バカと運命と召喚獣   作:faker00

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体育祭編
第一問 夏の始まりと体育祭!


梅雨も終わりに近づくこの時期……気温が30度を上回る事が増え、世間ではいよいよ夏到来!クールビズ! 電気節約!など様々な言葉が飛び交い始める頃だ。

 

もちろん楽しいことも盛りだくさん。海だ、山だ、プールだ、行楽には事欠かない。そして極めつけは夏休み。大人になれば二度と味わえない至福の40日を全力で過ごすのだ。

 

だけど世の中は厳しい。何もせずにその快楽を得られる訳ではない。そこに至るまでの対価が必要だ……そう期末テスト。これにより夏の行動範囲を決めるお小遣いが一気にアップ、もしくはダウンするなんてことは良くあることだしそもそも成績次第では補習などで夏自体が短くなる可能性を秘めている。

だからこそ僕達Fクラスでもこの時期はまともに勉強する。だが今年はそれだけではない。学生にとって青春を彩るとある行事が何故か間近に迫っていた……

 

 

 

「体育祭だお前らぁぁぁ!!!」

 

「「「………」」」

 

「絶対に勝つんだぁぁぁ!!!」

 

「「「………」」」

 

「返事をしろぉぉぉ!!!」

 

「「「………」」」  

 

「(グスッ)お願いだ…へん…じを…してぐれえ…」

 

「いったいどうしたのさ雄二!?」

 

 

悪友、坂本雄二は追いつめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「えーと…要するに…」

 

「この間の覗き騒ぎを解決する際に遠坂の口車に乗せられてしまい体育祭の結果如何では即婚約の憂き目に合う、ということじゃな?」

 

「…憐れ」

 

「その、なんだ…すまん。坂本。」

 

「いいんだ衛宮…お前は悪くない。」

 

 

絶望の縁に沈み死んだ魚の目をしていた雄二に聞いた話はこうだ。

先月行われた強化合宿で僕らは覗きの冤罪を着せられてしまい、それぞれの立場が危うくなってしまった。

そして僕等は無罪を証明するために闘い、無事に真犯人のDクラス清水さん、玉野さんを捕まえたんだけどその際に問題が発生したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

『まって翔子。よく考えなさい、あなた一筋であなただけを見ている夫である坂本君が他人の覗きをするなんて本当に思うの?』

 

『そうだ!俺は無実!…おい?何を言ってるんだ?遠坂』

 

『…でも雄二も男の子…可愛い子には興味があるかもしれない…』

 

『ウフフ…嫉妬なんて可愛いじゃない。大丈夫、坂本君はそんなことで揺らがないから。いつも男である吉井君とばかり絡んでいるのはあなた以外の女の子には興味はないから安心して!っていう坂本君なりの不器用な愛情表現なのよ。』

 

『……!愛情…!』

 

『おい!訳の分からないことを…『うっさい…ガンド』…ヘボッ!…な、なんだこのめまいは…』

 

『けどあなたもそれに甘んじてちゃだめ。チャンスは掴みに行かないと。』

 

『…チャンスを?』

 

『や、やめ…』

 

『そうよ。今度の体育祭、今まで翔子に愛を与え続けた坂本君は最強の敵として立ちはだかるわ。…ほら、雨降って地固まる、なんて言うでしょ?一度ぶつかり合うことによって2人の絆はより深まる…そうして翔子が勝った暁には結婚を申し込もうとしてる坂本君の意志を踏みにじるつもり?【坂本】翔子は!(ビシッ)』

 

『…!ごめんなさい…私…!(グスッ)』

 

『良いのよ翔子、さあ、謝るのは後。まずはあなた達2人を引き裂こうとした元凶を叩かないと…!』

 

『…うん!』

 

『え?ち、ちょっと!合計600オーバーって…いやあ!!!』

 

『俺は…なにも…(カクッ)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これであっておるかの。」

 

「ああ、思い出したくない記憶が見事蘇ったぜ…」

 

「さっすが秀吉!臨場感抜群だったよ!」

 

「何故雄二が突然動けなくなったのかは疑問じゃがの。」

 

「…目の前に浮かぶ情景」

 

 

秀吉の演技によって全てが再現された。

霧島さんをどうやって突破したのかと思ったけどこういうことだったのか…それにしても遠坂さん。冷静というか惨すぎる。

霧島さんに坂本夫人みたいな呼び方をしたらもうそんなの食いつくに決まってるのに。

正直僕からしたら霧島さんみたいな美人に好かれる雄二は、毒の沼地にでも突っ込ませてそのまま溺死させたいくらい憎たらしいけどここまで真っ青な顔をしてるのを見るとそんなこといえなくなるのだ。

ムッツリーニの言うように、憐れ、という表現が唯一相応しい。

 

 

 

「で、でもまだ希望がないわけじゃないんだろ?体育祭で勝てば問題ない訳だし…俺達3人もスポーツはそれなりに覚えがある!遠坂だって勝てると踏んだからそういう条件を出したんじゃ…」

 

「あー、なんも考えてなかったわよ、私。」

 

「遠坂!?お前いつの間に…」

 

希望的観測を述べる衛宮君の後ろから遠坂さんがスッと出てきた。

どうやら彼女は気配を消すというスキルさえ身に付けているらしい…それにしても今の発言はいったい…

 

 

「今来たばかりよ。あの時はとりあえずなんとか翔子を引き込まなきゃいけなかったからはったりかましただけ。あの2人の事だから奥に隠れてるもんだと思ってたけどちゃあんと本当はどこが安全なのか位の判断する知恵はあったみたいね。翔子ひとりなら私でそれなりに何とかできたでしょうけど複数は無理よ。」

 

要は最後の手段として雄二を売ったというわけか。うん、恐ろしく冷静かつ正確な判断だ。あそこで霧島さんを抑えないと勝ち目はなかった訳だしその判断は絶対に正しい。

雄二にはご愁傷様と言うしかないけど…あ、干物みたいになってる。

 

 

「けどそれじゃあ…」

 

「分かってるわよ。何とかしてみせる。ただここの高校の体育祭のルールだと男子はともかく女子は厳しいのよ。全く…男女平等とかいってこれじゃあ女子の酷使よ酷使。」

 

遠坂さんなら涼しい顔してやり遂げそうだよね、なんて野暮なことは言わないでく。

知らない衛宮君は、ん?みたいな顔してるけど遠坂さんの呆れ顔もまあ当たり前といえば当たり前なのだ。

 

 

「うちの体育祭は完全に男女平等を掲げておるからのう…クラスの人数に関わらず同じだけの競技の数を同じだけこなすというのは女子が極端に少ないうちのクラスでは厳しいのはよく分かるぞい。」

 

「そうねー…最悪木下君の分のブルマも用意してくるとしても5人だし…他のクラスはだいたい25はいるからひとりにかかる負担は5人分かあ…」

 

「遠坂!?ついに主までワシを女と認識し始めたのか!?」

 

「冗談だから…そんなに怒らないでよ。けどもしもやってくれるっていうなら大歓迎だからいつでも言ってね?」

 

「絶対にやらぬからな…?」

 

 

秀吉のブルマ姿に欲情と劣情の思いを馳せるのはとても魅力的だけど今は我慢しよう、今重要なのはそこじゃない。

 

秀吉が言ったとおり文月学園の体育祭は基本的に男子と女子で行う競技が全く同じ量で、得点配分も同じである。

普通の人数比のクラスならなんの問題もないがFクラスのように極端に女子が少ないクラスにとってはそれが致命傷となる。なにせたった5人しかないないのだ。息つく間もなく次の種目、次の種目といかされればスタミナも尽きてしまう。

それに得点の高いリレーなんかも得意苦手関係なく全員参加しなきゃならないし

 

 

「はいはい分かったわよ。まあ私とセイバーでお互い10人分くらいは働いて見せるから。そこは心配しないで。」

 

しれっととんでもないことを言ってるけど、遠坂さんが言うと普通に出来てしまう気がするのは何故だろう。

見た目もすごそうだけどさ。

 

「けどそれを真に受けたとしてもまだ足りないぞ…姫路は運動に関して言えばせいぜい0,2人分だからな…」

 

「いくら何でもそこまでは…そうだね」

 

干物状態から口を利けるまでに回復した雄二が懸念を出す。

本人は苦手な行事でも一生懸命がんばる人だから目の前では絶対に言わないけど、姫路さんの運動音痴っぷりはかなりすごいものがある。

短距離走なんて僕のバック走のほうが速いんじゃないかと本気で思うくらいだ。

 

「問題はそこなのよね…いや、違うか。あの子が本気を出せばそれくらいカバーてしてあまりあるもの。」  

 

 

そう言うと遠坂さんが窓際の方を見る。

僕も見たいわけではなかったがつい反射的にそっちを見てしまった。

 

…本当に僕が彼女を変えちゃったんだよね…

 

 

窓から入ってくるこの気怠い程の暑さを癒やす風、その風に長い髪を靡かせながら彼女は1人何か物思いに耽っていた。

島田美波、強化合宿が終わってからというもの僕は彼女のトレードマークであったポニーテールを一度も見ていない。

 

「あの子も塩らしくなっちゃって…いつまでああしてるつもりなのか」

 

「遠坂さん。」

 

「分かってるわよ…けどあの子無しじゃ多分勝てないわよ?と言うよりもそんなのはどうでもいいとしてもあのままで良いはずがないの。それはわかるわよね、吉井君。」

 

「それは…」

 

遠坂さんの言葉はいつもどんなときでも公正かつ正論だ。

けど、だからこそそれが聞きたくなかったり息苦しいことがある。

今がまさにそのパターンだ。

 

帰ってきてから変わったのはその外見だけではない。

中身もどこか別人になってしまったような気がする。

まず静かになった、それこそ不気味なくらいに。僕や雄二がバカをやっても今までのように突っ込んでくることはない。暴力も消えた、まあここは良いんだけど…体育の時間になれば真っ先に駈けてきて僕らとじゃれていたのに最近は姫路さんと一緒にゆっくり一番最後に来るようになった。

Fクラスの皆が彼女達に下ネタをかましても怒ることはない。ただ穏やかな笑みを浮かべ続けているだけだ。

そんな美波に最初は好奇心…良い意味でだ。元々顔立ちは整っていてスタイルも良い美波だ。

攻撃性がなりを潜めればそういう目で寄ってくる人もいる。 そんなこともあった。けどもうそういった流れもなくなった。だって、近づけば分かってしまうから。今の彼女が抜け殻のような状態であることは。

 

 

 

「あの…美波ちゃん?次の授業は体育ですよ?古典じゃないです…」

 

「えっ…ああ、ありがとう瑞希。最近ぼ~っとしちゃって…」

 

「目に隈出来ちゃってます…あまり寝れてないんじゃ…」

 

「そんなことないわよ…心配してくれてありがとう…」

 

「そうですか…」

 

 

今となってはああしてまともに喋ることが出来るのも姫路さんくらいなものだ。

 

遠坂さんは一度ガツンと言いにいってそれ以降半ば絶縁状態だ。

彼女曰わく「今のあの子にかける言葉なんて一つもないわ。後は自分が這い上がってくるかこれないか、それは自分次第」とのことだ。

 

 

 

「ま、まあとにかくやるだけやってみようじゃないか!例えそうだとしても遠坂とセイバーで個人種目は取れるだけ取れるし、裏を返せば男子の方はあまりが出るくらい豊富で質もそう悪くないんだ。諦めるには早いだろ?」

 

 

どよ~んとした空気を返るように衛宮君が盛り立てる。

うん、確かにその通りだ。このままうじうじしててもなにも変わらない。

 

 

「それもそうか。それに今回はこないだの弓道部の活躍が認められてスポンサーざ投資の増額の判断も兼ねて視察にくる。そこでアピールしたいババアの提案で召喚獣を使ったボーナス種目やら、順位で加点されるミスコンみたいなのもやるからな。遠坂とセイバーにはそっちもフル回転してもらうことになるが…」

 

「任せといて。私もセイバーも人にジロジロ見られるのには慣れているから。…それにあの時は仕方なかったとは言えあなたに全部押しつけちゃうことになったことは本当に申し訳なく思ってるのよ?自分で蒔いた種は自分で刈り取る。その可能性が消えるまでは全力を尽くすわ」

 

「…言ってることは当たり前のことのはずなのにこのFクラスにいるとそれがなんだか高尚な言葉に見えてくるな…」

 

 

弓道部でスポンサー…?僕の知らないところでどうやら色々なやり取りがあったみたいだ。

それにしても雄二の言っていることが本当なら今回の体育祭はかなり大がかりなものになるのかもしれない。

ミスコンの方は何だか嫌な意味で気になるけど…普通にやれば今の遠坂さん、セイバーさん、姫路さんのいるウチのクラスが負ける訳ないのに何だこの胸騒ぎは。

 

 

「とりあえず今この話は終わりにしましょう。どうせ今日の帰りのHRで西村先生から詳しく通達があるでしょうしそれまで私達に出来ることはないわ。クラス全体を動かそうにもさっきみたいに坂本君が玉砕して終わるのが落ちよ。」

 

「そうじゃな。」

 

「…あれは酷い。」

 

「う、うるせえ!俺も少し追い詰められてただけだ!二度とあんな醜態さらさねえよ!…っとそいじゃそろそろいくか。あの一件で俺達は大島にもマークされてるからな。早めについておくに限る。」

 

 

 

雄二のその言葉を最後に皆外へ歩いていく。

だけど敢えて僕は逆にクラスの奥へと進んでいく。とりあえずでもやっておかなければならない。

 

 

「…美波。」

 

「ん?なに?吉井君」

 

「…!」

 

その姿、その呼び方に心が締め付けられる。

これが僕の変えてしまった人間の姿。

 

 

「いや、みんな出ちゃったから美波も行かないとと思って」

 

「…え?」

 

美波は辺りをキョロキョロと見回す。

本当に周りのことは目に入っていないみたいだ。

 

「あ、ありがとね。…それじゃ。」

 

「あの…!」

 

僕の言葉はまるで聞こえないかのように美波は僕の横を抜けていく。

 

「…これでそろそろ30は言ったかな?無視されるの。」

 

 

 

 

 

 

僕と美波がまともに喋れなくなってどれくらい経ったのだろう。

 

 

 

 

 




どうもです。

むむむ…なんとか更新はできていますが作者も作品も停滞している気がする…

感想なるべく早く返せるようにします。

それではまた。
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