バカと運命と召喚獣   作:faker00

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第十問 バカと信頼と 後編

「いいの雄二?」

 

「なにがだ?」

 

「姫路さんと衛宮君を鉄人の前に置いてきて!」

 

「あの2人が自分で決めたことだ。放っておけ。」

 

「けど!」

 

「うるせえ!ごちゃごちゃ言ってる暇があったらとっとと走れ!俺達がやらふきゃ今度は姫路も罰を受けることになるんだぞ!」

 

「……それは!」

 

 

 

僕等を信じて姫路さんは鉄人の前に立ちはだかり、衛宮君も「初めての校則違反だろ?なら一緒にやってくれる友達が必要だ。」なんて良く分からない言い回しをして共に残る事を選んだ。

これでもまだ鉄人を制圧出来るかどうかは怪しいところだが少なくとも瞬殺されて後ろから鉄人の追撃を受けるということはないだろう。

 

逆にいうと2人が助けにくる、という事もないと言うことだけど。

絶対絶命のピンチを救ってくれた2人の為にも僕達2人が止まるわけには行かない。それは分かっている。

 

 

 

 

『(ピッ、ガガガ)………雄二、聞こえるかの!?』

 

「…!秀吉か!どうした!?」

 

雄二の腰に付けられたトランシーバーから声が聞こえてきた。

かなり音質は悪いけど間違いない。秀吉だ。

 

 

『大島先生の制圧に成功したぞい!工藤がこっちに寝返ったのじゃ!後他には…『ああもうまどろっこしいな!よこせよ』…問桐!?』

 

『聞こえるかい坂本?とりあえずこっちの情報を簡潔に伝えておくよ。2,3階は五分五分、まあここはどうでも良いか。どっちも消耗して勝手に補習行きさ。問題の下のフロアだけど教師陣は火災報知器を誤作動させて集まって来たところを一部屋に閉じ込めておいたからもう加勢はないよ。大島だけは釣られなかったけど今倒したからね。とりあえず障害は除いたから後はそっちでやってくれ。ぼくはアリバイでも作って高みの見物を決め込むよ、それじゃ』

 

そこまて言うと一方的に通信は切られた。

 

 

「問桐のやつ、なかなかやるな。この短時間で教師陣を抑え込むとは予想外だ。」

 

「そうなると…」

 

「恐らくラスボスは翔子だろう。……くそ、だからこうなるまえに決めたかったんだ。」

 

喜びの表情から一点して青ざめるというジェットコースターのような表情のへんかを見せる雄二。

………あれだけ逃げ回っていた霧島さんの待ち構える所へ自ら飛び込もうというのだ。

どれだけ恐ろしいかは考えるまでもない。 僕からすれば特に彼女と因縁はないから純粋に喜べるけど……

 

もう一人、姿の見えない人の事を思うと頭が痛くなった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「やっぱりそうか……」

 

「まあこうなるよねそりゃ。」

 

 

僕らにとって表向きのゴール地点、女湯。

そこに続く一本の廊下を走り抜けその赤い暖簾が見えるようになったとき。

その前にどす黒いオーラ全開の少女達が姿を表した。

 

 

「……雄二」

 

「なんだ?」

 

「……そんなに死にたいの?」

 

「これがのっけから交渉の余地なしってやつか…」

 

 

おかしいな…暖簾の赤が血にまみれているようにしか見えない。

 

霧島さんはいつになく機嫌が悪い。これまでの流れを考えればまあ当然なんだけど。

 

ご愁傷様、といつもの僕なら心の中で笑っていただろう。

でも今に限ってはそんな余裕はなかった。

 

怒りに身を任せているのは霧島さんだけではない。僕の目はどちらかというともう1人に注がれていた。

 

「美波…」

 

 

全ての元凶であるはずの2人も隣にいるのにほとんど焦点が合わない。

怒りに燃える瞳を見つめ返す。友達のはずの少女は僕の敵だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様!美春の言った通りでしょう!?この豚野郎どもは恥知らずにもまたもや覗きを決行したのです!最低最悪の変態野郎どもです!」

 

「そうみたいね…アキ、あんた達最低よ。」

 

 

清水さんの言葉に腕組みをしながらうなずく美波、やはり僕のことをまともになど見てはいなかった。

 

 

「坂本は翔子がどうにかするとして…あんたは私が直接潰してあげる。」

 

「違うんだ美波!僕の話を聞いて!」

 

今までに見たことがないような冷たい目をしている美波に呼びかける。

とにかく話をしないことには何も始まらない。

 

 

「聞きたくもないわ。あんたはいつもいつもバカなことばっかりしてるけどどうせこれもその延長なんでしょう?」

 

「そんなわけ……」

 

「その通りです!この吉井明久はけだものです、クズです!」

 

「清水さんは少し黙って!今は君にかまってる余裕なんてないんだ!」

 

イライラする。

こんなに人に対して嫌な感情を持つのは生まれて初めてかもしれない。

胸の中から湧いてくる何かドス黒い物を抑えるように語気を強めてそう言い返す。

お願いだから黙っていてくれ。これ以上わけのわからないことでごちゃごちゃと口を出されるようならこっちも容赦は…

 

 

「今はかまってる余裕はない…?はっ!いつもはそうやってお姉さまを遠ざけているくせに自分が用があるときは手のひら返しですか?本当になめてますね!」

 

「……は?」

 

すべてが真っ白になった気がした。

 

僕が……美波を遠ざけている…だって?

 

 

「わからないですか?でしょうね!だからこそ私は今ここにいるのですから!」

 

清水さんが叫ぶ。

その言葉はすべて僕の心の大事なところへと深く突き刺さっていく。

 

 

「美春はお姉さまをいつもいつもどんな時でも見てきました……その過程で見たくもなかったですがあなたのことも数多く見ることになりました。そして観察を続ける中で、吉井明久の醜い面をこれでもかと言うほど見せつけられても来たのです!」

 

そんな僕の気持ちなど露しらず激昂した清水さんの独白は続いていく。

 

 

「数々ありすぎて言葉にするのもためらわれるレベルですが、無自覚なクズのために一例でも挙げておくべきでしょうか。あなたのお姉さまに対する態度!それだけで万死刎頸に値します!」

 

「態度だって……?」

 

「まだわからないですか!?ならはっきり言ってあげましょう!ブタ野郎…吉井明久は島田美波を見ていない、いえ、それだけでは飽き足らず常に傷つけている。あなたはいったいお姉さまをなんだと思っているのですか!?いつもいつも同じ女子であるはずの姫路瑞希さんはお姫様のように扱うくせにお姉さまは全く違う存在下のように粗雑にする。まともに見ない、そこまでならまだしも同性である木下秀吉のほうを恭しく扱う始末!これで傷つかない女がいると本気で思っているんですか!?このバカ!!!!」

 

「それは僕が美波のことを気の置けない友人だと…」

 

言われ慣れているはずのバカと言う言葉がここまで重く響くのは久しぶりだ。

言われてみたらそうなのかもしれない。

美波を姫路さんのように扱っているかどうかと聞かれればそんなことはない。

それは間違いない。

だけどだからといって邪険に扱っているつもりなんてないのに、ないのに……なぜかそのあとはのどに絡みついて続かなかった。

 

 

「ほう…そこで言いきらないだけの良心はまだ残っていたようですね。その先を言っていれば本気で一発ぶん殴っていました。ですがその程度ではあなたの犯してきた罪は消えては行きません。気の置けない友人?親友?良いように言葉でつくろうことはいくらでもできるでしょう。ですが……」

 

 

 

 

 

 

 

「そんなもの、いったい誰が望んだというのですか?いいえ、望んでなどいないでしょう。それはすべて体の良いあなたの言い訳です。島田美波という一人の女性のプライドと尊厳を無意識のうちに粉々に踏みにじり続けた最低の、です。」

 

今度こそ完全に言葉を失った。

 

美波と言う人間を知らず知らずのうちに傷つけていた…?

今まで気づかなかったしそんなことは考えたこともなかった。

 

「……」

 

状況が状況ならそんなことある訳ないでしょと笑い飛ばしたかもしれない。清水さんになんてことをいうんだと声を荒げたかも知れない。

 

だけどそれは出来なかった。 

何故なら…チラッと盗み見た美波の表情はとても悲しそうで、見ているこちらまで押しつぶされそうなものだったから。

 

 

「そんな…僕は…」

 

「言い訳など聞きたくありせん。…そもそもあなたは…」

 

「だからといってあなた達のしたことは正当化できないけどね。」

 

「誰ですか!?」

 

それは天の助けか、はたまた地獄の使者か。

僕達Fクラスの救世主となりつつある少女が後ろから悠然と歩いてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凛」

 

「ごきげんよう、翔子。話すのは学校見学以来かしらね。相変わらず夫への

溺愛っぷりは天井知らずってとこ?」

 

「誰が夫だコラ!!」

 

「あら、良く生き残ってたわね坂本君、現状の点数じゃKOされてる頃だとおもってたけど。」

 

「遠坂さん…なんでここに?」

 

 

いつも通りの遠坂さんに頭の整理が追いつかない。

一体なんで…

 

 

「なんでって…あのねえ、翔子相手にあなた達二人じゃどうやっても叶わないでしょ?一応私だってこれ持ってるんだからやることさえ分かればこうするに決まってるじゃない。まあ途中で先読みしたライダーとイリヤに絡まれちゃって少し遅れたけどね。」

 

 

僕等が持ってるのと同じトランシーバーを目の前で振る遠坂さん。

なるほど、それなら納得いく。よくよく考えてみれば雄二も最初に言っていたではないか。「あまりよい案とは言えない」と。

とならこれはまた1つ借りを作ってしまったのかも知れない。

 

 

「そうですか。あなたが噂の遠坂凛ですか。」

 

「どんな噂かは聞かないでおいてあげる。それにしてもやってくれたわね。無実の人間を仕立て上げるだけならともかく、その嘘八百で学年の女子ほぼ全員をだますなんて。私にはそんな度胸ありそうもないわ。」

 

「私のやっていることなどそこのクズ野郎の所業に比べれば可愛いものです!女の子を泣かせるなんて恥曝しです!」

 

「ええ、色々と聞かせてもらったけど吉井君も……アウトかセーフかと言えばアウトね。それに対して口出しする気はないわ。けどね、それとこれとは全くの別問題。人間自業自得、因果応報、等価交換の生き物なの。あなたがやったことの報いはきっちりうけてもらうわ。」

 

 

冷めた笑みの遠坂さんにも屈することなく主張を続ける清水さんだがそんな迫力にも彼女は全く堪える様子もなく淡々と追い詰めていく。

 

 

「なら…貴女も敵ですね!行きますよ!霧島さん!どうせあの女も貴女の夫を奪おうとする泥棒猫です!やってしまいましょう!」

 

「……雄二は…渡さない!」

 

 

返す言葉がなくなったのか上手く手懐けた最大戦力である霧島さん、そしてここにきて存在感を失った玉野さんと一緒に召喚獣を召喚する。

もう言葉でどうにかすると言うことは無理なのかもしれない。

 

 

「くそ…僕等も召喚を…!」

 

 

 

 

「いいえ、あなたはいいわ。吉井君、ここまできてそんなことを言ってるなんて本当にバカなんじゃないの。」

 

 

瞬間、震えた。

味方としてこの場にやってきたはずの彼女が僕に向けたのは紛れもない敵意。

 

 

「どういう…」

 

「分からないならそれで良いんじゃない?私はあなたの行動原理は不器用だけどそれなりに好きだったけど、そんな大層なこと言える立場じゃないわよ?あなた。」

 

フンっと髪をなびかせて遠坂さんは清水さん達の方へと歩いていく。

 

「坂本君、召喚お願い。流石に3人相手じゃ私も分が悪いわ。」

 

「それは構わんが……ちょっと待ってろ。」

 

 

その遠坂さんと入れ替わるように雄二が小走りで寄ってくる。

 

 

「おい明久…」

 

「…なに?」

 

「今お前がやらなきゃいけないこと、本当に分かってるんだろうな?」

  

 

雄二の問いは最後通牒なのかもしれない。 

今の清水さん、遠坂さんの言葉を聞いてなおウジウジしているようなら俺もお前を見捨てることになる、と

何でかは知らないけど僕はそう直感した。

 

 

 

「ああ、分かってる。」

 

手を挙げて応える。いくら僕でもここまできて分からないほど鈍感ではない。

 

 

 

 

「坂本君、今のは心の贅肉だと思うのだけど。」

 

「なんだその言い回し……否定はしないけどな。俺はお前みたいにスパッと割り切れるほど人間出来てないんだよ。」

 

「ふーん、そうは見えないけど。やっぱり友達には甘いのねー」

 

「ぬかせ、それよりも、だ。ここはどうやって打開するつもりだ?」

 

「大丈夫、ちゃあんと秘策があるから」

 

「秘策?」

 

 

 

 

雄二と遠坂さんの声がどんどん遠くなっていく。

それは僕が動いているのと同時に一つのところに集中し始めているからだと思う。

 

 

「…美波」

 

目の前の女の子は今にも泣き出しそうだった。

 

 

 

 

 

「ええと…」

 

「ごめん…」

 

 

僕がどう話を切り出せば良いのか迷っているうちに先に動いたのは美波のほうだった。

 

 

「今回の覗き騒動、これ犯人はアキ達じゃなくて美春なんでしょ?今の美春見てたら流石に分かった。あの娘すぐに暴走するところがあるから…」

 

 

「それはそうだけど、別に美波が謝ることじゃ」

 

 

何もかもを悟ったのか美波は俯きながら淡々と謝罪する。

違う、僕が見たい、話したいのはそんなことじゃない!

 

だっていうのに普段いらないことを喋りまくるこの口は肝心な時には一向に動こうとしなかった。

 

 

「本当にごめんね…アキ達がここにいるってことは瑞希は自力で気づいたんだよね?そりゃ扱いも変わるよね!だって瑞希の方がウチよりもアキの事をずっとずっとわかってたんだもん!」

 

もう彼女は泣いていた。

 

 

「けど…美春にも一つだけ感謝してることがあるの…それはアキもウチのことなんて全然見てないってことが分かったこと。うん…それだけで十分だよ。」

 

「……」

 

 

 

なんで動かない?僕の口、体、動け、動け動け動け!!!!

 

 

「アキ。今までありがとう。」

 

 

美波は何かをふりほどくようにトレードマークであるポニーテールを解いた。それはなにか決別を表しているかのように。

 

「いや…もう吉井君、かな…。これからはひとりのクラスメートとしてよろしくお願いします。」

 

それが最後。

僕の知っている島田美波とは全く別の存在になった彼女はペコリと頭を下げると僕の横をすっと通り、立ち去っていった。

 

そうして僕は何もできないまま呆然とそれを見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後遠坂さんと雄二がどんな手を使ったのかは知らないけれど清水さんと玉野さんは確保され、今回の覗き騒動の事の顛末が全て明らかになった、がしかし。

それ以降行われた男子全員の集団覗きはもちろん大問題となり、一部の女子を含む男子生徒全員が一週間の停学処分を受けることになった。

 

こうして強化合宿は僕と1人の少女の間に深い溝を残して終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「ただいまー。」

 

「お帰りなさいです!お姉ちゃん!あれ…髪の毛おろしちゃったですか?」

 

「うん…(ギュッ)」

 

「わわ!お姉ちゃんどうしたです…泣いてるの?」

 

「ごめんね。葉月。今はこうさせて…」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「言い訳を聞きましょうか?衛宮君?あんなに人の多いところで投影を使うなんてずいぶん大胆じゃない。」

 

「仕方ないだろ!ありゃ止めなかったら大惨事間違いなしだったんだから!俺は間違った事はしてない。」

 

「ハア…こう意固地になってるあんたは説得するの難しいしもういいわ。お願いただから今後は気を付けてね。」

 

「了解…なあ遠坂」

 

「なに?」

 

「いつも心の贅肉だなんだいってるくせに最近自分もそんなんばっかりじゃないか?」

 

「……うっさいわね。バカ。」

 

 

 

 

 

 

 




どうもです!

どうしてこうなった。おかしいな。もうちょい平和な路線のはずだったんだけど…

これにて強化合宿編終了です! 消えない傷を残したこの強化合宿。この後明久達はどうなっていくのか!それは作者も知らない。

さてさて今後は次回短編挟み(アイデア募集してなんなんですけど今回はストレス発散もかねて好きに書かせてください(_ _)聖杯レースin文月は恐らくおそまらないので中編という新しいジャンルでどこかしらでやることになると思います。下手したら本編終了後に番外編として新連載すら有り得る勢い。)今度は体育祭(野球はしない)やろうかなあと。
それと付属して一本不定期連載でFate色全開のを書こうかなとも画策中。

さらに夏休みが終わったから連載ペースが遅くなるとか今回は本当に報告事項が多いですね。

感想、評価、お気に入り登録じゃんじゃん待ってます!
それではまた!


追記 お気に入り数200超えてましたね。今見てびっくりしました。今後とも応援よろしくお願いします!
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