バカと運命と召喚獣   作:faker00

12 / 35
第五問 明久の逆鱗

「いやいやまてまて!覗くって俺達が、じゃないぞ!?お願いだからその殺気をしまってくれ!」

 

なんということでしょう。

つい数秒前まで余裕の表情で胡座をかいていた神無月中学の誇る元スーパーヤンキー、悪鬼羅刹ブサイクこと坂本雄二さん(仮名) は中学の頃を知るものがいれば目を見開いて驚くようなきれいな土下座を同級生の女の子二人のプレッシャーによって強制されましたとさ。

 

うん…冷静な解説ぶってるけど僕も出来ることなら部屋から逃げ出したい。

二人とも無闇に手を出さない、まずは話を聞く、という常識的対応ができる(←ここ重要)だけ遥かにFクラスの皆や姫路さん、美波とは一線を画しているけど瞬発的に放たれる恐怖には何らかわりない。

むしろ何故か幾多もの死線を潜り抜け修羅場を乗り越えてきたかのごとく洗練されている分、こっちのほうが遥かに怖い。

雄二の態度も自己防衛の本能が導いた最良の選択肢といえるだろう。

 

「へえ、それじゃあ聞かせてもらいましょうか?まさかあの、頭のキレる坂本君がこんな大事なシーンで冗談で、覗く、なんて言うはずありませんもの。きっと重大な理由があることでしょうね。 」

 

「私もそう思います。坂本は聡明だ。そんな事をしようとするはずがない…そ…しかしまた冗談を言って良い場面、ダメな場面が分からない人間ではないでしょう。これで冗談だなんて言われた暁にはつい手が滑ってしまいそうです。」

 

 

イギリスのとある政治家はこんな言葉を残したという。

「ペンは剣よりも強し」

聞いたところでなんのことか訳がわからなかったこの言葉だけど今なら少しだけわかる気がする。

何故なら現に僕の目の前には武力を上回る理論武装という物が具現化しているのだから…

 

「大丈夫だ!だから落ち着いてくれ!」

 

 

やっぱり今のは冗談だよ、てへ♪ という逃げ場さえも冷静に削られた雄二が土下座の姿勢のまま後ずさる、という高等テクニックを披露しながら必死に言葉をつなぐ。

その姿はまさに敵陣の真っ只中でただ一人命乞いをする敗残兵。

 

 

「覗くのは俺達じゃない! お前たち二人だ!遠坂!、セイバー!」

 

 

「え?」

 

「は?」

 

遠目から見ても震えているのがわかる指を二人に向け雄二はこう言いはなった。

 

 

「いや…まあ言い方が悪かった…うん、こんな場面で選ぶ言葉を間違えたのはホントに申し訳ないと思ってる。」

 

二人のプレッシャーが弱まった瞬間に雄二がほんとうに君は雄二か?と思わせる丁寧な態度で弁解を進める。

額に汗をかきまくっているのは彼の名誉の為にも黙っておいてあげよう。

 

 

「あー…それなら最初からそう言えばいいのに。女の子同士じゃ、覗く、っていう表現しないわよ?普通。」

 

「すまないな。普段こいつらを相手にしてると表現はある程度適当でもどうにでもなるからついな。」

 

雄二の言いたいことが伝わったのか呆れたように遠坂さんとセイバーさんは溜め息をついている。

問題は、これで全て解決。みたいな空気が出ているが僕、秀吉、ムッツリーニはなにもわかっていないということだ。因みに不機嫌そうな衛宮君はわかっていそうな態度はしている。

 

 

「お前らはわからないか?普段ならこういう問題が起こるとき、女子は全員敵だからかなり難しいことになるんだが今回は違う。遠坂とセイバーが味方な以上問題はない。」

 

つまり、女の子である遠坂さんとセイバーさんに太ももに傷がある人と、指に縫い傷がある人の二人をお風呂で探して来てもらうということか。

なるほど、確かにそれなら僕らが行くなんて無茶をしなくても良いしより確実だ。 実に理に叶ってる。だけどだ、一つ雄二に言わなければならないことがある…!

 

「なんて事を言うんだ雄二!それなら秀吉でも良いじゃないか!まるで秀吉が女の子じゃない見たいな言い方するなんて!」

 

「明久!?ワシは男であっておるぞ!」

 

こんな美少女を男扱いするなんて…許せない!

 

 

「…明久、残念だけどそれは無理…」

 

「ムッツリーニ!?」

 

なんで!?いつも秀吉を被写体にしているムッツリーニなら秀吉での魅力は一番よく知っているはずなのに!

 

「…見ろ。」

 

そう言って床に広げられた風呂の使用時間が書かれたプリントの隅を指差す。…ん?これは…

 

 

20時30分~21時 A,Fクラス

…尚Fクラス木下秀吉は同時刻に2階中央にある個室風呂への入浴

 

「グッ…!すまない雄二!これは確かに無理だ…!」

 

「だろ?」

 

「何故じゃ!?ワシの性別疑惑は学校公認なのかの!?」

 

「…諦めるべき」

 

これは教師の対応を褒めるしかない。

昨日はあの騒ぎで風呂に入れず部屋に備え付けてあるシャワーを浴びたんだけど、秀吉が入っている間の僕らの心拍数は限度スレスレだったし混乱を避けるために有効な一手だったと言える。

 

 

「言いたいことはわかりました。ですが恐らくそれは無理かと。」

 

「なんだと…?」

 

次にセイバーさんが発したのは否定的な言葉だった。

雄二の説明にも特におかしな点もなかったと思うし、それだからか雄二も眉間にシワを寄せて聞き返す。

対するセイバーさんも普段はなかなか見せない微妙な顔をして俯いている。

なにか理由があるのだろうか?

「こんなことを言うのは心苦しいのですが、昨日の一件で被害を受けているのは貴方達だけではない、ということです。私達二人も味方だなんだと理由をつけられ、愛子や優子と言った面々以外の女子生徒に表だって避けられている、というのが実際のところです。そんな私達が本来の時間ではない時間に風呂場にいこうものなら追い出されるのがおちかと。」

 

「確かにそうかもね。現状Aクラスかここにいる以外は私達も気が休まらないのは確かなのよねえ…こんなとこだけ団結するなんて女々しいというかなんというか。」

 

「…まさかとは思ったが本当にそうきたか。」

 

「そんな…そんなのおかしいよ! 」

 

「…吉井君?」

 

「だって…だって…!」

 

呆れる雄二とけろっとしている二人を前に言葉が出てこない。

僕らを庇った、ただそれだけの理由で遠坂さん達が仲間外れにされる謂れなんてどこにもないのに!そんなの絶対に間違えてる!

二人だって強いから泣き言もなにもいってないだけで本当は辛いはずなのに…!

 

 

「…大丈夫よ吉井君。心配してくれてありがとう。けど私もセイバーも、友達がいないと寂しくて何にもできないの~、なーんてタイプの乙女じゃないから。むしろ静かでせいせいするわ。」

 

「その通りです。吉井、だからそんな顔をしないでください…貴方は本当に優しい人なのですね。」

 

「…え?」

 

「そうそう。今にも泣きそうよ?貴方。」

 

言いたいことが多すぎて纏まらない僕の顔にセイバーさんの綺麗な手が触れる。

僕は…そんな顔をしていたのだろうか?

 

また女の子二人に気を使って貰って情けないと思う。けどそれ以上にそう言う二人は綺麗だった。

 

 

「…雄二」

 

ならなんだ?

 

「どうした?明久?」

 

そんな自分達の状況が悪くなることもいとわず僕らの為に立ち上がってくれた彼女達のために

 

「指示をくれ…どんなことだってやってやる…!」

 

今の僕には…

 

「当たり前だ…思いっきりこきつかってやるから覚悟しろ!」

 

僕には一体何が出きる…!

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

「ねえ坂本君?」

 

「どうした。遠坂?」

 

「まさかこっちが本命だったってことはないでしょうね?」

 

「そんなわけないだろう。こんなに大がかりな上にリスキーな作戦よりも最初に提案したやつのほうが確実だ。」

 

「どうだか、それにしては事の動きがスムーズ過ぎない?」

 

「それはあいつ…あのバカの努力の結果だ。どうだ、凄いだろあいつは?」

 

「ええ…まさか1日で学年の半分の男子を集めるなんて普通はやろうともしないわよ?」

 

「それがあいつの強さだ。」

 

「…」

 

「士郎?まだ納得してない?貴方の嫌いなグレーゾーンスレスレだけど。」

 

「お前分かってて言ってるだろ…あいつが人のため、遠坂とセイバーの為にもしどうにかしようとしてるのは分かってる。ていうか自分が脅迫云々とか忘れてるんじゃないか? 」

 

「まあ吉井君だからね。」

 

「だからこそ協力する価値がある。今のあいつなら俺も信じてやれる。」

 

「うん、さすが士郎ね。そう言うところは自分のやり方に必ずしもあってなくても人の思いを汲み取って動ける…本当に変わらない。」

 

「なにか言ったか?」

 

「何でもないわよ!さっさといってこい!」

 

 

 

 

 

 

さて…作戦を確認しておこう。

強化合宿3日目の夜。

僕の後ろに控えるはC,D,E,Fクラスの女子に飢えた男子約100人。

これから僕らはこの軍勢を率いて女子風呂に覗きを仕掛ける!…と言っても本当に覗く訳ではない。

 

実はこの情報はムッツリーニを通して事前に女子側にリークされている。疑われている僕が中心になってついに動き出した、となれば女子もそんな時に風呂に入ることもなく総力を持って待ち構えているはずだ。

だけどそれこそが僕らの真の狙い。このホテルは合宿ということもあり室内全てに召喚フィールドが張られている。これからの僕らと女子の対決も恐らく試召戦争と同じ状態になるだろう。

そうなれば目の前の召喚獣に必然的に集中することになり、同時に激しい動きが増える、その瞬間を狙ってムッツリーニが撮影&確認、犯人を確保する。これなら女の子は風呂に入っていないから覗かれて不快な思いをする人も出ないだろう。

 

どんな結果に終わろうと恐らく僕は男子を煽動した首謀者ということで良くても鬼の補修…いや停学も免れないだろう。

 

けどそれで良い。今の僕にやらなきゃいけないのは彼女達二人が間違っていなかったことを示すこと…!それ以外はどうでも良い!

 

 

「よしっ!皆!僕達が目指すのは何処だ!」

 

『イエス!ボス!我らが行くは修羅の果ての桃源郷!女子のいる理想郷だあ!!』

 

「その通りだ!僕達は負けるわけにはいかない…総員全力を尽くすんだ!」

 

『サーイエッサー!!!』

 

「よしっ…!それじゃあ行くぞ!僕らの戦いの始まりだあ!!!」

 

『ウオオオ!!!!』

 

 

さあいくぞ!この戦い…絶対に勝つ…!

 

 

 

 

 

 




どうもです!ちょっと短い気もしましたが丁度きりがよいのでここで。
ついに明久が本格的に動き出しましたね。原作でもそうなのですが人のために戦う昭久は何処までも強いと思う。まさに衛宮士郎。

さあこの作戦の結末、そして犯人はどうなる!?

次回をこうご期待!

評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃん待ってます!特に評価くれるとありがたいです!

それではまた!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。