされた。

 

「――シャァ!!」

「あぶねえッ」

 

 衝撃にうめくのも束の間、弧を描きながら迫る豪脚。それをいなしたと思えば、刀、拳、当身と、手を変え品を変えたシャルロッテの猛攻が続いてゆく。辛くも距離をとった檜佐木がすぐさま風死を振るうおうと、のたくる蛇のような変則的な動きを見切ったシャルロッテには当たらない。

 

「甘い、甘いわ! ニルちゃんの理不尽な動きに比べればなんのその! この新生シャルロッテ・クールホーンには当たらなァい!! フンッ」

 

 最後にはとうとう、縦に回転する風死の側面を蹴ることでしりぞける始末だ。

 檜佐木は次の一投をいつでも放てるように鎌を回転させながら、呆れ半分畏れ半分といった様子でシャルロッテに言った。

 

「正直、色物かと思って舐めてたぜ。従属官(フラシオン)ってのは皆オマエみたいなやつなのか?」

「あら言ったじゃない。新生……新星(ノーヴァ)、つまりは生まれ変わったと。あなたみたいな地味面が相手だったら、昔のあたしは慢心でやられたかもしれないわね……まあ一パーセントの確立でしょうけど」

 

 エキゾチックな紫の髪(地毛)をたなびかせながら自慢げに語るシャルロッテ。

 だが立ち振る舞いに隙はない。本人が言った通り、この戦いで慢心している様子がまったくなかった。

 

「……オマエら、余裕がないんだな」

 

 破面(アランカル)が眉を上げて反応する前に、檜佐木が鬼道を唱えるのが早かった。

 

「縛道の六十二」

 

 百歩欄干(ひゃっぽらんかん)

 

 いくつもの光の棒がシャルロッテの肉体をビルに食い止める。シャルロッテが己の筋力に物を言わせてビルの壁を破壊して拘束を脱すると、これだけかと挑発的な笑みをつくった。その眼前に、檜佐木が巻いていた腕輪を放ると、爆竹のようにはじけ飛ぶ。

 

「目くらましなんて小癪なッ」

 

 不埒な輩を掴もうとシャルロッテが腕を伸ばした。

 

「……ッ」

 

 そして唸るように喉を鳴らしたのもシャルロッテだった。引き戻した腕には、無数の裂傷が生まれている。

 

「この調子なら、新星ってのも前とはあんま変わんねぇんじゃないのか」

「……フッ、口が減らないのね。だからモテなさそうな顔してるのも納得しちゃう」

「悪いな、オマエに惚れられたくない一心でよ」

 

 軽口のたたき合いに、怒りに染まった顔も一瞬で、すぐにシャルロッテが余裕のある笑みで負傷した腕を揺らした。

 

「いいわ、わかった。つまりこうね。醜き者にはあたしの美しさは理解することすら困難……。そういうことね。オーケイ、わかったわ。それなら許すわ」

 

 太い指を檜佐木に突きつけて、

 

「美に対する感覚が鈍いことは罪ではないわ。むしろ――哀れみにさえ値する」

「なに?」

「つまり、こういうことなの。低劣な感性とともに生きることは苦痛でしかないわ。ならば、あなたのその生命(くつう)を終わらせることこそが、姿あるなかでなかでニルちゃんに並ぶ美しさの……」

「……最後のそれはどうなんだよ」

「いいから聞きなさいよドサンピン! ……つ・ま・り、醜いものを処刑する、それがあたしの使命なの」

 

 好き勝手言ってくれる。檜佐木の目はそう語っており、言葉として聞かずともシャルロッテが答えた。

 

「言ったでしょう、あたしは月だと。月光っていうのは醜さを暴き立てるものなのよ」

「いままでもずっとそう言って、相手を殺してきたのか」

「その新しい一人に、あなたがカウントされるってワケだけど」

 

 シャルロッテは他のメンバーの進展を探査回路(ペスキス)で感じ取り、そろそろ決着をつけようと斬魄刀を掲げる。敬愛すべき陛下に、これから勝利を捧げるかのように。

 

(きら)めけ『宮廷薔薇園ノ美女王(レイナ・デ・ロサス)』」

 

 

 ◆

 

 

 地に這いつくばるように倒れた(ホロウ)を見たフィンドールが感嘆の息を吐いた。

 

「やはり斬った対象の部位を重くする能力……か」

 

 吉良イヅルの斬魄刀『侘助』。それはフィンドールが言ったように、斬った対象の重さを倍にすることができる凶悪な能力だ。一度斬れば二倍、もう一度斬れば四倍と、そうしているうちに相手は身動きできぬまま独特な形状の刃に首を刈られるのである。

 

 だがしかし、あまりにも強力な能力ゆえか、刀身が伸びるわけでも飛ばせるギミックがあるわけではない。敵を斬りたければ本人の力量で振るわねばならないのがネックだった。

 特に、このような状況では。

 東の塔は遠目から見ると、全体が脈動しているように見えるだろう。しかしそれは間違いだと近づいてみればわかる。その表面で蠢いているのは硬い石質などではなく、無数の(ホロウ)の群れなのだから。

 たとえ一体、二体と吉良がまとめて屠っても、次の攻撃へ繋げさせまいと上空にいるフィンドールが虚閃(セロ)を放つ。

 

「縛道の三十九」

 

 円閘扇(えんこうせん)

 

 繰り出した円形の盾により事なきを得たが、この場にいる相手はフィンドールのみではない。こうしている内にもフィンドールの呼びだした(ホロウ)たちがかじるなり殴るなりして、どんどん塔が落とされていく。

 

「――よし、いいぞお前たち! このまま塔を破壊しろ! 報酬は俺の秘蔵コレクションだ!」

『オオーッ!!』

 

 頭の痛くなる指示だが(ホロウ)の士気は高い。このまま倒しても倒しても、恐れずに柱を破壊していくだろう。

 

「……大本を倒さないと駄目か」

 

 一般隊士たちは拠点の防衛のため、この結界内にはいない。より正確に言うならば、この戦いには耐えられないとして一部の例外を除いて連れてきていないのだ。そのため柱を傷つけずに(ホロウ)だけを仕留めるのはなかなかの骨だろう。

 目立った動きはないものの、(ホロウ)を次から次へと呼び出しているのはフィンドールだ。手下をけしかけて侘助の特性を知るや否や、己のチカラだけで解決しようとする愚は犯さず、すぐさま物量作戦に切り替えている。

 言葉を介す(ホロウ)はいずれも自分の力に過信しがちなため予想外だったが、この状況ならば吉良にとって有効なのは間違いない。

 塔を一瞥してから、フィンドールと同じ高さまで吉良が上がる。

 

「ほう、守るのは取りやめかな?」

「ここで君を倒したほうが早いことに気づいてね。下の(ホロウ)はあとでゆっくりと始末していくさ」

 

 フィンドールが笑みを深めた。

 

「対人戦ならば俺を倒せるように聞こえるが」

「君の言い方を真似るなら、それが一番の正解だろう」

 

 そう言って、吉良が侘助を構える。

 チッチッチ。舌を打ちながら、まるで嫌味な教師のようにフィンドールが指を振った。

 

不正解(ノン・エス・エサクト)。なにやら誤解しているようだな。たしかに正解への道のりが短くなるとはいえ……俺を倒すということが、果たしなく長い道のりであることを理解してないようだな」

 

 フィンドールが斬魄刀を指揮棒(タクト)のように動かしながら叫んだ。

 

水面(みなも)に刻め『蟄刀流断(ピンサグーダ)』」

 

 解放すると右半身が装甲で覆われ、両腕にはシオマネキを思わせる左右非対称のハサミが形成される。

 

「それが破面(アランカル)帰刃(レスレクシオン)か」

正解(エサクタ)。よくご存知だ」

 

 フィンドールがハサミの先端から虚閃(セロ)を連発する。吉良は高速移動で回避しながら、近づける機会をうかがった。

 

「正解不正解とそればかりだな」

「生きることは困難な問題の連続だ! 少しでも多く、正解を選択した者だけが生き残れる。ならば誰もが少しでも多くの正解を手にしたいと思うはずだ。違うか!?」

「だから君がその正解を与えてやってるのか? ――大層なご弁舌だな」

「むッ!?」

 

 開いていた間合いを吉良が瞬歩で詰める。いかに帰刃(レスレクシオン)という切り札を使ったとはいえ、死神に換算すればもとは第五席程度の霊圧しか感じないほどなのだ。隙を見てこうするのも吉良には容易いことだった。

 

 海王鋏(ティヘラス・ネプトゥネア)

 

 ハサミから縦横無尽に高圧水流が襲い掛かる。吉良はそれさえも一刀で切り伏せた。初動の早い虚弾(バラ)での牽制も、すでに意味を成さない。

 

「あまり悪あがきをするものじゃない」

 

 二歩も進めば互いがぶつかる。それだけの距離になり、身を縮めるように屈んだ吉良が、抜き身の抜刀術で破面(アランカル)の首を狙った。

 たとえ防がれても侘助ならば大きな隙を作れる。

 ならばあとは、どうとでも出来るというものだ。

 

「獲った――とでも思ったか?」

「――ッ!!」

 

 その直前、フィンドールは仮面をみずから割っていた。

 

 彫面(アフィナール)

 

 仮面を割ることで、みずからの戦闘能力を上昇させるフィンドールの能力だ。

 霊圧だけならば副隊長格をしのぎ、隊長格にも達するだろう。以前まではそれに振り回されて十分な実力が発揮できないでいたが、ニルフィのしごきに耐えた結果、短時間ならばその欠点を補えるようになっていた。

 

 まともに戦えば侘助には勝てない。能力が判明してからフィンドールはすぐさま理解した。

 だからこそ、この時このタイミングで意表を突ける本当の切り札。

 油断をした敵を仕留める絶好の機会を掴むことができた。

 巨大なハサミが、牙をむく。

 

 

 ◆

 

 

 もっとも早く決着がついたのは西の柱でのポウと弓親の戦闘だった。

 

「このナルシスト、なんかまだチカラを隠してるポイかったガ……。死んでしまってハ仕方ナイコト」

「だれが、死んだって……? 勝手なことを――」

 

 うめきながら弓親が起き上がろうとする。それをポウが大きな足で踏みつぶした。

 

「隠してるチカラ、見てみたイ。だけど時間ナイ。もう付き合えなイ」

 

 ポウは巨大な拳で崩れていく柱を眺めながら、動かなくなった弓親を蹴っ飛ばす。抵抗する力も残っていない。あまりにも淡々と進んだ戦いは、刀剣解放もせず当然のようにポウの勝利で終わった。

 

「転送された町が戻り始めたカ……」

 

 塔周辺のめくりあがったコンクリートが真新しい路上へと変わっていく。これは『転送回帰』という現象で、塔を中心として本物の空座町が戻り始めているのだ。

 しかし――。

 

「……ナニ!?」

 

 ある一定部分で変化が止まった。ポウの見ている先でも塔には肉芽のような物体が生まれて、ある種の生物のように再生していくではないか。

 

 

 ◆

 

 

「おいおいおい、こりゃどういうことだ!?」

 

 ポウとほぼ同じタイミングで北塔を破壊したアビラマが狼狽える。

 アビラマは考えるのが得意ではない。そのためフィンドールからは前もって塔の破壊のみに専念するように言い含められ、その後に約束通り一角と戦うつもりでいたのだ。

 結果は成功。一角の斬魄刀『鬼灯丸』では雨あられのような餓翼連砲(デボラル・プルーマ)を防ぐことができず、いとも簡単に柱は崩落する。その際に一角もろとも倒してしまい、思わず悪態をついていた時だ。ポウのいる西と同じように、柱が復活する兆しを見せて、レプリカの解除がほぼされずに終わった。

 

「思うようにいかなかったのが、そんなに不思議かい?」

「その羽織り……隊長格か!」

 

 上空に浮かんだアビラマと視線が合わせるように、長い白髪の優男が立っていた。

 アビラマは忘れているが、前もって与えられた情報のなかにもこの男の情報があり、名は浮竹十四郎(うきたけじゅうしろう)。護廷十三隊における十三番隊の長である。

 

「随分とせせこましい真似をしやがるじゃねえか」

「ハハ、そう言われても仕方ないな」

 

 朗らかに笑う浮竹の態度は、敵を前にしているものには思えない。

 

「といっても、この結界を作成したのは護廷十三隊じゃなくてね。すでに君たち破面(アランカル)と交戦して、その危険性を改めたらしいんだ。つまりは、予防策さ。ここら一帯は『転送回帰』を留めるための緊急性の棒が地面に埋まってて、塔にも再生能力を施してあるんだ」

「あ、ン? ならなんだ、ソイツはお前らが負けることも見越してたってワケかよ」

「そうなるだろうね。先生は不機嫌だったけど、この結果を見ると正解だったわけだ」

 

 フンと鼻を鳴らしたアビラマが眼光を鋭くする。

 浮竹の言い方どおりならば、柱だけでなくここら一帯の地面に至るまで、もろともに破壊し尽くさなければならないということだ。

 

「……小細工しやがって、面倒な野郎どもだな」

 

 面倒だが、やることに変わりはない。破壊すべき対象がここらの土地も増えたというだけだ。レプリカから本物の空座町に戻すこと。バラガンがアビアマに与えた命令はつまるところそれなのだから。

 

「だったらどいてろ。オレの邪魔、すんじゃねえよ」

「悪いが、それはできない」

 

 浮竹が腰に差した斬魄刀をスラリと抜いた。

 

「俺たちにも守るべきものがあるんだ。なにをそこまで急いているのか知らないが、知ったところで、それをさせないのが俺たちのすべき仕事だ」

 

 そして手首を捻り、

 

波悉(なみことごと)く我が盾となれ、雷悉(いかづちことごと)く我が刃となれ『双魚理(そうぎょのことわり)』」

 

 一刀であったはずの斬魄刀は、刀身が逆十手状へと変わると、柄どうしが縄で繋がれた二刀一対の刀に変化する。縄には五枚の札が下げられ、上空の気流に気ままに揺らされていた。

 

「なんだ、二刀流か」

「ん? ああ、二つになる斬魄刀は珍しいみたいだが、破面側(そっち)でもそうなのか?」

「さあな。二刀流ってのは珍しいが、こっちにゃ扇子とか斧があったからなァ」

「なるほど興味深いな。始解じゃなくても刀じゃない形状もあるのか」

 

 久方ぶりに会った友人のような穏やかな会話だ。

 それが維持されたまま、言葉が交わされる。

 

「オレにはやることがあるんでな。特別に見逃してやる。ここから去るってんなら、追いかけずにおいてやるよ」

「すまない……それは出来ないんだ。逆に、君がここから立ち退いてくれないか? そうすれば戦わずに済む。余計な血が流れることは、俺としても本意じゃない」

「馬鹿言うんじゃねえよ。そんなの、かっこ悪いじゃねえか」

「……かっこ悪い、か」

「ああ。尻尾巻いて逃げる姿なんざ、怖くてアイツには見せられねえ。……とんだバケモノでもよ、それが嫌だったからカッコちまったみたいでな。それを知っちまったらオレが逃げられるかってんだ」

「戦士のように勇ましいな、君は」

「戦士だからよ。まァ、ここで逃げたら陛下に殺されちまうのが怖いってのもあるがな」

「ハハ、そうなのか」

「そうなんだよ」

「…………」

「…………」

「最後だ、ここから去ってくれ」

「――断る!!」

 

 吼えたアビラマが胸に親指を刺すと、描かれた仮面紋(エスティグマ)をなぞるように抉っていく。

 

 噴血餓相(デボラル・エルプシオン)

 

 変化は顕著だった。大翼が二枚増えて四枚になり、また、装着している仮面がよりシャープな形状になり、模様も変わる。これがアビラマの、大空を舞う戦士としての姿だった。

 浮竹は目を細めながら、太陽を背にして飛翔するアビラマに言った。

 

「戦う術を持たない子供ならともかく、戦士として相手をするなら相応の結果を与えてしまうことになる。だけど、君には、待ってる誰かがいるんじゃないか?」

 

 動揺は一瞬。アビラマは鳥人らしくというべきか、けたたましい甲高い声で笑い飛ばした。

 

「おいおいおい、うぬぼれすぎだぜ死神ィ! どうしてまだ戦ってもねえのにオレが負ける話になってんだよ!? こちとら格上と()るのは慣れてんだ、ンなこと言ってる暇があるなら手前の心配でもしてやがれ!」

 

 そもそも目的を達さねば、また会えるのかすら判らないのだ。

 もはやアビラマの取る選択肢は目の前にある一つしかなかった。

 

「ああ、ああ、ああ。()ってやる、()ってやる、()ってやるぜ。友達(ダチ)のためなら、いくらでもよォ……!!」

 

 腰帯にある折り紙の造花を爪先でなぞると、立ちふさがる巨大な壁へと突貫した。

 

 ◆

 

 

 弾かれたようにバラガンが空を見上げた。快晴とは言えぬために視界にはたくさんの雲が映り、その上にある世界をけして見せることはない。

 

「……アビラマ。あの、たわけが」

 

 それ以上の言葉は喉奥でつぶれてしまい、声になることはなかった。

 

「陛下」

「よい」

 

 気遣うように声をかけてきた部下を制し、底冷えした王の意識を浮上させる。

 四柱での戦闘は破面(アランカル)に天秤が傾き、護衛を任された不甲斐ない盾たちのために死神の主力も動き出した。次に動くのは――自分たちだ。

 

「スターク、ハリベル」

 

 玉座に座したまま、同じ最上級大虚(ヴァストローデ)の仲間を呼ぶ。

 同僚たちは不満を言うことなくそれに応えた。

 

「……あいよ」

「そろそろだと思っていた頃だ」

 

 控えていた従属官(フラシオン)が一人もたたらを踏まなかったことが奇跡だ。大海のような彼らの霊圧が静かに重く鳴動し、腹のなかを緩やかに揺らしていく。

 

「つまらん小細工に、取るに足らん死神ども。貴様らがそんな有象無象に労力をかけるとは思っとらん。――潰せ。一匹の蟻も逃がすな」

 

 肩を落としたのはスタークだ。

 

「やっぱそうなっちまうか。……で、俺の相手はあんたらってとこかい?」

 

 彼の気怠そうな目線の先には、少年と美女のコンビが立ちふさがっている。少年の羽織の背には『十』の数字。十番隊の隊長と副隊長、日番谷冬獅郎と松本乱菊だ。

 

「なら、私はこちらか」

 

 ハリベルの前に現れたのは小柄な女だった。羽織に描かれた数字は『二』。彼女の名は、砕蜂(ソイフォン)。二番隊隊長にして隠密機動総司令官、隠密機動第一分隊“刑軍”総括軍団長と様々な肩書きがその小さな背に乗っている。

 

「……陛下」

「お前たちは他の従属官(フラシオン)の援護に行け。儂は……あそこの羽虫を落としておる」

 

 『八』の数字を女物の着物で隠した、派手な格好の男がいた。京楽春水(きょうらくしゅんすい)。一見して飄々とした性格のにじみ出た容姿だが、実力と気性ともに隊長を任せられるに足る死神だ。

 

「――ようやく、本番だ」

 

 戦いはまだ、スタートを切ったばかりだ。

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