陰の実力者になりまして……   作:柔らかいもち

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 これを書いたのはムフフな小説を書きたいけど原作シャドウではムフフな展開にならない、なっても不自然な展開になりそうだからです。
 ムフフな展開にするにはそーいうのはどんなものか確かめたいとか、子供作って私がお前の父だごっこやりたいとかしか思い付かず、それは他の人がやってるので。
 あと女性優位が好きな作者の癖です。


二話 異世界の王女像は幻想だった

 十五歳になった僕は王都にあるミドガル魔剣士学園に入学した。大陸最高峰の魔剣士学園で、国外からも多くの魔剣士の卵が集まるくらい人気でネームバリューもある。……本当は地方の適当な学園に入学しようとしてたけど、入学手続きの前日に何故か姉さんが帰って来てミドガル魔剣士学園に入れられたんだ。「学園でも私と一緒に居られて嬉しいでしょ?」と姉さんは笑ってたが、姉さんがいるから行きたくなかったんです。

 

 理由は全力を出せないから。ミドガル魔剣士学園は基礎科目はクラスごとなのだが、武器を使った実技科目は学年すらごちゃ混ぜ。僕は最もスタンダードなブシン流を選択しており、一番実力が下の9部にいる。組み分けの時にこれまたわからないが姉さんが見学していて手を抜かざるをえなかった。もし上位の部に選ばれて一緒の部になってたら絶対に姉さんにいじめられてた。後日、もっと鍛えてあげるわと言われていじめられたので意味なかったけども。

 

 くそぅ、姉さんさえいなければ超つよつよルーキーとして活躍して結構可愛めの女の子とキャッキャウフフしてるはずだったのに……多分きっと恐らく……あっ妄想乙とか聞こえた死にたい。入学して二ヶ月が経ったのに僕の近くにいるのは自意識過剰なノッポな男のヒョロと芋男なジャガの陰キャ友達だけだ。

 

 そして僕の学園をやめたい気持ちは今も指数関数的に跳ね上がっている。憂鬱な気持ちがため息となって口から零れた。

 

「なにため息なんて吐いてるのポチ。こんなに美しい王女が恋人で一緒に寮に帰ってるのに失礼じゃないかしら」

「君といるからこそだよアレクシア。知ってる? 幸せが逃げる時はため息が出るそうなんだ」

「なら問題ないわね。私と恋人になれた時点でポチから逃げる幸せなんか使い果たしてるもの」

 

 隣で自信に満ち溢れすぎて地面がべちょべちょになるんじゃないかと思ってしまうセリフを口にする少女の名はアレクシア・ミドガル。この国の第二王女であり、白銀の髪と切れ長の赤い瞳が綺麗なクール系美少女だ。

 

 およそ二週間前、僕はアレクシアに告白した。別に一目惚れしたとかではなく罰ゲームである……うっ、頭が。相手の女の子が優しかったから酷いことにならなかったけど、中学生の頃の割とトラウマな出来事だ。一度無視して更に酷いことをされたのを思い出し、僕は罰ゲームを実行した。

 

 とはいえ、当時の僕はそこまで気負ってなかった。アレクシアには二ヶ月もしない内に百人を超えるアホどもが告白して玉砕している。僕もフラれてその他大勢の一人と認識されることになり、そこまで恥ずかしい思いをすることはないと考えていた。

 

「ア、ア、ア……アレクシアおうにょ! ぼ、ぼ、僕と付き合ってくぁさぃ……?」

 

 ごめん、嘘ついた。普通に恥ずかしかった。美人はアルファ達で見慣れてるはずなのにどうして緊張して嚙んじゃうのだろうか。というかアルファ達みたいな突き抜けた美少女達に陰キャが慣れろって言う方が無理ある。

 

 さっさと振って終わらせてくれー。そう願っていた僕の耳に届いたのは、

 

「よろしくお願いします」

 

 まさかのOKだった。茫然としたまま寮に戻ってOKの返事を喜んでいた僕だが、もし過去に戻れるならジャーマンスープレックスを決めてやるだろう。

 

 アレクシアは猫を被っていた。本性は金貨を投げてそれを拾ってきた僕を犬扱いして楽しむクソ女だった。金貨を拾う時にわざと邪魔してプリーツスカートの中身を見せてくる痴女でもある。僕は彼女の婚約者候補である剣術指南役のゼノン先生への当て馬として選ばれたのだ。おしとやかで優しい王女が創作物の中にしかいないと証明されたね。

 

 じゃあさっさと別れればいいって? ところがどっこい、別れられないんだなこれが! 少し前に罰ゲームで告白した女の子が優しかったから酷いことにならなかった話をしただろう? もし相手の女の子が優しくなくて、更には罰ゲームで告白してきたことを知った権力者だったら?

 

 答え、拒否したら殺される。よって僕はアレクシアと恋人のふりを続けなければならないのだ。せめてもの抵抗は減らず口を叩くくらい。猫を被るのが上手なアレクシアを弱みを握って脅したと思ってる生徒から嫌がらせを受け、ドSな王女からもいじめられる……ほらね、学園辞めたくなってくるでしょ?

 

 とりあえず弱みを握って脅したという噂を流したヒョロと、アレクシアに話しかけられただけで聞かれてないことまで暴露したジャガには膝カックンを仕掛けておいた。ちょっと力を込めすぎて膝カックンどころか足払いになっちゃったが、周りには二人が唐突にサマーソルトキックをやって失敗したように見えただろう。あの二人ならやりかねないと思われていたのですぐに興味を失われていた。僕に嫌がらせをしてきた連中にももれなく嫌がらせをしている。パンツの中にイータから貰った劇薬を仕込んでいるのだ。オカンにしつけとして叩かれた時よりも猿よりも真っ赤になった尻が一月余り続くことだろう。実力を持った陰キャの恨みを舐めるなよ……。

 

 閑話休題。

 

 僕等は授業が終わった後、恋人の振りをするために人気のない林道を三十分以上かけて歩いて寮に戻っている。普通に歩けば十分そこそこで抜ける道にそんなに時間がかかっているのはアレクシアがひたすら愚痴を溢しているからだ。内容はひたすらゼノン先生のことで、よくここまで嫌いになれるものだと感心すらした。結婚相手としては欠点が見当たらない超優良物件なのに。

 

 まぁそれも一回だけだけど。アレクシアはお気に入りの切り株に腰かけて水分補給もしてるけど、僕はずっと立ちっぱなしで相槌を打ちつつ時折投げられる金貨を取りに行くのだ。普通に疲れる。星が見えた日には立ったまま寝て寝言で返事をしてた。翌日の授業でボコボコにされた。隣に座らないのは一応アレクシアも美少女なのでとても緊張するからです。どうして女の子って甘い匂いがするんだろう?

 

 今日も今日とてゼノン先生に罵詈雑言の嵐を撒き散らかし、仕上げとばかりに僕に金貨を取ってこさせて犬のようにわちゃわちゃと頭を撫でたアレクシアが立ち上がる。

 

「さて、帰るわよポチ」

「はいはい」

「明日こそアイツのムカつく面に木剣叩き込んでやるから見てなさいよ」

「アレクシアが本気でやらない限り見る意味ないでしょ」

「どういう意味よ」

 

 きっとこれは失言だった。減らず口を叩き過ぎて気が抜けていたのかもしれない。こちらに振り返って見据えてくるアレクシアに誤魔化しはきかないと悟り、観念して口を開いた。

 

「ゼノン先生は確かに上手いよ。でもアレクシアの腕前だって高い。一方的にやられるほどの差があるようには見えないんだ」

 

 性格は最悪だし今までの仕打ちから認めるのは癪だけど、僕はアレクシアの剣が好きだ。一歩一歩、日々歩みを積み重ねてきた努力の剣。そこから見えるのは辛いことがあっても折れなかった心の強さだ。一度挫けたことのある陰キャの目は誤魔化せん……あっ、ちょっと涙出てきたかも。

 

 そんな僕にアレクシアが語るのは才能のある姉への感情、姉との過去、姉と比べられる自分の剣。僕の剣も自分の剣も凡人の剣だと馬鹿にし、自分の剣が大嫌いと吐き捨てたアレクシアの楽しくはなさそうな笑みを見て、僕は思わず口を開いていた。決して姉から人生に影響を与えられたことに対する同情ではない。

 

「僕はアレクシアの剣が好きだよ」

「その言葉に何の意味があるの?」

「さぁ? 敢えて言うなら僕のためになるかな。言っておかないと僕が後悔しそうだから」

 

 その後に会話はなかった。アレクシアは僕を置いて一人で帰っていった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 翌日、食堂にて裏切り者のヒョロとジャガが一番安い定食を奢って水に流せと都合のいいことをほざき、アレクシアから貰ってたおこぼれとの美味しさを比べながら食事を続けている所にゼノン先生がやって来た。

 

 何でも昨日からアレクシアが寮に戻ってないらしい。僕は引きこもったから授業に出なかった訳じゃないと知って安心した。陰キャになったアレクシアとかいう笑えないものは見たくない。

 

 じゃあ自分探しの旅にでも出かけたのかな? そう思ってフォークを持ち直したらゼノン先生がローファーを取り出した。アレクシアのものだ。一瞬、ゼノン先生が変態になったのかと思ったが、どうやら違うようだ。

 

 ふむ、今朝から捜索したところ、争った形跡のある場所でこれが見つかったと。容疑者を絞り込んでいったら最後に接触したのが僕だと。脅して無理矢理交際していたので誘拐もやりかねないととある二人が教えてくれたと。

 

 ゼノン先生が身体をずらす。食堂の入り口には完全武装で殺気立った騎士団の皆様。肩にポンっと手が乗せられる。置物になっていたヒョロとジャガが僕に敬礼してる。

 

「騎士団が君に話を聞きたいそうだ。協力してくれるね?」

 

 僕は悟った。どうやら僕の陰キャ友達は糞陰キャだったようだと。  

 




 陰キャの習性。長いものに巻かれる。


 筆が乗ってるうちにさっさと書きます。手を緩めるとクオリティが落ちるし投稿頻度も下がるので。
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