「終わった、今度こそ俺の人生終わった。鉄人負けるとかありえねーだろ普通なんなんだあの化け物はあんなんが倫理担当のわけないだろ実際のとこ暗殺拳とかそんなんだろまじであーあ儚い16年だったわほんと……」
「さてどうしようか。」
「放っておこう。人間耐えきれないほどのショックにやられたときは受け入れる時間が必要だ。」
「いや、確かにその通りなんだけど受け入れたらその瞬間雄二の人生終わりだからね!?」
「憐れね……」
遠坂さんの言葉が全てを表しているだろう。
誰もが予想しなかった(衛宮君達はやけに冷静だった。)鉄人の敗北によって雄二の心は完全に折れた。今ここにいるのは雄二の形をした何かというのが適切だと思う。
その……普段むちゃくちゃ言いまくっておいてなんだけど今までの行いを少し反省しようと思ったくらいだ。
それくらい見てて悲しくなる光景だ。
少なくとも昼飯時にお茶の間に届けられるそれではない。
「士郎!朝4時から仕込んでいたお弁当を!!」
「あれ?起こさないように気を使ったつもりなんだけど……うるさかったか?」
「いえ!美味しそうな匂いで自然に目が覚めました!」
「そうかそうか……はい、これな。一杯あるからそんなにがっつくなよセイバー」
「…っ!これは!豪華五段重ね弁当!?」
「うわっ…気合い入ってるわね。けど大丈夫なの士郎?これだけ作ろうとしたら材料費バカにならないでしょ?」
「キャスターと協力してトヨエツのタイムサービスを勝ち抜いたからな。流石は若奥様、スーパーの戦い方をよく知ってるよ。丸一日かけて料理を教えるって条件だったけどお釣りがくるくらいだ。」
「あー、そういうこと。」
「遠坂も食べるだろ?」
「私は大丈夫。最高のお手伝いさんがいるから。それにセイバーと食事を奪いあうなんて自殺行為私はしたくないもの。」
「自殺行為ってお前な……」
「ならリンは食べなきゃいいわ。シロウの弁当は私が頂くわ!」
「イリヤスフィール!?あんたいつの間に!」
だけどそう悪いことばかりではない。
少なくともこんなに華やかな状態が起こっているのにも関わらず周りからの視線はいつもの半分以下だ。
セイバーさん達と一緒に行動するようになってから周囲からの視線にさらされるのが普通になっていたけれどやっぱりあまり気分のいいものじゃないから助かる。
もちろん原因は華やかさに負けないレベルの負のオーラを雄二(屍)が振りまいているからにほかならない。
「あれ……なんか違和感が……」
だというのに僕を支配する奇妙な違和感。
なんだろう……なにか見落としちゃいけないもの、それも何度も経験したようなことがあったような……
「昼……休憩……ご飯……あっ」
気がついた。
昼休みに突入してからというもの発狂している雄二はおいておくとして秀吉も、ムッツリーニも一言も発してはいない。
その理由は僕達は何度も経験している。
「こういうイベント事で姫路さんが弁当を持ってこないはずがないじゃないか……!」
痛恨のミス、不覚、言葉を幾つ並べても足りない。
ただでさえ今日の僕らは体育祭で体力を消耗している。こんな状況で弁当というなの劇薬を摂取したらひとたまりもない…!
「なんとかしないと……!」
残念ながら既に昼休み、未然に防ぐのは不可能だろう。
かといってこのまま何もしないわけにもいかない、人間諦めが肝心とはよく言うけれど死んでしまったら何も起こらないのだから。
「とにかく戦力を集めないと……秀吉!ムッツリーニ!!」
左見る(顔真っ青で念仏を唱える秀吉)右見る(虚ろな目でカメラのレンズを磨くムッツリーニ)
「だめだぁー!!!既に戦意を失っている!!!」
「そこ!吉井君うっさい!!」
「すいません……」
現有戦力0、味方はいない。
くそう……こういう時に陣頭指揮を取る雄二の不在が2人にここまで影響するなんて!
「覚悟を決めるしかないのかな……幸い衛宮君達もいるし蘇生には困らないだろうし。」
とりあえず死刑執行人(姫路さん)を探す。
こうなってしまった以上後は劇薬の量が少ないことを祈るのみ。うまくいけばまだ生存の希望はある。
「姫路さんは……あれ、どこにいるんだろ?さっきまで一緒にいたはずなんだけど。」
今のところ美波とのギクシャクした空気は改善できていない。そのせいもあってか姫路さんが僕等と一緒にいる時間は更に増えた。
こんな風に一人でどこかいなくなるなんてほとんどなかったんだけど…
「探しにいこう。学校っていってもこの人混みだし姫路さんなら迷ってもおかしくない。」
ーーーーー
「いた!」
結論からいうと姫路さんは直ぐに見つかった。
なるほど……旧校舎の近くということはおおかた教室に何か忘れ物をしてそれを取りに来たというところだろう。
問題は迷っていると言うよりは探し物をしているように見えるということだけど。
「はあ…見つからないです…」
「姫路さん、なにやってるの?」
「えっ?あっ吉井君!?どうしてここに!?」
「姫路さんの姿が見あたらないから探しに来たんだよ。何か探し物?」
「はい……実は大切なものをなくしてしまって。」
「なら僕も手伝うよ!一体何を探してるの?」
「それが……」
声をかけるとビクッと反応した姫路さんは若干汗ばんでいる。
それだけ探しているということ本当に大切なものだとうことだろうし出来る限り力に……
「無くしたのはお弁当なんです。」
「今日は衛宮君がすごい豪華なお弁当もってきてるしそれを分けてもらわない?」
人間諦めが肝心とはよくも言ったものだと思う。
午後に向けて体力を温存するのも大切なことだ。
「でも……皆さんに喜んでもらおうと思って精一杯つくって……」
「それは……そうだよね。うん、探そう。まだまだ時間はあるし。」
保身の為に彼女の気持ちを踏みにじろうとした数秒前の僕をぶん殴りたい。
「けどそれじゃあ吉井君に迷惑が」
「気にしないで。それよりも姫路さんが困ってるのをみる方がよっぽど辛いから。」
「分かりました……それではお願いします。」
ペコリと頭を下げる姫路さんと一緒に辺りを見て回る。
そもそも気がついたら無くなってたみたいなこといってたしそうそう遠くにあるとは思えないんだけど……
「探し物はこれだろう?吉井明久。」
「ん?切継君!なんで…それに手に持ってるそれは……」
「凛に弁当を届けにいく途中だったのだがこんなものを見つけてな。うさぎの包み袋となると私には姫路瑞希以外思いつかなったのでな。ほれ、これは彼女のものだろう?」
突然名前を呼ばれ顔を上げるとそこには弁当と思われる箱を2つ持った切継君の姿があった。
相変わらず衛宮君によく似てるというかそれでいて雰囲気があるというか……
「あ……切継君、ありがとうございます。ずっと探してて……」
「なに、気にすることはない。偶然拾っただけなのでな、今後は気をつけるといい。」
僕達に気付いたのか姫路さんが走り寄ってきて切継君にお礼をする。
とりあえずこれで一件落着みたいだしみんなのところに戻るかな。
「それじゃあ戻ろうか。遠坂さんのところにいくなら切継君も一緒にいくでしょ?」
「む…そうだな……」
当然そうするものだと思っていたけど切継君は若干渋い表情をして何か考え込むような素振りを見せる。
あれ……やっぱり僕切継君に嫌われてるんじゃ……
「あの……」
「いや、それでも構わんのだがお前と少し話がしたい。姫路瑞希、申し訳ないのだが先に戻ってもらってもいいか?」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
「私は構わないですけど……」
姫路さんはチラッと僕の方を見るが切継君の真剣な表情に圧されたのかそのまま承諾する。
それを聞くと切継君は満足気に頷くと
「そうか、それでは頼む。吉井明久はこっちにこい。あまり人に聞かれてうれしい話ではないのでな。」
「それで、何のようなの?」
「なに、そう堅くなるな。少しだけお節介しようと思ってな。」
旧校舎にあるFクラスには今人影はなく僕と切継君しかいない。
その切継君はと言うと腕を組み教壇に寄りかかるようにして何か聞き慣れない単語を口にした。
「お節介……?」
「ああ、余り遠回しなのは好きじゃないなので単刀直入に言おう……貴様、島田美波とはどうするつもりだ?」
「え……?」
その時、全身を貫かれたような衝撃が走った。
「何時まで目を背けているつもりかと聞いたのだ。全く、凛が目をかけるとは珍しいからどんな人物かと思っていたが……これなら衛宮士郎のほうが幾分かましというものだ。」
「目を背けてって……」
「違うのか?吉井明久は島田美波の追い詰められた末のうやむやな結論に自らの思いを伝えることもなく中途半端に放り出した。だというのに未だに元に戻れたら良い、知る前に戻れたら良いなどと都合の良い願いを抱いている。……そんなもの、出来るわけないととっくに気づいているはずなのにな。」
抉られる。今まで見ないようにすることで心の平衡を保ってきたバランスがいともたやすく崩される。
「お前はひたすらに気付かないふりをしていただけだ。そして自分だけは傷つかないような世界を作りそれが壊れた途端に大切だと思っていたものと向き合うことすら避けて逃げ出した。……これを他になんと言えばいい?」
「それは……」
「お前は本当は分かっているはずだ。2人の気持ちも、何もかも。だが……」
切継君の腕が僕の胸倉を掴む、そうかと思うと僕の体はたやすくっても宙に浮かび上がっていた。
「それでも向き合おうとすらしないというのなら貴様はここから消えろ。私は合理主義者でね、1人が犠牲になることで2人が救われるならそちらを選ぶ。切り捨てた者に対する感慨などないし、今までのように誰か助けてくれるかなんて期待も無駄だ。」
「僕は……」
ーーーーー
「そうか……それがお前の」
「うん……中途半端かも知れないけど今の僕に出来るのはこれくらいだから。」
「それが自らの内から出たものなら私から言うことはない。だがそれはつらい道だ、最悪貴様が全て背負うことになるがそれでも構わないのだな?」
さっきまでとは随分な対応の差だ。
自分の言葉を告げると切継君は直ぐにいつも通り、それどころか僕を心配するようにそう忠告した。
「それでもだよ。僕は嘘をつく気はないし、もう逃げる気もない。」
「そうか。ならば急いで戻るとしよう。凛にどつかれるのは嫌なのでな。」
「切継君」
「なんだ?」
背を向けた彼を呼び止める。
一つ、聞いておかないと。
「何で……こんな話を?」
「私は合理主義者だ、だがそれと同時に救えそうなものならば全部救いにいく性質でな。いや、悪い癖だがなかなかどうして治す気にはなれなくてな。」
そう言って苦笑した切継君の姿は誰かにとても似ている気がした。
余談になるけれど姫路さんのお弁当は見た目は相変わらずのデンジャラス、生物兵器だったが何故か味はおいしかった。もしかしたら、どんなことでも人は変われるのかもしれないとこんなところでも勇気を貰えた気がした。
ーーーーー
「っで、アーチャー?遅くなった言い訳は?」
「すまないな凛、あの生物兵器はさすがの私でも解析に手間取った。改めて見ると構成するとむちゃくちゃでな、あの外見を投影しつつ尚且つ中身の本質を変えずに味を確かにというのは難題だったぞ。むしろほめてもらいたいくらいだ。」
「英霊が手こずる料理っていったい何なのよ……」
お久しぶりです。
プロットなしの作品構成ってやっぱりだめだわと痛感した作者です。
とりあえず一気に物語が動きそうな雰囲気。
アーチャーの問いに対する明久の答えやいかに!!
体育祭編、ひいては物語第一章もいよいよ終盤へ!
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