強化合宿最終日は学年ほぼ全生徒が男女に別れて争う全面戦争の体を為していた
。
男のロマン、女湯のぞきの為に恥も外聞もなく本能に従うまでに攻めこむ男子とそれに応戦する女子の争いは我が文月学園の歴史に間違いなく新たな1ページを記したことだろう…
文月学園新聞部2年C組 多田野英樹
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上から下まで全ての階、フロアが戦場となっている。
昨日は完敗を喫したけれど問桐君の協力によりBクラス、そして僕が誠心誠意を込めて『男とか女とか関係ない…僕は一人の人間として君を信じているんだ!』って頭を下げたところその熱意が通じたのか学年次席である久保君が動いてくれてAクラスの協力も取り付けられることになった。
この言葉を考えたのは雄二だけど本当に心に響いたんだと思う。
僕が頭を上げたとき久保君の顔は真っ赤になり感動したのか若干目が潤んでいたし。
そして五分になった戦場、大半の生徒は己の欲望のために、そして僕らはとある二人の尊厳のために。
そして…決戦が始まる。
「…見つけたよ。清水さん、玉野さん。」
僕達はついに元凶の前に辿り着いた。
「くっ…まさかこんな学園全体を巻き込んでまで私達を捕らえようとするとは…豚共のやることも侮れないですね。」
「アキちゃん…」
ムッソリーニの写真にあった通りの金髪縦ロールと黒い長髪。
この口の汚さと言い間違いない。
「はっ、誰が豚だ。それならこんな事をするテメエらは何なんだ?ああ、ただのゴミか。それも中途半端に人間の真似をするから周りに迷惑をかける最低なやつな。生ゴミ以下。」
1言われたら10返す男、坂本雄二。
約一週間イライラさせられたせいかいつも以上にキレのある毒舌で対抗する。
清水さんもなかなかそういう面があるみたいだけどどうやら僕の悪友には及ばないようだ。
その証拠に額に青筋を浮かべて怒っているように見えるが言い返すことはできない。
「まあ坂本はちょっと言い過ぎかも知れないがこれくらい言われても文句は言えないぞ、お前ら。一体何が目的だ?」
比較的丁寧に問い質すのは衛宮君だ。
彼が来てからFクラス男子の常識レベルは著しく上がっているように外からは見えているだろう。
実際の所はひとりで押し上げているだけだけど。
「は!少なくとも、私は、あなた達2人には興味もなにもありません!とっとと私の視界から消えてください。私が用があるのはそこの豚やろうだけです!」
思いっきり罵声を浴びせながらすごい怨みというかなんというかとにかく表せる限り最高の不快感を全面に押し出し清水さんが僕を指差す。
…なんで初対面の人にこんな怨まれないといけないんだろう…最近こういうのが多い気がする。
「そういやお前が脅迫したのは明久だけだったな。たしか…異性に近づくなとかなんとか。自分の性癖に人を巻き込むなんて面倒なことしやがって。そんなことしても愛しのお姉様とやらは振り向かないぞ。」
「…!この…!」
あ、これ確実に地雷踏んだよ、あえて踏んだのか?
「黙りなさい!あなたに私のお姉様のなにがわかるのです!お姉様と私はそれはそれは深い愛情と…」
「深いのはお前の業だけだ。恋は盲目とはよく言ったもんだがお前のは錯乱だ錯乱。目の前が見えてないどころか触れたものも正確に把握できてないときてる。これを他になんと言えばいい?」
もう雄二と清水さんの口喧嘩になってきている。
結果は見るも無惨なものだけど。というか清水さんが脅迫したのは僕だけだよね?なんで雄二が怒ってるんだか…それ程この2人の在り方に怒りを覚えていると言うことか。
「くう…!この豚が…」
「バカの一つ覚えみてえに繰り返すなよ。本当にバカに見えるぞ。さあ、観念して鉄人のところへ一緒に来い。そこで全部白状してもらおうじゃねえか。]
話は終わりだと言わんばかりに一歩前に出る。
ここでいくらごねようが結果は変わらない。ごまかしようのない証拠さえ突き付ければすべての疑いは晴れ、一件落着だ。
「ふっ…そう簡単に行くと思いますか?まさかなんの対策も立てずに私たちが二人で行動するとでも?」
「なに?」
この部屋にいるのは僕達5人だけ。退路はなく絶体絶命のピンチのはずなのにさっきまでイライラしていたはずの清水さんは余裕の空気を崩さない。
「知ってますか?ここのダストシュート、重量オーバーを防ぐために下からロックかけられるんですよ?そしてその下と言うのは女子軍の本拠である女湯に直結してること」
「おまっ!?マジでやる気か!?」
「お姉さまのためならたとえ火の中水の中!です!それではまた!いきますよ玉野さん!」
「えっ…ほ、ほんとに…きゃあー!」
後ろの壁に開いた穴と取りつけられた鉄格子、いつの間に細工したのか簡単に外れた格子が地面に触れ音をたてるころには二人の姿は見えなくなっていた。
「やりやがった…!」
「どういうこと雄二!?」
「いくら全クラスの協力が得られたと言っても、総戦力じゃ学年最強翔子に教師含むあっちのが上だ!工藤あたりは絡まないと言っても先に苦しくなるのはこっちなんだよ、それにモチベーションの問題もある。こっちには覗きなんかぶっちゃけどうでもいいやつもたくさんいるが女子からしたらたまったもんじゃない。いずれ崩れるのは目に見えてる…だから早く決めなきゃいけなかったんだちくしょうめ!」
ドンッという音とともに壁を思い切りぶん殴る雄二。
珍しく最初から最前線に来たと思ったらそういう事情だったのか。
「だったらどうする?どっちにしろこのままじゃなにも解決しないだろ。」
まずは落ち着け、となだめながらも本題からはそれないように衛宮君が雄二を促す。
「ああ…あまり良い案とはどう考えても思えないがこれしかない…いくぞ二人とも。昨日のリベンジだ。」
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「うおおお!!!!」
「これがオケアノスへの胸の高鳴りじゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
「お前…それでいいのか…?」
下の階は昨日の焼き直しだった。
ただ違う点があるとすれば今回は女子と男子の戦力が拮抗していると言うことか。
その証拠に僕達が下りていっても特別人員を割くと言うことはしない。
というよりもできないと言うべきか。
「明久!ここはどうでもいい、さっさと突っ切るぞ!!」
「坂本!あの二人の目星はついてるんだろうな?これでブラフとかだったら時間のロスどころじゃすまないぞ!」
「ああ間違いねえよ!一番安全なのがそこだからな。さっきのような手は施設の構成上もう有り得ん!」
自信があるのか迷いなくずんずんと進んでいく。
「まてい!!貴様ら…またこりずにやってくるとはほんとうに良い度胸だな!」
「この変態ども…何が無実よ!虫唾が走るわ!」
「あ、明久君…」
「ちい!いくら均等になったっていってもこれだけの戦力を残せるか…!」
尋常ではないオーラとともに立ちふさがったのは鉄人、小山さん、姫路さんの三人だった。
正直かなり怖い。できることなら逃げ出したいくらいだ。
「姫路さん…」
姫路さんは今にも泣きそうな目をしている。
僕が原因で彼女にこんな顔をさせてしまっているんだと思うと心がずきんと痛む。
「私は…私は…試獣召喚!」
「ためらってる余裕はねえぞ!試獣召喚!」
「…!試獣召喚!!」
みんな次々と召喚獣を召喚していく。
その数、計5体…5体?
「おい鉄人、どういうつもりだ…?」
「昨日明久を気絶させたことに負い目があるのか?」
鉄人が召喚獣を召喚していない。
当の本人は指摘されると頭をぼりぼりと掻きながら
「確かにそういうところがないとは言わん、だがそれ以上に理由がある。俺は教師だ。時に鉄拳を用いることはあるがそれもあくまでお前たちを正しい方向に導きたい、立派に育てたいという思いがあるからだ。」
あれ…なんだか教師っぽいこと言ってる…
「それが一番にあるからこその教育であり、ただ力のむくままにそれをふるうことは教育とは言わんのだ。そしてな…俺も昨日、そして今日で学んだよ………言葉も、思いも、直接でなくては伝わらないとな。」
バサッという効果音が聞こえてきそうな謎のかっこよさと同時に鉄人がスーツの上着を脱ぎ棄てる。
まくられたワイシャツから見える筋肉はまさに武人そのもの。
「くるがいい…吉井、坂本、そして信じたくはないが衛宮よ。お前たちが何を思ってこんなことをしているのかは知らん。だがそれ相応の覚悟があってのことなんだろう。なら俺も自らの想いをもって正面から受け止めてやる。」
「ふん!!!」
「うわ…!」
「召喚獣相手に生身で対抗するなんて化け物か!?」
「サーヴァント相手に戦える葛木じゃあるまいし…」
「サーヴァント?」
「何でもない、忘れてくれ。」
強い、とにかく強すぎる。
なんだこの化け物は。召喚獣っていうのは僕のように点数が低い生徒でも通常の人間をはるかに上回る力を持っている。生身でサッカーゴールを持てる人なんかいないだろうしそれは間違いない。
だが目の前に立ちはだかる怪物はそんな常識をたやすく凌駕した存在だった。
「まだ諦めんか…」
シャツの襟を直しながらあきれたように鉄人はそう言った。
召喚獣3体でかかってシャツにしわをつけるのが精いっぱいってどこまで頑丈なんだこの怪物は…!
「けど…諦めるわけにはいかないんだ!」
フィードバックに痛む体を引きずりながら立ち上がる。
さすがは鉄人だ。昨日と同じ轍を踏まないようにかあれだけの攻撃を受けながらも尚手加減を加えているみたいだ。痛いのは間違いないけどこれくらいなら十分に動ける。
「…」
「いい加減にしたら姫路さん?やっぱりこいつらはただの最低な野郎よ。貴女もそれがわかっていたからこそ最初拘束に協力したんでしょ?」
「それはそうですけど…」
「ごめんね姫路さん。けど今回ばかりは…」
そんなぼろぼろの僕らを見下ろす小山さんに困ったような姫路さん。
ははは…弱ったな。こんな顔をさせたかったわけじゃないんだけどな。
「珍しいな吉井、お前は確かに馬鹿だが人を悲しませるようなことは絶対にしないと思っていたんだが。姫路の顔を見て何も感じないのか?」
姫路さんを見ても揺らがない僕を見て心底驚いたように鉄人がうなる。
何も感じないのかだって…?
「…何も感じないなんてあるわけないじゃないですか。」
「なら今すぐにこんなことはやめればいい。お前のやったことは大変なことだし、また信用を取り戻すのは難しいかもしれん。だが真剣に反省するなら俺も手伝ってやる。吉井、もう一度だけ言う。もうやめるんだ。お前は人の心がわかる人間のはずだ。」
鉄人の言葉が心にしみこむ。 暴力なんて当たり前なのになんだかんだでこの人が教師だけでなく生徒からも信頼されているのか少しだけわかった気がする。
だけど…
「それは聞けません…」
「お前と言うやつは…!」
「ありがとうございます西村先生…先生の言ってることは正しいです。けど僕にも譲れないものがある。」
「それが覗きだと言うのか貴様は!」
「いいえ、はっきり言ってそんなものはどうでもいいんです。先生、僕は努力が報われないなんていうのは間違っていると思うんです。」
「…!」
「…?それがどうかしたのか。」
「その努力にもいろいろとあって自分のためにする努力と、人のためにする努力がある。じゃあもしも人が自分のために、その人にとっては何の得にもならない努力をしてくれたらどうやって返せばいいと思いますか?」
「それは同じことをするしかないだろう。人のための行動は、人のための行動でしか返せん。」
「僕も同感です。なら…」
腹にグッと力を込める。
「僕は止まるわけにはいかない!処分でもなんでもかかってこいだ!どんなことをしてでもやり遂げる!!」
こう言い放った。
「…そうか…」
鉄人はそんな僕を真っすぐに見据えていた。
そして諦めたようにふっと息をつくと
「お前がただのくずじゃないことはわかった…だがな、俺にもやらなければならないことがある。不安になっている善良な生徒は守らなければならん。それでも…どうしてもやらなければいけないことがあるというのなら俺を超えていくがいい!」
堂々とこう言い切った。
「当然だ!いくぞ鉄人!」
召喚獣も自分自身も同時に鉄人との距離を詰めていく。
だが相手は人間を超越した戦闘マシーン、案の定その拳は僕のそれよりも早く撃ち抜かれるだろう。
でもそんなのは予想通り、相打ち上等…!ここで沈めれば後は衛宮君と雄二がどうにかしてくれる!
「やめてください!西村先生!!」
「なっ!!」
「ひめ…!」
そんな時に僕らの間に飛び出してきたのは見慣れた長い髪の毛。
「やめろ姫路!お前が鉄人のパンチ食らったら本当に死んじまうぞ!」
「明久君は…明久君は!」
雄二の必死の制止もむなしく姫路さんは動かない。
まずい…このままじゃ…!
「投影…開始」
「…えっ?」
鉄人の拳はどこかから現れた二本の木刀によって防がれていた。
「衛宮君?木刀なんてどこから…」
「ん?木刀ならいつも常備してるぞ、気付かなかったか?」
全く知らなかった。
「まあいいや…姫路、大丈夫か?」
「え、あっはい…けど…」
戸惑う姫路さんに衛宮君は柔らかな笑顔を向ける。
「何か明久に伝えたいことがあるんだろ?」
「…はい!」
姫路さんがこちらを向く。あまりにも近すぎて心臓がもう飛び出そうだ。
「吉井君」
「なに?」
「何も聞かずにひどいことしようとしてごめんなさい!」
そう言うと彼女は深々と頭を下げた。
「いや…姫路さんが謝ることじゃ…!」
「いえ!謝らせてください!吉井君が理由もなくひどいことをするわけないのに、私は…!」
「もういいんだよ。」
今にも泣きだしそうな姫路さんの頭に手を置く。
「僕がいいって言ってるんだからいいじゃない。それとも姫路さんは僕を困らせたいの?」
我ながらずいぶん意地悪な言い方だと思う。
「それは…いえ、わかりました。けど少しだけ恩返しさせてもらいます。」
「え…?」
今度は鉄人のほうに向きなおる。
「西村先生、Fクラス姫路瑞希、先生に試召戦闘を申し込みます……明久君、やらなきゃいけないこと、きっちりやってきてくださいね。」
どうもです!まずは遅れてごめんなさいパソコンとか新しいスマホだとうつのがすごい時間かかります…
とにかく本編のほうへ!………なぜ終わらぬ!結局鉄人と姫路さんのターンで終了。おかしい…最終話のはずだったのに。
次こそ強化合宿編フィナーレです。
乞うご期待!
評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃん待ってます!
それではまた!