ブシン祭は姉さんが優勝した。裏世界や国のトップはオリアナ王国のゴタゴタによって忙しくしていたけど、一般モブ貴族である僕には関係ない。僕が悩むことを挙げるとすれば、優勝したことを祝えとしつこい姉さんのための祝勝会をどうするかくらいだろう。
――はい、嘘です。本当は沢山悩みも後悔もあります。
まずブシン祭に参加したことが最大の過ちだよね。ブシン祭ではアイリスやベアトリクスを始めとした強者と戦えたし、よくわからないけど蛮行に及んだローズを助けられたし、
でも一時のテンションで正体隠して謎の実力者ムーブを実行したせいでアイリスを精神的にボコボコにする必要ができたし、ニューとガンマの間の空気がギスギスすることになった。ブシン祭に参加してなくても姉さんによって強制的に応援に行かされてたからローズも助けられただろうし。アイリスに偉そうなこと言ったけども、僕がいなければ彼女があんなにキレ散らかすこともなかった。むしろ僕がイキりまくって逆ギレと正当化をしているのである。
そして一番の問題……ベアトリクスに正体がバレた。なんでわかるのかって? ブシン祭の後で本人に聞いたからだけどなにか? 確認の時は『いい年してあんなことして恥ずかしくないのか?』と言われるんじゃないかと想像して胃が捩じれた。
別にベアトリクスは言いふらすような人間じゃないから正体がバレたこと自体はいいんだよ。単純にアトミックをぶっ放す前の厨二病なセリフを友人が知っているという事実が恥ずかしいんだよぉ……!
「ちょっとシド、何よその変な動きは」
「ああこれ? 姉さんの勝利を祝うための儀式だよ」
「ふーん。まるで今思い付いたような言い訳にしか思えないし、料理の味が台無しになりそうだからやめて」
「はーい」
自己嫌悪と羞恥心に悶えていた僕は姉さんに命令されてピタッと止まる。そう、僕は姉さんとミツゴシ商会グループのレストランでディナー中なのだ。超VIPルームでの豪華絢爛な食事には暴君みたいな姉さんには大満足みたいだ。これでも駄目ならもうお手上げだった。ガンマへの支払いが無駄にならなくてよかった。
それはさておき、僕は心にダメージを負っている。ローズにスタイリッシュ盗賊スレイヤーバレした時に近いダメージだ。ストレスを溜め込むのはよくないので気分転換に気に入らない奴をぶちのめそう。またの名を八つ当たりと言う。
忙しくない時にやってた盗賊狩りやミドガル王国での事件で近所の盗賊は大分減ってしまったので無法都市に行こう。強さとしては盗賊に毛が生えた連中が多いらしく、どいつもこいつも救いようのないカスばっかりらしいからね。ストレス発散のサンドバックにしても心が痛まない。ついでにお宝も頂いて『シャドウガーデン』への借金返済に充てよう。皆いらないとか言うけど僕の心が痛むので。
近々始まる秋休みを利用しての無法都市旅行を考えていた僕だったが、いつの間にか無法都市で姉さんと一緒に『血の女王』を討伐しに行くことになってた。
姉さんと一緒……ふ、不安だ。
ベアトリクスにどうしてバレたのかはエッ……の方にあるよ。